やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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ガハマさん√スタートです!


ガハマさん√
やはりガハマさんも積極的になるのはまちがっている。【前編】


 

 金曜日の夜、比企谷家にて俺は炬燵とフュージョンして、コタツムリと化していた。

 気分は激萎えぷんぷん丸だ。これじゃ怒ってるのか落ちこんでるのか分からないな。まあ、怒ってもいるし落ちこんでもいる。

 理由はもちろん、学校が始まったこの一週間誰とも二人きりになれなかったからだ。なれそうなタイミングは確かにあったんだ。でもことごとく邪魔ばかり入った……。

 由比ヶ浜が三浦達と遊びに行った日は、材木座がプロットを持ってきて「八幡が読んでくれるまで帰らないんだからね!」と謎のツンデレみたいな発言をして雪ノ下と二人きりになれず。

 由比ヶ浜がなんでか知らんがベストプレイスに来たときは材木座が「はちえもーん! 一緒に飯食おうぜ!」とのび太と中島が混ざった感じの言葉を発しながらやって来て二人きりになれず。

 部活終わりの戸塚とたまたま会い、一緒にサイゼに行ったらまた材木座がいて二人きりになれず。

 

 ……うん、材木座まじで許さん。あいつなんなの? 俺のこと好きすぎじゃね? 

 

 はぁ……でもいいんだ! 俺には小町がいるから! 妹さえいればいいんだ! と半ば頭がおかしくなっていると、リビングのドアがガチャリと開き、世界一可愛い妹がやって来た。

 

「ふいー、休憩休憩」

 

 部屋で勉強していたのが一目で分かるくらいに疲れた顔をしている。

 やだ、ちょっと目が腐りかけてて全然可愛くない。いや、やっぱり小町だから目が腐ってても可愛いな。もう小町相手に積極的になってもいいですかね? 千葉の兄妹は何でもありだからな。

 

「お疲れ。コーヒー飲むか?」

 

「うん、飲むー……」

 

 小町と入れ替わりに炬燵とのフュージョンを解除し、コーヒーを淹れるためにキッチンへ向かった。

 

 

「ほれ」

 

「ありがと」

 

 コーヒーをふーふーしてから(可愛い)、一口飲んだ小町は俺のことをさっきまでの腐りかけた目ではなく、爛々と目を光らせながら話しかけてきた。

 

「ねぇお兄ちゃん!」

 

「ん、どしたー」

 

「誰かと二人きりになれたのー?」

 

「……いや、なれてない」

 

「はぁ……これだからごみいちゃんは……」

 

 あ、また目が腐りかけた。だめなお兄ちゃんでごめんね……? 

 コーヒーをもう一口飲み、ふいーと息を吐いた小町が、ずびしっと俺に指を突き立てる。

 

「お兄ちゃんはさ、誰と二人きりになりたいの?」

 

「……」

 

 もちろん黙秘である。

 

「ははーん、結衣さんでしょー」

 

「……」

 

 ……黙秘である。

 

「そういうことなら小町にお任せ!」

 

 妹が本格的におかしくなってしまったようだ。この子勝手に自己完結させちゃったよ……。

 

「じゃ、小町もう部屋に戻るから! 明日楽しみにしててね!」

 

 ばちこーんとウインクをした小町は、コーヒーを持って部屋に戻っていった。あざと可愛い……。

 

 

××××××

 

 

 明くる日の朝、というかもう昼だな。時計の針は真ん中を少し超えたくらいだ。スーパーヒーロータイムがない土曜に早起きをする意味はないから爆睡してた。

 洗面所へ行き、顔を洗い歯を磨く。いくら家から出なくてもこれくらいはちゃんとしなきゃな。まあ、スウェットは着替える気にはならんけど。

 中二の冬のある日、家で私服でいたら母ちゃんに「あんた遊ぶ友達もいないのになんで着替えてんの?」と球速170キロのジャイロボールが飛んできてからは冬場に着替えることはほとんどなくなった。辛い。

 リビングへ行くと小町はいなかったが、その代わりにテーブルに女子特有の折り方をされた紙が置いてあった。

 その紙を開いてみると修学旅行のお土産リストと同じように、ピンクと黄色で書かれた丸文字がスターバーストストリームしてた。

 

『お早うお兄ちゃん! 今日はお友達とお勉強するから帰ってくるのは夜になるから! お兄ちゃん次第ではお泊りすることになるかもね! じゃあ頑張ってね☆』

 

 …………なんだこれ。

 

 お兄ちゃん昨日から小町のことがとっても心配。受験勉強のリフレッシュの方法調べといてあげるか……。

 しかしこれは非常にまずい。昨日の小町の発言からして、これから大変なことになりそうな気がする。というか絶対、現在進行系で大変なことになってるぞコレ……。

 

 小町の手紙を大事にポケットに入れていると(気持ち悪い)、インターホンが鳴った。

 アマゾンかな? アマゾンだよね? ガハマちゃんじゃないよね?

 玄関口でアマゾンだと信じて印鑑を震えながら握りしめる。ようこそアマゾン! 待ってたよ!(何も注文してない)、と扉を開けるとそこにはアマゾンではなく予想通りの人物がいた。もうあれですわ、いくら小町でも許さん。今度プリン買ってあげよ(矛盾)

 

「や、やっはろー」

 

 ベージュのコートに細身のジーンズを身にまとった由比ヶ浜が現れた! その手には買い物袋が握られている。さて、八幡はどうする?

