ゆうかりんか   作:かしこみ巫女

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第六十一話 追跡者

 結局、魔理沙と妖夢の弾幕勝負は、二勝一敗で魔理沙に軍配が上がった。最後の泣きの一回で、妖夢が勝ちを拾った感じ。粘り勝ちである。流石の魔理沙も、連戦で動きが鈍くなってしまっていた。

 

「や、やっと勝った! 霧雨魔理沙に勝てた!!」

「……負けたけど、なんだか納得いかないぜ」

「二人ともお疲れ様でした。じゃあ、二勝一敗で魔理沙さんの勝ちということでいいですよね」

 

 私が魔理沙の腕を挙げ、勝者を告げる。

 

「なんで! 私が最後に勝ったじゃないか!」

 

 最後に勝つと3ポイントとか、そういうバラエティのお約束は弾幕勝負にはないのである。

 

「いや、三回やって二回負けたんだから仕方ないでしょう。ね、幽々子さん」

「残念だけどその通りね。私は悲しいわ妖夢。貴方はまたしても負けてしまったのね」

 

 よよよと泣き崩れる真似をする幽々子。私はその背中をさすり、はげますフリをする。妖夢の顔が青くなっていく。

 

「ううっ、ぜ、全力を尽くしたのですが。申し訳ありません幽々子様!」

「ま、そういうことだから異変は私たちに任せておけよ。お前は帰ってお庭の掃除でもしてな」

「……お、おのれぇ霧雨魔理沙! どこまで愚弄するつもりだ! もういい、私がこの異変を解決してやる!」

「おいおい。負けたんだから潔く道をゆずれよ!」

「断る!」

「まぁまぁ、それはいいとして妖夢。大事なことをやり忘れたら駄目ですよ。いつものアレです」

 

 私は妖夢の肩に手をポンと置く。

 

「え。な、なに、いつものアレって」

「一緒に辞世の句を考えましょう。僭越ながら、介錯はこの私が」

「いや、私は腹切らないし! 切腹しないよ私は!」

「ええっ!?」

「ええっ!? じゃないよ! 負けたら腹切りなんて誰が言ったの!」

「言ってないけど、良かれと思って。だって、友達ですもんね」

「全然良かれじゃねーし! お前も友達なら少しは慰めろ!」

「じゃあ元気だしてください妖夢。明日は誰にでもやってきます」

「おせーし意味が分からねーし感情がこもってねーし!!」

 

 3段ツッコミと共に空中で地団駄を踏むという妖夢の激しいリアクション芸。その技の冴えは実に素晴らしい。幽々子はさっきから笑いを堪えているし。いや、もう普通に腹を抱えて笑っていた。我慢の限界を突破してしまったようだ。

 

「幽々子様! なんで笑ってるんです!?」

「だ、だって。あ、貴方達、本当に面白いんだもの。貴方と燐香ちゃんって、本当に相性が良かったのねぇ。……よ、妖夢、そ、それ以上私を笑わすのはやめて。わ、笑い死んじゃうわ」

「私はなにもしてませんよ! というか幽々子様は亡霊ですし!」

「ぷっ!」

 

 笑いのドツボに嵌っている幽々子。もう箸が転んでも面白い状態だ。美人が小刻みに震える姿というのはとても貴重である。

 顔を真っ赤にした妖夢だが、幽々子に文句を付けるわけにもいかずに、頬を膨らませている。しばらくすると、私に狙いを定めて近寄ってきた。

 

「そうだ! 燐香、私のことよりも貴方のことだよ! なんでこんなところにいるの! 今すぐ家に帰りなさい!」

「いえいえ、今の私はアリスですよ。燐香なんて赤毛の間抜けは知りませんね」

「今も十分間抜けだよ!」

「ひ、ひどい」

 

 上段からの鋭いツッコミが炸裂する。私がふらついてみせると、魔理沙が笑いながら近寄ってきた。こちらも幽々子ほどではないが、腹筋に来ていたようだ。

 

「まぁ待ってくれよ。わざわざ変装させたのは、後で騒ぎにならないようにと思ってさ。ほら、アリスにバレるとヤバいだろ?」

 

「当たり前でしょう。アリスは燐香を心配しているんだから。もしこんなところにいるなんてバレたらどうなるか。魔理沙、貴方本当に殺されるよ」

「お、恐ろしいことを真顔で言うなよ。アイツ、怒らせると本当に目が怖いんだ。洒落が全然通用しないんだよ。初対面のときは普通に話せてたのになぁ」

「……多分、魔理沙が人間だからだと思う。えっと、魔理沙が嫌いなわけじゃなくて」

「意味が分からん」

「私も確証はないんだけど。とにかく、アリスさんは話せば分かる人だから、意味もなく追い返したりしないよ」

「だから! 話をしようとすると追い返されるんだよ! この前は、お前達も一緒にボコボコにしてくれただろうが!」

 

 魔理沙が腕を振り上げて騒ぎだす。私にはなんのことかさっぱりである。まぁ賑やかにやっているならそれが一番である。

 と、私のスカウターに反応が! じゃなくてなんかビリビリ殺意みたいなのを感じてしまった。これは危険だ。謎の修羅属性が近づいている!

