全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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明けましておめでとうございます(もう二月

こっちではどちゃくそお久しぶりです
申し訳ねぇ、シンフォギアばっか書いてたんだ…クオリティ糞だけどよかったらよろしくなのだな

今回も相変わらずなアレな感じですけれども、お付き合いいただければ幸いなのデス
ではでは

…次回はちょっと短くなるかも



#30 能力追跡(AIMストーカー)

布束砥信は周囲の目を警戒しながら地下へのハシゴを下っていた

ペンライトを口に咥えて足を踏み外さないよう注意しながら下へ降りていく

 

(急な引き継ぎと襲撃者で内部の警戒が疎かになっている…実行するなら、今しかない)

 

地面に降り立った布束は咥えていたペンライトを手に持ち直し、いつかの事を思い出していた

触れ合ったあの時間は僅かなものだが、確かに彼女たちは世界というものを感じていた

だから、もしかしたら

これから行うことは、無意味なのかもしれない

だけどそれでも、試す価値はあるはずだ

 

 

その場には、四人の人物

御坂美琴と、その目の前にフレンダ…そして彼女を助けに来た仲間が二人

大柄な女性と、小柄な女性

年齢は小柄な方が美琴と同じくらいで、大柄な方が少し年上のような印象を受ける

 

「あんまり静かだったからやられちゃったと思ったケド…危機一髪、みたいね」

 

麦野! と内心フレンダは名前を呼び、表情は笑みを作らせる

言葉に出さないのは単純に相手の電気が身体に残っててしゃべれないからだ

 

「全く。…アタシらが来るまでは足止めに徹しろって言ったのに。深追いして返り討ちにあって捕まっちゃうなんて。ボーナスに目が眩みすぎよ」

 

麦野はそうフレンダに言いながら地面に落ちてたフレンダの帽子を拾いながらぱふ、とフレンダに被せなおす

そんなフレンダに小柄な女性―――滝壺が歩み寄り

 

「大丈夫。私はそんなフレンダをおうえんしてる」

(…そんなって)

 

とてもリアクションに困った

そして喋れないのでツッコミもできなかった

 

「―――で、アンタが噂のインベーダーで」

 

麦野の言葉は最後まで続かなかった

美琴が磁力で引っペがした筒状のパーツをブン投げたからだ

しかし麦野は手馴れた手つきでブン投げられたソレを軽々と受け止め、それを〝崩していく〟

 

「―――合ってるわね」

 

彼女の視線は美琴を見据えている

同じように、美琴も先ほどの光景を見て驚いていた

防がれた…いや違う、〝消し飛ばされた〟?

思考する最中、目の前から殺気を感じる

 

「―――はははっ」

 

そう短く笑い声がしたと思うと、彼女の手からプラズマのようなエネルギーが迸り、漫画やアニメとかでよくあるようなビームみたいなものが飛んできた

あれに当たればどうなるかなど容易に想像できる

美琴はそれを回避しつつ、磁力を用いて適当な柱へと自分の身を動かした

そして適当に近くにあった通気口の蓋を磁力で引っペがし相手の方へとすっとばす

その光景を見た麦野は「へぇ…?」と関心した様子で自分の前に円形のエネルギーを形成し、容易く美琴がすっとばしたそれらを防いでみせる

 

「…ちっ」

「器用な真似するのね。壁に張り付いて逃げるなんて。―――蜘蛛みたいな女ね」

「―――コイツ…!」

 

柱にしがみつきながら美琴は歯を食いしばった

数的に状況はこちらが圧倒的に不利、オマケにあのレーザー女は少なくとも大能力者(レベル4)以上の力を持っている

ここからどうやって動こうか、と美琴が考えているとき、麦野は滝壺へと視線を向けた

 

「滝壺、使っときなさい」

 

そう言ってポケットから取り出したタブレットケースのようなものを滝壺へと投げ渡す

彼女は自分に向けて飛んでくるそれを両手で受け取りながらこくり、と頷いた

 

◇◇◇

 

「…わかりました。ではこっちでも探してみます。妙なことしてたら捕まえますんで」

「お願いします。では私はこれで」

 

用意された部屋で最愛と二人くつろぎながら待機していたら研究員が一人唐突に訪ねてきた

対応は鏑木がして、最愛はソファに座りながら待っていた彼女はソファに膝立ちしつつ鏑木へと視線を向けて

 

