やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
3月3日、時刻は現在午前0時0分。
つまり今日は世界一可愛い妹兼俺の彼女の小町の誕生日だ。
俺の誕生日の時はメールでお祝いされたし小町にも同じで平気だよなと思いながらメールを打つ。
『誕生日おめっとさん』
これでよしっと。小町のことだから俺みたいに時間差返信はないだろうし寝ることにするか。
ちゃんと送信したかを確認してから電気を消すと、廊下からバタバタと足音が聞こえ部屋のドアがガチャりと開く。
見ると、小町がふんすっと仁王立ちしていた。何してんのこの子……と思っていると、小町は俺に向かって全力で走ってきて見事なタックルを決めてきたぁぁぁぁぁ!?
何かこの下り前にもやった気がするな……。
「いってぇ……」
とりあえず電気をつけると小町は頬をぱんぱんに膨らませてむーっと怒ったような表情をしていた。
「……どうした?」
「お兄ちゃん、小町は悲しいです。誕生日なのにメールで済ませちゃうなんて小町は本当に悲しいです」
よよよと泣く振りをする小町はそりゃもう可愛いですよ。なんなら今すぐ愛でたい。
でもちょっと理不尽じゃないですか? 小町だってメールだったじゃん!
「や、お前も俺の時メールだったじゃん」
「それとこれとは別だよ!」
「やだ、超理不尽……」
ふぇぇ……小町ちゃんがジャイアニズムだよぉ……。
でもまぁそうだよな。せっかく可愛い妹の誕生日なんだからちゃんとお祝いの言葉くらい言わなきゃな。
「まぁ、その、なんだ。……おめでと」
「う、うん。ありがと……」
小町は頬を朱に染めながらにへっと微笑む。ほんと可愛いやっちゃなぁ……。
「それでお兄ちゃん。誕生日プレゼントは?」
聞きたくない単語が聞こえたのでうっと唸りながらそっと目を逸らす。なんなら首も90度回転させてます。
「ごみいちゃん……?」
「や、だってなぁ……」
みんな話を聞いてくれ。みんなって誰だか分からないけどとりあえず話を聞いてくれ。
冬休みの最終日に俺と小町は付き合うことになったが、小町は絶対俺と同じ高校に行きたいから受験が終わるまではお兄ちゃんに甘えるのは我慢すると言ったのだ。
んで、色々あって受験が終わって自由になった小町は今まで我慢してた何かが爆発してしまったかのように、毎日お兄ちゃんお兄ちゃんと言いながら俺の傍にずっといるようになったのだ。
平日は学校から帰って来たら満面の笑みで俺に抱きついてきて、「小町にする? 小町にする? それともこ・ま・ち?」とか小町以外選択できないこと言ってくるし。
休日なんて朝起きたら俺の布団に何故かいるんだぜ? 理由を聞いたら「お兄ちゃんの寝顔見てたら気づいたら一緒に寝ちゃってた……えへへ」みたいな超恥ずかしいこと言ってくるし。
しかも毎週な。最近なんて平日も同じことしちゃって朝の学校兄妹仲良く遅刻しちゃったまである。
まぁここまで長くなったけど要はあれだ。小町が俺にデレデレのべったりになってしまったせいで小町の誕生日プレゼントを買いに行く時間がありませんでした……。
だから今日の昼にでも小町連れてどっか行こうと思ってたんだけどまさか今言われるとは思わなかった。
「お兄ちゃん!」
「おわっ」
小町に頬をぺちぺちされてハッと現実に戻る。少し考えすぎてたな。
まぁみんなには小町の可愛さが伝わっただろうし良いか。みんなって誰だか未だに分からないけど。
実際は言い訳する予定だったけど最初から最後まで小町の可愛さしか伝えてなかったような気が……。うん、気にしたら負けだな。
「なに考えてたの?」
「まぁちょっと色々な。ていうか何か欲しいものでもあったのか?」
「小町は別に物が欲しいんじゃないよ。お兄ちゃんと一緒にいられればそれだけで充分だもん。あ、今の小町的に超ポイントたか……い?」
何で最後疑問形なんだ? と思っていると、小町は目をきらきらと輝かせながら俺のことを見てきた(可愛い)。
「お兄ちゃん、小町やっぱり欲しい物あったよ」
「おぉ、そうか。何が欲しいんだ?」
スカラシップの錬金術師で有名な俺(別に有名じゃない)だから今回はそれなりに高い物も平気なはずだ。
夏は財布に四百円しかなかったからな……。あれはお兄ちゃん超情けなかった。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「だからお兄ちゃんだってば」
……この子何言ってるの? 八幡ちょっと難しすぎて理解出来ない。
「ええっと……小町ちゃん? それはどういう意味かな?」
「小町はお兄ちゃんが欲しいの」
けろりとした顔で小町が当たり前のように言う。え、何。もしかして俺がおかしいの?
