やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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折本√スタートです!


折本√
何故か、俺は中学の同級生と再び関わり始めることになる。【前編】


 

 冬休みが終わり、学校が始まってからもう一ヶ月が経過しました……。こ、こんなのあんまりじゃないか! あ、唐突なブチ切れすみません。

 

 俺だってこんなことになるとは思わなんだ。進路相談にマラソン大会、奉仕部への依頼をこなしていたらあっという間に一ヶ月が経過してしまった。

 正直、一ヶ月という期間は俺には長すぎた。冬休み中の「絶対彼女作るぜ! ヒャッフー!」みたいなテンションはどこへやら。もうそんな気持ちは一欠片も残っていません。

 

 そう考えると中学時代の俺ってマジぱねぇっすわ……。いくつ黒歴史を抱えても気にせずレッツパーリィして惨敗しまくってたからなぁ……。

 それに関しては完全にトラウマを植え付けてくれた彼女には感謝……はしねぇな。あれ結局俺の自業自得だし。

 

 今日は雪ノ下と由比ヶ浜が用事があって部活に出れないということで、手持ち無沙汰な俺は暇つぶしがてら千葉に来ていた。俺一人で依頼人待つとか絶対無理だしな。もし初見の依頼人だったら確実にキョドって死んでた。だから平塚先生に残される前に逃げてきちゃったぜ☆

 

 書店で何冊か新刊の本を購入し、スタバは相変わらず俺には無理くさいので、以前にも訪れたことのあるドーナツショップへと行くことにした。

 店内に入って、適当に注文をしてから二階席へと上がる。カウンター席を目指そうとすると、視界の端で、俺のほうを見ている二人組の女子高生がいることに気づく。

 正確に言えば俺のことを見てるのは一人だけ。もう一人は俺がいることに気づいてない。

 

 ん、んん……? ていうか俺、なーんかあの子見たことある気がするぞ……。海浜総合の制服着てるし。

 つーか、俺に気づいてないほうの女子って折本じゃね……? 

 

「ね、ねぇかおり」

 

「ん? 千佳どうし……あれ? 比企谷?」

 

「お、おう……」

 

 ふぇぇ……苗字も名前の漢字も分からないからチカちゃんって呼ぶしかないよぉ……(ごめんなさい)。そのチカちゃんは俺と目が合うと、気まずそうにふいっと顔を逸らす。

 ……ま、そりゃそうだろうな。葉山のいらん気遣いのせいであっちは俺の印象良くないだろうし。何ならそれがなくても印象良くないまである。

 

「比企谷ひとり?」

 

「ん、ああ。つーか前も言ったけど俺はだいたい一人だ」

 

「うん知ってた。マジウケる」

 

 折本はけたけたと楽しそうに笑う。うん、いい笑顔だとは思うけど笑ってるのはあなただけですよ……。チカちゃんずっと気まずそうじゃん! 早く気づいて!

 ここはチカちゃんのためにとっとと俺が立ち去ろうとしたが、俺より先にチカちゃんが椅子から立ち上がってしまった。

 

「ご、ごめんかおり。今日はもう帰るね?」

 

「え? 千佳?」

 

 折本が何か言う前にチカちゃんはすたこらさっさと立ち去ってしまった。や、やっちまったぜ……。あとずっと名前で呼んじゃってごめんなさい。

 ど、どうしようこの状況……と困惑しながら立ち尽くしていると、それを見かねた折本が口を開く。

 

「とりあえず座れば?」

 

「お、おう」

 

 言われるままに折本の隣に座ってしまった。ほんとにどうしようこの状況……。

 

「……何か悪いことしたな」

 

「なにが?」

 

「や、お前とはまぁあれだけど、あの子と俺は気まずいままだろ」

 

 言うと、折本はあーと声を出しながらやっと気づいた表情をする。

 

「そだったね。忘れてた」

 

「……そうだろうと思ってた」

 

 ぶっちゃけ折本とも気まずいっちゃ気まずいんだけどな。前に友達ならありとか言われたけど、今の情緒不安定な俺からしたら「こ、恋人じゃ駄目なんですか……?」って感じる程度には気まずい。

 うん、これは完全に俺が悪いですねはい。

 

「ていうか比企谷が気遣いできるとかマジウケる」

 

「ばっかお前、俺が普段どれだけ周りに気ぃ使って生きてると思ってんだ。何なら呼吸することさえ躊躇っちゃうまである」

 

「さすがにそれはウケないんだけど……」

 

「そこはウケてくれよ……」

 

 何で意味の分からんことではウケんのに俺の自虐ネタはウケてくれないんだよ……。それより何で俺は折本と普通に会話してるのん?

 これじゃせっかく買った本ものんびり読めんしやっぱり退散しようか悩んでいると、折本がコーヒーに口をつけて、ふいーと一息ついてから視線を向けてくる。

 

「比企谷さ」

 

「あ?」

 

「少しは自分に自信持ったら?」

 

「は、はぁ」

 

 唐突にそんなこと言われても正直困るんだけど……。

 

「んー、じゃああたしが比企谷に自信つけたげる」

 

「いやいや何言い出してんの急に……」

 

 言うと、折本は以前にも見たことのあるつまらなそうな顔をする。

 

「前にも言ったじゃん。人がつまんないのって、結構見る側が悪いのかもって」

 

「そういやそんなこと言ってたな。……それで?」

 

「比企谷ってウケるしもっと自分に自信持ってもいいんじゃないかなーって」

 

 言いながら折本は、何かを思い出したようにぷっと吹き出す。……別に俺は自分に自信がないわけではない。や、まぁ実際そんなあるわけじゃないけど勝手に決めつけられるのもごめんだ。