「どうしたのです? 予定変更の超報告ですか」

「いいや。何でも呼んでた研究者の人がどっか行ったらしくてさ。捜索を頼まれたんだ。何事もなければそれでいいし。なんかあったら僕らで引っ捕えればそれで済むし」

「なるほど。なら超ちょうどいいですね、このまま待機は、正直超退屈してたところです」

「うん。じゃあ行こうか」

「超了解です。私と遼馬なら超楽勝ですよ」

 

そう言って彼女はふふん、と微笑んでみせる

鏑木はそんな彼女の頭を一つ撫でながら、彼女と共にその部屋を後にした

 

◇◇◇

 

放たれる雷撃

真っ直ぐ跳んだその雷の一撃を目の前の女は容易く防御する

遠目から見て美琴は考える

 

(躱した…いや違う、〝曲げてる〟!?)

 

思案する美琴などお構いなしに、麦野は目の前に三つの野球ボール大のエネルギーの球体を作り、そこから更に細いレーザー状のものを連射していく

当然美琴は磁力を用いてそれらを回避するが、相手の破壊力は想像以上だ

そんな戦いを物陰から隠れてみていたフレンダは心の中で

 

(うっひゃぁ…相変わらず派手だなぁ…)

 

と、のんきにそんな感想を漏らしていた

そんなフレンダを尻目に、滝壺は麦野から投げ渡されたタブレットケースから三つほどタブレットを取り出し、それらを口に放り投げ、一気に噛み砕く

 

「―――っ!!」

 

ドクンッ! と自分の体が脈動する

感覚が研ぎ澄まされ、視界がクリアとなる

 

 

麦野の攻撃を器用に壁に張り付いて回避していたとき、煙の中で御坂美琴はソレを見た

 

「―――!?」

 

目があった

全くの迷いなく、こちらを見据えるあの女の眼光

ヤバイ

何がどうやばいかは全く説明できないが―――あの女からは距離を取らないといけない

そんな指示が頭の中で飛び交い、美琴は一度この場からの逃走を選択した

辺りを見渡し、何か目くらましに使えそうなものを探す

すると視線の先に、先ほどの人形女―――フレンダが使っていた窒素ガスのパイプが見えた

―――イチかバチか

 

美琴はそのガスのパイプに電撃を叩き込み、足跡の煙幕として使うことにした

煙が充満しているそのパイプは雷によって破壊され、ぷしゅーっとそこから窒素ガスが漏れ出す

 

「ははっ! 目くらましのつもり!? こんなことしたって…うん?」

 

麦野が目を凝らすとそこにはここに入ってくるのに原子崩し(メルトダウナー)で破壊して空けた大穴が見えた

そしてこの場にあの女の気配はない

ということは、逃げられたのだろう

麦野はちっと舌を打って

 

「…逃げたか。―――滝壺」

「大丈夫。目標のAIM拡散力場は覚えた」

 

麦野に振られ、滝壺はそう答える

滝壺の大きく見開いたその瞳は、どこかを見据えて、しっかりと捉えていた

 

 

あんな奴ら三人も相手にしてられない

そう結論づけた美琴は最初の目標でもある施設の破壊を優先することにした

マップの構造は頭にたたき込めていないが、落ち着いたら確認すればそれでいい

適当に迂回するなどしてランダムに走りまわし、向こうからの追跡を回避しようと全力で地面を蹴る

が、その時

 

ガクン、と一瞬身体に力が入らなくなった

 

(やば…能力使いすぎて―――っ!)

 

とりあえず転がるぐらいはできるか…? 

こんなとこで足なんて止められないと、そう思ったときだ

ひょい、と誰かに抱き止められた

 

「―――え?」

「…たった一人でよく頑張る」

 

自分を抱きとめてくれたのは、見たこともない仮面ライダーだった

黄色い複眼に左右が長い三本のツノ、そして極めつけは真っ黒いマントみたいなものだった

なんだ、この人は

っていうか、アイツら以外にも侵入していた奴がいたのか?

