全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

26 / 80
要所の修正のみ
展開等は変わらず




#21 笑顔 前編

木山は車を走らせる

目的は一つ、目の前にあるMARのトレーラーを追いかけるためである

 

「待っていろ…!」

 

木山は無意識にハンドルを握る手に力を込める

全ては、眠っている子供たちの為に―――

 

「私が…必ず…! …む!?」

 

不意に違和感を覚えた

目の前を走るトレーラーが並んだ

まるで道を遮るかのように、唐突に目の前に並んできたではないか―――

 

そう考えたその時、トレーラーが開き…そして中にあったものが見えていく

それは駆動鎧―――

 

「何!?」

 

騙された―――

そう考えた時には駆動鎧は木山に向けて銃器を構え―――

 

「せりゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

そんなトレーラーの間に一人の人影が雷を叩き込んだ

思わず木山はハンドルを切り、ドリフトを効かせながら道路に横になるように急停車する

何がおこったのだろうか

しかしあの人影、依然どこかで見た気がする―――

そう思い目を凝らすと、見知った人物が立っていたのだ

 

「…悪趣味なイタズラするじゃない」

「本当ですわねぇ…」

 

そこには超電磁砲と呼ばれる常盤台中学の女の子、御坂美琴が立っていたのだ

その彼女の後ろにいるツインテールの女の子は恐らく彼女の後輩だろうか

唐突過ぎる再会に面食らうが、今はその再会を喜ぶべきなどではないのだ

 

「な、何のつもりだ君たち! いったいどういう―――」

 

つもりだ、という言葉は続かなかった

何故なら同様に走ってきたがバイクが横切ったからだ

そのバイクに乗っているのは赤い複眼に同じく赤い鎧が特徴的な―――

 

「クウガ…鏡祢くんか…!?」

「木山先生! この車は囮です!」

「子供たちは乗ってません!!」

「な、なんだと―――て、おい!?」

 

ビートチェイサーの後ろに乗っていた佐天と初春がそう言いながら木山の車に乗り込んでいく

一体何が起こってるんだ、どんな状況なんだ、と考える前に初春の言葉が耳に届く

 

「乗って下さい!」

「…え?」

 

初春はカバンからノートパソコンを取り出して起動させる

その隣にいる佐天はまだ呆然としてる木山に

 

「早く! 子供たちを助けるんでしょう!!」

「っ!」

 

木山は驚愕する

まさかあの時の子たちに論されるとは思ってもみなかった

木山はちらりと美琴とクウガを見る

 

美琴はその視線に気づくとゆっくりと頷き、クウガは親指を立てながらこう言った

 

「大丈夫」

 

温かくも優しい言葉を聞いた

それを聞いて決心した木山は急いで車に乗り込むと一気にアクセルを全開にして、駆け抜けた

 

「…さて、お客様がお待ちだぜ!」

 

クウガはそう言うと身構える

彼が示した視線の先には膨大な数のMARトレーラーと駆動鎧、おまけに雑兵として骨のみたいな模様が入った妙な人型の人形のようなものまで引きつれている

あれもテレスティーナの作ったやつか?

骨戦闘員とでも仮に名づけておこうか

 

「参りましょう、お姉様、お兄様!」

「えぇ、アンタたちの相手は―――」

 

そう美琴の声はバラバラバラ、という妙なプロペラ音にかき消された

徐にそんな音の方に向くと数台のヘリコプターが滑空していた

まさかヘリまでも用意するとは

 

「…流石に予想できなかったな」

 

思わずたじろいでしまった

しかし何が相手でも引くわけにはいかない

木山の子供たちを助けるためには―――

 

<Rider slash>

<TRIGGER! MAXIMAMDRIVE>

 

一つの紫色の光刃と、幾重にも重なった弾丸がそのヘリコプターを打ち貫いた

途中で脱出しようとして飛び出したヘリのパイロットを捉えるようにクワガタの飛行物体が彼を捉え地上に降ろす

 

「え…?」

 

思わずそんな言葉を口にしていた

そして耳にする聴き慣れた声色

 

「水臭いぞカ・ガーミン。こういった決戦の場に親友の俺を呼ばぬとは」

「ツ、ツルギ!?」

 

仮面ライダーサソード、神代ツルギ

そしてその隣には、青と黄色の半分こなライダー―――

 

「やぁ、間に合ったかな」

<ベストタイミング>

 

