ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖しているだけなんだ。   作:すずきえすく

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いつも御世話になっております。
すずきえすくでございます。

今回は第7話となります。


尚、若干”性的”な表現がございますので、
それらが苦手な方々は、ご注意願います。

それでは、よろしくお願いいたします。




第7話 俺はもっぱら、シ○ックスへ行く。

とある日曜の昼下がり。 

 

普段なら、束の間の自由を謳歌しているところなのだが、

今日は、由比ヶ浜と雪ノ下に連れられて、

ハニトーでお馴染みの某カラオケ店に赴いていた。

 

誰かに連れられて外出だなんて、らしくないって?

奇遇だな。実は今、俺もそう思っていたところだ。

 

でもまぁ・・・なんだ、ここへ至るまでには、色々あったんだよ。

 

 

事の発端は、由比ヶ浜からの

”ヒッキー。ゆきのんと一緒に、パ〇ラ行こー?”というお誘い電話だ。

 

外に出たくなかったので、当然の様に”家族がアレなんで・・・”と断ったんだが、

その時には既に、二人とも俺の部屋の前で、スタンバってやがったんだ・・・。

 

 

 

 

「比企谷君、家族がアレって・・・何かしら?」

 

 

 

 

電話を切った直後に背後から声がして、腰が抜けそうなくらいに驚いた。

「わたしメリーさん。今、貴方の後ろにいるの・・・」 的な感じで。

 

でもって結局、家族がアレでも何でもない事がバレてしまい、

二人は再び俺を誘い始めた。

 

 

「ヒッキー、ハニトー食べに行こうよーっ」

 

「比企谷君、無駄な抵抗は止めなさい。」

 

って雪ノ下さん・・・それちょっと、意味合い違うくないですか?

このまま立て籠もってたら、命が危なそうなんですけど・・・。

 

けどな、たとえ無駄だと分かっていても、高みに挑むのが男ってもんだ。

だから俺は自由を死守すべく、一応の抵抗は試みたんだ。ワイルドだろ?

 

でもな、結果から言えば、雪ノ下の方がずっとワイルドだったんだ・・・。

 

 

「もし、どうしても来ないと言い張るなら・・・」

 

「・・・言い張るなら、何だ?」

 

 

 

 

「ここで泣くわ。全力で(きっぱり)」

 

 

 

 

そのひとことに、俺は敢え無く轟沈した。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー、ほら早くっ!」

 

由比ヶ浜は、俺のシャツをキュッと摘まんで俺の入室を促した。

こいつの場合、一色と違って素でやってそうな分、余計に意識してしまう。

 

修学旅行あたりから、こいつのパーソナルスペースは、どんどん狭くなってるな。

俺じゃなかったら、一発で勘違いしているところだ。

 

 

連れられた部屋は、3人で使うには少々贅沢な広さで、しかも何気に豪華だった。

 

「なんと言うか・・・凄い部屋だな。」

 

雰囲気に呑まれた俺は、落ち着き無くソファーをフニフニしたり、

無駄に辺りを見渡したりと、小市民っぷりを露呈した後、

手持ち無沙汰になって、ソファーに腰掛け小さくなった。

 

一方、雪ノ下と由比ヶ浜は、俺とは対照的に動揺する事も無く、

手慣れた感じで、マイクのセッティングをしている。

由比ヶ浜はともかく、雪ノ下までリア充に見えてちょっと悔しい。

 

そして二人は、”うわーキレイ”とか”思ったよりもいい部屋ね”などと、

ひとしきりキャッキャウフフした後、”ぼふっ”っとソファーに腰掛けた。

 

 

 

・・・俺を挟む様にして。

 

ちょっと待て。何でそうなるんだよ!?

 

 

俺の狼狽っぷりを見た由比ヶ浜は、キョトンとした表情で

”ヒッキー。そんなにオロオロして、どうしたの?”と小首をかしげ、

 

雪ノ下は、心配そうな表情を浮かべながら、

”比企谷君、目がいつも以上に濁っているけど、大丈夫かしら?”と、のたまった。

 

まるで、二人とも何事も無かったかの様に振る舞っている。

 

あれ・・・俺の方がおかしいの?