 

「俺の名前は大桐克実。―――仮面ライダーエターナル。…匿名の依頼で、お前の援護に来た」

「え、援護…? ってか、仮面ライダー…!?」

「あぁ。最も、必要などなさそうだったから、インビジブルで姿を消して静観していたが…流石にまずそうだったのでな。手を出させてもらった」

 

言いながら白いライダーは美琴を抱き抱えるとその場を走り出す

直後、壁やら何やらを貫通して、さっき戦っていた女のレーザーが先ほどまでいた場所を貫いた

その光景に、美琴はギョッとする

 

「なんで…!? ランダムに動いてたのに…!」

「敵については調べてないが、当てずっぽうにしては精度が良すぎるな。―――まだ来るぞ」

 

刹那こちらを狙ってくるビームの閃光

エターナルはその場から走り出し相手の猛攻を躱していく

美琴を抱き抱えたままで

 

「―――って! 下ろしなさいよ!」

「やかましい、今は抱えられてろ。少しでもいいから休んでおけ」

 

有無を言わさぬ迫力で言われ、美琴はぐぬぬ、と表情を歪める

しかし消耗しているのは確かなので、ここは素直に担がれることにした

 

 

「…避けられた。目標はまだ生きている」

「天井に移動されたか。立体的に動き回られるのは面倒ね」

 

淡々と会話をこなす二人を見て、フレンダは相変わらずすごいものだと内心思う

麦野沈利―――学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)の第四位、原子崩し(メルトダウナー)

滝壺理后―――相手が地球の裏側だろうがどこにいても追跡する能力―――能力追跡(AIMストーカー)

何しろこの二人は我らがアイテムが誇る超能力者(レベル5)大能力者(レベル4)の最強タッグだ

たとえどんな能力者であっても、この二人からは―――

 

にえることはふはのうってはけよ(逃げることは不可能って訳よ)! …あ、しぇえれた(喋れた)

 

すぐ後ろであ、あーなんて言いながら声の調子を確かめるフレンダをバックに、麦野は口元に笑みを作る

相手が誰だか知らないが、あとは追い込んでいくだけだ

 

◇◇◇

 

一方で布束砥信

彼女は地下深くのコンピュータルームにて、キーボードを操作していた

周りに誰かいないか最新の注意を常に払い、慎重にキーボードを叩いていく

 

(…御坂美琴の施設襲撃が完遂したとしても、実験が終わることはないだろう。絶対能力者(レベル6)というの闇は、余りにも暗くて、深いものだ)

 

ちらりと布束は視線を向ける

その視線の先には、カプセルベッドのようなもに寝かされた、シスターズの一体がいた

 

(…今までの研究で得られたこの感情データを、妹達(シスターズ)にインプットする。無論、この程度本当の感情が芽生えるとは思えないが…擬似的な反応くらいは得られるはずだ。計画を中止にできるかはともかく、絶望的な運命以外の道があるということを示すくらいはできるはずだ)

 

そう、例えば

死を当然のことと認識し、その運命を嘆く妹達(シスターズ)が出てくるかも知れない

その光景に、モルモット以上の価値を感じ取れる心ある研究者が現れてくれるかも知れない

これ以上戦いたくないという声が、誰かの心を動かすかも知れない

 

インストール準備中、という表示が出た画面を睨みながら布束は考えた

馬鹿げているとは思う

この行いにも意味はきっとないのかもしれない

だけど―――それでも―――

 

 

 

ドンっ!! と不意に顔面を押さえつけられ、叩きつけられる

左手を拘束されながら、そして身体を叩きつけられた衝撃で肺から息を吐き出しながら、布束は視線で自分を抑えている相手を見ようと試みた

 

 

 

「…関係者である可能性を考慮して、上に確認を取りましたが、データ類の移送が終わるまで、ここに入るのは超禁止とのことでした」

 

言いながらソイツはぎりり、と締め付ける力を強くする

声から察するに、女…それもまだ少女と呼べる年代の

 

「襲撃者は単独犯との推測だが、一方の襲撃が超陽動との可能性を捨てるべきではない。故に防衛組は、もう一つの施設襲撃を受けても、対処は遊撃隊にまかせて、自陣を堅守すること。…麦野の読みは、当たってたみたいですね」

 

言いながら頭を押さえつけていた手を外し、彼女はフードをとっぱらう

フードの下から見えたのは、まだ幼さを残した少女の姿だった

そして第三者の声も、耳に入ってくる

 

「最愛、見つけ―――た、みたいだね」

「えぇ、見つけました遼馬」

 

少なくとも、相手は二人

〝アレ〟使う気なんかはなかったが―――やむを得ない時も来るかもしれない

ひとまず今は状況を様子見しなくては―――

 

◇◇◇

 

美琴を抱えたままエターナルは床を蹴る

その間も絶え間なくビームのようなものはこちら―――正確には美琴を狙ってだが―――を的確に射抜くようにレーザーが飛んでくる

抱えられながらそのレーザーを見ていた美琴はやはりおかしいと感じる

そして視線の先に見える人形―――

 

