全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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そういえば新約編がもうじき完結するととあるの生放送で知って驚いてます
こちとら旧約も終わってへんのに新約に行けるのかね
のんびりやります_(:3」z)_


#47 守るは居場所(げんそう)

「―――呆けるな…! エリスっ!」

 

怒りを孕んだその絶叫

女はパステルを握ると抜刀術と見間違うほどの速度で壁に何かを書きなぐった

同時、彼女は何かを詠唱する

するとそのコンクリートの壁が崩れ、何かにこねられるような動きの後、砕かれた石像が再生する

女の顔には焦りはあったがまだ冷静だった

 

そんな歪な石像に立ち塞がるように、上条当麻たちは振り返る

その光景に風斬は驚き、女はまた嗤う

 

「は! 喜べ化け物。世の中にはこういう馬鹿がいるってことにさぁ!」

 

「―――生憎」

 

そんな女の言葉を斬り裂くように、鏡祢アラタは口を開く

 

「俺らだけじゃねぇんだぜ」

 

目の前の石像に動じた様子はなく、凛とした様子で言い放った

は? と女が変な声をあげそうになったその瞬間

 

カッ! と眩いばかりの光が女を襲う

 

思わず女は両手で自分の顔を覆う

風斬は十字路の真ん中に座り込んで、そして光は金髪の女がいる通路以外の三方向から向けられたものだ

眩い光に耐えながら、風斬は見渡した

 

そこにいたのは、警備員(アンチスキル)の人たちだ

持っている光の正体は銃に取り付けられたフラッシュライト

加えて、警備員(アンチスキル)の人たちは無傷ではなかった

それこそ、病院のベッドで寝ていなければおかしいのに

 

「…な、んで?」

 

不思議そうに、風斬は問いかける

 

「お前は、友達を助けるのに理由を求めるのか?」

 

その問いに、天道が答える

 

「…え?」

 

「俺の友人が言っていてな。友情は富にも勝る宝だ、てな。友達を助けるのに、見返りなど求めない」

「そうだよ。僕たちは警備員(アンチスキル)の人たちに、友達を助けてほしいって言っただけなんだから」

 

理解、出来なかった

 

「…とも、だち?」

「そうだよ。カザキリはもう友達なんだよ。…だから、そんな泣きそうな顔しないで」

 

ゴウラムは目尻にたまった風斬の瞳からそっと涙を指で拭った

晴れた視界は、温かい世界を捉える

あれだけ恐ろしく見えた世界はもう見えない

 

「行くぜ。天道、ワタルさん。当麻も準備はいいか」

「あぁ、いつでもいいぜアラタ」

「愚問だな」

「いいよ、行こう!」

 

風斬の隣を歩き、前に出るのは三人の少年と一人の青年

一人は拳を握り、一人は赤いカブトムシを掴み、一人はコウモリに己の手を噛みつかせ、一人は腰にその手を翳す

 

そして三人は叫んだ

 

『変身!』

 

ワタルは透明になったと思ったとたん弾け飛び、天道の身体はヒヒイロカネの鎧に包まれていき、アラタは赤い姿に身を包む

 

「風斬、今からお前に見せてやる。この世界には、まだ救いがあるってことを」

 

闇からはい出るために、立ち上がったのは少年たちだ

上条当麻は続ける

 

「そんでもって教えてやるよ。お前の居場所は―――そう簡単に崩れやしないってことをな!」

 

◇◇◇

 

「殺せ! 一人残らずっ! 肉片をかき集めて、お前を作ってやるわ!」

 

怒りに震えた声でシェリーはパステルで宙を切る

重ねた線が、ゴーレムを操っていく

 

「配置B! 民間人の保護を最優先とせよ!!」

 

一人の怒号を皮切りに銃口が一斉に火を噴いた

警備員(アンチスキル)らは盾を持つ前衛組とライフルを放つ後衛組の二人組で動いている

シールドはゴーレムエリスの攻撃から身を守るのでなく、その身体に当たって跳ね返る跳弾を防ぐためのものである

 

