やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
今回はいつもより文字数が多めです。もちろんいつもよりイチャイチャします!
ある日の放課後。今日もいつも通り俺と一色は生徒会の仕事をして……いませんね。今日は生徒会の仕事がナッシングなのに生徒会室に連れ込まれてしまいました。
一色いわく「ふふんっ、これが生徒会長特権ですよ!」って感じでドヤ顔してたけど、言ってることが酷すぎて全然可愛く見えなかった。ごめん嘘超可愛かったですはい。
もうそろそろ俺と一色が付き合い始めて二ヶ月が経過する。俺と彼女の関係は現在も極めて良好だ。それどころか一色のデレはとどまることを知らず、そろそろ彼女の周りにハートマークが見えるんじゃないかってくらいにはデレてる。毎日可愛いすぎて悶え死にそうになってます。
でだ。彼女が俺にここまでデレてくれているのに、俺はまだ彼女に対してやっていないことがあるのだ。
いや、まぁ、うん。イチャイチャしている最中とか、もっとデレさせたいと思ったりした時は呼んだりもしたことはあるんだけど。
一色はどっちかといったらいつも呼んで欲しいらしくて、この前そのことで少しだけ揉めてしまったのだ。
俺としても彼女の要望には答えられるなら答えたい。それができないのはただ自分が恥ずかしいからって理由なだけだし。
だから今日は生徒会の仕事もなくてゆっくりできるから覚悟を決めました。
──これからは一色をちゃんと名前で呼ぼうと思う。
というわけで、一色……いや、いろはか。これからはちゃんといろはって名前で呼ぼうと思う。今までは名前で呼んだ時も地の文は一色のまんまだったからな。地の文って言っちゃったよ。
いや、まぁ結局恥ずかしいのは変わらないんだけどね。変わらないんだけどね! 別に大して大事なことではないけど一応2回言っときました。
「……あー、けぷこんけぷこん」
「は? いきなりなんですかそれ……」
「いや、すまん。今のは何でもない」
一色はほぇ? と言わんばかりに可愛らしくくりんと首を傾げる。
「変な先輩ですね? まぁ先輩が変なのはいつものことですけど」
「ねぇいろはちゃん? 今のはちょっと辛辣すぎない? 八幡泣いちゃうよ?」
俺っていつも変だったんだ……。まぁそれはもちろん知ってたけど、俺と付き合ってるいろはもちょっと変わってると思うんだよね。言ったらぷんすか怒られそうだな。何それちょっと見たい。
や、そうじゃなくて。ていうか意外とすんなり名前言えたな。
「せ、先輩……さすがにいろはちゃんはちょっと気持ち悪いんで呼び捨てでお願いしていいですか?」
せめて照れるのかドン引きするのかどっちかにしろよ……。
「……いろは」
名前で呼びながら右手でいろはの頭をくしゃりと撫でると、
「ふぁ……えへへ」
目を少しとろんとさせながら俺の左手をきゅっと握ってきた。可愛いすぎて死にそう。
「あー、その、なに。これからはちゃんと名前で呼ぶことにするから」
「……やっぱりこの前こと気にしちゃってますか?」
いろははくぅんと鳴きそうなくらい眉をくにゃっと曲げて落ち込んだ表情をする。自然と握られている手の力は弱々しくなっていた。
……変に誤解される前に本音をはっきり言った方がいいなこれは。今さら恥ずかしいからとか言うつもりは流石にない。
「……いや、それは違うぞ。純粋に俺がいろはのことを名前で呼びたいからだ」
言うと、いろははぽかんとした表情をする。だが、すぐにみるみるうちに耳まで顔を真っ赤にして、腕を前に突き出しながらぶんぶんと振り始めた。危ない危ない。
「もももも、もしかして今のって口説いてますか急にそんな嬉しいこと言われたらもう先輩なしじゃだめな子になっちゃいますしもっともっと先輩のことが好きになっちゃって……あれ? もっと先輩のこと好きになれるんなら別に……でもこれ以上先輩のこと好きになっちゃったら色々と抑えられなくなっちゃうし……ううむ」
この子何言ってるのかしら。自分で言って自分で考え始めちゃったし……。てか久々にこれ見たけど振られないのかよ。
まぁ好きって言われるのは嬉しいけどやっぱり超恥ずかしいな……。心がぽかぽかというかぴょんぴょんしちゃうよね!
