全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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どうもです

せめて月一で更新していきたいと思ってます(ミカヅキ
けどあんまり期待しないでね(土下座


#61 オービットポータル社

待ち合わせ場所にて、鳴護アリサは雲を見ながらアラタが同行を頼んだ子たちを待っていた

空の景色を楽しみながらのんびり待っていると、アリサの耳に声が届く

 

「やっほー! お待たせー!」

 

聞いたことがある声だ

声の方へ振り向くと、そこには見知った女性が一人に彼女の友人であろう女性たちが四名ほど

会ったことはないが、大丈夫だろうか

 

「待たせてごめんね。とりあえず改めて自己紹介するわね。私は御坂美琴。こっちは友人の佐天さんに初春さん」

「は、始めましてアリサさんっ! 初春飾利ともおします!」

「同じく佐天涙子です! …その、えっと、ファンです!」

 

ネットで活躍している本物のアリサを見て、思わず語彙力が低下している柵川中学の二人

まぁ芸能人に近いしそうなるのも無理はないのかもしれない

 

「んで、車椅子に乗ってるのが私の後輩の白井黒子に、そんな彼女を押してるのが友人の神那賀雫さん」

「ご紹介に預かりました、白井黒子といいますの」

「今日はよろしくね、鳴護さん」

「ありがとうございます。同い年っぽそうだから、アリサでいいよ、神那賀さん」

「それじゃあ私も雫でいいよ、アリサさんっ」

 

早くも打ち解け始める神那賀や黒子たち

と、思ったところでアリサは少し周囲を見回してみる

はて、アラタから聞いた話ではあともう一人いるって話なのだが

 

「あの、美琴ちゃん、確かあと一人くるんじゃなかった?」

「あぁ…食蜂さんね。…いえ、誘いはしたんだけど―――」

 

 

―――あら、いつぞやの女の子とぉ? 喜んで―――

―――女王、申し訳ないのですがその日は派閥の定例会議があります

―――そんなのいつも通り貴女に任せるわ帆風

―――いいえ。たまには女王本人も出席していただかいないと。派閥の沽券に関わるかと。

―――沽券って言ってもぉ…

―――アラタさんにも言いつけますよ

―――…そこで彼の名前出すのズルくなぁい…? もう、わかったわよぅ…そんなわけで行けそうにないわぁ…

 

 

「と、まぁ。そんな感じでこれなくなっちゃって」

「あはは…それなら仕方ないね」

 

都合があるのなら仕方ない

もちろん彼女が来れなかったのは残念だが、それでも今日だけでこんなに友達が増えたのだ

これ以上望んではバチが当たりそうである

 

「それじゃあ行こうか、歩きながらお話しよっ」

「えぇ。私も色々話したかったし

 

アリサの笑顔に釣られて美琴も笑顔になる

オービットポータル社への道すがら、彼女たちは楽しそうにおしゃべりをするのだった

 

◇◇◇

 

「お邪魔しまーす」

「しまーす」

 

一方で鏡祢アラタ

彼は一緒に来たみのりと一緒に〝伽藍の堂〟の扉を開ける

彼の来訪にいち早く気が付いたのは翔だった

 

「お、いらっしゃい。やっと来たか」

「呼ばれてたからな。…あれ、アリスは?」

「アリスなら今寝てるんだ。最近色々あって夜遅くまで起きてたから」

「そうなんだ? じゃあ橙子は…」

 

そう言いながらアラタはきょろきょろと見回すと窓側で窓を開けながら煙草を吸っている蒼崎橙子の姿を見つけた

その近くではソファに腰を下ろしている黒桐鮮花の姿も見える

メガネを外している彼女はアラタの視線に気づくと笑みを浮かべて

 

「来たみたいだな、アラタ」

 

灰皿に煙草を押し付けて火を消すとこっちに向かって歩いてくる

 

「早速で悪いが準備をしろ。今からオービットポータル社に向かう」

「いきなりだな。っていうかなんでよ?」

「いや何。向こうから衣装デザインを頼まれてな。挨拶に赴くのさ」

「衣装? …もしかしてアリサの?」

「なんだ、知っていたのか。流石大人気アーティスト」

 

まさか衣装を手掛けていたのか、とアラタは内心びっくりする

何でも屋という話は軽く聞いていたがそんなものまで請け負っていたとは思わなんだ

 

「デザインしてるときの橙子さん、結構楽しそうだったよ?」

「鮮花、余計なことは言わなくていい。お前も同行しろ、暇なんだろ」

「はーい」

 

そう言ってソファから腰を上げてその場を歩いていく鮮花

今度は燈子は翔へと視線をやると

 