キバとクウガ、マスクドカブトは咄嗟に当麻や風斬の近くに移動し、キバは風斬の前に立ち、マスクドカブトとクウガは当麻の近くで身を屈めた

 

直後、別の警備員(アンチスキル)が透明な盾を構え、身を屈める三人の前に立った

 

瞬間、ガガガ! とその盾に跳弾した弾丸が当たり悲鳴を上げる

その音に、思わず驚き、身を震わせた

 

「乱反射しただけでこれか。侮れないな」

 

マスクドカブトの言葉にクウガは思わず同意しふと、風斬を見た

 

一度その身で味わっているせいか雷に怯える子供みたいに震えている

そんな彼女の頭を優しく撫でるゴウラムを見て改めて、クウガらは石像へと視界を移す

 

「ちっ! 四界を示す四天の象徴! 正しき力を正しき方向へ、配置し、導けっ!」

 

パステルによって歪な十字架が宙に書かれていく

するとエリスからぎぢ、と軋むような音が聞こえてきた

それはゴーレムエリスの悲鳴にも似た声だ

 

実際それは声ではなく、石像の間接から漏れる音

強引な命令ではあるが、それでもゴーレムエリスは応えた

不気味な音を立てながらではあるが、確実に動いてくる

 

「そ、んな―――」

 

風斬は思わず声を洩らす、が

 

間一髪盾を持った別の警備員(アンチスキル)が入れ替わる形でマスクドカブトとクウガが移動し、当麻と共に身を屈めた

 

「ここまでは、予想通りってとこか」

「あぁ、おおよそ、な」

 

クウガと当麻のやり取りに風斬は思わず耳を疑った

さらに今度は女の警備員(アンチスキル)

 

「けど、ホントにやる気なの? 怖気づいても誰も責めたりしないじゃん?」

「そ、そうですよ…。ですからやっぱり…」

 

「違いますよ黄泉川さん、やんなきゃいけないんです。それに、当麻の右手はああいう異能を打ち消す力があんです。サポートも俺らがやりますし大丈夫ですって」

「あぁ、だから俺たちを信じてくれよ」

「―――もう、ていうか見知った人間が仮面ライダーってだけで驚いてんのに…」

 

頭を掻きながら黄泉川と呼ばれた警備員(アンチスキル)ははぁ、と息を吐いた

 

「どのみちこのままならあの木偶人形が接近してくる。やるやらないなら、やるしかないとやはり思うが」

 

マスクドカブトの言葉に黄泉川は反応する

その眼に僅かながら力を込めて

 

「一回こっきりじゃん? ミスしても、うちらは君らを回収できない。その時は―――君らごと撃つことになるけど?」

 

その言葉に、風斬は愕然とする

そんな、あっていいはずがない

 

「待ってください…! な、何をしようと―――」

「あれを止めてくる」

 

間髪入れずに、当麻が答えた

耳にゴーレムエリスの足音が響き渡る

 

「ダメです! そんなの、危険すぎます!」

「大丈夫だよ、カザキリ」

 

声を張り上げる彼女に、ふと傍らのゴウラムが答える

 

「皆を信じてあげて」

 

ゴン、とさらに距離を詰められる

おおよその距離は、約二十メートル前後と言った所か

 

「指示を出すけど、構わないの?」

「あぁ、頼んだ」

 

何をするか

それはここに来る前に打ち合わせた

だから答えはそれでいい

自分たちは、当麻を全力で援護すればいいだけだ

 

「…かー! ホントカッコいいじゃん、少年に仮面ライダー! ったく。…センセは生徒に恵まれてんじゃんよ。いいよ、付き合う。その代り何があっても成功させるじゃんよ」

 

「あぁ、任せてくれ!」

 

その言葉に当麻が答える

そしてアラタ―――クウガへと視線をやってお互いに頷いてさらに決意を固めたようだった

 

「鉄装、カウント! ―――スリー」

 

黄泉川は無線機に向かって何か命令を下した

 

怖くないはずはない

軌道すらも読めない、あの弾丸の雨の中にこれから突っ込んでいくのだ

 

