全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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ペルソナ5してました(土下座

要所の修正のみ
とりあえず一旦ここまで


#21 笑顔 後編

一方、こちらは本当のトレーラーを追う木山一向

高速で走る彼女の車に、ゴウラムに乗っているクウガと美琴も追いついて並走している

その社内で初春がキーボードを操作しつつ、彼女をナビゲートしている

 

「先ほどの部隊が出発した少しあと、民間を装った輸送車を二台本部から出ていったのを衛星の映像で確認しました! 恐らくこちらが本命だと思います!」

「なるほど…! 私はまんまと騙されたという事か…!」

 

ギリ、と木山は食いしばる

急くあまり、周りの事が見えていなかったみたいだ

 

「急ぎましょう! そいつら、もう到着してるみたいなんです!」

 

佐天の言葉に木山はアクセルをさらに踏み込んだ

 

「場所は!?」

「二十三学区! そこにある、今は使用されていない推進システム研究所! この先を左です!!」

 

木山は初春の指示通り車を走らせる

 

・・

 

その様子をテレスティーナはモニターで監視していた

そしてほぉ…と僅かながら称賛する

 

「やるじゃねぇか。…ウゼェガキしかいねぇと思ってたがちったぁ頭の回るガキもいんじゃんよ…」

 

くひひ、と彼女は笑った

そしてテレスティーナは操作レバーを動かし、起動させる

 

「まぁそれくらいの方が…殺し甲斐がねぇもんなぁ…!!」

 

・・

 

<クウガ、下>

「っ! 美琴、掴まってろ!」

「え? ちょぉ!?」

 

美琴に彼女が慌てて自分を掴む手に力が籠められるのを確認すると、クウガはゴウラムの速度を僅かに上げる

第六感が危機を伝えたのか、ただ勘が働いたのか

いずれにせよ、今回はそれが功を成した

 

先ほどまでゴウラムが飛んでいたところをぶん殴るかのように地面からなんか手みたいなものが突き出てきたのだ

 

やがてそれは全身の姿を現す

それはずんぐりむっくりした黄色いロボットのような駆動鎧だった

そのロボットは足付近にタイヤを展開すると、走るように着地すると、車を潰そうとするべく滑走する

 

「くっそ、あの女…! 何でもアリか!」

「みたいねぇ!」

 

どうにかそのロボットを振り切り、クウガは木山の車の付近を再び飛行する

 

「な、なに、今の…!」

 

先ほどの揺れが応えたのか、佐天が譫言のように呟いた

 

<ほぉらほぉらぁっ! 急がないと潰しちまうぞぉぉぉ!?>

 

「…この、声!」

「あの女か…!」

 

悔しさを噛みしめるように初春と木山が呟く

ふと、窓の外を見るといつの間にかゴウラムに乗ったクウガと美琴が木山の車と同じ高度を飛んでいた

それに気づいた佐天が窓を開け、声の通りを良くする

 

「おい、もっと速度でないのか!」

「言われずともやっている!」

 

すでに限界寸前だ

これ以上は流石に無理だと分かってはいるのだが、へんに躊躇してはあのロボットもどきに破壊されてしまう

そうヤキモキしながら運転している木山の耳に

 

「ごめん…!」

 

美琴の謝罪の言葉が届いた

何事か、と思い木山は彼女の言葉に耳を澄ませる

 

「間違ってた。…私」

 

流れる沈黙

重い空気の中、口を開いたのは木山春生だった

 

「立場が違えば…私も同じことをしていたさ」

「っ!」

 

その言葉で、御坂美琴のわだかまりが取れた気がした

一瞬驚いた表情を浮かべたあと、彼女はテレスティーナが駆るそのロボットを睨みつける

それに応えるようにクウガはゴウラムを動かし、そのロボットを相対するように

 

「その埋め合わせは―――」

 

彼女は―――御坂美琴はその身体に雷を迸らせる

そして放つ

雷の一撃を―――

 

「ここでするからっ!!」

 

放たれた雷は確かにロボットを捉えた

しかし喰らう直前肩からシールドのようなものが展開し雷を弾いていく

 

「弾かれた…!?」

「マジか…!」

 

それならば、と美琴はポケットからゲームセンターのメダルを取り出した

超電磁砲を放つ気だ

しかし放つ直前、不意にロボットの速度が落ちた

 

「!」

 

美琴はそれに気づきはしたがそれはもう放った後の事だった

彼女の手から放たれた雷を帯びたメダルはロボットに到着する前に溶けてしまったのだ

 

<知ってんだよ! テメェのチンケなそいつの射程はたったの五十メートルしかないってことも含めて!! お前の能力は全部書庫(バンク)に入ってんだからなぁっ!!>

 

そう叫びながらロボットは右手を突き出した

直後―――その手が発射された

ロケットパンチ…ではなかったが似たようなものだ

思わず美琴は身構える―――が

 

「おわっ!」

 

