やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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川なんとかさん√ラストです!


意外にも川なんとかさんは乙女である。【後編】

 

 という訳で、まだ四限目の最中だけど授業はカット。

 いや、どういう訳だよって言われたら終わりなんだけど、それといって特筆することはなかったしな。

 ……川崎からの視線がやばかったとかそんなことはなかった。俺と目が合ったらちょっとだけ頬を染めて、指をもじもじさせてたとかありえないから。

 ……はい、もうあれです。超可愛かったです。周りに誰もいなかったら絶対に悶えまくってた。というか、少しだけ悶えてしまったら隣の席の女子(可愛い)に、青ざめた表情で見られた。見られた俺はちょっぴり赤面。ますます青ざめられるというカオスな状況になった。ははっ、辛い……。

 

 ここで授業終了を告げるチャイムが鳴った。

 授業中に川崎を確実に落とす手段は考えたから後は実行するだけだ。ちょっとというか、かなり恥ずかしいことをする予定だから緊張するな……。

 そろそろ移動するかと思うと、川崎がこっちへ眠たそうによろよろと歩いてきた。さっきの授業はずっと寝てたからな。やっぱり俺と同じで寝不足だったのか。

 ここでふと気づいたことがある。俺、川崎のこと見すぎじゃね……? 今日目が合った時は毎回俺が見てた時だし。

 ……なんかもう、俺が落ちかけてる気がしなくもないんだけど。

 

「ふぁ……で、どこで食べるの?」

 

 欠伸を噛み殺すようにして、んーっと大きく伸びをした川崎を見て戦慄した。それだけで君のメロンは揺れるのん……?

 ふぅ……落ち着け。落ち着いて川崎の眠気を覚まそう(混乱)

 

「一応沙希と二人きりになれる場所に当てはあるぞ」

 

 もう既に大混乱してますね……。別に眠気覚まさせる理由もないし、名前呼びをして恥ずかしい思いしただけだわ……。

 

「……そっか。じゃあ行こっか」

 

「お、おう」

 

 あんれー? 川崎さん反応薄すぎない? やばい、既に心がへし折れそう。

 

「ん、あれ……? は、はぁ!? なんであんた今名前で呼んだの!?」

 

 時間差ありすぎだろ……。それにちょっと声のボリュームが大きいです。ほら、その……クラスの視線が全部こっちに集まってるし。

 

「はぁ……とりあえず行くぞ」

 

 川崎の腕を引いて歩き出すと小さな声で唸り出した。お前昨日から唸りすぎだろ……。怪獣サキサキと名付けよう。多分本人に言ったら本気で殺られそう。

 

 はぁ……なんで俺はこんなに緊張してるんだよ……。朝は抱きついても平気だったのに、今は手を繋ぐだけで心臓が痛いほどに高鳴っている。

 

 川崎のことを見てると胸がとくんとくん言うの……。これって……恋?

 

 俺がこんなこと言うと吐き気するだけだな……。

 

 

××××××

 

 

 周りの視線から逃れるように教室から出て、昨日と同様、屋上へ来た。ベストプレイスでもよかったんだけど、あそこはたまに人が通るからな。川崎にアプローチしてる間に来られたら大変なことになるし。主に俺が。もちろん犯罪的な意味で。

 

 川崎から先に給水塔の梯子を上り始めたけど、この子気づいてないのかな? また黒のレースさんとご対面しちゃったんですけども……。

 知らぬが仏って素晴らしい言葉もあるしここは言わないでおくか。眼福眼福。

 川崎が給水塔の梯子を上りきったのを見届け、俺もそれに続いて梯子を上る。そうして川崎の隣に腰かけてから、今朝方受け取った弁当の包みを解く。

 

「じゃあ食おうぜ」

 

 そう声をかけ、弁当の蓋を開いた。

 直後、視界に飛び込んできたあまりの彩りの良さに思わず感嘆の息が漏れた。

 

「おお、すげぇな……」

 

「そ、そう? 別に普通だと思うんだけど……」

 

「これで普通って謙遜しすぎだろ。……じゃ、いただきます」

 

 何から食べようか悩んでいると、川崎が俺のことをじっと見ていることに気づいた。そんなに見られると食べづらいんですけど……。

 とりあえず、卵焼きから食べてみた。

 

「……毎朝、俺の味噌汁を作ってくれ」

 

「は?」

 

 あまりにも美味すぎて戸塚専用のコマンドを使ってしまった。これじゃプロポーズしてるようなもんじゃん……。

 川崎は最初は理解できずにきょとんとしていたが、俺の言ったことを理解したのか、みるみるうちに顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

「あ、あんたがそうして欲しいなら……」

 

「は?」

 

「な、なんでもない!」

 

 声が小さすぎて聞こえなかったな。まあ、俺が変なこと言ったんだししょうがないか。

 結局この後は、お互い無言でひたすら食べ続けてしまった。あーんとかやろうと思ってたけど恥ずかしすぎてそんな余裕がなかった……。

 

 

「ごちそうさま。まじで美味かったわ」

 

「……そ、ならよかった」

 

 素っ気なく返事をしたが、その顔は少し嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「おう。美味すぎて毎日食べたいと思ったくらいだ」

 

「じゃ、じゃあさ」

 

「ん、なんだ?」

 

 聞くと、体をこっちへ向けてぺたりと女の子座りをしたので俺も川崎の方へ体を向ける。川崎はさっきまで胡坐だったので、そのギャップがまたなんとも言えないくらい可愛らしく見える。これがギャップ萌えってやつなのか……。

 

「あ、明日からもお弁当作ってくるからさ……その、あ、頭撫でてくれない……?」

 

「はい、もうぜひ喜んで」

 

 懇願するような、それでいて恥ずかしそうに上目遣いで見てくる川崎にノックアウトされて、関節のパニックもびっくりなスピードで川崎の頭を撫でてしまった。もちろん早かったのは返事の早さだけで、頭はちゃんと優しく撫でてますよ?