「待って!」

「!」

 

美琴の声にエターナルは思わず足を止める

直後エターナルもその人形を視認した刹那―――人形に閃光が走り爆発が巻き起こる

すかさずエターナルは身体のマントを翻し美琴と自分を庇うようにそのマントを盾にした

爆風を防ぎきり、体力がそこそこ戻った美琴はエターナルから降り、呼吸を整える

 

「…用意周到だな。恐らくこの施設中にセットされてると見ていいだろう」

「えぇ。そして私の位置が向こうにバレてるってことは、敵の中に間違いなく透視能力(クレアボイアンス)読心能力(サイコメトラー)…あるいはそれに準じた能力を持ってるってことがわかったわ」

「…ふむ。状況は不利だが、どうする? 潔く諦めるか?」

「―――はっ! 誰が!!」

 

美琴はそう言い切って敵が空けた穴目掛けて走って行き、そのまま飛び降りた

 

「…面白い」

 

エターナルもそう呟いて美琴の後を追いかけ、同じように飛び降りる

 

◇◇◇

 

「無駄な抵抗はしないほうが、超身の為ですよ」

 

ギリリ、と左腕が締め上げられ、声が漏れる

現状この部屋にいるのは自分と、自分を締め上げる少女と、その少女のパートナーとも言える男性

ほかの人が入ってくる気配はない―――あるいは入口付近で見張っているのか

悠には待っててとしか言っていない…故に来てくれる望みは薄い

幸いにも右手は拘束されていない

そして右手はキーボードの近くにある…やるしかない

 

「…無駄な抵抗、ね。That's true…そうかもしれない」

 

言いながら己の身体で右手を隠し、キーボードを操作する

怪訝な顔をする少女を無視し、操作をしながら布束は思う

 

そうだ、たとえ実験が中止になったとしても、それでどうなるというのだろう

クローンが日常を過ごせるというのだろうか

心無い人間の目…そして、短命な寿命など…問題は、否、問題しかないのだ

 

現状より過酷かもしれない運命を背負わせるくらいなら―――いっそこのまま

 

―――だけど、御坂美琴(あの子)は全部一人で背負い込もうとしている

 

「―――全く、バカな子」

 

不意に呟いたその言葉の意味が分からず、絹旗は首を傾げているとピ、ピ、という何かを操作する音が耳に聞こえてきた

絹旗はハッとした様子で彼女の身体を動かすと、そこには拘束されていない右手でキーボードを操作する姿があった

 

(そう、これは本当なら私たちが背負わなければならない罪…妹達(あの子達)に、運命を切り開くチャンスを―――!)

 

何かをしていると判断した絹旗は突き刺さっているメモリに向かって拳に窒素装甲を纏わせて殴りつけて機材ごと破壊する

その拍子に拘束から布束が脱出した

勢いのままで地面に倒れる布束を見ながら遼馬が問う

 

「…何をした」

「無駄よ、もうインストールは完了したわ…!」

 

遼馬の問いに布束は小さく笑んだことで応える

ギリギリだったが成功した…!

妹達はミサカネットワークと呼ばれる脳波リンクで繋がっている

インストールされた感情プログラムは全ての妹達に共有される…だから、止めることは―――

 

しかし、帰ってきたのはビーッ!! というけたたましい警告音だった

 

画面から帰ってきたのは警告を促すワーニングの文字が幾度も表示されている

誰がどう見ても、インストールは失敗したことは明らかだった

 

「―――な、なんで!? どうして!!」

「よくわかんないけど、目論見は失敗みたいだね」

 

いつの間にこんなセキュリティを仕掛けていたんだろう

事前に調べていた時には、こんなセキュリティなんて欠片もなかったはずなのに!