ゴウラムが大きく左に動いたことでその右手から何とか逃れる

幸いにも車には被害が及ばなかったのが不幸中の幸いだ

 

「と、とと…! 何すんのよ!?」

「お前は戦いに集中しろ! 心配はすんな!」

 

思わずクウガに言ったがそう言われ改めて表情を引き締める

 

・・

 

「次も左です!」

「わかった…!」

 

初春の指示を貰い、車は車線を左に持っていく

外の様子が気になるが、今は走る事を考えなくてはいけない

そう思ったとき、通信機が作動した

 

・・

 

「ち、外しちまった」

 

あのアームパンチは使い切りだ

しかしもう一発ある、それで殺せば問題ない

それにアイツらが曲がったその先には部隊が先読みしているはずだ

 

「おい、そっちいったぞ。ツブせ」

 

しかし返ってきたのは了承の応えではなかった

 

<こ、こちらレッドマーブル…! 現在警備―――>

<ライダーパンチ!!>

 

その言葉の後、断末魔が聞こえてきた

何が起こっていやがる―――

 

・・

 

「聞こえるか! ここから先は警備員が押さえる! お前らは行け!」

 

道路に立ってテレスティーナの部隊を足止めしていたのは矢車の変身するキックホッパー率いる部隊だった

現在目の前にてパンチホッパーが駆け回り、近辺で鉄装、黄泉川、そしてG3は銃撃している

 

「ここから先は、通さないんだからー!」

「おお! 絶対に死守するじゃん!」

 

<…なぜ、警備員は協力を―――>

「理屈なんていりますか!」

 

木山の声を遮ったのはG3こと立花眞人だ

 

「僕たちが何で協力してるかなんて今はどうでもいいんです! 早く子供たちの所に行ってあげて下さいっ!」

 

珍しく立花が叫んでいる

彼にもこんな一面があったのか、と皆ちょっと驚いている

 

・・

 

「やってくれたんだ…!」

 

佐天がそう喜びの声を上げる

そうだ、今はそんな些細なことなどどうでもいい

紛れもないチャンスを…逃すわけにはいかないんだ

 

<ち! …だったら自分(てめぇ)でやってやらぁ!!>

 

左側のシールド部分を腕へと換装させ、ロボットは速度を上げていく

 

「木山ぁ! 気をつけろ!」

「君もな!」

「あぁ! 掴まってろ美琴!」

「えぇ、分かったわ!」

 

クウガとそんなやり取りを交わしたのち、殴り掛かっていくロボットの足を車はすり抜けて回避し、ゴウラムはそのロボットの上空を飛んで彼女の車付近をまた加速する

 

<チョロチョロアリみてぇに…! さっさと諦めろやゴミがぁっ!! いくらお前らが頑張ったって、助けられるわけねぇんだからよぉっ!!>

 

「うっせぇ! そんな事、お前が決めることじゃないだろうが!」

 

クウガはゴウラムの上で怒鳴り返す

しかしテレスティーナははん、と鼻で笑い

 

<決まってんだよ! …吠えんじぁねぇぞガキどもがぁ!!>

 

仮面の下でクウガは歯を食いしばる

そんな時だ

 

「それでも…!」

 

木山の声だ

 

「足掻くと決めたんだ!! …教師が…! 先生が生徒を諦めるなんて…出来るわけないだろうっ!!」

 

それは、あの悲劇から決めた彼女の決意

この世界すべてを敵に回しても、彼女は戦うと決めたんだ

その覚悟を、戦ったクウガと美琴は知っている

言葉に込められた思いを―――

 

「…ったり前じゃないっ!」

「あぁ! …必ず送って見せる!」

 

態勢を整えながら吠える

そうだ、自分たちは守るためにいる

会わせる為に、ここにいるんだ―――

 

<今更何が出来んだ! …とっとと死ねよやぁぁぁぁっ!!>

 

侮蔑するような声と共にテレスティーナのロボットからまたアームパンチが放たれた

そのアームパンチに、真っ向からクウガは挑む

ゴウラムを正面に向けてクウガは構えた

 

「はぁぁぁぁ…!!」

 

迸る雷の感覚

右足から伝わるその力を今度は拳に溜めていく

クウガはゴウラムの上で、ライジングマイティに姿を強化させ―――放たれた拳を殴り付ける

 

「おぉりゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バギンっ!! と拳が当たると同時、相手のパンチの勢いに負け、クウガはゴウラムから足を離してしまった

 

「グ、ぅぅぅ…!!」

 

高速で後ろへ飛ばされる中、クウガは踏ん張った

だが空中で姿勢を取るのは難しく、後一発拳が放てるかどうか―――

 

「負けんな!」

 

ふと美琴の声が耳に届く

ちらりと視線をやるとゴウラムに乗った美琴がそこにいたのだ

 

「私も―――手伝うから…!」

 

そう言って彼女はバッとクウガに向かって手を突き出した

彼女の掌から放たれた電撃はクウガに力を与えるようにその身体に纏わりつく

痛みなどはなく、むしろ力が湧く感覚を覚える

 