仮面ライダーダブル、右京翔&アリステラが立っていた

そして彼の傍らには、黒いクワガタ―――ゴウラムも

あまりにも突然の出来事に美琴や黒子もびっくり顔だ

いや、ダブルとゴウラムは来ることがわかっていたが、どうしてツルギがここにいるんだ

 

「や、けど…なんで」

「警備員がやけに騒がしかったからな。気になってヤ・グルーマに聞いたのさ」

<それに、助けに来てくれるのは私たちだけじゃないよ>

 

右の複眼を発光させつつダブルが顔を向けたその先から、戦闘しているような音が聞こえてきた

戦っているのはライダーだった

 

「…助太刀に来たぞ、鏡祢」

「…天道…」

 

骨の人形を蹴り飛ばしながら天に手を翳す紅いカブト虫のライダー…カブト

 

「この借りは、俺の店を利用して返してもらうぞ」

「風間…」

 

銃撃で駆動鎧やヘリの武器を撃ち抜くトンボのライダー…ドレイク

 

「ここは僕たちに任せて! 早く!」

「翔一さん…! え、でも、なんで翔一さんまで…!」

「天道くんに頼まれたのさ。ここに来るまでイマイチ状況理解できてなかったけど、到着しておおよそが理解できたよ」

 

そんなことを言いながら襲いかかってくる駆動鎧を殴り飛ばし返り討ちにする竜のライダー…アギト

 

「皆…!」

 

思わず目頭が熱くなるものがある

それと同時に、胸にふつふつと湧き上がる感情があった

これは…絶対に負けないと、はっきり確信して言える自信があった

 

「お兄様、お姉様」

「まぁそういうわけだ。ここは俺たちに任せといてよ」

 

いつの間にか黒子はカバンから大きい革のベルトのようなものを取り出していた

そのベルトには黒子がいつも使用している鉄針が仕込まれている

ダブルも拳を握りしめ、クウガに進むことを促す

 

「お二人は、木山春生にご助力を!!」

 

「…わかった、任せたぜ黒子、みんな!」

「ちゃんとついてこなかったら、承知しないんだから!」

 

その言葉に黒子は頬を僅かに染めて平静を保ちつつ、内心歓喜し、ダブルは左手で何かを射抜くような動作のあと

 

「心配はいらないさ。だって俺たちは」

<うん。二人で一人のライダーだもの>

 

力強い返事を聞いてクウガは傍らの相棒の名前を呼ぶ

 

「さぁ、行くぞゴウラム」

<がってん>

 

ダブルの傍らにいたゴウラムはふわりと移動してきて、クウガの近くに浮遊する

赤い瞳を輝かせて、おまけに乗りやすいように位置まで調整までしてくれた

出来た相棒だ

 

「よし…行くぜ、美琴」

「えぇ、なるべく急いでよね」

 

クウガはその背に飛び乗って美琴に手を差し伸べる

美琴はその手を握ってクウガの隣に飛び乗った

 

「行け!」

 

クウガの指示に応えるように、ゴウラムは木山春生の車を追いかけた

背後にあるのは信頼だ

振り向くことはない

誰でもない、友達を―――仲間を信じているから

 

◇◇◇

 

空間移動で白井黒子は縦横無尽に飛び回る

彼女の武器はその空間移動での神出鬼没さと、その鉄針による空間移動攻撃だ

 

付近を飛んで相手の眼を翻弄した後、その銃器に鉄針を空間移動させて使い物にならなくする

しかしそんな彼女にも、死角はあった

 

それは空間移動直後に来る銃撃

彼女の着地のタイミングを見計らわれ、グレネードが放たれた

しかしそのグレネードが黒子に当たる事はなかった

 

<clock up>

 

見えない速度で加速したサソードがそのグレネードを斬り裂いたのだ

サソードが爆風こそ受けたが特に目立った外傷はなかった

 

<clock over>

 

加速を終えたサソードの背に、黒子は空間移動し互いに背中を預け合わせる

 

「まさか…貴方と共に戦う日が来るとは思いませんでしたわ」

「俺もだスィ・ライン。改めて見ると、お前の力は素晴らしいな」

「あら。褒めてますの?」

「当然だ。俺は称賛することでも頂点に立つ男だ」

「それは…ありがたいですわねっ!」

 

互いに言い合うと背中を預け、二人は目の前の駆動鎧や骨戦闘員へと駆けぬけた

 

 

~Believe yourself~

 

迫りくる敵をアギトは徒手空拳で寄せ付けず返り討ちにしていく

グランドフォームは超越肉体の金と呼ばれるアギトの基本形態、故にこういった一般兵程度なら素手で対処できるのだ

 

