やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
お互いの鼻先が触れそうなくらい近くに陽乃さんがいる。
きめ細かく透き通るような白い肌は真っ赤に紅潮し、陽乃さんの目には不安と期待が入り混じっていて唇は微かに震えている。
普段の陽乃さんからは想像ができないその表情が凄く可愛らしくて愛おしい。つい最近まで怖いとしか思ってなかった人なのにここまで印象が変わるとは自分でも思わなかった。
俺と目がぱっちりと合うと、陽乃さんは顔を逸らす。それに合わせて艶やかな黒髪が不安げに揺れた。
「ご、ごめんね? すぐ降りるから」
完全に主導権を握られて慌てているのだろうか。陽乃さんは俺の首に回していた両手を離して降りようとする。
でも、今だけは俺のターンだ。陽乃さんには悪いけど俺の好きなようにやらせてもらうことにしよう。
陽乃さんの背中に回していた両腕の力を強めておでこ同士をぴとっとくっつける。
「あ、や、うぅ……」
陽乃さんは可愛らしくあうあう唸りながら俺の胸をぽかぽかと叩いてくる。ヤバい、年上の陽乃さんがこんなことするとかギャップが凄くて可愛いすぎて死にそうなんだけど。
ふ、ふー、お、おちちゅけ俺! 今だけは俺が主導権を完全に握って陽乃さんを落とすって先代のじっちゃんにも約束しただろ!
……全然落ち着けてなかった。先代のじっちゃんって誰だよ。まぁある意味落ち着いたし先代のじっちゃんに感謝だな。
「どうしたんです? 顔、真っ赤になってますよ?」
「や、やぁ……そんなことっ、い、言わないでぇ……」
よほど恥ずかしかったのか、陽乃さんは両手を顔で覆いながら俺の胸に頭をぽすりと乗せた。そしてそのまま俺の胸に頭をぐりぐりとこすりつけてくる。
うわ。うわ。うわ。マジでこんなに可愛くなるのか。
……もっと、陽乃さんの可愛い姿を見たい。
その衝動に駆られて、俺は陽乃さんの背中をゆっくりと撫で回した。
「あ、あふぁぁぁ……」
俺の胸に身体を預けながら陽乃さんが身体をびくびくと震わせながら艶っぽい声を上げる。
多幸感に打ち震えながらそのまま陽乃さんの身体を撫で回し続けた。
××××××
「はぁっ、はぁっ……も、もうだめ……」
しばらく続けていると、陽乃さんが顔を上げた。暖房もついていない教室なのに陽乃さんの頬は上気していてしっとりと汗ばんでいた。
何重もの服越しなのに陽乃さんの身体からは熱が伝わってきて、密着しているだけで気分がおかしくなりそうになる。
「何がだめなんですか?」
「が、我慢、できなくなっちゃ、う、からっ……。だから、もう、……ね?」
途切れ途切れの言葉を紡ぐ陽乃さんが涙目で上目遣いで見つめてくる。その表情があまりにも可愛く、そしていじらしくて、さっきまで何とか抑えていた気持ちが爆発してしまった。
「……我慢なんてしなくて良いんですよ」
そう言い、俺はゆっくりとできるだけ優しく、そして慈しむように陽乃さんに唇を重ねた。
「〜〜〜〜!?」
陽乃さんは突然のことに目をぱちぱちと瞬かせる。身体はがちがちに固まっていたので、陽乃さんの頭を優しく撫で続ける。
次第にリラックスしてきたのか、陽乃さんはゆっくりと身体を預けてきた。
「ぷはっ……んっ……」
長い口づけを終えて唇を離すと、陽乃さんはすぐさま唇を重ねてくる。
陽乃さんは頬を朱に染めて目をとろんとさせながら、何度も嬉しそうに唇を重ねてくる。それがたまらないくらい愛おしくて抱きしめる力がつい強くなってしまう。
それでも陽乃さんは文句も言わずにそれを受け入れてくれて逆に俺より力いっぱい抱きしめてきた。
ちょっとだけ痛いです。
「ん……えへへ」
満足したのかキスをやめた陽乃さんが蕩けるような笑みを浮かべながらころころと甘えてくる。
幼い子どものような無邪気な笑顔を浮かべる陽乃さんが可愛いすぎて心臓が痛いくらいに高鳴る。
や、本当に可愛いすぎて死にそう。死因が萌えってある意味本望かもしれん。
「ふふっ、まさか本当にこんなことになっちゃうなんてね」
「……陽乃さんだってこうなるの分かってて今日学校来たんですよね?」
ぷいっと顔を背ける陽乃さん。ほっぺたぷにぷにしたい。
よし、しよう。
ぷにーーーっ。
「んっ……な、なにひへるの?」
「や、陽乃さんが可愛くてつい」
「そ、そう……」
陽乃さんは頬を真っ赤に染めてしまった。あぁ、そういや可愛いって言ったの初めてだったっけ。心の中じゃ可愛いって言いすぎてある意味ゲシュタルト崩壊してたんだけどね。
「……ねぇ、比企谷くん」
一通り陽乃さんをぷにぷにし終えるとこっちを向いた陽乃さんが話しかけてくる。
「何ですか?」
聞くと、陽乃さんは身体をもじもじと動かしながら小さな声でぽしょりと呟く。
「も、もう1回……」
「へ……?」
「もう1回……して?」
頬を赤らめながら陽乃さんが上目遣いで見てくる。てっきり陽乃さんのことだから自分からしてくると思ってたけどそんなことはなかった。
……甘えん坊さんなのかな? だとしたら可愛いすぎてそろそろマジで八幡死んじゃうよ?