「あぁぁぁぁっ…!!」

 

クウガはその右手でもう一度、拳を繰り出した

 

「だぁぁぁぁっ!!」

 

繰り出されたその拳は相手のパンチを殴り砕く

ドガァッ!! と砕かれた手を尻目にテレスティーナはほくそ笑む

 

<だったらなんだ! 私に対抗する手段もねぇくせによぉっ!!>

 

その声を聞きつつ、クウガは着地し美琴も彼の隣に着地した

ゴウラムはクウガと美琴の周りを浮遊し始める

 

<使って>

「え!? で、でも…」

<大丈夫、私なら弾丸に最適。ちょっと痛いだろうけど我慢する>

 

ゴウラムが不意に美琴に向かってそんなことをつぶやいた

流石にどうしようかとも迷って、クウガにちらりと視線を送ってみる

すると彼はゆっくりと頷いてくれた

そしてその仮面の下は、なんとなく苦笑いも含んでいるような気もした

思わず美琴も小さく苦笑いをこぼし、決意する

 

「えぇ…! じゃ、使わせてもらうわ!!」

 

美琴は自分の周りに再び雷を迸らせる

彼女の周囲一体を雷が包み込み、ゴウラムが彼女の前へと移動して―――

 

「これが―――」

 

その雷をゴウラムに纏わせて

 

「私の―――!!」

 

殴るように撃ちだし―――

 

「全力だァァァッ!!」

 

彼女をサポートするようにゴウラムもさらに加速し、高速で回転する

名づけるなら―――〝ゴウラムカノン〟と言った所か

放たれたゴウラムカノンは真っ直ぐにロボットへと突っ込んでいく

流石に、あんなもんをぶっ放すとは思わなかったテレスティーナは狼狽える

 

<なっ…! んだとぉぉぉぉっ!!?>

 

そんな叫びをテレスティーナはあげ、そしてゴウラムはロボットの胴体を貫いた

 

 

流石に今のは応えたのか、ゴウラムもちょっとふらついている

クウガは変身を解除しつつゴウラムの頭を撫でた

 

「お疲れ、今日はもう燈子の所に行って休め」

<…そーする…>

「ごめんね、流石に…やりすぎたかも」

 

美琴の謝辞に応えるように、ゴウラムはふよふよと近寄って美琴の頬を擦る

 

「わ、くすぐったいよ…。…ありがとう、ゴウラム」

 

その言葉と共に美琴はゴウラムを優しく撫でた

嬉しそうに赤い瞳を輝かせるといつもとは少し遅い速度でゴウラムは飛んでいく

 

「御坂さんっ」

「アラタさんも! 怪我…ないですか?」

 

佐天と初春の心配する声が聞こえた

ふと後ろを見ると木山の車が停めてあり運転席から木山がこちらの様子を伺っていた

 

「お姉様、お兄様っ」

 

不意に自分たちを

黒子は空間移動で美琴たちの前に移動する

 

「アンタも怪我ないみたいね」

「えぇ。お兄様のご友人に助けられましたわ」

 

そう言って黒子はアラタに向かって笑いかける

それにアラタは同様に笑んで返した

ついでに彼は初春と佐天の方へと振り向いて

 

「…涙子と飾利もお疲れ様」

 

唐突に言われて二人は僅かに顔を赤くしつつ、ふと気づいた

 

「…あれ? アラタさん今名前で―――」

「助かった」

 

が、疑問に思った佐天の声はタイミング悪く木山の声に遮られた

 

「礼を―――」

 

「待って」

 

そんな木山の言葉をまた美琴が遮った

 

「それは、子供たちを助けてからね」

 

そう、まだ肝心の目的が終わっていない

それが終わるまで、まだ自分たちは感謝をされる資格はないのだ

彼女たちの想いを汲み取ったのか、木山は目を閉じ

 

「…あぁ…!」

 

ゆっくりと頷いた

 

◇◇◇

 

学園都市 第二十二学区

今は使われていない推進システム研究所にて

 

カタカタとキーボードを叩く音が耳に届く

 

「…どうだ?」

 

木山が不安げに呟く

 

「もう少し待ってください…プロテクトが硬くて…」

 

その部屋の入口付近にて休憩していた黒子が美琴に向かって呟く

 

「お姉様が一人残らず殲滅なさるから…」

「仕方ないじゃない。…さっきは中に誰もいないなんて思わなかったんだから…」

 

当然ではあるがこの研究所にも駆動鎧やらが警備等をしていた

しかし今後の捜索の邪魔になるとして美琴やクウガ、黒子は殲滅しながら来ていたのだが

そしてこのルームに入る前、中にいた相手に先制の意味を込めて美琴の雷撃がさく裂したのだ

それがプロテクトの強化に繋がったのかは知らないが

 

「見つけました!」

 

初春が声を上げる

 

「この研究所の中で一つだけ、供給電力がけた違いな場所…最下層ブロックの―――」

 