 

「ん……いい感じ」

 

「……そりゃよかった」

 

 頭を撫で続けながらこれからのことを考える。元々、頭を撫でるのは予定に入れてたけど、まさか川崎からリクエストしてくるとは思わなかった。でもまあ、予定が狂ったわけではないし別にいいか。

 じゃ、そろそろ俺からも仕掛けるか……。

 

「なぁ川崎」

 

「ん……なぁに?」

 

 よほど頭を撫でられるのが気持ちいいのだろうか、目が少しとろんとしている。

 

「昨日聞きそびれたやつ覚えてるか?」

 

「そ、それってあたしの好きな人が誰ってやつ?」

 

 ご名答。これこそ俺が川崎を落とすために一番必須な話題なのだ。

 

「そうだ。で、誰なの?」

 

「……その前に一つ聞いてもいい?」

 

「ん、なんだ?」

 

 川崎は俺に胡乱げな視線を向けて、俺の期待通りのことを聞いてきた。

 

「なんであたしの好きな人を知りたいわけ?」

 

「……それくらい察してくれよ」

 

 いや、もうこれ完璧だろ。意識してますよアピールの頂点に君臨する言葉だな。

 ……それに、別に嘘をついている訳ではない。川崎にアプローチしていくうちに、逆に俺が川崎に惹かれているわけでもありますし……。

 

「え、そそそそ、それって……」

 

 川崎の顔はこれでもかというくらいに真っ赤になり、遠慮がちに俺のことをちらちらと見てくる。

 

「……まあ、つまりはこういうことだ」

 

 そういい、川崎の方へ体を近づけ、頬に触れるだけの軽いキスをした。

 うん、ま、まあ外国だと挨拶代わりに普通にやっちゃうもんだし平気だよね! ……平気だよね? 

 

 はぁ……くっそ恥ずかしい……。いやー、とりあえずやりきった。もしかしたら人生で一番頑張ったかもしれんと思ったその直後――背中に鈍い痛みが走った。

 

「いって……なにすん……っ!?」

 

 俺の声は途中までしか音にならなかった。なにか柔らかいものが、俺の唇を塞いでいる。

 ……なんで俺川崎に押し倒されてキスされてるんだ? え、一周回って落ち着いちゃったんだけど……。

 川崎は俺の胸元のあたりをぎゅっと掴み、眉を寄せて顔をぷるぷると震わせている。しかし、状況判断ができるくらいに冷静になったところで結局対処ができないまま、静かに時間だけが流れていく。

 そのわずか五、六秒という短い時間は、何分も時間が停止していたような──そんな感覚に陥ってしまうくらいに長く感じた。

 

「ぷはっ……な、なんで急にんむっ……!?」

 

 間髪入れずにもう一度唇を重ねてきた。まさかの二連続です。

 俺が頬にキスしたせいで理性のタガが外れたのか……? というか、唇柔らかすぎだろ……。

 一周回って落ち着いたのか、それとも開き直ったのかは分からないが、今度は幸せそうな顔で川崎が目を閉じている。

 改めて思う。こいつ本当に可愛いな……。あと、俺の胸にたわわな実りが押し付けられててやばい。めっちゃむにゅむにゅされてる。やめて! 八幡のハチマンが大変なことになるから!

 でも色々とまちがっているような気もする。キスってもっとムードのある時にするものじゃないのん? や、今までこんな経験ないから分からないだけなんだけど。

 やっぱりいくら少女漫画やドラマを見ても、フィクションはフィクションなんだなーと的外れなことを考えてしまった。

 川崎の唇が離れると、またキスされそうな予感がしたから(いや、全然いいんだよ? でもこのままいくと確実に俺の理性が飛ぶ)、川崎の肩に手を乗せ少し距離を置いた。

 

「か、川崎……ちょ、ちょっと落ち着け……」

 

「好き……」

 

「え……?」

 

 川崎は吹っ切れてしまったのか、呆れたように俺のことを見た。

 

「聞こえなかったの? ……あたしはあんたのことが好き」

 

 平静を装っているが川崎は肩を震わせ、今にも泣きそうに目尻に涙を浮かべている。

 あぁ……もうだめだ。こんなの我慢できるわけがない。

 川崎の背中に腕を回して抱き寄せて、今度は俺から唇を重ねた。

 

「……俺も川崎のことが好きだ」

 

「……そっか。嬉しい」

 

 幸せいっぱいの表情で微笑む川崎ともう一度唇を重ねた。

 

 はぁ……本当に信じられない。ムードもへったくれもない展開になってしまったが、それでも彼女ができてしまった。

 嬉しそうに微笑んでいる川崎を見て、心が満たされる。

 彼女とならこれからの日々が割と楽しくなるんじゃないかと。

 不思議と、そう思えた。

 

 

 結局この後、五限目は参加せずにずっとイチャイチャしてました☆

 ……平塚先生からラストブリットを喰らったのはまた別の話ってことで、今はこの幸せを噛み締めることにしよう。

 




これにて川なんとかさん√完結です!
この作品を読んでサキサキのことが少しでも好きになってくれたら光栄でございますw
サキサキSSがもっと増えることを祈りつつ……。

……次回のヒロインは未定です!一応ほぼ全ヒロインのネタは思い浮かんでますけど、次を誰にするか秘密にしておいた方が楽しみですよね!ね!ね……?(ただ書けてないだけ)

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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