やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
陽乃さんと付き合うようになって一週間が経ったある日。あれから俺と陽乃さんは色々と都合が合わずに一度も会えていない。
まぁ何故か俺の電話番号とメアド知ってたからそれなりにやり取りとかはしてるんだけどな。ていうか何で知ってんのマジで。
多分小町が教えたんだろうけど。俺の個人情報がダダ漏れすぎて辛い。
今日は生徒会からの正式な依頼で、進路相談会の会場設営の手伝いをしている。もう会場設営は終わっているので、今は一色がチューター役の人を呼びに行ったのを待っている最中だ。
そういや昨日陽乃さんから、『明日は楽しみにしててね♡』と文面だけは可愛らしいメールが来てたんだよな。可愛いけど何かちょっと怖かった。
もしかしなくてもチューター役に陽乃さん絶対いるよなぁ……とか考えているうちに、廊下からがやがやとした話し声が聞こえてくる。
その中には聞き覚えのある声が混じっていて、身体が少しだけ強張ってしまう。な、何か改めて会うと思うと緊張すんな……。
声の主の陽乃さんは一色とめぐり先輩と一緒に会議室に入ってくる。俺を見つけると陽乃さんはぶんぶんと手を振ってくる。
「お、比企谷くん。ひゃっはろー!」
「ど、どうも……って、危ないじゃないっすか……」
挨拶をしながら満面の笑みでガバッと飛び込んできた。久しぶりだからってこの人テンション高すぎない?
や、まぁ内心俺もちょっとだけテンション高くなってるんだけどな。具体的には頬が緩みそうになるのを我慢しきれてない程度には。我慢できてないのかよ。
「てへっ、ごめんごめん」
ぺろっと可愛らしく舌を出す。や、まぁ超可愛いけどさ! 周りからの視線が痛いくらいに突き刺さりまくってるんですけど……。
特に雪ノ下と由比ヶ浜からの視線が超怖い。この二人は前に陽乃さんが学校に襲撃してきた時に俺と陽乃さんの関係性を知っているから尚更ヤバい。
雪ノ下と由比ヶ浜は後で覚えとけよみたいな感じの視線を俺に向けて無言で部室に戻って行った。うん、部室戻ったら確実にリンチされるなこれは。バックだけ取ったら全力で逃げようそうしよう。
……あ、まだ特に問題な二人が残ってた。めぐり先輩は俺と陽乃さんを見て顔を真っ赤にしながら「はわわわ……」とか超可愛いこと言ってる。やっぱ全然問題なかった。ほんわかぱっぱめぐりっしゅされました。
もう一人の問題の一色は、未だに俺に抱きついたまんまの陽乃さんを見て目をまん丸と開いて驚いた表情をしている。
「え、えっと、先輩とはるさん先輩ってもしかしてつ、付き合ってるんですか?」
「……あー、まぁ、そうだな」
言うと、一色は呆れた表情をしながら大きくため息を吐いた。
「ほんと先輩の周りって強敵多すぎませんかね……。雪ノ下先輩のお姉さんとかいつ虜にする時間あったんですか……」
「は? 何の話してんのお前」
「むーっ! 何でもないですよ! もういいです! 今度わたしの√で先輩にいっぱい愛してもらうんですから!」
頬をぱんぱんに脹らませてぷんぷん怒りながら、一色は俺と陽乃さんから離れて生徒会メンバーの方へ行ってしまった。何かものっそいメタい話してきた気がしたんですけど気のせいですよね?