 

最下層

部屋の名前はわからないが、見るからにそれっぽそうな雰囲気を持っていた

そしてガラスの向こうには―――

 

「…やっと…見つけた」

 

思わず表情を緩ませる

木山は目尻に涙を溜めながら呟いた

その子供たちの手前、人ひとりが入るであろうポッドの中に春上もいた

初春はそのポッドのガラスを叩きながら彼女に呼びかける

 

「春上さん! 春上さんっ!」

 

なんどか彼女に呼びかけられ、ポッドの中で眠っていた彼女は目を覚ました

それを確認すると初春は笑みを浮かべる

 

「春上さん…。あ…ここのシステムは…」

「待ってて、向こうの方見てくるから」

「お願いします、佐天さん」

 

そんな光景を一行は少し離れた場所で見ていた

ふと顔を見合わせて笑みを作る

 

「待っていろ…今、助けて―――」

 

そんな木山の言葉は、突如として聞こえてきたキィィ…! と耳障りな音にかき消された

同時に、初春、美琴、黒子の三名が頭を抱え苦しみ始める

 

「! この音って…まさか!」

 

能力者をピンポイントに苦しめるこの音

どこかで聞いたことがあると、直感的にアラタは察する

 

 

 

「このゴミやろォ共がぁぁぁ…!!」

 

 

 

背後から声が聞こえた

そこに立っていたのは―――ウェザードーパント―――テレスティーナ・木原・ライフラインだったのだ

 

「お、前!?」

 

てっきりあの爆発に巻き込まれ再起不能かと思っていたが…まだ動けたとは

 

「さっきの礼だァァァァァッ!!」

 

全力で美琴たちに振るわれたその蹴りを美琴と黒子を襲う

その威力は凄まじく、美琴と黒子は壁へと吹き飛ばされた

 

「貴様ぁぁぁぁッ!!」

 

怒気に駆られ木山も彼女へ向かっていく、が一撃のもとにあしらわれる

 

「木山―――!」

「他人の心配してる暇があんのかよォォォッ!!」

 

ドゴム、と腹部に重い一撃を貰う

肺から空気を吐き出し、アラタは地面に這いつくばった

 

「がっ!?」

 

拳を握りながら、アラタはウェザーを睨みつける

 

「あーひゃっひゃっ!! あースッとしたぜぇ…ナメたマネしやがってくそったれどもが…」

 

油断していた

こんな事があるかもしれないと考えればすぐ読めただろうに―――

 

「キャパシティダウンですね!」

 

唐突に、〝誰か〟に呼びかけるように初春が叫んだ

 

「御坂さんが言ってた、能力者にしか作用しない音…!」

「あぁ? だから何だってんだ」

 

最初、初春の行動が読めなかった

しかしある方向にいる誰かを確認したことによってそれを理解する

それは向こうを確認する、と言ってこの場から移動していた佐天涙子だったのだ

 

「改良型は大きくて…移動できない…! この施設中にそれがあるなら…制御できる場所は限られます…! それが出来るのは…私たちがさっきまでいた―――中央管制室っ!!」

 

「だから何だって聞いてんだよぉぉッ!!」

 

初春に振るわれそうになるその一撃をアラタがウェザーにタックルをかましバランスを崩す

ここで時間を稼がないと

そう思った矢先、背中に痛みが走り、続けて腹に膝蹴りを叩きこまれた

 

「うぐっ!!」

「せっかくいいもん見せてやろうと思ってんのによぉ…」

 

ゴミのように春上が眠るポッド付近に投げ飛ばされる

そんなアラタを心配し初春は駆け寄り、ポッド越しに春上は声を上げるように口を動かしている

目尻には、涙があった

付近でかろうじて立ち上がった美琴は、ウェザーを睨みつける

 

「…なんで? アンタも。被害者じゃない…! 実験体にされて…なのに!」

「ハッ! 被害者じゃねぇよ。アタシは権利を得たんだよォ…アタシから生まれたこの結晶体…こいつを開かせて―――」

 

徐にウェザーが取り出したのは一つの結晶―――

 

「それは…ファーストサンプル…!?」

 

木山の驚いた言葉が耳に届いた

どうりで探しても見つからないハズだ

本人が持っているなら見つかりようがないのだ

 

「レベル6を生み出す権利をなァ…!!」

「レベル6…!?」

 

美琴の言葉にテレスティーナ―――ウェザーは応える

表情こそ分からなかったが、きっと狂気に満ちているに違いない

 

「あぁ! 春上衿衣(こいつ)は今から学園都市初めてのレベル6になる! このガキどもの力でなァッ!!」

 

言葉に驚愕する

もしかしてこの女は…春上を使ってそんな事をしようとしているのか

 

「こいつの能力はよぉ、この結晶体を使うのに最も都合がいい。高位のテレパスは希少なんだぜぇ?」

 

狂ってる―――

それしか言えなかった

 

「なんで―――」

 