ていうか、今のいろはの言葉にちょっと気になるところあったわ。いろはがこれ以上俺のことを好きになったらどうなるのだろうか。何か色々と抑えられなくなるとか言ってたよな。
ほむん、これは超気になるし久々に積極的になってみるとするか……。今日は名前で呼ぶこともできたから多分いい感じにできる気もするし。
これから先のことを考えると、俺は緩んでしまう頬を元に戻すことはできなかった。
××××××
「なぁいろは」
内心ひゃっはー!(怖い)ってなっているテンションを気づかれないように、落ち着いて話しかけるといろははこてんと首を傾げる。
「えへへっ、どうしました先輩?」
え、えぇ……何この子。名前呼ばれただけでそんな笑顔になるなんて反則だと思います。
「これから俺、ちょっとだけ頑張るわ」
ここからが本番だ。久しぶりに積極的になるからちょっとだけルンルンです。
「え? なにをですか?」
聞かれたので、いろはの耳に顔を寄せる。ちゅっと耳に口づけをしてからいつもよりワントーン低く、それでいて優しい声で囁く。
「……いろはをもっと好きにさせることを、だよ」
言って、もう一度耳にキスをしてから顔を離すと、いろははリンゴのように顔を真っ赤にしていた。
「はわ、はわわわ……そ、そんな直球で言われたら……。しかも今のなんか色々とえ、えっちでしたし……」
緩みそうになる頬を両手で包んでむにむに動かすいろはは、内股を擦り合わせながら少しだけ身悶えする。な、何かエロい……!
いかん。煩悩退散。
「そうか? 耳にキスして囁いただけなんだけどな」
「それがえっちなんですよ!」
「うおっ、わ、悪い」
ずいっと顔を寄せてむーっとちょっとだけ怒った表情をする。ううむ、やっぱりいきなりは駄目だったか……。
「い、いや、べべべ別にいいんですよ? むしろもっ……こほんこほん」
あ、結局許しちゃうのか。いろはすちょっとチョロすぎじゃないですかね……。まぁいろはの許可も貰えたことだしそろそろ本格的にやるとするか。
「いろは、ちょっとこっち来てもらっていいか?」
俺が歩いて行った場所は生徒会室の奥の方の壁際。ここなら外からも覗かれないだろうし安心だ。あ、鍵はもうここに来た時点でいろはが閉めてました。なんででしょうね。
あと、いろはは名前呼ばれるたびに頬が緩みそうになるのをバレないように無駄にキリッとした表情するのやめてください。超可愛いけどちょっと面白くて笑いそうになっちゃうから。
「ど、どうするんですか?」
気づいたら俺の後ろをてくてく付いてきたいろはが(可愛い)、少しだけ不安そうに聞いてくる(可愛い)。ぐへへ、別に悪いようにはしないんで安心してくだせぇ……(気持ち悪い)。
「もっとして欲しいって言ういろはの願望を叶えようと思ってな。ま、ちょっと恥ずかしいかもしれんけど」
「え、そ、それってもしかして壁ドン……? きゃー!」
何か知らんけど両手で頬を包みながらきゃーきゃー言い始めちゃったんだけど。俺まだ何もしてないよね?
「こほん……じゃ、いくぞ」
「は、はい……っ」
いろはがぶるりと身体を震わせながらこくっと頷く。その姿を確認してから一度、大きく息を吐く。……よし。
右手をいろはの頭のやや上の壁に付けて、肘は顔の真横に付ける。こうすることによって自然と顔の距離は近くなるからいろはの羞恥を煽れる。もちろん俺も恥ずかしいけどね!
「……どうだ?」
「しょ、正直言うとですね……」
「お、おう……」
気持ち悪いって言われたらどうしようって別の意味でもドキドキし始めちゃった……。
「ドキドキしすぎて死んじゃいそうです……」
いろははちろっと上目遣いで見つめてくるが、恥ずかしいのかすぐにぷいっと顔を逸らしてしまう。亜麻色の髪がはらりと揺れて、彼女の動揺をそのまま表してるようにも見えた。
……なら、もっといろはのことをとろけさせてしまおう。
「……いろは、手出してもらえるか」
「ふぇ? こ、こうですか?」
おずおずと両手を前に出してくるいろは。壁ドンはやめて差し出された両手をぎゅっと握る。もちろん恋人繋ぎだ。
握った手に少しだけ力を込めてそのまま一色を壁に押しつける。腕を上げているから多少は疲れるが、こうすると多分、俺もいろはもどんどん気持ちが高ぶると思っての行動だ。
「ひぅぅ……」
身体を捩りながら絡められた指にぎゅうっと力が入る。
「いろは……」
「せん……ぱい」
彼女の不安げに揺れる瞳に吸い寄せられるように、互いの顔の距離が近くなっていく。
やがて、俺といろはの距離が零になり、そして──。
「んっ……」
数秒の間、唇を重ねているといろはの舌先がつんっと当たる。一度唇を離すと、いろはが頬を真っ赤に染めながら懇願するような上目遣いで見つめてくる。
「もっと……もっと先輩といっぱいちゅーしたいです……」
「……おう」
恋人繋ぎはやめて、いろはの背中に両腕を回して優しく抱きしめる。いろはは俺の首に両手を回して、つま先立ちになってそのまま唇を重ねてきた。