 

 

結局、少数派たる俺の意見は黙殺され、配置は維持される事となり、

その結果、俺はますます小さくなる事となった。

 

その後も

”ヒッキー。こっち狭いから、ちょっと詰めるねー”と密着してきたり、

”比企谷君、メニューが届かないわ”と、手を伸ばしつつ寄って来る感じで、

俺と二人の距離は、どんどん無くなっていった。

 

他にスペースがあるのに、お前らなんでそんなに詰めて来るんだよ!

 

 

 

「さぁヒッキー、あーん♪」

 

あーんって何?と思って振り向くと、由比ヶ浜が

フォークに刺さったハニートーを、俺の口元に運んで来ていた。

 

 

・・・ただし、1斤丸ごとだ。

 

ちょっ、一口で食えるかっ!

それ以前に、いつの間にハニトー来たの!?

 

「由比ヶ浜っ、待てっ!ストップだっ!」

 

だが由比ヶ浜は、俺の様子などお構いなしに、ハニトーをぐいぐい押し付けてきた。

なんか、ちょっと様子おかしくない?

 

そうだ、雪ノ下はどうした?こうなったらお前だけが頼りだ!

だが、そんな期待はあっさりと裏切られた。

 

「由比ヶ浜さんだけズルいわ。私のも食べなさい。」

 

由比ヶ浜と同じ様に、雪ノ下の手に握られたフォークにも、

1斤のハニトーが突き刺さっていた。

 

雪ノ下・・・お前もか!お前もなのかっ!

 

「比企谷君、ツベコベ言わずに食べなさい。」

 

雪ノ下はそう呟くと、無表情で反対側からハニトーをぐいぐい押し付けてきた。

 

 

 

「あはは」

 

 

 

「うふふ」

 

 

 

由比ヶ浜と雪ノ下の瞳からは光彩が失われ、静かなカラオケルームには、

二人の発する、抑揚のない笑い声だけが響き渡っていた。

 

さっきまでの甘い空気は、一体どこへ行ったの?!。

 

俺は、左右からハニトーに顔を挟まれて息が出来ず、

やがて意識が、どんどん遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった・・・。

 

 

 

 

BAD END

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ!

 

カチッ、カチッっと、秒針が時を刻む音が、部屋に響き渡っていた。

 

ぼんやりしていた意識が、徐々にハッキリとしてきた頃、

さっきのアレが夢だった事に、ようやく気が付いた。

 

まぁ・・・ちょっとホラーっぽくて怖かったが、こんな事もあるさ。

 

 

だが、何かがおかしい。確かに夢から覚めたはずなのに、

まるで、金縛りに遭っているかの様に身動きが取れない。

何より、ハニトーみたいな柔らかい何かが、顔に押し付けられたままだ。

 

夢と現実の狭間にいる様な、妙な感覚に捕らわれつつも

一先ず、身動きの取れない状態を脱却すべく、顔を左右に動かした。

 

 

 

 

「ぁ・・・っ・・・・・・・・・んっ」

 

 

何だ?・・・今のは。

 

なんとなく想像がついてしまったが、再び頭をもぞもぞ動かしてみた。

嫌な予感しかしねぇ・・・。

 

「んっ・・・・・・・・・・・・ゃんっ」

 

俺の両頬に”もにゅっもにゅっ”と、生暖かい感触が伝わるのと同時に、

頭上で再び、艶めかしい吐息が漏れた。

 

その甘い吐息を耳にして、俺は急激に覚醒した。

この声は、紛れもなく一色本人のものだ。

 

 

 

 

 

一色は、胸元に俺の頭をガッチリと抱え込んだまま、スヤスヤと寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

やっぱりお前かっ!

 

 

 

 

 

第7話

 

ら、シ○ックスへ行く。

 

 

 

 

今の状況が、天国なのか地獄なのか分からない。

 

ぱっと見た感じ、”我々の業界ではご褒美です”的な展開ではあるけれど、

一色が目を覚ました途端に、俺は三途の川を渡る事になるだろう。

 

”センパイ、責任とって(地獄に落ちて)下さいね♪”って

満面の笑みで宣告されるシーンが、容易に想像できるな・・・。

 

 

そんな事を長々と考えていたのだが、一色が

 

「ん・・・もにゃ・・・・・・せんぱぁぃ・・・」

 

と寝言を呟いた後、俺を力強く”ぎゅぅぅぅぅっ”っと抱き締めてきて、

その結果として俺は、一色の両胸に顔を埋める様な形となった。

 

俺の顔に押し当てられ、圧迫されて盛りあがった2つの膨らみが、

大きく”むにゅり”と形を変えて、自身の存在を艶めかしく自己主張している。

 

ほんの僅かに固さが残っているのは、まだ発育途中だからだろうか?