木山が口を開く

言葉は震え、顔は〝涙〟に濡れながら

 

「なんでまたこの子たちなんだ…! なぜこうも子供たちを傷つけるんだ…!!」

「なぁに。ちぃとばかしこのガキどもの頭の中の現実ってのを借りるだけだよォ」

自分だけの現実(パーソナルリアリティ)…」

「呼び方なんざどうでもいいんだよバァカ!」

 

美琴の言葉を一蹴しながらウェザーは続ける

彼女はわざわざ変身を解除しながら口を開いた

 

「まぁ要はあれだ。こいつらの暴走能力者としての神経伝達物質…そいつを採取し、ファーストサンプルと融合させる…。そいつによって結晶は抑止力を獲得し…完全なものになるのさ。まぁ。あのクソジジィはそいつに気づかずマイナーチェンジに気を取られてたみてぇだがよぉ」

 

そう言ってテレスティーナはパソコンを操作しようと―――

 

「やめなさいっ!!」

 

その行動を美琴が制止した

 

「…ハァ?」

「そんなことしたら…暴走状態のまま目覚めたら、学園都市は―――」

「大規模なポルターガイストによって壊滅する…だろ?」

「じゃあなんで―――」

「上等じゃねぇか!! 神ならぬ身にて天井の意思に辿り着くもの…なぁ!!」

 

<WEATHER>

 

彼女は再びウェザードーパントへと姿を変え、御坂美琴の掴みあげた

 

「うぐっ!?」

「そのための実験場(学園都市)だろうがァ!! レベル6が完成すりゃこんな下らねぇ実験場(まち)用済みなんだよォ!!」

 

「グ…! あぁっ!?」

 

「テ、メェ―――!!」

 

思わずアラタは立ち上がり、ウェザーへと駆け―――

 

「うっぜぇんだよクワガタヤロー!!」

 

片手間に放たれた蹴りにいともたやすく一蹴された

ゴフ、と息を漏らし初春の近くに地面を転がる

 

「アラタさん! ぐ、あぅ…!!」

 

初春も誰かを心配する余裕などなかった

痛む頭を抑えながら、彼女は名前を想う

 

(佐天さん―――! 佐天さん―――!!)

 

 

中央管制室

数十分前にここで初春がパソコンを操作し、先ほどの部屋を見つけたのだが―――

 

「どれ…!? これ…違う…これも違う…!!」

 

懸命にキーボードを叩くが全く持って分からない

元からあまりパソコンに強くなかった彼女ではキャパシティダウンのシステムを見つけ出すのは難しいのだ

 

<あぁぁぁぁっ!? がぁ…!!>

 

不意にスピーカー越しに誰かの苦しむ声を聞いた

その声色は自分がよく知っている人のもの…御坂美琴だ

 

<お前面白れぇ事言ってたな。スキルアウトは実験動物(モルモット)じゃないって…! そう!! スキルアウトだけじゃねぇ!! テメエら皆が実験動物(モルモット)だ!! いわば学園都市は飼育場!! テメェらガキどもみんな食われるだけの豚なんだよぉッ!!>

 

美琴の苦しむ声と共に、テレスティーナの勝ち誇った声が耳に届く―――否、耳障りな声だ

そうだ…なんでこんな簡単な事気づかなかったんだろう

操作しても分かんないなら―――何もかもぶっ壊してしまえばいいんだ

 

 

「さぁって…そろそろフィナーレと―――!! あん?」

 

不意にキャパシティダウンの音に混じって何か変な音が聞こえてきた

数秒後―――それは吠えた

 

<モルモットだろうが豚だろうが!! 関係ないっ!!>

 

それは佐天涙子の声だった

 

「佐天さん!!」

 

歓喜に初春は声を上げる

そしてウェザーは動揺を隠せなかった

 

「な!? なんで動ける!? まさかあのガキ―――」

 

 

 

<私の友達にぃ!! 手ぇ出すなァァァァァッ!!>

 

 

 

その言葉と共にバギンッ!! 何かが壊れる音が聞こえた

同時―――耳障りな音が消える

 

「音が…!!」

 

初春が笑みを作る

同時にアラタも膝を付きつつも体勢を立て直した

 

「アラタさん…!」

 

その声に小さく笑んで応え彼女の目尻の涙を拭いつつ立ち上る

 

「なっ―――!? ぐわっ!!」

 

驚愕した言葉と共にウェザーが蹴り飛ばされる

黒子がなけなしの体力を振り絞って空間移動し、その顔面にドロップキックを叩きこんだ

その拍子にウェザーの手からは能力体結晶を落としてしまう

すかさずアラタは接近し、こぼれ落ちた結晶体をぶんどってついでにタックルを叩き込んで距離を取る

 

「木山!」

 

そしてぶんどった結晶体を木山に向かって投げつけた

木山は慌てた様子ではあったがなんとかそれを手中に収め、大事にそうに握り締めた

アラタはそれに微笑みながら、美琴に手を差し伸べて、美琴もそれに応えて立ち上がる

 