まぁ、やっぱり一番の問題はこの人だよな……。
「……いい加減離れてくれませんか?」
俺の呆れ顔に陽乃さんはぷくっと頬を片方だけ脹らませる。
「もー、何か比企谷くんつめたーい」
「はいはい、今はぶーたれないでくださいよ。あとでいくらでも甘えてきていいですから」
「いーやーだー。あっ、比企谷くんは進路相談していかないの? お姉さん何でも聞いちゃうよ?」
駄々っ子かよ。しかも話の内容思いっきり変えてきやがった……。
「俺は一応決まってるんで大丈夫ですかね。まぁ困ったら今度陽乃さんに聞きますから」
「ん、分かった」
満足げに頷く陽乃さん。分かってくれたようで何より。
「なのでさすがにもう離してくれないっすか? みんな陽乃さん待ちですよ」
「……分かった。あとでいっぱい甘えさせてね?」
納得いかない表情の陽乃さんはむーと少し唸りながらやっと離れてくれる。
「もちろん分かってますよ。あ、陽乃さん」
呼びながらくいくいと手招きをして、周りになるべくバレないように陽乃さんの頬に軽くキスをする。
「……んっ、進路相談頑張ってくださいね」
「はぁ……これじゃ集中できなくなっちゃうじゃない。……ばか」
陽乃さんは俺の身体をとんっと出口に向かって押しながら恥ずかしそうにぽしょりと呟く。やっぱ攻められると弱いとことか超可愛いわ。
緩みそうになる頬を軽く押さえながら足早にこの場を後にしようとすると、まだ一人だけこっちに視線を向けている人がいた。
……ていうかめぐり先輩だった。
「はわ、はわわわ……」
やべぇ、これ絶対キスしてるとこ見られてたわ……。
××××××
会議室を後にしてから部室に戻ったら、雪ノ下と由比ヶ浜がめっちゃ満面の笑みで待っていた。うん、天国(陽乃さんからの抱擁)から地獄(お説教)へ叩き落とされましたねはい。
まぁなんやかんやで部活も終わり(ほとんど記憶がない)、今は進路相談が終わった陽乃さんを校門で待っている。
陽乃さんからの『今から行くね』というメールを確認してから少し待つと、陽乃さんがぱたぱたと走ってくる。
「ごめん、待った?」
軽く息を切らせながら陽乃さんが少し申し訳なさそうにする。何かこれデートの待ち合わせみたいだな……。
「いえ、俺もさっき部活終わったばっかなのでそんなには待ってないですよ」
「比企谷くんは素直だねぇ。そこは普通全然待ってないって言うところだよ?」
「はは……すみません。じゃあ行きましょうか」
自転車を押して歩き出すと、隣を歩く陽乃さんが不満そうにぽしょりと呟く。
「むー、自転車邪魔だなぁ……。今は手を繋ぎたい気分なのに」
「……壊すとか言わないでくださいね」
「比企谷くんはわたしのこと何だと思ってるの……」
そりゃもちろん大魔王兼ぴゅあぴゅあ天使に決まってるじゃないですか。
というか、この人は常に身体を触れ合わせてなきゃ満足できない病気か何かなのかな?
「はぁ……」
ため息を吐きつつ陽乃さんの手をぎゅっと握り、しゅるしゅると動かして指を絡めた。
「……これで満足ですか?」
「満足だけどその言い方だと何か仕方なくみたいでちょっと嫌だなー」
陽乃さんは頬を少し赤らませながら不満げな表情を浮かべる。
「……俺だって嬉しいに決まってるじゃないですか。言わせないでくださいよ……」
「そ、そう……」
恥ずかしくなり、お互い少し俯きながら無言で歩き始める。冬の冷たい外気に晒されているというのに、やけに顔が熱い。
ていうか片手で自転車押すの意外としんどい……。でも、もう片方の手が天国だから気にしない。
「ねぇ、比企谷くん」
しばらく歩き続けていると不意に、手を繋いでいた陽乃さんの動きがぴたりと止まる。俺もそれに合わせて立ち止まった。
「どうしました?」
聞くと、陽乃さんは上目遣いでこちらを見つめてくる。
「進路相談会始まる前に言ったこと覚えてる?」
……。
…………。
……………………。
うん、まったく思い出せない。だって陽乃さんに抱きつかれたり部室で二人にお説教とかで割と濃密すぎる時間だったからね……。
「えーと、すみません。陽乃さんが可愛かったことくらいしか覚えてないです」
「そ、そういうことじゃなくてさ……。その、わたしのこと甘えさせてくれるんじゃないの?」
そこでデレちゃうのね。ちょっと陽乃さんチョロすぎない?
うん、そういえば確かにそう言ってたな……。それで公園で立ち止まったわけか。まぁここなら人目につきづらいし大丈夫か。
「……ちょっと寄り道していきませんか?」
「……うん」
陽乃さんは俺を見つめながら繋いでいた手の力を強めてくる。
その瞳はしっとりと濡れていて、切実な感情を纏っていた──。
陽乃さんとのラブコメ感がすごかったです。久々に書くぴゅあぴゅあはるのんめっちゃ楽しかったです(๑´ω`๑)
後編はもっと甘々にしていこうと思います!
もうそろそろお気に入りが2500いきそうでテンション上がってます。あと感想もそろそろ200いきそうです。さらに評価人数ももう少しで100人いきそうで色んなことにwktkしてます。
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ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!