 

「や、やっはろー……」

 

 やっはろーと返すくらいしか思いつかなかった……。今さらだけど初めて使ったかもしれん。

 誰が来るかは大方予想がついていたからそこまで動揺はしていない。やっはろーしてる時点で動揺してますねはい。この言い方だとやっはろーが動詞になってるな。

 

「なんか用か」

 

 なるべく平静を装って声をかけると、由比ヶ浜はお団子髪をくしゃりといじりながらぽしょりと呟いた。

 

「えっとね、小町ちゃんがね。ひ、ヒッキーがあたしとふ、二人きりになりたいって言ってたって……、だから来ちゃった」

 

 こ、小町ぃぃぃぃぃぃ!! え、まじで何してくれてんの!? 俺そんなこと一言も言ってないんだけど! ちょ、やめて由比ヶ浜さん! 恥ずかしそうに上目遣いでこっち見てこないで!

 

「とととと、とりあえず上がれよ」

 

 もう平静を装えなくなり、キョドりまくってしまった。これじゃドン引きされるなーと思っていると。

 

「う、うん……」

 

 由比ヶ浜は恥ずかしさのが上回っているのか、俺のキョドりっぷりも気にせずにうつむきながらもじもじとしていた。

 

 ……なんかもうあれだな、のっけからぐたぐだである。

 

 というか「だから来ちゃった」ってどういうことだ? 小町に呼ばれたから来たとは言ってないし、自発的に来たってことだよな?

 それに小町の捏造で俺が会いたいって言ったことになっている。普通なら急にクラスメイトがそんなこと言ってたって知ったら気持ち悪いだけだよな。

 それなのに由比ヶ浜が俺の家に来たってことは……。

 

 ……いかん、これ以上考えたら色々とまずい気がする。仮に今から由比ヶ浜にアプローチをするとしても、それを一度意識してしまったらそんな余裕もなくなっちゃうしな……。

 

 

××××××

 

 

 ずっと玄関にいても寒いだけなので、由比ヶ浜をリビングへ案内し、とりあえずコタツムリ化させた。

 

「ほぇー、相変わらず本ばっかりだね。前より増えたんじゃない?」

 

「そりゃ前にお前が来たのは夏だからな。ほれ、コーヒー」

 

「あ、ありがと」

 

「じゃ、ちょっと着替えてくるわ」

 

 さすがに由比ヶ浜がいるのにスウェットのまんまってわけにはいかないしな。母ちゃんいないからバカにもされないし。

 

「いや、そのままでも平気だよ? なんか今のヒッキーいつもと違って新鮮でそれはそれで……」

 

「そ、そうか」

 

 小さな声で言ったって家の中静かなんだから聞こえてますからね? それともなに? 家だと普段より生き生きとしてるって意味の新鮮? 

 まあ、お言葉に甘えてスウェットのまんまでいいか。小町にバレたら怒られそうだけど、俺はファッションセンス皆無だからしょうがないってことで。

 

「それでどうする、帰る?」

 

「だからなんでそんな自然に帰宅提案できるの!?」

 

「いや、だってな? 俺んち今誰もいないんだぞ? 少しは考えてみろよ」

 

 両親は今日もいつも通りに社畜ってるし、小町は絶対に帰ってこないからな。カマクラはどこだろうか。多分小町のベッドにでも寝てるんだろ(羨ましい)。まあ由比ヶ浜は猫苦手だしちょうどいいか。

 

「そ、そっか。二人きりかぁ……」

 

 ふむふむと頷きながらぽしょりと呟く。頬は少し赤らんでいて、いかにも恋する乙女って感じだ。

 ……今の言い方だと由比ヶ浜が俺に惚れてるみたいな言い方になるな。やだ、俺って自意識過剰すぎ?

 

「ね、ヒッキーお腹すいてるでしょ? まだ何も食べてないんでしょ?」

 

「ん、そうだな」

 

 なんでこいつ俺が食べでないこと知ってんだ? あれか、休日に予定なんてないんだから、昼まで寝てる引きこもり野郎だと思われてるのか。なにそれ辛い。

 まあ、どうせこれも小町の仕業だろうけど。俺の家での過ごし方について教えたんだと思う。

 

「じゃ、じゃあさ、ヒッキーこれ食べよ?」

 

 そう言い、由比ヶ浜が買い物袋を漁って中から出したものを見た俺は唖然としてしまった。

 ちょっと由比ヶ浜さん? それは攻めすぎだと思うよ? まずそれ飯じゃなくてお菓子だし。

 ……まじで小町のやつ、由比ヶ浜に何を吹き込んだのん?

 

 これからお互いが積極的になってしまったらどうなるのだろうか。考えただけで胸が高鳴ってしまった──。

 




3人目のヒロインにして初めて八幡の家へ突入……。学校よりやりたい放題やでぇ……。タイトルを見てわかると思いますがいつもと少しだけ違う感じでいこうと思います。

閑話休題。言い遅れましたが、お気に入り1000、感想50、UA55000突破。というかそろそろ60000いきそうですね。圧倒的感謝です!早いもので投稿して一ヶ月が経ちました。これからもよろしくお願いします!

感想や評価も待ってます!分かってはいましたけどいろは√に比べてサキサキ√は感想や評価が少なかったです。それでも感想や評価くれた人は感謝です!
もちろんいろは√に感想や評価くれた人も感謝です!

いつも感想くれてる人も本当に感謝です!ちゃんと名前は把握してます!もっと仲良くなれたら嬉しいものですwこれからもオナシャス!
もちろんたまたま見てくれた通りすがりの人も感想待ってます!常連さんがいっぱいになることが私の夢です☆

なんだか感謝続きの後書きになってしまいましたが本当に感謝していますので……。

それでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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