うん、陽乃さんは大魔王なんかじゃなくて天使だった。今まで陽乃さんのことを怖がってた自分を殴りたいぜ!
「……本当に可愛いっす」
「も、もうっ……比企谷くんのくせにナマイキだぞぉ?」
こんなことを言いつつも陽乃さんは嬉しそうに愛らしい笑顔を浮かべている。
「……目、閉じてください」
「……うん」
まぁ、とりあえず今はこの時間を楽しむことにしよう。
××××××
まぁあれから色々としましたねはい。陽乃さんが可愛いすぎてちょっと調子に乗って色々としちゃった……。
えっちなことなんてしてないよ? ほんとだよ? 学校でそんなことする勇気ないしね! ほんとだよ?(しつこい)
今は陽乃さんを駅まで送って行っている最中だ。当たり前のように陽乃さんは俺の腕に抱きついている。自転車押しづらいけど腕に柔らかい感触が伝わってきてるからそんなの気にしない。八幡の八幡が元気百倍になってるよ! 完全に変態ですねはい。
うん、何か俺変にテンション高くて気持ち悪いわ。反省。
「寒いね」
「そうですね」
「もー、そこはさりげなく手を繋いでくるところだよ?」
ぷくーっと頬を膨らませる陽乃さん。年上だけどその表情は少しだけあどけなくてとても可愛らしい。ちょっとというかかなりあざといけど。
「や、だってもう俺の腕に抱きついてるじゃないですか」
言うと、陽乃さんはにやりと目を細める。わぁ……いい笑顔してるなぁ。
でも純粋な笑顔が陽乃さんには一番似合うって思うんだ。その新しい玩具を見つけたような笑顔は八幡まだちょっと苦手かなぁ……。
「比企谷くんは暖かそうでいいよね。わたしのがむにゅーって当たってて気持ちいい?」
「なっ……」
顔がかぁっと熱くなるのが自分でも分かった。えげつないこと言うなこの人……。
俺の顔が真っ赤なのを気づいたのか陽乃さんがずいっと顔を近づけてくる。ちょっ、ここ外なんですけど……。
や、やべぇ、完全に陽乃さんのペースに……。
「ふふっ、比企谷くんはえっちだなぁ」
「思春期男子なんですからそこは勘弁してください……」
「じゃあお姉さんのこと、めちゃくちゃにしたい……?」
唇が触れそうな距離で陽乃さんが蠱惑的な表情でとんでもないことを言ってくる。
「……確かにしたいですけど今はいいです」
「ふーん……どうして?」
「……今はこれだけで十分だからですよ」
そう言い、陽乃さんに唇を重ねた。触れるだけの子どもっぽいキス。でも今はそれだけで十分だ。
唇を離すと陽乃さんは甘い吐息を漏らす。そして照れくさそうに頬を朱に染めた。
「あはは……これじゃ完全にわたしの完敗だよ」
完敗ってこの人は俺に何を勝とうとしてたんだ……。うん、考えるのはやめておこう。
「あ、もう着いたね」
気づいたらもう駅に着いていたようだ。ていうか駅の近くでキスしちゃったのか。絶対誰かに見られてたよな。うわぁ、恥ずかしいわ……。
内心悶えていると陽乃さんはそんなのお構い無しに唇を重ねてきた。……マジですか。ここもう駅前なんですけど……。
うん、周りからの視線、特に野郎どもの視線がヤバい。
「んっ……じゃあばいばい比企谷くん! また今度ね!」
「はい、また今度」
満面の笑みを浮かべた陽乃さんはぶんぶんと手を振ってきた。それに苦笑しつつも俺も手を振り返す。
ここ数日、特に今日は陽乃さんの色々な新しい顔を見れた。多分これからはもっと可愛らしい表情を見せてくれるんだろう。
そのことを楽しみに思いつつ、俺は周りの野郎どもの嫉妬の視線から逃げるように自転車を漕ぎ出した。
はるのん√はひとまず終わりです。ぴゅあぴゅあはるのんはいかがでしたか?もちろんアフターも書きます。更に天使なはるのんを書く予定です!
次回から二、三ヶ月ほどアフターを連続でやろうと思います。まだ1度もアフターを書いてないガハマちゃん、ゆきのん、小町を連続で書く予定です。もちろんいろはすとサキサキも書く予定です。
もしかしたらルミルミかそれあるー!ちゃんは書き始めるかもしれません。
ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!