やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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いろはす√
あざとかわいい後輩と……。【前編】


 

 冬休みが終わり、学校が始まってから1週間がたった。

 未だに女子と2人きりにはなれていない。今さらだけど俺が女子と2人きりになることなんてなくね? クラスで女子と話すことなんてないし、奉仕部でだって由比ヶ浜が三浦とかと遊びに行くときくらいしか雪ノ下と2人きりにはならないし。

 あ、平塚先生とは2人きりになるときがあるな。いや、あの人は女子って年齢じゃ……これ以上考えるのはやめよう。

 

 今は奉仕部でいつも通り読書をしている。この1週間は特に依頼もなかったから平和だった。あったとしても何度か生徒会の仕事を(俺だけが)手伝わされたくらいだ。なんであの子は毎回俺だけ連れてくの? そんなに俺のこと好きなの? 俺的には大歓迎だよ?

 

 噂をすればなんとやら、扉が叩かれた。多分、というか間違いなくあいつしかいないだろう。

 

「どうぞ」

 

 柔らかい声音で雪ノ下が扉の方を見て声をかけた。雪ノ下も誰が来たのか分かっているのだろう。

 

「失礼しまーす……」

 

 扉が開くと、予想通り一色がいた。

 一色は泣きそうな顔をしながら俺の近くまで歩いてきて、俺の制服の袖をきゅっとつかんだ。ちょっ、急にそういうことするのやめろよ! この頃動悸がどーきどきってなっちゃうだろ! あ、それはちょっと違うな。たしかにどきどきはしてるけど。

 

「せんぱーい、やばいですやばいです……」

 

 今の一色を見てるとクリスマスイベント前に依頼をしにきたときを思い出すな。

 

 クリスマスイベント……。グランドデザイン……。うっ、頭が……

 

「いろはちゃん、どうしたの?」

 

 俺が謎の頭痛に襲われていたせいで、先に由比ヶ浜に聞かれてしまった。一色が泣きそうな顔をしているからか、由比ヶ浜は心配そうな顔をしている。由比ヶ浜いいやつだなー。でもこれって絶対俺が生徒会室連れてかれるだけなんだよねー……。

 

「えっと、先輩……、今日も生徒会の手伝い頼んでもいいですか?ちょっと色々と大変でして……」

 

「なにが大変なんだ?」

 

「今日生徒会の仕事があるのを他の役員の人に伝え忘れてて、わたしだけで仕事するしかないんです……」

 

 それ自分のミスじゃん。今日は2人だけかよ……。

 

 ……ん?2人だけ……?

 

「それって今日は俺とお前だけってことか?」

 

「そうなりますね」

 

 ……時は満ちた。やっとだ……やっと女子と2人きりになれるぞ……!

 

「よしっ、じゃあ行くか」

 

「……先輩どうしたんですか?いつもならもっと嫌がるのに」

 

 一色は俺のことを不思議そうにじっと見てきた。雪ノ下と由比ヶ浜も不思議そうに見てくる。そ、そんなに見つめられると照れちゃうんだからねっ……。ちょっと今のは気持ち悪すぎたな。

 

「あなたが自ら仕事をしようとするなんて……。明日は雪でも降るのかしら」

 

「ほんとだね。ヒッキー変なものでも食べたの?」

 

「いや、平気だけど?それに一色が困ってるんだから手伝うのは当たり前だろ。あと千葉はそんな簡単に雪は降らん」

 

 俺が仕事を進んでやるのはそんなに珍しいことなのん?うん、そうとう珍しいな。てか初めてかもしれん。

 というかなんで一色は顔赤くしてるの?

 

「と、とりあえず行きましょうかっ」

 

 そう言い、一色は俺の手をぎゅっと握って歩き出した。

 な、なんで手握ってきたの?雪ノ下と由比ヶ浜の視線が超怖いんですけど……。

 一色は小さな声で「あざとすぎですよ……」って言ってるけど、俺別に難聴系じゃないから普通に聞こえてますからね?

 

 ……手柔らかくて温かいな。なんかもう俺が落とされそうなんですけど……。

 

 絶対にお前のほうがあざといだろ……。

 

 

××××××

 

 

 特別棟から生徒会室まではかなり距離がある。今もまだ歩いているわけだが、なんでか一色とは手を繋いだまんまだ。一色はずっと下を見て歩いてるからどんな表情をしてるかは分からない。俺? もちろん俺はだらしない顔をしてるよ? だってやっと女子と2人きりになれるんだもん! これでテンション上がらずにいられるわけないだろ!