 

そして石鹸の香りを押しのけて、甘い中にも微かに酸っぱさの含まれた、

むせ返るほどの強烈な、女の子特有の体の匂いが辺りを漂いはじめ、

俺を包み込み、鼻腔をくすぐった。

 

 

Tシャツ1枚隔てただけの、一色の柔らかな体の感触と、生暖かい体温が、

体の匂いも相まって生々しく感じられ、たまらない気分になってくる。

 

 

いい加減離脱しないと、色々とヤバいな・・・。

 

俺は脱出を試みようと、軽く身をよじったのだが、

一色のキープ力は相当なもので、なかなか抜け出せない。

 

こいつ、ブンデスリーグとかでも充分通用しちゃうんじゃないの?

 

顔の向きを変えるだけでも、一色に刺激を与えてしまうらしく

”んっ・・・っ・・ぁん”と呟きながら、ぎゅっとされてしまうのだ。

 

 

これはどうしたものか・・・と為す術なく途方に暮れていると、

”むにゃむにゃ・・・”という寝言と共に、一色の瞼がピクリと動いた。

 

やばいっ、目覚めるっ!この状況をどう説明すりゃいいんだ!?

って、そもそも、俺の布団に勝手に潜り込んで来たのは、こいつなのに・・・

 

打開策らしい打開策を見つけられないまま、泣きそうな俺を尻目に、

やがて一色の瞼は、うっすらと開かれた。

 

ブラック企業に入ってすらいないのに、俺はもうダメかも知れない。

いや、むしろ完全にアウトだ・・・。

 

覚悟というより、諦めムードが俺を支配していたのだが・・・・

 

 

「むにゃ?・・・せんぱ・・・ぃ?」

 

眠そうな目を擦りながら俺を見た一色。

少し間を置いた後、にんまりとした表情を浮かべて

 

「もにゃ・・せんぱいだぁ♪・・・うふふ、せんぱぁい♪」

 

そのまま俺の首筋に、自分の頬をピタッと押し付け擦りしだした。

・・・ちょっと驚いたけれど、要はこいつ・・・未だ半分、夢の中にいるらしい。

 

 

一色は一旦動きを止め、俺の首筋に鼻を当てるとクンクンし、

 

「むにゃ・・・センパイの匂いがしますぅ・・・。」

 

匂いを確かめた後、また嬉しそうに頬擦りを続けた。

一色の鼻息が首筋に当たり、ぞくりとした感覚が背筋を走った。

 

だが、そんな事など構っていられるか!とばかりに頬を擦りつけて、

自分の匂いを染み込ませる様に、ぎゅっと体を密着させる一色。

 

俺の胸元と、一色の胸の2つの膨らみがピッタリと密着し、

こねくり回されて、零れ落ちそうな程に激しく形を変えている。

 

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

一定のリズムを保ちつつ、一色の息遣いが荒くなってきた。

 

そして、自分の体全体を俺に擦り付ける様に、より大きく動き出した結果、

Tシャツが大きく捲れ上がり、露になった両胸が俺の胸板と直に密着した。

 

「はぁ・・・・っ・・・ぁんっ・・・ぁ・・・ん」

 

ピンと固くなった胸の先と、俺の胸板とが密着して、

こりゅこりゅと擦りあわされる刺激に、一色は甘い声を上げた。

 

やがて、体と体が密着している部分が汗ばみ、そこから

にちゃっ・・・にちゃっ・・・っと音をたて始め、部屋中に響き渡る。

 

なんていやらしい音なんだ・・・。

 

腹の底が熱くなり、こみあげてくるような興奮が、俺の胸を詰まらせる。

いつの間にか、一色のリズムに合わせて俺の息も荒くなっていた。

 

それまでの一色は、ゆっくりとした動きだったが、

俺の太ももに自分の両足を絡めて、押し付ける様に擦りだすと、

それを境に、動きがより激しくなった。

 

 

「んっ!・・・はぁん・・・ぁん・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

 

 

 

しばらくして一色は、俺の首筋に自分の顔をぐっと押し付けると、

俺のシャツの襟元を力強くギュッと掴んで、体をグイッと引き寄せた。

 