布束が悔しさで歯を噛んでいたその時だ

入口のところから声が聞こえてきた

 

「…あ、なんだお前―――あぎょ!??」

「わ、わぁぁぁ!? なんだおまぶしょらぁ!!?」

 

声と共に血飛沫が舞う

返り血を身に受けてこの部屋に入ってくるのは、悠だった

彼は両手に誰かの腕を持っている

布束は思わず叫んだ

 

「悠!」

「…もうひとりいたのは、超計算外でしたね」

「見張りの人たちはどうした。…赤の他人に違いないが、殺されたのなら寝覚めが悪い」

「殺してないよ。適当に腕と足切り落としたけど、それだけ。どっちにしろ興味ないし―――」

 

悠は手に持っていた腕を遼馬へと放り投げた

思わず遼馬はその場から飛びのき、絹旗の隣へと移動した

距離を取った布束は倒れた姿勢のまま地面を蹴り、前転して悠の隣に移動しつつ態勢を整えると、白衣を脱ぎ捨てる

布束は左腕の上腕部に装着されてある、鳥の頭のようなものに手を添えた

その隣で、悠は腰に巻きつけていたドライバーに手をかける

 

「―――本当なら、使うつもりなかったのだけど。もう容赦できないわ。…捕まる訳にはいかないの」

 

「…何をするつもりです?」

「わかんないけど、ヤバそうなのは分かる…最愛、俺の後ろに!」

 

纏う空気がやばすぎる

男の方も容易く腕や足を切り取るような化物だ

遼馬は事前に用意していたガタックゼクターを構えながら様子を見る

布束はクチバシに当たる部分を押し込み、悠もドライバーの左のハンドル部分を動かし

 

<―――OMEGA>

 

目の前の二人は叫んだ

 

『―――っアマゾンッ!!』

 

瞬間、巻き起こる衝撃

周囲に緑色の炎が吹き荒れる

衝撃が止んだその時、二人が立っていた場所に、一人の化物と一人の仮面ライダーがいた

 

<evolu e evolution…!>

 

一人は布束砥信―――カラスのアマゾン

一人は、悠―――アマゾンオメガ

 

「…驚いた。まさか人間やめてたなんてね! ―――変身!」

 

手に持っていたゼクターを腰のベルトにセットする

そしてそのままゼクターの角を開き、マスクドの過程を省略した

 

<HENSHIN><Change Stag Beetle>

 

遼馬の身体を青い装甲が纏い、その複眼が赤く発光する

ガタックは両肩のカリバーを構えながら、隣の絹旗に

 

「最愛、危なくなったら迷わず逃げて」

「…超約束できませんね。超全力で援護するに決まってんでしょう」

「…どうなっても知んないよ」

「遼馬が隣にいるのなら、私は超頑張れるんです…!」

 

お互いにそう言い合って、二人は同時に駆け出した

 

「beautiful。…綺麗な愛ね。…けど今の私には何の関係もなぁい!!」

「砥信は、ぼくが守るんだァァァっ!!」

 

そして相対する黒い化物と、緑のアマゾンも同じように走り出した

 

◇◇◇

 

「目標、二十メートル北西に移動」

「…中々当たらないわね」

 

麦野沈利は腕をクルクルと回し調子を確かめながら顎に手を添える

―――立体に動ける、というだけではない

こちらの攻撃を事前に察知しているのか、あるいは

 

「大丈夫?」

「…うん、大丈夫」

 

フレンダと滝壺の声に視線をそちらに向ける

そっちには少し疲れの色が見えた滝壺があり、彼女は麦野の視線に気づくと心配をさせまいと手を振って笑顔で答える

滝壺理后の能力追跡(AIMストーカー)は便利ではあるが、能力を意図的に暴走させることで発動する無理筋な能力

故に使用には限度がある

 

(相手の移動距離は少しづつだが狭まっている。追い詰めてるのは間違いないわ。…これ以上滝壺に無理はさせらんないか。これだけやられても逃げない、ということはなんとしてもここを破壊しないとならない事情があるということ。…ならいっそ目的地で待ち構えていれば…相手は必ずそこを通る。相手は満身創痍で冷静さを欠いている…落ち着いて対処すれば負けはない…が)

 

…そんなもの、麦野沈利の性に合わない

 

「フレンダ、出番よ」

「! おうともさー!」

 

 

「…よくやるな。あんまり体力戻っていないんだろう」

「…うっさいわね。…やんなきゃ、なんないのよ、私は…!」

 

多少戻った、とは思ったがそれも直ぐに尽きて、今も美琴は壁に手をつけながらゆっくりと歩いている

エターナルはそれを少し後ろで見守りながらついてきている

ふとエターナルは地面を見た

いや、地面だけではない

この通路の至るところに白線のような線が張り巡らされている

刹那―――後ろの方で炎が走る音が聞こえた

 

「…来るぞ」

「え!? ったくもうしつこいっ!―――うわぁ!?」

 