「ん……ちゅっ、んん……んっ……」
舌を控えめながらもちろちろと絡め合う。愛情を確かめ合うこの行為に幸福感を覚えると同時に、この子をもっと俺のものにしたいという征服感も溢れてくる。
「ぷはっ……先輩、もっと、もっといっぱい先輩のこと好きにさせてください……。それで、もっと、もっと……わたしのこと、好きになってください」
口元を綻ばせて上目遣いで見つめてきながら、自分の想いを吐露するいろは。その言葉にどくんと心臓が跳ね上がる。
「……おう、もちろんだ」
「えへへっ、んっ……」
嬉しそうに満面の笑みを咲かせるいろはに、今度は俺から唇を重ねていった。
そういや、気持ちを抑えられなくなったのはいろはじゃなくて俺の方だったな……。
……いや、まぁそれに関してはどっちでもいいか。今はこの時間を楽しむとしよう。
××××××
「先輩、さすがにちょっと夢中になりすぎじゃないですか……」
「わ、悪い……」
もうそろそろ完全下校時刻になるぞこれ。どんだけイチャついてたんだ俺ら……。や、まぁ今回は確実に俺が悪いんだけどね! ちょっとがっつきすぎちゃった☆
「ま、まぁ、先輩がそれだけ、その、わたしを求めてくれたのは嬉しいことなんですけど……」
指をもじもじと胸の前で絡ませながらぽしょりと呟くいろは。そんな反応されたらこっちまで嬉しくなっちゃうじゃねぇかよ……。
「でもあれだよな。途中からいろはの方が夢中になってたよな」
「うっ……だ、だって普段捻デレな先輩がただのデレになっちゃうとか反則すぎじゃないですか!」
「じゃあもうこういうのはなしでいいか?」
絶対俺今にやけてて気持ち悪いんだろうなぁ……。いろはも一瞬ぴくっと身体震わせたし。どうやら俺の笑顔は全米を震撼させるレベルらしいです。何それ全然嬉しくない。
「だ……です」
「え? なんだって?」
今のは本当に小さい声だったから聞き取れなかった。僕は難聴ではありません(断言)。
「むーっ! そんなのだめに決まってるじゃないですか!」
いろはは頬をぱんぱんに膨らませながら睨めつけてくる。全然怖くないしむしろ超可愛いです。
「お前ほんと可愛いな」
「えへへ……はっ! も、もう! おだてても何も出しませんからね!」
頬緩みすぎだろ。せめてもうちょっと隠す努力してくださいよ……。
それに別におだててるわけでもないし。
「別に何もいらねーよ。俺はお前がそばにいてくれるだけで十分だしな」
言うと、いろははあわあわ慌てながらバックからスマホを取り出す。すぐに、ものすごい勢いでスマホを操作し始める。
「せ、先輩! い、今の録音したいのでもう一回言ってもらっていいですか!?」
「え、何でそんなに興奮しちゃってんの? そろそろ時間も時間だしもう帰ろうぜ」
「お願いですよぉ! 今のは絶対に永久保存しなきゃだめなんですよ!」
や、まぁそこまで言うんならやってあげてもいいんだけど。えーと、俺なんつったんだっけ俺。
……うわ、思い出すとそうとうくさいセリフ言ってたな。いやまあ、今日はもう色々限界突破してるからこれくらいの羞恥プレイなら余裕だけど。
どうやらもう録画は開始しているらしく、いろはは目をきらっきら輝かせながらとろけるような笑みを浮かべている。ていうか声だけじゃなくて俺まで撮るのね。ほんとに羞恥プレイじゃねーか。
…………はぁ。
「お、俺は、その……お前が、そ、そばにいてくれるだけで十分だしな……」
うん、絶対こうなると思ってたわ。こんなの改めて言ったらキョドるに決まってんだろ……。
いろははそんな俺を見て、にんまりと意地悪な小悪魔スマイルを浮かべる。そして、流れるようにスマホを操作し始める。
ま、まさか……。
『お、俺は、その……お前が、そ、そばにいてくれるだけで十分だしな……』
……あぁ、やっぱり。発狂していいですかね? 顔死にそうなくらいめっちゃ熱いんだけど……。
「むふーっ、満足です!」
「そりゃ良かったですよ……。んじゃ、帰ろうぜ」
「はいっ!」
生徒会室を出ると、俺たちはどちらかともなく手を繋ぐ。握られた手を見てほんのりと頬を朱に染めて微笑む彼女は、やっぱり俺にはもったいなくらいとても魅力的だった。
彼女とこの関係になってあっという間に過ぎた二ヶ月。これからもずっと、こんな楽しい日々が続けばいいなと。
柄にもなく、そう思えた。
お久しぶりです!キャプションに書いていた次の更新は3週間後になるっていうのを見て「あ、次の更新絶対いろはの誕生日になるな」って思った人もいたんじゃないでしょうか。私自身スマホが破滅した時にそうなるなぁと察していました。
まぁそれは置いといて。とりあえずこの一言を。いろは誕生日おめでとう!
もうそろそろUAが30万いきそうです。いつも読んでくださっている皆様には圧倒的感謝です。ありがとうございます!
ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!