 

「……今日はなにやればいいんだ?」

 

 俺が「最高にハイッてやつだぜぇぇぇ!」ってなってるのをバレないように、いつも通り仕事の内容を聞くと、一色はびくっと肩を震わせゆっくり顔を上げて俺を見た。……そんな顔真っ赤にしてるなら手なんか繋がなくてもいいじゃん。

 

「え、えっとですね、最近たまってきた書類の整理ですね」

 

 要は片付けってことか。まぁいつもより楽ではあるけど、一色からしたら力仕事だしな。そりゃ1人じゃ辛いか。

 

「分かった。てかひとつ聞いていいか?」

 

「はい? なんですか?」

 

「なんで俺ら手繋いでんの?」

 

 一色は立ち止まり、あごに手を当てて考える仕草をしてから首を傾げた。

 

「……なんででしょうね?」

 

「質問を質問で返すなよ……」

 

 冬休みである程度そういうのに耐性がついたからよかったものの、今までの俺ならヒキガエルよろしく、粘液(手汗)で大変なことになってたぞ。うわ、自分で過去のトラウマを掘り返しちゃった……。

 なんかもう仕事も一色を落とすのもやる気失せてきちゃったよ……。

 

「でもこんな可愛い後輩と手を繋げてるんですよー?もちろん嬉しいですよね?」

 

 うーむ……いつもならあざといの一言で終わらせちゃうけど、ちょっと試してみるか。

 

 行くぜ、メディアの力を信じて......!

 

「まぁそうだな。お前可愛いし嬉しくないこともないぞ?」

 

 ……ちょっと最後は恥ずかしくて濁しちゃったけど、けっこうすんなり言えたな。

 実際一色が可愛いのは嘘ではないし、俺だってある程度は好意のあるやつじゃなきゃこんなことできないしな。それに名前も知らない女子になんてやったら犯罪者扱いされちゃうしね!

 

「ななな、なんで急に可愛いなんて言うんですか口説いてるんですか初めて可愛いって言ってくれたのはものすごく嬉しいですけどもうちょっと場所とタイミングを考えてからにしてくださいごめんなさい」

 

 一色は顔を真っ赤にして早口でまくし立てた。これは成功ってことでいいのか……? 早口すぎてなに言ってたか分からなかったけど、あわあわしながら腕をブンブンしてるし。

 しかも俺の手を握ってるから、俺も一緒にブンブン、ブンブン。腕が痛い……

 

 というかもう生徒会室通り過ぎちゃってるじゃん……。一色がずっと真っ直ぐ歩いてくから気づかなかったわ。それにさっきからずっと「可愛い……可愛い……えへへ」って繰り返してるし。

 あれだな、正直めっちゃ可愛いです。男に可愛いって言われるのは慣れてると思ってたけど、意外とウブなんだな。

 

「おい、もう生徒会室通り過ぎてるから。どこまで歩いてくつもりなんだよ」

 

「ふぇ?あ……本当だ」

 

 今の「ふぇ?」は確実に素だよな……。素でもあざといのかお前は……。

 

 生徒会室の前まで戻り、一色は慣れた手つきで扉の鍵を開けた。生徒会室の中へ入ると、繋いでいた俺の手を離して、にこっと微笑んだ。

 

「じゃあ頑張ってくださいね!」

 

「いや、お前も頑張れよ……」

 

 最初から他力本願すぎるだろ……と思いながら気付いたら一色の頭を撫でてしまった。最近そういう類のものを見すぎたからだな。流れるようにやっちゃったし。

 

 “頭を撫でる”という行為は、好きな相手にされるとドキッとするらしいが、好きでもない相手にされると嫌悪感しかないらしい。元から頭を撫でられるのを嫌いな人もいるらしいから、女心って難しいんだなって思いました(小並感)

 

 まぁこの情報が正しいなら俺は確実に一色に罵られるけどな。だって一色って葉山のこと好きじゃん? 好きでもない相手(俺)にされたりなんてしたら嫌悪感しかないんだろ? これもう終わりじゃん……。

 

「は、はい……あ、あの、が、頑張ります……」

 

 俺がまだ頭を撫でるのを続けていたからか、一色はうつむいてもじもじしながら答えた。

 

 あんれー? これってもしかしてそういうことなの?でも一色は葉山のことが好きなんだし……。

 

 とりあえず頭を撫でるのをやめて手を離すと、一瞬、本当に一瞬だけ一色が寂しそうな顔をした。

 

 はぁ……そんな顔されたらなぁ……。これはさすがに勘違いじゃないと思うしな。

 

「仕事」

 

「はい? 仕事がなんですか?」

 

「仕事終わったら、また頭撫でてもいいか?」

 

「え、えっと、しょ、しょうがないですね! べ、別に撫でても構いませんよ?」

 

 ……なぜか上から目線で言われてしまった。でも一色さん? 頬が緩んじゃってるのは隠せてないですよ?

 

「はいはい。じゃあとっとと終わらせますかね……」

 

 仕事が終わった後をほんの少しだけ楽しみにしつつ、俺と一色は仕事を始めた──。

 




 中途半端に終わってしまってすみませんm(__)m
次回はもっとイチャイチャさせようと思います!

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