「翔、お前は留守番だ。アリスの隣にいてやってくれ」

「わかりました。お気を付けて」

「じゃあみのりもお留守番だな。アリスが起きたら話し相手になってあげてくれ」

「おっけー」

 

そんな訳で翔とみのりの見送りを受けながら鮮花とアラタの二人は橙子は運転する車で件のオービットポータル社へとむかうことになった

車の中で適当に駄弁りながら向かうこと数十分、駐車場に車を停めて降りた後アラタはおっ、と見知った顔を発見する

 

「アリサ―っ」

「―――! アラタくんっ」

 

たまたま駐車場付近を通っていた鳴護アリサご一行だ

アリサは彼の姿を発見すると手を振りながら笑顔を振りまく

それに釣られて美琴や佐天、初春、黒子、神那賀といったおなじみのメンツがアラタに向かって手を振ってくる

 

「よかった。ここに来るまで何もなかったか?」

「うん、美琴ちゃんたちも一緒だったし、何にもなかったよ」

「本当か。安心した…あれ、美琴、操祈は?」

「あぁ、食蜂さんならね―――」

 

アリサからその報告を受けてアラタはほっと胸を撫でおろし、美琴から食蜂の事情を聞き頷いた

そんなタイミングでアラタの後ろから二人の女性が顔を出してくる

琥珀色のコートを着込んだ女性と、タイトスカートを着たキャリアウーマン風な女性だ

まず琥珀色のコートの女性―――蒼崎橙子は鳴護アリサの前へと一歩出て

 

「君が鳴護アリサだな? 少々早いが、君の着る衣装をデザインさせてもらった蒼崎橙子という。よろしく頼むよ」

「―――! で、デザイナーの方だったんですか!? こ、こちらこそよろしくお願いしますっ」

 

アーティストとデザイナーが握手を交わしてる中、もう一つの出会いが進行していた

 

「なになに? アラタってばこんなかわいい子たちと知り合いになってたの? 隅に置けないなぁこのこの」

 

にんまりとしたような笑顔を浮かべるのは黒桐鮮花その人だ

ちょっぴりウザい絡み方をしてくる鮮花にアラタは若干引きながらも

 

風紀委員(ジャッジメント)の同僚と友達だよ。前に話したでしょう」

「そうなんだ。初めまして、私は黒桐鮮花、アラタの…んー…姉みたいなもんかな? 義理だけど」

 

そう言って美琴たちに向かって鮮花は笑みを交えて自己紹介をする

美琴たちもそれに倣い自己紹介を返しているとすすっと初春と佐天がアラタの近くに来て

 

「…アラタさんお姉さんいたんですか?」

「それもこんなにきれいな人だなんて…ちょっと女としての自信なくします」

 

なんか初春や佐天がちょっと沈んでいる

そこまでなのか

 

「いや、涙子も飾利もまだ中学生じゃん、これからだよこれから」

「そ…そうですよね! 育ち盛りですし!」

「そうそう。鮮花さんなんてもう大人だし? もう以降は下がるだけあだだだだ!?」

「聞こえてるのよこの馬鹿義弟がぁぁぁオラオラオラ…!」

 

本人としてもちょっとした励ましと冗談のつもりで言ったのだがばっちり鮮花本人には聞こえていたようで速攻で鮮花に間接を決められた

躊躇なくこんな技を決めれるくらいには仲がいいようで、思わず佐天は笑ってしまった

 

◇◇◇

 

「え? オービットポータル社って、そのオリオン号の事件を起こした会社なの?」

 

所変わって現在エレベーター内

上昇していく感覚を身体で感じながらアリサら一行は他愛もない話をしていた

 

「そうなんですよ御坂さん、社運を賭けたスペースプレーンが墜ちたことでほぼ倒産状態になっていたところを買収されて、奇跡の復活。 今回のエンデュミオンを実現させたんですよ」

 

窓の景色を楽しみながら、初春がスラスラと言葉を並べていく

事前に調べていたのか、あるいは前から興味があったのかその言葉に迷いはなく、言っている初春の顔は楽しそうだ

 

「へぇ」

「ちなみに、今度の社長は女の子なんです! たしか、十歳くらいでしたかね」

「え? それじゃあ買収した当時七歳だったこと!?」

 

美琴の声がエレベーターに響き渡る

七歳で起業を買収し、そこから三年掛けて会社を立て直しエンデュミオンを実現させる…敏腕どころの話ではない

 

「そんなのただのお飾りではありませんの?」

「ま、黒子の言うこともわからんでもない。十歳の社長なんて若手すぎるからな」

 

