ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖しているだけなんだ。   作:すずきえすく

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いつもお世話になっております。
すずきえすくカリバーでございます。

遅くなりましたが、第5話をお届けいたします。



最後までお付き合い頂けると
嬉しく思います。


第5話 てへぺろって何?って言われた・・・

騒がしい夕御飯を終えると、一色のヤツはしばらくの間

 

「流石に、しばらくは何も食べられません~♪」

 

と、何かをやり遂げた様な満足な表情で、ゴロゴロと床の上を転がったり、

由比ヶ浜ん家の犬の名前、えーっと・・・なんていうんだっけ?

 

サブ・・・マリン、サブ・・・カル女子、サブ・・・マシンガン・・・

 

ともかくだ、由比ヶ浜ん家のサブなんとかさんの様にメチャクチャ伸びたりと、

初めて訪れた家とは思えない程に、くつろぎまくっていたのだが、

やがて大家のおばちゃんに促されると、一番風呂へと洒落込んでいった。

 

「やれやれ、ようやく静かになったな。」

 

俺は読書でもしようかと、居間のソファーに腰を据えた。

 

下宿での大半は自室で過ごすのだが、晩飯を食べた後だけは

居間のソファーでくつろぐのが日課だ。

 

そして

 

”今日は、色々と大変な1日だったな・・・・”

 

なんて、ぼけーっと考えていたのだが・・・

程なくして”ドタドタドタ・・・”っと、廊下を走る音が辺りに響き渡った。

 

ったくあいつは・・・。廊下を走っちゃ駄目だろ。

 

そう言えば渡○廊下走り隊が”廊下を走るな!”ってアルバム出してたな。

廊下を走る事を運命付けられた子供達と、それを阻止する為に

立ち上がった教員達との、宿命の戦いを描いた作品だ。

 

例えるならば、呼び出しに応じずに逃走する、腐った目をした男子学生を、

アラサーの女性教諭が”待てぇぇぇ比企谷ぁぁぁ”と追い掛け回す、あの感じだ。

 

・・・抹殺のラストブリットって、リアルに存在するんだぜ。知ってたか?

 

 

ごめんなさい嘘です。適当な事を言いました。

取り消してお詫び申し上げます。マジすんませんでした。

 

話を戻そう。

 

やがて、ドタドタと廊下を走ってきたであろう一色が、

居間へと続く扉を勢いよく開け放つと、

 

「センパ・・・兄さん、お風呂メチャクチャ広いですよ!!」

 

興奮を隠せないです♪とばかりに、そう叫んだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タオルを1枚、身体に巻いただけの格好で。

 

 

 

 

 

 

第5話

 

?って言われた・・・

 

 

 

「な、な、なんで、そんな格好で出てくるんだよ!!!」

 

水着なんかより、よっぽど肌色面積は小さいのに

こっちの方が、圧倒的に劣情を掻き立てられるのは何故だろうな?

 

っていうか、隠せてないから!色んな部分が隠せてないから!!

 

今度は、俺の方が動揺を隠せなかった。

八幡、目のやり場に困っちゃうっ。

 

一色は、初めこそ無邪気な笑顔を爆発させていたのだが、

俺が取り乱している様子に気が付くと、

 

”ニヤリ・・・”

 

と悪い事を考えいる人の笑みを浮かべ、俺との距離を詰めてきた。

 

「せんぱぁい♪あれぇ、意識しちゃってますかぁ♪?」

 

そして自分の両手で、左右の胸を下から持ち上げる様に支えると、

”もにゅもにゅっ”っと、その谷間を強調し始めた。

 

ばっ、そんな風に強調されたら、意識せざるを得ないじゃないか。

 

その”もにゅもにゅっ”とした膨らみは、アンサイクロペディアで

”男が夢見る約束の地。もしくは見果てぬ切ない故郷の一種。 ”

と定義されている。従って、俺の目が釘付けになってしまうのは、

飽くまでも浪漫への渇望がそうさせるのであり、止むを得ない事なのだ。

 

つまり、決して邪な気持ちを抱いている訳ではない。

 

 

 

 

ホントだよ?

 

 

 

 

一方、面白がって胸の谷間をもにゅもにゅしていた一色だったが、

俺の視線が想定以上に揺ぎ無かったせいか、

急に顔を赤くしたかと思うと、くるりと俺に背を向けた。

 

「センパ・・・兄さん、じっくり見過ぎです・・・。」

 

「す、すまん・・・。」

 

気まずい空気が流れる。

 

「センパイ。」

 

「・・・なんだ?」

 

「これから、エロスサンダー大王って呼びますね(きっぱり)」

 

やめてっ、勘弁してっ・・・って、このパターン何度目だよ!