 

「魔理沙! 誰かきますよ!」

「ん? こんな夜に一体誰だ?」

 

 私の声を聞いて、魔理沙があたりを見回す。と、なんか白い霊力を纏った戦闘民族が、全力でこちらに近づいてきていた。その背後には、なんか薄気味悪いスキマから顔を出す八雲紫がすいーっとついてきているし。うわぁ、速攻で逃げたくなってきた。

 

「あれは、紫様と博麗霊夢ですね。恐らく、異変に気付いて出張ってきたのかと」

「あらあら。珍しいコンビで来るものねぇ」

 

 幽々子が笑みを浮かべている。でも、緊張感が増してきている。ま、まさかドンパチやる気なんじゃ。

 私は魔理沙の背中をツンツンとつつき、少し後ろに下がろうとアイコンタクトを取る。

 

「……どうした。なにか問題があるのか?」

「いや、このままだと多分面倒なことに。だって――」

 

 説明しようと思った矢先に、博麗霊夢が到着してしまった。御幣を真っ先にこちらにむけてくる。怖っ!

 

「いよう霊夢」

 

 声をかける魔理沙を一瞥したが、霊夢は返事をすることはない。魔理沙はやれやれと肩を竦めている。

 

「アンタ、一体誰? 妖怪なのは間違いなさそうだけど」

「こ、こんばんは博麗霊夢。私の顔を見忘れたのかしら」

「はぁ? まさか、アリス・マーガトロイドとでも言うんじゃないでしょうね。顔は知ってるけど、こんなにチビじゃなかったわよ」

「ち、チビ? こ、この完璧なアリス・マーガトロイドに対して失礼な!」

 

 私が人形を盾にしながらプンプンと怒ると、霊夢が呆れ顔で嘆息する。

 

「あのねぇ。そもそも魔理沙とアリスが一緒にいることがおかしいのよ。そうでしょう、魔理沙」

「ま、まぁそうかもな。あはは」

「笑い事じゃないのよ。……ああ、そういうことか。魔理沙が一緒ということは、アンタは燐香。変装は中々のものだけど、肝心の背丈が足りてないわよ」

 

 これだから勘の良い巫女は嫌いである。

 

「う、うるさいですね。わ、私を怒らせると、それはもうとんでもないことになりますよ?」

「へぇ。どうなるのかしら。見せてもらおうじゃない」

「……ふふっ。今日はこんなにも月が綺麗だから見逃してあげましょう。運が良かったですね!」

 

 私は魔理沙の背中に隠れる事にする。成り行きで霊夢とバトルするのはもう懲り懲りさんである。

 

「まぁ待てよ霊夢。今はこいつが誰かなんてどうでもいいじゃないか。そうだろう?」

「誰なのかはもう分かったからどうでもいいわよ。それより、アンタ達は雁首揃えてなにをしてるわけ? お月見?」

「何って。異変解決に決まってるだろうが」

 

 魔理沙の言葉を聞き、霊夢が挑発するように口元を歪める。

 

「今回は出しゃばるのはやめておきなさい。普通の魔法使いと半人前の庭師如きでなんとかなる相手じゃない。相手は月に異変をもたらす術者。ここは私に任せて、家でぐっすり寝てるといいわ」

「へっ。相変わらず傲慢な巫女様だぜ。私が素直に従うとでも思ってるのか?」

「一応警告よ。ま、従うとは思ってなかったけどね。……というか紫、それと幽々子。アンタ達さっきから何ガン飛ばしあってんのよ」

 

 霊夢が紫と幽々子に声を掛ける。私はさっきから気付かないように視線を必死に逸らしていたのだが。

 実は、紫と幽々子が恐ろしい笑みを浮かべながら距離を取って相対しているのだ。視線がバチバチと火花を散らす。こっちはマジで怖い!