黒子の言葉にアラタも同意する

裏でその社長を操って私服を肥やす…そんな話はよくあるパターンだ

 

「お兄様の言う通りですわ。ましてやゴスロリ美少女社長だなんて盛りすぎて逆に胡散臭いですわ」

「そんなぁ。包帯ツインテ車いすほどじゃあないですって」

「!! うぅいぃはぁるぅ…!(濁声)」

「はっ! …あ、あはは…」

 

時折初春は黒子に対してだけ発言が黒くなる

まぁ幼いころからの付き合いとかそういう所もあるのかもしれないが見てる分には面白いので特に何も言わないことにする

 

「…ねぇ」

「うん? なんです?」

 

不意に鮮花が耳打ちでアラタに話しかけてきた

アラタは視線だけ彼女の方に動かすと鮮花の言葉を待った

 

「…あの車いすの女の子、君の事〝お兄様〟って言ってたけど…アンタそんな趣味が?」

「ハッ倒すぞコノヤロウ」

 

そんなやり取りを尻目に、蒼崎橙子はくくっと声を抑えて笑うのだった

 

◇◇◇

 

「これはあくまでも都市伝説なんですけど、彼女実はホログラムなんじゃないか、とかロボットなんじゃないかって噂なんです!」

 

道中で興奮したように佐天涙子がそんな話を切り出した

ホログラム、ロボット…どれもあり得そうではある

なんて言ったって十歳とゴスロリ美少女社長なのだ

昨今噂のブイチューバ―だとか、そんな噂に縋りたくもなる

 

「そんな眉唾な。根も葉もない噂をどう信じろと?」

「えー? でも実際そんな感じしません? たまにテレビとかに出てますけど、なんか雰囲気が人形っぽいっていうか」

 

現実主義者(リアリスト)である黒子はそんな佐天の都市伝説をばっさりとカットする

しかし佐天の言葉も正直否定はできない

確かに何度かテレビでインタビューなんかを受けている様子を見たことはあるが、どうも反応が薄いというかなんというか

無論本人を見たことがないからそうだと断言できるはずもないのだが

 

そんな話をしていると一行は小物などが置かれてある通路まで差し掛かった

小物というかこれは小道具といった所か? 数が多いのかあるいは入りきらないのかわからないが子の通路にはそんな小道具がいくつか置かれているみたいだ

そんな小道具の椅子にぽつんと座っている〝人形〟のようなツインテールの女の子が目に入る

なんだか格好がテレビに出てたオービットポータル社の社長に似ているがその時は大して気にはならなかった

 

そんな〝人形〟の横を通り過ぎようとした時、不意に美琴と橙子が足を止めてその〝人形〟を見た

 

「橙子さん?」

「美琴も。どうした?」

 

「あ、あぁ」

「い、いや。なんかこの人形―――」

 

声を掛けられた美琴と橙子はそんな曖昧な返事をしながら座っている〝人形〟を見やる

見やっていると唐突にすっくとその人形が立ち上がるとくりんとアリサの方へと視線を向けた

 

人形だと思ってたやつが急に動き出しあまつさえ視線を変えてきたことにその場にいた一行は流石に驚きの声を上げる

そんな周囲のリアクションを無視して、その女の子は

 

「貴方の歌声、好きよ」

 

透き通った声色が耳に聞こえてくる

 

「こんなに気に入ったのは本当に久しぶり。ジェニー・リンド以来かしら? それじゃあ頑張ってね」

 

一方的に言いたいことだけを彼女に言っていくと女の子はくるりと踵を返して歩いていったしまった

辺りはシンと静まり返る

一体彼女はなんだったのか、一行の頭の中に巻き起こった共通の疑問に初春がぼそりと答えを出す

 

「…例の社長、さっきの方です」

『えぇぇぇぇ!?』

 

橙子以外のメンバーが驚きの声を上げる中、橙子が考え込んだように顎に手をやるのがアラタは気になった

そんな彼女の近くに歩み寄ると素直に橙子に問いをかけてみる

 

「…どうしたの、橙子」

「…一瞬ではあるんだが、気づけなかった」

「! …嘘でしょ?」

 

何気ない橙子の言葉に、アラタは顔を驚きに染める

普段から人形を作っている橙子の目を、一瞬ではあろうが欺いたというのか、あの子は

 

「…警戒はしておいた方がいいかな」

「あぁ。…けど、ひとまず今は、目の前のことに集中しよう」

 

そういえば、とアラタは考え込む

あの社長の名前…なんて言ったっけ

 

確か―――レディリー・タングルロード、だったか


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