…が、こうも数が多いとさすがに対処に困るというか面倒だ

そう感じたアギトはオルタリングと呼ばれるベルトのサイドの左側を押した

ベルト中央、左側が青く輝き中央の宝石が青く変色する

同時にアギトの身体にも変化が訪れる

胴体部分と左腕がベルトと同じように青くなったのだ

超越精神の青、ストームフォームである

 

す…と、アギトはオルタリングに手を寄せるとオルタリングから長い棒状の武器が現れる

専用武器〝ストームハルバード〟だ

 

ブン、と一つ振り回しそれを目の前の骨戦闘員連中や駆動鎧に突きつける

すると両側の刀身が伸びて、両刃の薙刀のようなものになった

それを改めて両手で構え、アギトはその軍勢へと突撃していく

 

「ふっ!」

 

一つ一つ攻撃をいなしながらハルバードでの一撃を切り込み、背後から強襲してくる骨戦闘員も振り向きざまに斬りつける

不意に前を向くと数体に駆動鎧がこちらを捉えていた

手にはガトリングと思わしき銃器を携えている

撃たれる前にアギトは行動を起こした

 

「はっ!」

 

ハルバードを大きく振り回しながらアギトは一気に距離を詰める

接近してきたことに驚いたのか、駆動鎧たちは一斉に銃器を発砲しようと構えるが遅かった

撃つより先に接近してきたアギトのハルバードが駆動鎧を斬り抜ける

ドォン、と背後で爆発が起きアギトはゆっくり振り向いた

 

直後前に立つ、骨戦闘員の集団にその中心に駆動鎧

アギトはストームハルバードをオルタリングに戻して、グランドへと形態を切り替える

そして一度普通に立つと同時に、頭部にあるクロスホーンが展開された

 

角が展開されたことにより、何かを警戒したのか、駆動鎧たちは身構えた

そんな連中を視界に捉えつつ、両手を開き、左足をゆっくりと後ろへ後退させていく

同時に右手を上に、左手を下に、オルタリングの左側上付近へと持っていく

それはまるで刀の居合を彷彿とさせる構えだった

 

「はぁぁぁぁ…!!」

 

息を深く吐きながら、さらに腰を落とす

地面に現れたAGITOのマークは彼の足に吸収されるように足に力を蓄積していく

 

そして、アギトは一気に飛んだ

驚いて放たれた銃撃には目もくれず、バッと右足を突き出し

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

叫びと共に駆動鎧に渾身のライダーキックを叩きこんだ

ライダーキックを受けた駆動鎧はバランスを崩し、大きく後ろへ仰け反って骨戦闘員を巻き込んで爆散する

その爆風の中、アギトは毅然と佇んでいた

 

 

~NEXT LEVEL~

 

ドレイク、カブトの行動は至極単純

カブトは臨機応変にクナイガンで斬り裂き、それを狙う敵をドレイクが撃ち落とす

またその逆もしかりだ

相手は単純に数で押してきているものの、起こしてくる行動はさほど分かりにくいものではない

 

「しっかし、なんでこうも面倒な事に巻き込まれるんだろうなっ!」

 

傍らで骨戦闘員を射抜いたドレイクが一呼吸しながらカブトに向かって呟いた

一方のカブトはカブトクナイガンで駆動鎧の装甲を斬り裂きながら、いつもの様子で受け応える

 

「さぁな! だが、友達を助けるのに、特に理由はいらないと思うが?」

「あぁ、それもそうだな!」

 

バッと飛び退いてお互いを背に預けるとカブトはクナイガンをガンモードに、ドレイクはそのままドレイクゼクターを構え、同時に引き金を引く

放たれた弾丸は周囲に展開していた骨戦闘員にヒットし、それぞれを爆散させていく

その直後、待機していた駆動鎧の群れが二人の正面方向から突撃してきた

 

カブトとドレイクは互いを背に跳躍し、それぞれ駆動鎧の後ろへと着地した

先に動いたのはドレイクだ

 

「ライダーシューティング」

<Rider shooting>

 

ドレイクゼクターを畳み、狙いを定めてトリガーを引く

放たれたそれは真っ直ぐに駆動鎧に向かっていくが、予期していたのか駆動鎧は大きく右に動いてそれを躱した

だが、それはドレイクとて読んでいた

駆動鎧が回避したそれはカブトに向かって行く駆動鎧の方向へと飛んで行ったのだ

それを確認したカブトは冷静に

 