 

「ねぇ紫。その狂犬巫女、口の聞き方がなってないんじゃないかしら。親の顔が見てみたいのだけど」

「ふふ、凛々しくて素敵でしょう? 群がる雑魚共を蹴散らすにはこれくらいの迫力がないとねぇ。貴方のところの半人前には絶対に無理でしょうけど。まぁ、あれはあれで可愛くて良いと思うわよ。愛玩動物っぽくて」

 

 紫が笑いながら挑発する。幽々子の背後からなんだか黒いオーラみたいなのが出始めているし。

 

「あら。もしかして、ウチの妖夢を馬鹿にしているのかしら」

「あらあら、そう聞こえちゃった? ごめんなさいねぇ。ほら、私は嘘をつくのが苦手だから。貴方もよく知っているでしょうけど」

「そんなことは全然知らないわねぇ。何にせよ、この夜を止めているのは私なの。飛び入り参加の貴方達が出る幕は一度もないわ。その狂犬を連れて、とっとと散歩に戻ると良いんじゃないかしら」

 

 幽々子がひらひらと手をふってみせる。とっとと去れということだろう。八雲紫が片眉を不快そうに上げる。

 

「はぁ? 夜を止めているのはこの私よ。境界を操る程度の能力を持つ、幻想郷の賢者の紫ちゃんよ! 貴方みたいな年中のほほん妖怪に出来るわけないでしょうが」

「ふふ、この私の力を侮らないでくれるかしら。それと、自称賢者様でしょうが。大体ね、自分にちゃん付けってなんなの。前から言おうと思ってたけど、滑稽なのよ。いい加減歳を考えなさいな」

「ああ? 私が何をしようと何を言おうと何を思おうと私の勝手よ。そういうことなら、私だって言わせてもらうわよ。その帽子についてるぐるぐる。前から思ってたけど、本当に意味分かんないわよ。なんなのそのぐるぐるは。私の頭はすっごい混沌としていますってアピールするマークなの? 馬鹿なの?」

「年寄りにはこの高尚なセンスは分からなくて当然よ。私は貴方よりうんと若いからねぇ」

「今すぐ鏡を見てきたほうが良いわよ、幽々子」

「その言葉、そっくりそのままお返しするわ、紫」

 

 ゴゴゴゴゴゴと何かが唸る音が聞こえてくる。

 ああ、凄い盛り上がってる! 両方とも弾幕勝負前に軽く盛り上げようという気遣いだろう。なんか、主に釣られて霊夢と妖夢もにらみ合ってるし。闘争の気配が漂ってきた。

 

「妖夢。アンタの主、なんとかしなさいよ。こんなところで時間と体力を無駄にするのは嫌なのよね。何の得もないし」

「お前が紫様を止めれば良いだけのことだ」

「負け犬のくせに一丁前に口ごたえする気? ほら、素直に私のいう事を聞きなさいよ」

「誰が負け犬だ! それにさっき私は魔理沙に勝ったぞ。後はお前をしとめて、完全勝利とするだけだ!」

「魔理沙、アンタこいつに負けたの?」

「まぁ、三回やって一回だけどな。勝負としては二勝一敗で私の勝ちだぜ」

 

 霊夢の問いかけに、少しずつ距離を取り始めている魔理沙が返事をする。うん。怪しく思われていない。

 

「なんだ。まーた負け越してるのか。それで良く勝利宣言なんてできるわねぇ」

「う、うるさい! 勝ちは勝ちだ! とにかく、この異変は私と幽々子様で解決する! 怠け巫女は帰って神社の掃除でもしていると良い!」

「ふん、今日はやけに吠えるわねぇ。結果の見えた勝負を挑むのって、そんなに楽しいの?」

「あまり私を舐めるなよ、博麗霊夢! この鬼をも切り裂いた楼観剣の切れ味、とくと思い知れ!」

「後でピーピー泣き喚くんじゃないわよ。この一生半人前が!」

 

 主従そろって、口喧嘩をしているし。喧嘩するほど仲が良いとも言う。きっとさぞかし賑やかな弾幕勝負になるだろう。

 本当は眺めたい気もするが、私と魔理沙にはやることがある。よって、ここは上手くかわすのが得策である。これぞ漁夫の利!

 

「はは、やるき十分だなお前ら! よーし、じゃあ合図は私がしてやる! 待ったはなしだからな!」

 

 魔理沙が星型の弾を空へと打ち上げる。しばらくしてから上昇が止まると、光を撒き散らしながら派手に弾けた。

 その瞬間、同時に4人が間合いを取り、スペルカードを取り出す。紫、霊夢VS幽々子、妖夢の弾幕勝負が始まった。

 

「な、なんだか凄いことになりましたね。これはバトルロイヤルですか?」

「はは、面白い奴らだろ? ま、勝負が終わればいつも通りだけどな。やる前は気分を盛り上げるのが大事だぜ。遊びも真剣にやらないと面白くないからな」

「な、なるほど」

 