そして、”んーっ・・・んーっ!!”と力んだ様な声を発したかと思うと、

丸めた体を小さく硬直させ、俺の太ももを自分の両太ももでぎゅぅっと挟み込み・・・

 

 

 

「はぁ・・・あ・・んっ・・・・・・ぁ・・・っ・・・・くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ」

 

 

 

小さいながらも、ハッキリとした唸り声を上げ

その直後に、一色の体から”だらり”と力が抜け落ちた。

 

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

しばらくの間、激しい息遣いが部屋に響き渡り、

それに合わせて、一色の胸が大きく膨らんだり、小さくなったりしていたが、

 

「むにゃ・・・・せんぱ・・・ぃ・・・」

 

やがてそれが治まると、一色は再び夢の世界の住人となり、

再び静寂がその場を支配した。

 

 

 

かなり際どかったが、一線を越えずに済んだのは、

お互いにとって幸いな事だったろう。

 

なにせ、こいつは葉山が好きなんだ。

 

そして俺自身、もし勢いで手を出してしまっていたならば、

行為が終わった後、死にたくなる程後悔しただろうしな。

 

 

 

 

体の拘束が解けた俺は、そっと布団を抜け出すと、

本来、一色の為に用意された空き部屋へと移動した。

 

まだ10月の半ばに差し掛かったところだが、流石に夜は肌寒く感じる。

俺は、大急ぎで敷いてあった布団に潜り込んだ。

 

俺の部屋に迷い込んでくるまでは、一色は確かにここで寝ていたのだろう。

頭がくらくらしてくる程ではないが、布団から甘い匂いが微かに感じられ、

先程の生々しい光景が思い出された。

 

 

 

「ダメだ・・・全然寝られねぇ・・・。」

 

 

時計は、深夜の3時を過ぎたあたりを指していた。

 

このまま、寝るのを諦めるしかないか・・・なんて思っていたら、

 

”You've got mail!”と

 

俺のな〇坊が、メールの着信を知らせて来た。

 

____________________

From:雪ノ下雪乃

 

貴方が、200枚もネコ画像を送りつけたせいで、

眠れなくなったわ。責任取りなさい。

 

____________________

 

さては、ネコ画像にテンション上がり過ぎて、眠れなくなったな?

雪ノ下・・・お前、ネコ好き過ぎんだろ・・・。

 

ってあれ・・・あいつは今頃、どのあたりに居るんだっけ?

 

 

 

結局、俺が寝付いたのは

うっすらと夜が明けそうになった頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

俺は、悲鳴とも絶叫とも付かないで声で目が覚めた。

・・・一体何があったんだ?

 

目を開けると、口をパクパクさせた一色が真横にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一色は慌てて布団から飛び出すと、部屋の隅へと移動した。

 

「セ、セ、セ、センパイっ!どうして同じ布団に寝てるんですか!?」

 

それはこっちの台詞だ。お前こそ、何でここにいるんだ。

 

昨日、最後はオマエさん・・・

俺の部屋で大きな口を開けて、イビキかいてたじゃないか。

 

けれど、心の呟きは伝わらない。

 

一方、一色の奴は”まさか昨日のって・・・”と小さく呟いた後、

顔を真っ赤にさせつつも、キッとした目で俺を見つめる。

 

「さては夜這い・・・夜這いしましたね!」

 

してないって!そもそも夜這いして来たのはお前・・・・と言いかけたところで、

一色が満面の笑みを俺に向け、発言をさえぎった。

 

こいつがイイ笑顔を浮かべている時って、

大抵の場合、目が氷のように冷たいんだよね・・・。

 

顔にさ、ツベコベ言うなって書いてあるもん。八幡わかるもん。

 

あぁ・・・次に何を言われるか予想がついてしまった。

予測できても、回避は出来ないんだけどな。

 

 

一色は、きゃるんとした表情を浮かべ、あざとさ全開で言い放った。

 

 

 

「センパイ、責任とって(地獄に落ちて)下さいね♪」

 

 

 

 

 

 

マジか・・・ホントに言いやがったよ。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

 

雪乃さん「あたし、雪乃さん。今、ハバロフスクに居るの。」

 

メリーさん「・・・!?」

 

 

 

 

 

 




最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

次回は、もしかしたら短編を1本挟むかもしれません。
クリスマスネタですので、もし25日までに
間に合わなければ・・・どうぞお察し下さい。

それではまた。
次回もお付き合い頂けると、嬉しく思います。

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