―――そして最後に、総ての元凶へと視線を向けた

 

「このゴミどもがぁ…! っとに諦めがワリィなぁぁぁ…!!」

「諦めが悪いのはどっちよ。…モルモットとか豚とか…どんだけ憐れんだら逆恨みできんのよ」

「ホントにな…かわいそうになってくる」

 

ウェザーの怒気を尻目に、小さい声でふと、美琴にアラタは呟く

 

「美琴」

「うん?」

「あんな奴らの為に、俺はもう誰かが泣くのは見たくない」

 

最初に見た、あの子の涙が最初だった

接点はないはずなのに、泣いていたあの子を見ていると、とても胸が締め付けられた

だから、〝誰か〟のためにこの力を振るおうと思えた

 

そしてこの研究所の外

天候が今どうなっているかは知らないが、いずれにせよ広大な青空が広がっているハズだ

そしてああいった狂った研究員のせいで、この広大な空の下、誰かが、涙を流しているんだ

 

「皆に笑っていてほしいから。…だから、見ててくれ」

 

アラタは一歩、前に出る

その瞳に迷いなどはない、あるはずがない

 

「俺の―――!」

 

これは自分なりの決意の表れ

覚悟の表明

もう、隠す必要などあるものか

堂々と、胸を張って闘おう

 

ノーフィアー

怖くない

怖いと思うのは怒った美琴とか吹寄とかだ

 

ノーペイン

痛みもない

感じることもあるけれど、当麻が受けた痛みよりは痛くはない

 

誰かを想う、その為なら

笑顔を守る、その為なら―――!

 

仲間の―――友達の為なら、一生戦える!

 

「俺の―――!! 変身ッ!!」

 

そう叫びアラタは大きく両腕を広げた

直後、彼の腰にアークルが浮き出るように顕現し、バヂリと雷が迸った

そして彼はアークルに手を翳し、そして右手を左斜め上に、左手をアークル右側に

そしてその両手を開くように動かしたあと、左手を拳に握り、ベルトのサイドを甲で添え―――右手で押すように動かした

 

変身の掛け声はなく、ギィンと音が聞こえ彼の身体を変えていく

それは見慣れた姿ではあった

しかし見慣れていない姿でもあった

その明確な違いは色

普段〝赤〟であるべき所が、闇のごとく〝黒〟だったのだ

右足にのみのはずのアンクレットも両足に現れて、そして両目の複眼が〝紅〟く輝く

 

アメイジングマイティ

それが今の彼の姿だった

 

「行くぜ、美琴」

「えぇ。決着を付けましょう!」

 

 

~戦士~

 

美琴とクウガは左右から挟撃すべく走り出す

対するウェザーはウェザーマインと呼ばれる鞭のようなものを取り出し、まずそれを美琴の向かって振り回した

 

「たかがサンプルごときがぁぁぁ!」

「うっさいわね、それしか―――言えないのっ!!」

 

しかしそれを雷を纏わせて受け止めて思いっきり彼女は放電する

マインを伝って多少ではあるものの、ウェザーにダメージが通る

だが彼女に気を取られるあまりに、もう片方から来る存在を完全に懸念していた

 

「だぁぁっ!」

 

懐に飛び込んだのはクウガだ

純粋に振るわれる拳はウェザーの腹部を捉え身体に直撃を貰ったウェザーは叫びをあげながら吹き飛び、地面を転がった

 

「学園都市はね…私たちが私たちでいられる最高の居場所なの…」

 

ウェザーを睨みつつ、ポケットから美琴はコインを取り出す

コインに映り込む自分を見て、自分に言い聞かせるように言葉を紡いでいく

 

「私だけじゃできないことも…友達と…皆と一緒ならやり遂げられる―――」

 

白井黒子

いろいろ言いたいこともあるが、紛れもない自分の相棒

 

初春飾利

のほほんとしていて、喋っている内にこっちまで楽しくなる黒子の後輩

 

佐天涙子

元気がよくて、明るくて…励まされたこともある初春の友達

 

鏡祢アラタ

誰かのために戦える―――たまに馬鹿なとこもある自分の戦友

 

「アンタが―――どうにかしていい場所じゃないのよっ!!」

 

吠える美琴に、クウガは小さく笑む

そうだ、人は一人じゃないんだ

 

自分たちは時として自分の為にこの手で争ってしまうこともあるだろう

しかし同時にこの手は、相手の手を握りしめることもできる

その時は何があっても、愚かでも、弱くても―――ひとりじゃない

 

「行こうぜ美琴、…俺たちの力で!!」

「えぇっ!!」

 

クウガの叫びに呼応するように、美琴の体からバヂリバヂリと雷が迸っていく

同じように

 

「こんちくしょォォォッ!!」

 

激昂しながらウェザーは掌から特大の雷を二人に向かって撃ち出した

その雷は、届くことはなかった

何故なら美琴が放った全力の超電磁砲によってその雷がかき消されたからだ

更に言えばその超電磁砲はそのまま突き抜けてウェザーの身に炸裂する

 

「なっ―――! ガァっ!?」

 

こんな、容易く!?