今日はこんなのばっかりだな、オイ。

 

その後・・・

 

”約束の地?全く意味が分かりません。”とか

”故郷の地って何ですか!?千葉愛はどこへ行ったんですか!”とか

”胸元を凝視するなんて、その・・私を・・・に、妊娠させる気ですか!!”とか

 

言いたい放題ぶちまけた一色は、スッキリした表情を浮かべると

 

「それではお風呂行って来ます♪・・・覗いちゃダメですよ♪?」

 

軽くウインクして”てへぺろっ”っと舌を出し、浴室へと戻っていった。

 

やれやれ、嵐はようやく過ぎ去ったか・・・

って、胸を”もにゅもにゅ”やってアピールしてたのはお前じゃねえか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから一色は、本格的に風呂を満喫しだしたらしく、

今度こそ俺に静寂がもたらされた。

 

再びソファーに腰かけた俺は、読みかけだったラノベを開く事にした。

もちろんその傍らに、愛すべきマッ缶を添えてだ。

 

本の内容はこうだ。

どこかにある辺境の惑星を巡り、主人公と3人の少女達が

所有権を争っていくうちに、やがて恋心が芽生えハーレム化してゆくというものだ。

 

この話で凄いのは、恋のライバル同士であるはずの女の子達が、

主人公をみんなで仲良く共有し、幸せになる事で一致団結しているところだ。

 

まさに男性の夢を具現化したような話だが、現実はそうそう甘くない。

それは、葉山を挟んだ、三浦と一色の鍔迫り合いを見ていれば一目瞭然だ。

 

だってあいつら、超ニコニコしてんのに、その目は底冷えする程寒々しいんだぜ?

それはもう、桂〇枝を立たせてカイロのCMやっても違和感ないレベルに。

 

八幡、超怖いよぉ・・・。みんな仲良くしようよぉ・・・。

 

”幸せ”は”辛い”と似ている。”夢”に”にんべん”を付けると儚い。

つまり、人生は儚く辛いものだという事だ。

 

こんな現実、知りたくなかっただろ?

大丈夫、俺も知りたくなかった・・・。

 

だから俺は、マッ缶で味覚的な甘味を補い、ラノベで精神的な甘味を補うのである。

 

 

 

 

この様にしばらくの間、周りに誰もいないにも関わらず

人生の有り体について講釈を垂れていたのだが、不意に、

 

”You've got mail!”と

 

な○坊の声で、スマホがメールの受信を知らせてきた。

 

最近思ったんだけど、な○坊の声って由比ヶ浜に似てるんだよな。

今度、”とんだシスコン野郎ですね”とか言ってもらっちゃおうかな。

 

”ヒッキー・・・マジきもい”とか言われてドン引きされそうだけど。

 

 

 

 

 

さて、メールの主は雪ノ下だった。

 

 

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From:雪ノ下雪乃

 

待っている訳ではないのだけれど

獅子丸の写メール、今日はおやすみかしら?

 

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獅子丸というのは、大家のおばちゃんの飼っているネコの事だ。

ライオンの様に鬣がワサワサ生えているので、そう名付けられた。

 

ちくわが好物の、あの忍者犬から取ったわけじゃないぞ?

まぁ・・・ネコ用ちくわは滅茶苦茶食べるけどな。

 

以前、ネコに興味のない素振りをしていた雪ノ下も、

流石に知り合って3年も経ってくると、

もはや、ネコキチ・・・ネコ好きっぷりを隠そうとはしなくなった。

 

以前獅子丸が、ティッシュの箱に入ったまま出られなくなった写メを、

つい出来心で、雪ノ下に送ってしまったのだが、それが引き金になったのか、

それからほぼ毎日の様に、獅子丸の写メを要求されるようになった。

 

あいつ、どんだけネコ好きなんだよ・・・。

 

それはさて置き、獅子丸は生憎ここにいない。

実は、大家のおばちゃんの孫宅にお泊りに行っているのだ。

 

 

俺は雪ノ下に、上記の事象に加え、昔に撮影したかまくらの写メ(かまくらが

直立不動で寝ているというものだ。)を添付し返信した。

 

 

ネコ職人の朝・・・じゃなくて、雪ノ下のメールは速い。

俺がメールして、2分も経たないうちに返信されてきた。

 

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From:雪ノ下雪乃

 

ありがとう比企谷君。

その・・・もし良かったらなのだけれど、

まだ他にもあるのだったら、全部貰えないかしら?

