全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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あんまり長くてもあれですので区切りのいいとこで切りました
今回はちょっち短め


#58 黒鴉部隊

舌を打ったステイルは、ふと別の気配に気が付いた

炎で燃えた柱とは別の柱に、光学迷彩か何かかわからないが、多脚の奇妙な機械が見える

まるで蜘蛛みたいなその機械は射出口みたいなのを展開させると、バシュバシュ! とアンカークローみたいなものを撃ち込んできた

 

ステイルはその場から動くことでそれを回避すると、その手に炎を生み出して、牽制の意味合いも込めてその炎を機械に向かって放った

 

「…なんだあれは」

 

新手の化学兵器か?

少なくとも今まではあんなのはまだなかったはずだ

飛んでいったステイルの炎は真っ直ぐ光学迷彩している機械へと飛んでいき、ゴォ! っと燃える炎に包まれるが…これと言って効果はなさそうだ

 

炎が晴れるとその機械は光学迷彩を解きながら、ゆっくりとこちらを補足するかのように周囲を動き回る

それを皮切りにビルの壁を駆け抜けながら、また何機かの機械がこちらに接近してきていた

そして地上―――そちらに視線を向けると、また新たな仮面ライダーが四人、こっちにゆっくり歩いてきている

 

戦闘は避けられそうにない、だったら迎え撃つまで

マリーベート、ジェーン、メアリエの三人もこちらに合流し、オーズもステイルの隣へと戻ってくる

アリサの元へと戻っている当麻やアラタたちも状況に戸惑っている

彼らが呼んだわけでもなさそうだ

 

そうこうしているうちに四人のうちの一人―――ブラックイクサがこちらに向けて銃のようなものを撃ってきた

オーズが前に出てトラクローで弾丸を弾いた

ブラックイクサが攻撃をしたのを合図に、周囲を走っていた機動兵器がこちらに向かってディスクのようなものを射出してきた

放たれたそれは地面に設置されていった

地雷、というわけでもなさそうだが…

 

 

ブラックイクサの仮面の下で、放たれたディスクを視認し、アイツ等の近くにセットされたそれを確認する

ブラックイクサはそちらに向けて右手を向けると、その手首からバシュン、とワイヤーが出て地面にセットされたそのディスクを射抜いた

 

「! 散れ!」

 

ステイルはそう叫び、一斉にその場から五人の敵は散らばった

直後、レアアースを媒介にエネルギーを解放されたディスクが連鎖し、周囲に大爆発を引き起こした

当麻らも巻き込んでしまいかねないその爆発ではあるが、気にしている余裕なんかない

動かなければ、こっちが潰されかねない

 

というかアイツ等ならば自衛なんて訳ないだろう、気にするだけ時間の無駄だ

 

一行は相手の攻撃を避けながら見晴らしのいい場所へと移動すると、同じように機動兵器らも壁などを飛び回り、次々と妙なディスクを打ち出していく

周辺にばら撒かれるはずだったそのディスクをステイルの炎が焼き払い、撃ち漏らしをオーズのクローが斬り裂いていく

 

やがて一機の機動兵器の着地した、黒い仮面ライダー―――ブラックイクサがステイルたちにイクサカリバーを突き付けながら

 

「我々は学園都市統括理事会に認可を得た、民事解決用干渉部隊である。―――これより、特別介入を開始する」

 

毅然とした様子で言い放つブラックイクサの言葉と共に、機動兵器が駆けまわり、同じようにまた仮面ライダーたちが姿を現していく

白い仮面ライダー―――イクサに、青い複眼の仮面ライダー…G4、そして頭のライダーという文字が特徴的なザモナスがそれぞれこちらに向かってかけてくる

 

それらを迎え撃つべく、オーズはメダジャリバーを構えると後ろにいるメアリエの水の魔術を援護にライダーらへと駆け出していった

最初に撃ってきたのはイクサとG4である

イクサカリバ―とハンドガンのようなもので牽制するようにこちらに放ってくるその弾丸をジャリバーうやトラクローで切り落としつつ、距離を縮めていく

向こうも同じようにイクサとG4の援護を受けつつ、ザモナスがボウガンを片手に同じように駆け出してくる

 