 

「……例えそれがそうだとしてもお前に頼むようなことでもないだろ。ていうか何でお前が俺に気使ってそんなこと言うんだよ」

 

 俺の言葉に折本は笑いを収めて、視線をコーヒーカップに移す。それに手を伸ばし、指先で縁を撫でながら小さなため息を吐く。

 

「……まぁあたしにも思うとこはあるわけ」

 

「……そうか」

 

 多分彼女にも何かしら心情の変化があったのだろう。だが、俺の一方的な理想の押しつけで告白してしまったのに責任を感じてもらう必要はない。まぁ周りに言いふらされたあの頃は正直キツかったし腹も立ったけどな。

 それでも、彼女はそういう性格だ。そのサバサバした性格からも分かるように、友達間でのネタにしようとしただけで悪意があったわけではないはずだ。

 だからこそ、昔とは少しだけ変わった俺と彼女の関係性をわざわざ変える必要もないだろう。今さら過去のわだかまりをどうこうするつもりもないし。

 

「……まぁ、なに。俺のことは別に気にすんな」

 

「大丈夫。正直そこまで気にしてないし」

 

「だろうな」

 

 折本の正直すぎる発言に思わず苦笑が漏れてしまう。なら最初から言わなくてもいいじゃねーか……。

 

「でもあたし結構暇だしさ。やっぱ比企谷に自信つけるの手伝ってあげる」

 

「や、まず俺そんなこと頼んでないんだけど……」

 

「だよね。ウケる」

 

「今の何にウケたんだよ……」

 

 まぁ俺が原因でチカちゃんも帰らせちゃったわけだし、折本の暇つぶしに付き合うのも俺の義務ではあるか。

 

「……具体的には何すんだ?」

 

「うーん、まずは見た目から?」

 

「俺の存在全否定かよ」

 

「だって比企谷髪とかそれっぽくはなってるけどそれ寝癖でしょ?」

 

 折本は俺の顔というか髪を見ながら言う。そんなにじっと見られると結構居心地が悪くなるんだけど……。

 

「……まぁ、そうだけど」

 

「じゃあもうちょっと手入れしないと」  

 

「えぇ……」

 

 何で俺がそんなことしなきゃあかんのだ……。なおも折本は俺を上から下まで眺め続ける。再び視線を顔に向けて俺と目が合うと、折本はハッと何か閃いた顔をする。

 

「目!」

 

「ちょっと折本さん? 確かに目がヤバいのは自覚あるけど流石にちょっとストレートすぎない?」

 

 この子ちょっと遠慮なさすぎでしょ……。そんな球速170キロのジャイロボール並の威力で「目!」とか言われたら前より自信なくなっちゃうよ! ちょっと辛くなってきた……。

 俺が髪のセットより先にカラコンでも付けようか本格的に悩んでいると、折本が自分のバックをがさこそと漁りながら何かを取り出す。

 

「はいこれ」

 

「……何で眼鏡」

 

「あー、これ伊達メガネだから。とりあえずかけてみて」

 

 まぁこれも折本の暇つぶしだろうし、彼女に流されるままに渡された赤縁の眼鏡をかけてみる。眼鏡八幡君を見た折本は意外そうに目をぱちくりとさせる。

 

「おー、すごい。結構イメージ変わるね。似合ってると思うよ」

 

「そうか」

 

「じゃあそれあげるよ。あたしあんまり使わないし」

 

「いや、いらんけど」

 

「いいからいいから」

 

 ぐいっと無理やり押しつけられてしまう。えぇ……これ本当に明日学校の時かけてくの……? 

 

「……と、とりあえず今日はもう帰っていいですかね?」

 

「そだね。あたしもそろそろ帰ろっかな」

 

 もう精神的余裕がなくなりつつあったから本当によかった……。折本がこのままめんどくさい絡みを続けるような奴じゃなくて本当によかった……。

 ヤバい、そろそろ本格的に折本が聖母に見えてきた(錯乱)。

 

「あ、その前に比企谷ライン教えてよ」

 

「あー、俺ラインやってないから適当にやっといてくれ」

 

「今どきラインやってないってヤバくない?」

 

 手渡したスマホを手慣れた手付きで操作しながら折本が爆弾を落としてきた。と、友達いなくてごめんなさい……。

 ていうか俺、今日はゆっくりしようと思ってただけなのに何でこんなことになってるのん……? なにこれ新手のいじめですか?

 

「よし、できた。じゃ、明日の朝写真送ってね」

 

「は? 何の?」

 

「ちゃんと髪セットして眼鏡かけた比企谷の。じゃあ楽しみにしてるねー!」

 

 言うだけ言って、折本は快活な笑みを浮かべながら立ち去ってしまった。折本さんちょっと自由すぎないですかね……。

 

「はぁ……」

 

 流石にこの状況は否が応でもため息が漏れてしまう。確かに女の子と二人きりになるのは望んでいたことだけど、まさかその相手が昔振られた相手とはな。これどう考えても積極的になりようがないじゃないですかー……。

 ていうか折本が言ってた自分に自信つける云々の話全くしてねーな。結局見た目変えろとしか言われてないんだけど……。

 

「はぁ……」

 

 これからどうなっていくか不安になり、俺はもう一度大きくため息を吐いた。

 




二ヶ月ぶりの新ヒロインなのでたまには変化球ストーリでいこうかと思いました。毎回毎回イノシシみたいに全力で積極的に突っ込む(意味深)のもあれかと思いまして。
折本√は今までとは違って八幡が積極的になって折本と付き合うまでの過程が割と長くなりそうです。折本が恋する乙女になるのはもうしばらく先に……。

ツイッターやってます。

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ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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