 

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かまくら写メのおかわり、キマシタワーッ。

俺は、スマホに撮り貯められていたものを、全て雪ノ下に送る事にした。

・・・全部で1GBくらいあるけどな。

 

きっと今晩、目をキラキラさせながら眺めるんだろうな・・・

無意識のうちに”にゃーっ♪にゃーっ♪”とかいいながら。

 

 

ただ、余りにも数が多かった(枚数だと200枚くらいある)ので、

”えーどうしよっかなぁ・・・?”みたいに焦らしていたら、

 

”比企谷君、勿体ぶるのはやめなさい”と怒られた。

 

マジすんませんでした。

ドジでノロマな亀だけど、八幡頑張るっ!

 

こうして今日も、雪ノ下の携帯電話に

ネコ写メコレクションが追加されたのであった。

 

 

10分程過ぎて、

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From:雪ノ下雪乃

 

本当にありがとう。

御礼といったら何だけけれど、

こちらからも1枚送ります。

 

今日もありがとう。また明日。

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というメッセージと共に、

アビシニアンの子猫を抱いた、雪ノ下の写メが送られてきた。

 

その写メに、俺は釘付けとなった。もちろん子猫も愛くるしいのだが、

普段見せない、穏やかな微笑みを浮かべた雪ノ下に、

不覚にもドキリとさせられてしまったのだ。

 

これを見ちまうと、もう氷の女王なんて呼べねぇな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せぇぇぇぇんぱぁぁぁぁぁいぃぃぃ・・・何見てるんですか?」

 

不意に後ろから、ダークマターを磨り潰して混ぜ込んだ様な

不吉な声が響き渡って来た。

 

あぁ・・振り返りたくない・・・後ろにも、そして過去の自分にも!

 

だがそういう訳にもいかず、恐る恐る後ろを振り返ると、

仁王立ちした一色が、俺を思いっきり見下ろしていた。

 

おかしいな・・・。

とってもイイ笑顔なのに、鋭い目付きがまるで獣の様だ。

 

っていうか、風呂から上がってきてたのね。

 

「あの・・・一色さん?何故そんなにお怒りに・・・」

 

と言い終わらないうちに、一色にスマホを引っ手繰られた。

 

「これは、雪ノ下先輩!・・・・・むむむ」

 

俺から強奪したスマホの画面を、なんだか唸りながら凝視している一色。

フレームがミシミシいってて超怖いんですけど・・・・。

 

「センパイ、何で雪ノ下先輩の写メ持ってるんですかっ!」

 

やがて一色は、ダメ亭主の浮気を見つけた古女房の様に問い詰めて来た。

それ、雪ノ下というよりは、子猫の写真なんだけどな・・・。

 

「ネコの写メ送ったら、御礼にってアビシニアンが写ってるそれが来たんだよ」

 

「それにしては雪ノ下先輩の笑顔、良過ぎじゃないですかー・・・」

 

あぁ・・・これは納得してないって顔だな。

 

 

その後も一色は、俺の顔をじっと凝視しつつ

”むぅぅぅぅーっ”と唸っていたのだが、やがて

 

「センパイ・・・。」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここに正座してください。」

 

さっきとは打って変わって、

拗ねた様な不満げな表情を浮かべつつ、床に指をさした。

 

「またかよっ!そしてなんでだよ!」

 

「とにかく正座ですっ!正座っ!」

 

一色は両頬を膨らませ、思いっきりむくれていた。

なんだか今日は、正座ばっかさせられる日だな・・・。

 

 

 

 

そう思いつつ、渋々ながらも正座してしまう俺には、

間違いなく、社畜としての高い才能が秘められているに違いなかった。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 




最後までお付き合い頂き
ありがとうございました。

突然ですが皆様、
正座ってどれくらい出来ますか?

私は10分も出来れば長い方ですが、
中には”終われ”と言われるまでいける!と
いう猛者もいらっしゃるそうで・・・・

ただただ脱帽です。


さて、次回は第6話となります。
次回もお付き合い頂けます様
よろしくお願い申し上げます。

すずきえすく




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