「じゃ、じゃあどうぞ?」
「うん!」
とりあえずよく分からないけど了承すると、小町は嬉しそうに頷いて俺にガバッと抱きついてきた。
おうふ……いきなりは心臓に悪いぞこれ……。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
むぎゅーっと抱きついてきた小町は楽しそうに何度も俺の名前を呟く。
とりあえず頭を撫でると小町は気持ち良さそうに目を細めてさらにぎゅーっと抱きついてきた。
「あのー、小町ちゃん……?」
「お兄ちゃんは今小町の物なのです。なのでお兄ちゃん、シャラップ」
小町の白くて細い人さし指がぴとっと唇に触れる。どうやら喋る権利はないようだ。
え、何。俺今「人」じゃなくて「物」として扱われてるの?
何それ辛い。
「えへへー、お兄ちゃんっ」
にこっと微笑んだ小町は小さくてぷるぷるとした唇を重ねてくる。
もしかしなくても誕生日だからテンション上がってんのかな。
「んっ……んむっ、はぷっ……」
唇が重なると小町は唇を啄むように何度も重ねてきた。目はとろんとしていてとても幸せそうな表情をしている。
「ぷはっ……えへへ」
唇が離れると頬を朱に染めながら満面の笑みを浮かべる。
うん、まぁせっかくの誕生日だし俺もちょっと積極的になるか。
八幡頑張って小町にご奉仕しちゃうぜ! どうでもいいけどご奉仕って何かエロいよね(本当にどうでもいい)。
「ふぇ?」
俺の胸元でころころ甘えている小町をベッドに押し倒す。所謂床ドンというやつだ。
まぁベッドだから床ではないんだけどね。細かいことは気にしない。
「……一緒に寝るか?」
唇が触れそうなくらい近くの距離で言うと、小町は顔を真っ赤にする。
「あ、あうぅ……」
「ほら、どうすんだ? んっ」
うーうー唸っている小町に唇を重ねると背中に両手を回してきて、そのまますりすりと撫で回してくる。
「んっ……一緒に寝たいけどお兄ちゃんなんでこんなに積極的なのぉ……」
「まぁ小町の誕生日だからな。お兄ちゃんちょっと頑張っちゃいました」
てへぺろ☆と下卑た笑いを浮かべると小町はうへぇ……と顔を歪ませた。泣きそう。
「それはポイント高いけどお兄ちゃんの今の顔はポイント低いよ……」
「そりゃ悪かったですね……。んじゃ寝ようぜ」
「うん!」
電気を消してから頭から布団を被る。そしてそのまま小町をぎゅっと抱きしめる。
「はわわわ……お兄ちゃんの匂いでいっぱいだよぉ……」
「嫌なのか?」
「むしろ最高すぎて死んじゃいそうだよ……」
「そりゃよかった」
死ぬのは良くないけど小町が満足してるなら本当に良かった。俺もドキドキしちゃってるし寝れるかなこれ……。
きっと、これからも俺と小町は誕生日を祝い祝われを繰り返すのだろう。
そんな日々がいつまでも続くのを祈りつつ、俺は小町を優しく抱きしめた──。
誕生日SSなのに誕生日らしいことはあんまりしてないのは気にしないでください(懇願)。
とりあえずこの一言を。小町誕生日おめでとう!
ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!