「クロックアップ」

 

ベルトの右側を軽くタップしクロックアップを発動させた

クロックアップの中まずはクナイガンを持ち、その高速移動の中で駆動鎧を幾度も斬りつけ破壊する

数度斬りつけたのち、カブトはゼクターのスイッチを押して、ホーンを倒す

 

<one two three>

 

「ライダーキック」

 

呟きながらホーンを戻し、カブトはドレイクに向かっていく駆動鎧へ、ドレイクが放ったライダーシューティングを蹴り返した

蹴り返されたシューティングはゆっくりと駆動鎧の背へと向かって飛んでいき―――カブトはクロックアップを解除した

 

<clock over>

 

クロックアップ空間から抜け出したその砲弾は速度を取り戻し、駆動鎧に直撃する

爆発を背に、カブトは一人、天を指す―――

 

「全く…、危ないな」

 

いつの間にか隣にいたドレイクがため息を吐きながら大きく肩で息をした

恐らくぶつかった直後クロックアップで爆風の中を抜けてきたのだろう

 

「お前を信じたまでだ」

「そう言うことにしておく」

 

そんな言葉を交わしながらカブトとドレイクは互いの手を叩きあった

 

 

~W-B-X -W-Boiled Extreme-~

 

ルナトリガーからサイクロンジョーカーへと戻ったダブルは流麗な蹴りで骨戦闘員を蹴り飛ばし、駆動鎧の体制を崩してさらに追い打ちをかける

 

そして一息をついたその隙を見計らい、何人かの骨戦闘員が飛び掛かってきた

危うく捕まるところだったその場所を後ろに飛んで回避し、そんな骨戦闘員達に飛び蹴りを打ち込んだ

 

<翔、ちまちまやっても仕方ないよ。派手にぶっぱなそうよ!>

「君からからそんな提案されるなんてね。…いいよ、派手にかましてやるか!」

 

大きく頷きながらダブルはドライバーにあるメモリを引き抜き別のメモリを起動させる

 

<HEAT><METAL!>

 

それをドライバーにセットし思い切り開く

 

<HEAT METAL!>

 

ヒートメタルへとチェンジしたダブルは背に現れたメタルシャフトを構え、群がってくる骨戦闘員達を薙ぎ払っていく

一通り凪いで、ダブルはメタルメモリをシャフトにセットする

 

<METAL! MAXIMAMDRIVE>

 

ぶんぶん、と振り回しダブルはシャフトを構えた

それと同時、メタルシャフトの両側から噴射するように炎が吹き荒れる

ダブルは先ほど凪いだ骨戦闘員を見据え、地面を蹴った

 

「<メタルブランディング!>」

 

シャフトからの炎をジェット代わりに加速したダブルはそのまま骨戦闘員達にメタルシャフトを叩きつけた

薙ぎ払われた骨戦闘員達は大きく吹っ飛びそのまま消滅していった

直後、再びダブルはヒートとメタルのメモリを引き抜きサイクロンとジョーカーのメモリに戻す

 

<CYCLONE JOKER!>

 

戻った直後に駆動鎧たちの銃撃を受け、思わず足をばたつかせてしまった

 

「おわっ!? 危ないな、ったく…!」

 

ダブルは一度深呼吸してから冷静にドライバーから片方、メモリを引き抜いた

 

「たまにはこんなのもいいかもね!」

 

引き抜いたメモリはサイクロン

ダブルはドライバー左側のマキシマムスロットにサイクロンメモリをセットし軽く叩く

 

<CYCLONE MAXIMAMDRIVE>

 

「行こう、アリス!」

<うん! どこまでもついてくよ翔!>

 

軽く右手をスナップさせて、ダブルは駆動鎧に向かって走り出した

そして飛び上がり風の力を纏ったその右足を突き出す

 

「<たぁぁぁぁぁッ!!>」

 

二人の叫びはシンクロしより威力を倍増させる

一度ヒットした体制からその場でもう一度ひねり上から叩きこむようにもう一機の駆動鎧に叩きこんだ

爆発を背に受けてダブルは左手をスナップさせて一息付く

そしてアラタたちが向かっていった方角へと視線を向けて

 

<…大丈夫だよね、アラタさんたち>

「あぁ、大丈夫だよ、アイツ等なら」

 

既にここかれではもう彼らの姿は見えない

それでも、不思議と彼らが負ける姿は想像できない

 

そうして―――友が築いたバトンは、木山たちへと託される


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。