ゲート チート自衛官 彼の地にて理不尽に戦えり 作:メガネ二曹
「ちっ、誰かアイツを止めろ!」
「ミューティーに近づけさせるな!」
ミューティーと言うらしい、魔法を使う女の子を無力化するために、暁は、壁の外を走っていた。
暁を止めようと盗賊が立ちはだかるが、暁は止まらず、盗賊達は弾丸に体を貫かれて倒れていく。
「くそ!ミューティーには指一本触れさせねえ!」
と少しカッコつけた盗賊が、剣を片手に暁に突撃する。が、
「邪魔だよおらっ!」
無慈悲にも、暁が放った前蹴りによって股間を半長靴で蹴り飛ばされた盗賊は、股間を押さえて気絶した。
「さて····と。」
「ひっ···!」
あっという間に盗賊を蹴散らした暁を見て、術者の女の子は後ずさる。
そして後ろに向かって逃げようとするが、暁に手を捕まれて、逃げることは叶わなかった。
「えっと····あなたが、風の魔法の、術者ですか?」
暁が特地語で問いかける。
「···そ、そうよ。」
と、女の子は涙目で暁を睨みながら答えた。
「分かった。」
そう言って暁は、自分の霊力を、掴んだ術者の女の子の手から流しこんだ。
すると、女の子が発生させていた気流が消えた。
暁が、女の子の魔法を、流しこんだ霊力を使って内側から「相殺」したのだ。
暁の能力は、「相殺する程度の能力」。
どこぞの幻想殺しのように、自らの霊力、トリオン等のエネルギーに触れた、魔法等を、打ち消すことができるのだ。
そして暁は今回、女の子が魔法を使えないようにするため、一定時間の間、体内に流しこんだ霊力で、魔法を相殺し続けるようにしたのだ。
「さて。これで無力化完了だな。」
暁は、そこら辺の地面に落ちていた、壁を登るために使ったと思われるロープを銃剣で切り、
女の子の両手を後ろ手に縛り、担ぎ上げた。
そして周りに視線を戻すと、いつの間にか、大量の盗賊に囲まれていた。
そして、いかにも、というような風貌の男が歩み寄ってきた。
「一人でここまで入り込んでくるとは。命知らずな男だ。···だが、私は、お前が気に入った。」
「···何が言いたいのですか?」
暁は敬語で返した。
「俺の部下になれ。中々の人数を蹴散らしたその力、そして度胸。俺はお前を殺すのがもったいなくなってきた。···命が助かるのだ。答えはもはや聞くまでもないが。」
超上から目線の男に、暁は笑って言った。
「ええ。たしかに答えは言うまでもありません。俺は、あなた方の仲間にはなりません。」
そういうと、男の表情が曇った。
「···何だと?···気に入ったとは言ったが、そこまで行くと勘に触る。もう一度聞くぞ。俺の部下にならないのか?」
「ええ。何度聞いても答えは同じです。あなたのような雑魚の下につくなんて、ゴメンですよ。それに、俺は今の仕事に誇りを持っています。」
「···つくづく命知らずな男だ。状況が解っていないのか?」
「いいえ?俺はしっかり理解していますよ?ですが、自分はこの状況を、別に命の危機だと思っておりません。」
「···」
「あなたが俺の立場だったら、危機かも知れない。だけども、俺にとってはこれっぽっちも危ない要素が無いんですよ。」
「大した自信だな。たしかにお前は強く、そしてお前の武器は強力だ。だが見たところ、その武器は、筒先を向けた相手しか射倒すことが出来ないと見える。この人数に囲まれている今、勝てる要素が無いだろう。」
「···そっちも大した自信だな。もしかしてこの程度で俺を殺れるとでも?···舐められたもんだな。」
暁はそういうと、自分の首に手を当て、「斬ってみろよ」と言う。
「面白い。」
そう言うと男は、巨大な大剣を、暁の首目掛けて振った。
剣はかなりの速度で真っ直ぐに暁の首に近づく。
(捉えた!)
男はニヤリと笑みをこぼし、周りの人間も、暁の首が飛ぶのを確信した。
そして、
ガギイィィン!!と、いう音と共に、
大剣が弾かれた。
「なっ···!」
全員が驚愕の表情で暁を見る。確かに、首に直撃したはずだったのだ。
しかし、目の前の暁は、首が飛ぶどころか、傷ひとつついていなかった。
暁は、傷つく事もなく、その場から動く事も、弾かれる事もなく、
受け止めたのだ。
「じゃあ、こっちの番だな。」
暁はそう言って、呆然として動かない男の腹に軽く掌底を押し付ける。
「なっ、何を」
そして暁が少し手のひらに力を込めると、鈍い音と共に、男の腹に大穴が穿たれた。
男は悲鳴を上げる事も驚くことも出来ずに絶命する。
「さて。次はお前らだ。」
暁はそう言いながらカードのような物を取り出しながら、自分を取り囲む盗賊達に向き直り、カードを持った手を、盗賊達に向ける。
「スペル宣言。霊砲「ヒュージスパーク」。」
そう暁が宣言すると、カードが消え、盗賊達に向けた手のひらに、圧縮された霊力が集まり、
次の瞬間、圧縮された霊力が解放され、巨大なレーザーとなって放たれた。
「うっ、うわああああああ!!!」
「腕がっ!うでがあああああ!!」
レーザーに当たった盗賊は塵ものこさず消し飛び、体の一部が当たった盗賊達は、当たった腕などが消し飛んだ。
そしてレーザーで空いた盗賊達の隙間を、暁は走り抜け、女の子を抱えたまま門へと向かった。