驚く美琴を尻目にエターナルは美琴を抱えて走り出す

後ろから時折爆発音が聞こえ、こちらに迫ってきている

本当にあらゆる所にこういったトラップが設置されているのか

迫ってくる爆風を避けるべく、跳躍する―――が、思いのほか爆風は強くエターナルはその衝撃で美琴を離してしまった

 

「わわっ!?」

「しまったっ!?」

 

あのレーザーはこちらの存在にはまだ気づいていないが、御坂美琴を的確に狙っているように感じた

当然美琴が中空に投げ出されたことも察しているはずだ

しかし美琴もただでは終わらなかった

中空にいる自分に放たれたレーザーを自身の雷で防ぎつつ曲げるという芸当を披露したのだ

それには素直にエターナルもおぉ、と感嘆の声を漏らす

地面に着地した美琴に駆け寄ってエターナルは声をかけた

 

「無事か。それと、流石だな超能力者」

「無事か、じゃないわよ! しっかり掴んでなさいよね!」

「悪い悪い。…どうした」

 

自分に突っ込んだあと、美琴はレーザーが飛んできた方向を見る

そこには大きな穴があいており、今も焼け焦げたような匂いが漂っていた

 

「…いえ、受け止めてはっきりしたんだけど、恐らくあのレーザー女…根っこの能力は私と同じものだって…」

 

◇◇◇

 

「!」

 

麦野沈利は驚愕に表情を染める

原子崩しを受け止めた?

彼女の原子崩し(メルトダウナー)は本来『粒子』又は『波形』のどちらかの性質を状況に応じて示す電子を、その二つの中間である『曖昧なまま』の状態に固定し、強制的に操ることができる能力だ

操った電子を白く輝く光線として放出し、絶大なる破壊を撒き散らす…わかりやすく言うならば、そして雑に表現するのなら、全身からビームが撃てる能力である

そんな自身の能力を曲げる、などという芸当ができるのは、かなり限られている

 

「? どうしたの? 麦野」

 

フレンダからの言葉を聞きつつ、麦野は一人思考に沈む

そして麦野は一つの結論にたどり着いた

―――そっか、なるほどねぇ

 

と、その時ガクリと誰かが膝から倒れる音がした

誰か、などはわかりきっている…滝壺だ

 

「滝壺!―――にゃ!?」

 

膝をついて肩で息をする滝壺にフレンダが駆け寄ろうとしたとき、彼女の身体にビリっとくる感覚があった

雷が抜けたと思ったらまだフレンダの身体の中に戻っていたのだ

 

「フレンダ、滝壺を連れて、絹旗たちと合流しなさい」

「待って麦野…私、まだやれる…」

「滝壺のためだけじゃないわ。フレンダもさっきの蜘蛛女との戦いでダメージが残ってるみたいだしね。無理してるけど動き悪いもの。滝壺に限界がきたら、敵の攻撃を察知できない。…私一人じゃ、二人を守りながら戦うのは難しいもの…」

 

その言葉をぶつけると、フレンダと滝壺は苦い顔をする

フレンダは俯きながら非常に申し訳なさそうに

 

「…ごめんなさい…足引っ張っちゃって…ひゃうっ!?」

 

言葉の途中でフレンダの頭に麦野の手が乗っけられ、帽子越しに撫で回された

撫でられながら、麦野の優しい声色が聞こえてくる

 

「何言ってんの。むしろよくやってくれたわ。…あの蜘蛛女はふたりのおかげでもう虫の息みたいだし。後詰めは絹旗たちに任せて、休んでいなさい」

 

そう二人に言うと麦野はこの場を後にする

てくてくと歩いていく麦野の背中を見ながらフレンダと滝壺は彼女に聞こえない声量で呟いた

 

「…麦野…」

「うん。…なんか優しかった…」

 

 

暗い通路を歩きながら、麦野は一人口元を歪に歪ませる

 

「…まぁ、数で勝ちを拾った、とか言われた癪だしねぇ…」

 

言いながら彼女は手のひらに己の力を迸らせる

自身の力を曲げれるなどという芸当ができる能力者など…考えられる限り一人しかいない

 

「ちったぁ楽しませろよ? ―――常盤台の―――超電磁砲(レールガン)…!」

 

だが、麦野沈利はまだ知らない

その彼女の隣にいる―――もうひとりの存在を




大桐克実

とある暗部組織所属の男性
あとは部下として四人引き連れている
ドライバーとメモリはここ以前に依頼され襲撃した研究所で入手(強奪)

カラスアマゾン
自作品での布束砥信のアマゾン体
大体原作と一緒


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