やがて距離が近くなり、先に攻撃を繰り出したのはザモナスだ

彼はそのまま真っ直ぐパンチを繰り出す、がシンプルなその一撃は容易く捌かれるも、向こうはそれを当然予期していたであろう

すかさず軽く後退すると上空からのブラックイクサの襲撃を受け、オーズは一撃を貰ってしまい、メダジャリバーを弾かれてしまった

 

「人の利は我らにありってねぇ」

 

そう呟きながら、ザモナスは軽く指示を飛ばすと、機動兵器が再度動き出す

約四機ほどのそれらは後ろに控えているステイルたちの方へ向かっていき、彼ら彼女らはそれらの対応で手いっぱいとなってしまった

この状況は流石に不味いか―――そう思った矢先である

 

紫色の炎弾が突如としてザモナスに降り注いだ

ザモナスはその炎弾の接近に気が付くと即座に後ろへと飛びのくと、オーズの前に一人の仮面ライダーが現れる

紫色の姿をして、その両手には太鼓のバチを思い起こすような得物をもっているその男はちらりとオーズへ視線を移す

 

「響鬼…」

「これ以上は迷惑かかっちゃうよ。撤収撤収。―――神裂ちゃん!!」

 

そう言って響鬼はとあるビルの屋上へと視線を移す

視線の先には、七天七刀を携えた神裂火織の姿もあった

彼女はその場からステイル等の方を見やると

 

「彼の言う通りです、ステイル、撤退を!」

「ち…仕方ないか。―――メアリエ、ジェーン、マリーベート、斎堵!」

 

ステイルの言葉を聞くと響鬼の近くのオーズは立ちあがって体制を立て直す

 

「それもそうか。潔く退くとしようか」

「それがいい。―――そんな訳で失礼!」

 

響鬼はそう言ってザモナスに向けて鬼火を吐き出して牽制すると、その場から跳躍して撤退していく

一目散に奔っていく彼らをブラックイクサは少し離れたところで見つめるが、追いかけるようなことはしなかった

向こうから引いてくれるのなら、それに越したことはない

ちらりと、ブラックイクサは視界の端に、紅い髪の男―――ステイルを追いかける二人の男を見つけた

鳴護アリサの友人か

彼らはステイルと軽く言葉を交わしたのち、二人してアリサがいるであろう方向を振り向く

その刹那の一瞬で、ステイルはもう視界から消えていた

 

(…よくわからない奇妙の能力を使う。私も早くこの装備に慣れなくては)

 

まだまだ使いこなせていないところもある

そこら辺は精進あるのみだ

ちらりと変身を解除した名護の方へ視線を向けると、こちらの意図を察してくれたのか、頷いて部下を引き連れて彼らもこの場から撤収を始めた

G4やザモナスもそっちに行ってる辺り、後は名護に任せて問題ないだろう

最後に、ブラックイクサは先ほどの男二人―――上条当麻と鏡祢アラタの方へと足を運ぶと、変身を解除しながら己の姿を晒した

 

 

言いたいことだけ言って消えたステイルたちを探していると、不意に当麻とアラタの前に、黒い仮面ライダーがゆっくりと歩いてくる

そいつはベルトに取り付けてあるナックルのようなデバイスを外すと、変身を解除して人間としての姿を二人の目の前に見せてくる

ぴっちりしたボディスーツに、長い黒髪をたなびかせ、真っ直ぐ射抜いてくる瞳

真面目な風紀委員長みたいな感じだな、とアラタは内心で思う

あとどことなく吹寄に似てる

 

「…アンタたちは何者なんだ」

 

黙ったままのアラタに代わり、当麻が女に向かってそう言葉を呟いた

彼女は表情を変えることなく、まるで作業のように淡々と言葉を告げていく

 

「我々は 学園都市内の秩序を維持すべく、特殊活動に従事している」

「そんなんじゃあわかんねぇよ! アリサの敵か!? それとも味方なのか!?」

「先の戦闘は、依頼にあった任務の一環だ」

「―――おい、答えになってねぇぞ」

 

女の言葉に、アラタもやっと口を開く

だが彼女はキッと強くこちらを睨みつけると

 

「警告する。これ以上あの女に関わるな。迂闊に関われば―――死ぬことになる」

 

そう迷いなく言い切ってきた

 

 

 

その日、運命は動き始める

 

化学と魔術―――二つの勢力が奪い合う一人の少女―――鳴護アリサ

彼女が幻想殺し―――上条当麻と、仮面ライダークウガ―――鏡祢アラタと出会ったことで

 

運命は―――動き始める


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