床に伏せている当麻が僅かに身体を起こす

 

「待って、やっぱりダメ! 死んじゃうに決まってます! そんなの―――そんなのいや―――」

「止めるな。風斬」

 

その言葉に応えたのは天道―――マスクドカブトだった

 

「お前がなんとなく当麻を避けていた理由…たぶんだが、その右手に原因があるのだろう」

「かもな。オレの右手は異能の力なら善悪問わず打ち消しちまうから。きっと、風斬の事も例外じゃない」

 

その言葉に、風斬はただ黙って、そして衝撃を受けたように息を詰まらせる

 

「―――ツー」

 

どうやらシェリーもこちらが何か仕掛けてくることに気が付いたのか、さらにパステルを中空に書き殴りまくる

その直後、ゴーレムエリスの足が力強くまた踏み出される

しかし、今この瞬間だけは、その女を視界に捉えてはいなかった

 

「―――ワン」

 

当麻とクウガは風斬の顔を見る

彼らはただ、笑みを浮かべて

 

「気にすんなって。俺たちが友達ってことにかわりはないからさ。俺たちは必ず帰ってくる。絶対だ」

「帰って、来る?」

「あぁ、今度はさ、俺の友達も誘っていいか? もっと楽しくなるからさ」

 

言って、笑う

仮面に覆われているハズなのに、その奥の顔はとても優しく見えた

 

そして黄泉川は告げる

風斬との繋がりを断ち切るように

 

「―――ゼロッ!」

 

 

 

刹那、ゴーレムエリスに向かって弾丸をばら撒いていた警備員(アンチスキル)が、〝撃つのをやめた〟

 

 

 

真っ先に疑問に思ったのはシェリー本人だ

弾幕は自分たちを守る、いわば鎧のようなもの

それを取り払えば、待っているのはゴーレムエリスの拳

自らその身体を死に晒すような真似をするはずがないと考えていたからだ

 

だが効果はあった

ゴーレムエリスのその鈍重な身体が前のめりにつんのめったのだ

強い北風に向かって全力で足を進めていたおかげで不意に風が止んだとき、自分が生んだ余力な力で、大きくバランスを崩したのだ

 

そしてそれを待ち構えていたと言わんばかりに、三人の人影がまず飛び出てくる

その人影は一気に走り、バランスを崩したその巨体に向かって三者三様に一撃を叩きこむ

 

クウガは赤の力を込めた拳撃でゴーレムエリスのバランスを崩すように放ち、キバはその身軽さを最大限に活用して、跳躍し頭を地面に叩きつけるように蹴撃、そしてマスクドカブトはクナイガンアックスでの斬撃

立て続けに攻撃を加えたが、それらは転倒させる為でもあったがもう一つ、あの女―――シェリーの気を一瞬であるが引くためだ

そして案の定、その三人に気を取られたシェリーは一直線に接近してくる一人の少年に気づくのが遅れる

その少年は―――上条当麻だ

 

「! しまっ―――」

「寝てろ! このヤロウっ!」

 

一切の加減なく放たれたその拳はシェリーをぶん殴る

その細い体は、まるで風にふわりと流れる紙みたいに地面を転がった

 

 

警備員(アンチスキル)の銃声が再開された

幸いにも妙にバランスを保ったゴーレムエリスを盾にしてひとまず安堵の息を吐く

我々は操っている根源をぶん殴ったが、警備員(アンチスキル)からはまだそのゴーレムは健在なのだ

 

「…ひとまずは一件落着…か」

 

変身を解除しつつ、アラタは一息をして何となく呟いてみる

 

「そのよう…だといいのだが」

 

その声に変身を解除しつつもどこか周囲を警戒している天道が答えた

 

「そうであることを願いたいね…、!? 当麻くん」

 

同じように周囲を見渡していたワタルが殴り飛ばしたシェリーを指差し身構えた

 

「―――ふっ、ふふ」

 

笑っている

倒れたまま、笑っているのだ

おまけにその手には、パステルが握られており、ビュン、と高速で何かを地面に書き殴った

 