あの女の能力は全部頭に入っている

少なくともあの女を超える威力の雷撃を放ったハズだ―――

なぜ、と思う前にもうひとり、自分に向かってくる黒い人影がいた

人影は跳躍し、ウェザーに向けて両足を突き出した

繰り出されるその蹴りを―――避ける術などなかった

 

「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

ウェザーの胸部に渾身のアメイジングマイティキックを貰い、ウェザーは大きく後ろに吹っ飛んだ

叫びなど上げず、そのままウェザーは爆散する

その爆炎の中から出てきたのは気を失って倒れ伏すテレスティーナと、地面に落ちたウェザーメモリだった

 

 

木山が結晶体を用いて子供たちを覚醒させるための操作をしている最中、アラタはテレスティーナが倒れている付近に歩み寄っていた

翔とかそう言ったメモリライダーはマキシマムを叩きこむことにより撃破と同時に身体から排出されると同時にブレイクされるのだが、自分とかと非メモリライダーは技を叩きこんでも排出されるだけでブレイクはされない

だからメモリを物理的に破壊しないといけないのだ

 

「…あった」

 

アラタはテレスティーナの近くにあるWと書かれたメモリを見つけ、それを踏み砕く

そしてちらりと気絶しているテレスティーナを見やった

どうやら完全に気絶しており、まったくもってピクリとも動かない

 

「…因果応報、だな」

 

そう言ってアラタは振り返り、歩き出す

正直に言ってこんな奴にはかける言葉なんてない

 

あれから初春がポッドを解放し春上も地面に立っている

下の方からはカタカタとキーボードを叩く音が聞こえてきた

 

「アラタさんッ!!」

 

こちらに向かって階段を下りて走ってくるのは佐天涙子だった

結構急いできたらしく、彼女は肩で息をしている

 

「あぁ、お疲れさん涙子」

 

駆け寄ってきた佐天の頭を軽くポンと叩く

今回のMVPと言っても過言ではないくらい大活躍をしたのは紛れもない彼女だ

佐天は僅かに頬を染めて「…えへ」とはにかんだ

 

 

「プログラムは…完成した」

 

ようやくファーストサンプルのデータを用いてようやくプロテクトが完成した

あとは…このエンターキーを押せば―――

 

唐突に脳裏に蘇るあの悪夢(きおく)

もしかしたら…今回も失敗してしまうのではないか

万が一そんな事になってしまったら―――私は―――

 

「大丈夫なの」

 

初春に支えてる春上が口を開いた

思わずハッとした木山が彼女の方を振り向いた

 

「…絆理ちゃんがね、言ってたの。…先生の事、信じてるからって」

 

そう言われて、木山は彼女の顔を見た

春上は、微笑んだ

その笑顔に後押しされた木山は再びキーボードに向き合った

今、乗り越えるんだ

あの時の、トラウマを―――

 

 

彼女がキーボードのエンターキーをクリックして数分

 

木山が息を呑んで眠っている枝先を伺っている

息を呑んでいるのは木山だけではなかった

その場にいる全員が見守っているのだ

 

やがてその緊張は砕かれる

 

彼女が―――枝先絆理が目を覚ましたことによって

 

「―――――っ!!」

 

ゴクリ、と唾を飲んだ音が聞こえる

その後で

 

「せんせい…? どうして…目の下にくまができてるの…?」

 

あぁ―――

やっと聞こえた

ようやく聞こえたんだ…ずっと―――その声が聞きたかった

 

「…〝いろいろ〟と…忙しくてね―――」

 

彼女のいろいろにはどれほどの意味が込められていたか

 

「ホントだ―――髪も、伸びてる」

「でも…せんせいだ」

 

覚醒した子供たちから声をかけられる

待ち望んだ声が耳に入ってくる

 

木山は大粒の涙を流していた

 

<衿衣ちゃん―――>

 

唐突に春上は絆理の声を聞いた

それは彼女が精神感応の力で彼女の頭に語りかけていたからだ

 

<私の声…聞いてくれてありがとう>

 

その声を聞いて、春上は思わず涙が零れそうになる

彼女に向けて、春上は「うん!」と勢いよく頷いた

それに気づいた初春も同様に枝先に笑顔を作り、釣られた佐天も笑顔を向けた

 

そんなやり取りに美琴も、彼女に支えられている黒子も互いの顔を見合わせて笑い合う

 

それを見てふぅ、とアラタもようやく肩の荷が下りたように息を吐く

 

「…今度こそ、言わせてくれ」

 

「え?」

 

その言葉はアラタと美琴に向けて言われたものだった

 

「―――ありがとう」

 

「―――っ」

 

真っ直ぐに謝辞を受けることはこんなにも恥ずかしいことだっけか

思わず美琴とアラタもどちらともなく互いの顔を見合わせてなんとなしに笑い合う

 