「なっ! まさか、二体目…!?」

「いや、それは有り得ない。停止しているとはいえ、ここにある以上、二体目の生成は出来ないはずだ」

 

当麻の言葉に冷静に天道は答えていく

その言葉に反応するように

 

「えぇ、そうよ。そこのガキが言っているように、二体同時に作って操ることは出来ない。そんなことが出来るなら最初からやってるわ。無理やり二体目を作ろうものなら泥みてーに崩れちまうからな。…けどよぉ」

 

獰猛に彼女は言った

 

「それを利用すりゃ〝こんな事も出来んのさ〟」

 

その瞬間、シェリーが書いた字を中心としてその半径おおよそ二メートル前後、彼女が倒れている地面が崩れ落ちる

彼女はそのまま崩落に巻き込まれ、地面に呑まれるように闇の中へと消えていく

それと同時にこちらにあるゴーレムエリスが音を立て崩れていき、それに合わせて銃声もやむ

 

「…やられた」

 

頭を掻きながらアラタが呟いた

当麻もその穴に近寄り、その空洞を覗き込む

よく耳を澄ますとその穴からは何か空気の流れのようなものを感じた

 

「どうやら下には地下鉄が走っているみたいだな」

「…みたいだな」

 

アラタの言葉に同意しつつ、当麻は顎に手を乗せ考えた

あの女―――シェリー・クロムウェルは目標に対しての執着心が薄いと思うのだ

そこまで考えて―――ある言葉を思い出す

 

―――…おや、お前は確か…幻想殺し、か。おまけに古代の戦士まで一緒とは。うん? あのカザなんとかはいないのか。…いや、まぁいいんだよ誰だって。殺すのはあのガキでなくともさ―――

 

そう言えばアイツは最初からそこまで風斬に固執していなかったと思う

 

―――戦争を起こしたいんだよ。それの火種が欲しいの。だから…出来る限りの大勢の人間に私がイギリス清教の手下だと認識させなきゃな―――

 

アイツは恐らく目的があってここに来た

風斬氷華は恐らくその手段の一つでしかないのだろう

その風斬の代わりを誰が代用できるだろうか

 

そこまで考えて、当麻はハッとする

 

そうだ、一人、いた

当麻とアラタ、風斬はここにいる

唯一ここにいない、あのシスター

 

―――インデックスだ

 

 

地下の中をズゥン、と重い足音が響く

それはコンクリートや線路で作り上げた二体目のゴーレムエリスだ

シェリーはゴーレムエリスの腕に抱かれつつパステルでゴーレムを操っている

二体目を生成する前に目を放ち目標の居場所は掴んである

生成の都合上、邪魔となるので全ての目玉は潰したが

 

ぶん殴られた頬が痛む

本来彼女は長いスカートに隠しつつ、地面から数センチ足を浮かせ震動から逃れていたが、殴られた衝撃を受け流したのを最後にその術式は完全に崩壊してしまっていた

 

「…忌々しい」

 

周囲を見渡しながら彼女はそう口にする

あぁ、全部忌々しい

この視界に映る科学の何もかもが

 

シェリー・クロムウェルはこの都市が嫌いだった

比喩でなく、本心からこの都市全てを嫌っていた

 

「…エリス」

 

シェリーは呟く

 

本来エリスという名前はこのゴーレムにつけられた名前じゃなかった

 

それはもう二十年も前に亡くなった、超能力者の名前―――

 

 

薄暗い地下とは異なって地上は目がくらむほどの炎天下

 

その街中で二人はポツンと立っていた

恐らく今も黒子は閉じ込められた学生を運んでいることだろう

二人の間には会話はない

しかしそれは熱さを身体に受けているダルさからであり別に話をしていないわけじゃない

 

「あついね」

「そうねぇ…」

 

インデックスに同意する形で頷いた

その後で、聞くに聞けなかったことについて美琴は聞いてみることにする

 

「…ていうかすごい服ね? この暑さの中で長袖ってかなりしんどいと思うけど…。あ、ひょっとして日焼けに弱い肌…とか?」

「うーん。別に気にしたことはないかも。今となってはこの服も風通しがよくなったし」

「? …うわ、よく見たらこれ布地を安全ピンで留めてるだけじゃない。なんでこんなことになっちゃてるのよ」

「う。…それはちょっと、深く追求しないでくれると嬉しいかも」

 

そう言うとインデックスはちょっぴり苦い顔をする

美琴としては気にはなったが本人がそう言うので追及するのをそこでやめ、また別の話題を美琴は探した

 

「それにしても、遅いわね。アラタたち」

「うん。…どうしよう、アイツはなんだかひょうかを狙ってたみたいだし…本当、何にもないといいけど…」

 

彼女から聞こえた聞き慣れない単語に美琴は首をかしげた

思えばここに来た時も黒子に感謝の言葉を述べてはいたが、だいぶソワソワしていた気がする

 

「ところで、ひょうか…ていうのは一緒にいた女の子?」

「そうだよ。あ、でも今回はとうまが引っ張ってきたんじゃなく、先に私たちが会ったんだから」

「今回はって。…え? たちって」

「私のほかに…えっと、そう言えば名前聞いてなかったかも。とにかく私たちなのっ」

 

そう言って僅かに頬を膨らませる

その仕草は、どうしてかハムスターみたいなげっ歯類を連想してしまった

 

「そう言えば、貴女はその…上条さん、だっけ。その人の心配してないの?」

「とうまの事? とうまなら心配ないよ。とうまは何があっても必ず帰ってきてくれるもん」

 

帰ってきてくれる

その言葉に少しだけ彼女に嫉妬した

誰の下に帰ってくる、などわかりきっている

 

彼らにとっては、それが共通の認識になっているのだ

 

「みことだって」

「え?」

「みことだってそうでしょ? あらたの事」

 

そう言われ、僅かながら頬が紅潮するのを感じた

もちろん、心配していないと聞かれたら嘘になる

そして同時に、心のどこかで帰ってきてくれるとなんとなく信じていることも

ただそれをはっきり言葉に出来ないだけで

 

「…アンタがうらやましいわ」

「ふぇ?」

 

唐突にぽむ、と頭に手を置かれインデックスは疑問符を浮かべた

 

彼女のような純真さがあれば、もっと素直に自分も日頃の感謝を伝えられただろうに

と、その時だった

 

みぎゃあ、なんて声をあげながら三毛猫がインデックスの腕から抜け出したのだ

 

「あ!?」

 

思わずインデックスが叫ぶがもう遅い

すでに地面へと着地した三毛猫(スフィンクス)は猛烈な勢いで走り去ってしまう

思わず猫を追いかけようとして―――その足が止まる

彼女はおろおろと美琴と猫の走り去った方向を交互に見た

そんなインデックスに美琴は小さく微笑みを作りながら

 

「いいよ。ここには私が残ってるからさっさと猫つかまえてきなさい」

「あ、ありがとう、みこと。…こらー! スフィンクスーっ!」

 

インデックスは頭を下げて礼を言うと逃げ込んだ猫を追いかけるべく走り出した

スフィンクスて、と思わずそのネーミングに苦笑いしていたがふと、足元のマンホールのふたがカタカタと揺れていることに気が付いた

 

「…?」

 

疑問に思った直後、今度は自動販売機の取り出し口が小刻みに揺れ始める

木々の葉が、風もないのに揺れる

 

「…地震…じゃあないわよね?」

 

その様はどこかで怪獣だか巨人だかが歩いているような、そんな妙な震動だ

もしかしたらあの猫は、本能で逃げたのかもしれない

 

「…いや、けどまっさか―――」

 

そう考えて、黒子を襲ったあの妙ちくりんな手を思い出す

ふと、インデックスが走り去った方向を見る

すでにその姿はコンビニの裏手に消えており、彼女の様子から察すると猫と追いかけっこになっているかもしれない

 

けど、何かあってからでは遅いのだ

 

「それに―――任されたしね」

 

良し、と軽く拳を握るとインデックスが走り去った方向に向かって彼女も走り出した

大丈夫だよね…、と己に言い聞かせながら


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