 

 

そうだ

子供たちを助けることが出来たんだ―――

 

◇◇◇

 

翌日

 

「なんだか上機嫌ね、アラタ」

 

寮の自室でのんびりしていたアラタはやってきていた鮮花にふとそんなことを言われた

アラタはポカン、と変な顔をしながら鮮花へと視線を向ける

 

「そんな顔してた?」

「してたしてた。無意識かもしれないけど、くすっていう表現が似合うくらいに笑ってたよ」

 

そう言ってテーブルの対面に座って彼女はテレビをつけ始めた

そこから流れるのはよくあるドラマの再放送など様々だ

ふと画面の左上に表示されてある時間に目がいった

そこでアラタは思い出す

 

「やべ、今日待ち合わせしてんだった!」

「待ち合わせ? あの子たちと?」

「そうだよのんびりしてる場合じゃなかった! そんなわけでちょっと出てくる」

 

会話もそこそこに適当に準備をしてアラタは足早に自室をあとにする

鮮花はそんな彼の後ろ姿を微笑ましく見送りながらなんとなく窓の外へと目を向けた

どこかの飛空艇―――で合ってるのだろうか―――が自由な速度で空を飛んでいた

 

 

ひたすらに街を走る

走りながらそう言えば今美琴たちがどこにいるのかを聞いていなかった

なんという凡ミス

 

「ええいくそ! ゴウラムーッ!」

 

完全にずるいと思いながらアラタは呼んだ

こんなくだらない用件でも来てくれるゴウラムには頭が上がらない

駆け付けたゴウラムに飛び乗りながらアラタは言った

 

「美琴たち探すぞ、頼めるか?」

<そういうの、事前に確認しておくべきじゃない?>

「耳が痛いです。とりあえずお願いします」

<…調子いいんだから>

 

軽く頭を撫でながら、アラタは言う

撫でられた事で気を良くしたのか、あるいは満更でもないのか、不意にゴウラムの速度が速くなった気がした

 

 

木山春生は病室のベッドで雑誌を読んでいた

 

テレスティーナとの戦闘で傷を負った彼女は念のため、という事で警備員の付属の病院に入院していたのだ

今日もまた、ごくごく普通な時間が過ぎると思っていたその時だった

 

<木山せんせー!!>

 

自分を呼ぶ大きな声

思わず雑誌を閉じ、窓の外を見た

 

窓の外には青空が広がっており、いつもと変わりはなかった

ただ一つ、あったとすればそれには飛空艇が飛んでいた

側面にあるディスプレイには、見知った子供たちの姿が映っていた

 

そして―――

 

<お誕生日、おめでとーっ!!>

 

そう自分を祝ってくれる言葉を聞いた

彼らを担当して、初めて聞いた時は少々煩わしく思っていたかもしれない

けど、今はどうだ

 

木山は溢れる涙を堪えきれなかった

 

<ありがとう! 木山せんせー! …大好きだよ!!>

 

そう絆理の声を聞いた

 

心から思う

 

 

助け出せて―――よかった

 

 

 

「…ふふ」

 

上空でアラタはそのサプライズを聞いていた

だいぶあの子たちも元気になってきたみたいだなぁ…と思いながらアラタは橋の上に集まっている美琴たちを見つけ出した

アラタはゴウラムに言ってその橋近辺へと移動させる

 

「あ! アラタさんズルいです!」

「そうですよ! 来ないなぁって思ってたらまさか空から来るなんて!!」

 

佐天と初春からそんな声を貰うがアラタは笑いながらスルーする

ゴウラムから降りた彼は改めて挨拶する

 

「とりあえずおはよう、美琴、黒子。んで涙子に飾利」

 

「よっす。…ていうかこんなことでゴウラム使わないでよ、全く」

「そうですわよ、言ってくださればこの黒子がお迎えに行きましたのに!!」

 

本日も黒子は平常運転

そう言えばこんな感じだったな、とアラタは思い出した

 

「そう言えばアラタさん。…前から聞きたかったんですけど―――」

 

おずおずとした様子で初春は口を開いた

 

「うん?」

「…その…私と佐天さんを名前で―――」

 

そう

変わった所は初春と佐天の呼称である

彼は基本的には名前で呼ぶ

呼びやすいことに限ったことではないのだがアラタはこの二人に関しては純粋に呼びやすいから呼んでいたのだが

 

「んー…美琴と黒子は名前なのに、二人だけ苗字なんてなんか悪いと思ってさ」

「アラタさん…」

 

佐天が思わず苦笑いをする

初春もどこか頬を染め小さく笑んだ

正直に言えば呼び方を改める機会がなかっただけなのだが

この際、そういう事にしてしまおう

 

「…それじゃ、皆も集まったし…」

 

美琴は背伸びしつつ、それぞれの顔を見渡していった

 

 

 

「今日は、どうしよっか?」

 

 

 

学園都市

ここは本当に―――退屈しない都市である


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