 幽々子も紫も、当然力を抑えながら勝負するのだろう。それなのに、勝負前には本気とも思えるほどにやりあっていた。その方が盛り上がるから。そう、大事なのはノリである。

 

「しばらく見ていきたい気もするが、ここは先を行くのがベストだな。邪魔な連中がまんまとやりあってくれて大助かりだぜ」

「じゃあ、こっそりと行きますか?」

「勿論だ。超こっそりとな」

 

 魔理沙はすいーと箒を後退させていく。そして、いきなり反転させて竹林に向かって飛び始めた。

 霊夢はこちらの行動に気付いて、御札を飛ばしてきたが、魔理沙は余裕で回避。余計な手数を取った霊夢に、妖夢が襲い掛かる。あの分なら、当分は時間がかかることだろう。紫と幽々子の勝負は一進一退。霊夢と妖夢の勝負次第ということになるはず。

 私は心の中で妖夢を応援しておく事にした。いつもお世話になっているし当然である。

 

 

 

 

「ふぅ! ここまでくれば大丈夫だろう。後は異変の黒幕をぶったおしてジエンドだな。美味しいところは私たちが頂きだぜ」

「そうありたいですね。でも、竹林といっても広いですし、上空からじゃ良く分かりませんね」

「うーん。何かしらの術で隠してるのかもなぁ。竹林の中に入らないと見つからないかもしれない。ま、こんな大それたことをするんだから、でっかい家に住んでるだろうけど」

 

 当たりである。でもここは迷いの竹林。空を飛んであっと言う間につけるほど永遠亭は甘くない。低空で竹をかいくぐりながら探さなくてはいけないか。てゐか藤原妹紅をみつければ案内してくれるかもしれないけど。どこにいるのかなど分かるわけもない。

 ここは主人公の魔理沙に丸投げでOK! 多分なんとかなるはず。無理なら霊夢がなんとかしてくれる!

 

「よーし、とにかく行ってみるか! 悩んだときは前進あるのみだ!」

「おー!」

 

 魔理沙に合わせ、私は腕をあげて全力で声を張り上げる。

 ――と、私の正面に、ふらふらと漂う上海人形がいた。うん、いつも通り可愛いなぁって。いや、重要なのはそこじゃない。

 なんでここに上海が? 流石のアリスの遠隔操作でも、ここまでは流石に無理だろう。

 なんだか嫌な予感がして、後方を振り返る。すると。

 

「うわぁ!!」

 

 左手を腰に当て、眉を顰めているアリスがいた。なんだか怒りオーラが出ている。思わず視線を逸らす。

 

「……ここで一体なにをしているの?」

「げえっ! な、なんでお前らがここにいるんだよ!」

 

 魔人アリス・マーガトロイドが一体現れた! ってそれはメガテンだった。それだと、死んでくれる? とか普通に使ってくるからやばい。さっきは気付かなかったけど、隣には何故かルーミアもいるし。

 アリスのペアにルーミアって、凄いレアだと思う。アリルー? マリルリみたい。

 そのルーミアが笑いながら指を指してくる。

 

「ねぇアリス。そこにアリスの子供がいるよ。ほら、服が似てる」

「私に子供なんていないわよ。変なことを言わないで」

「じゃあ、アリスを子供にしたみたいな子供」

「それならあってるわね。ああ、昔の自分を見ているようでとても不愉快だわ。まぁ、直ぐに化けの皮を剥がしてやるけど」

 

 アリスが睨みつけて来る。ば、ばれてないのかな? 大丈夫っぽい。よーし。ならばここは名乗りを上げてみよう!

 

「ふふん。誰かは知らないけど、良い度胸ね。私は完璧な人形遣い、アリス・マーガトロイド。私の華麗な人形捌きをその身に受けて、己の無知と無謀を嘆くが良いわ!」

 

 私の考えた凄く格好良いポーズとともに、花梨人形も構えてみせる。このままカード化できちゃいそうな出来のはず!

 

「…………」

「……うわぁ。凄く面白いなー。うん、とっても格好良いよ」

 

 無反応のアリス。微妙な拍手をするルーミア。おかしい。私の演技は完璧なのに。だって私は千の仮面を持つ少女!

 

「ねぇ。貴方の目から、私はそういう姿に映っていたのかしら。そんな恥ずかしいポーズやセリフ、私は一度も言った覚えがないのだけど」

 

 アリスはこめかみに手をあてている。

 

「ふふ。貴方が何を言っているかさっぱり分からないわ。とにかく、この都会派魔法使いに不可能などないッ! 異変は私がビシッと解決するので、とっとと帰ってすやすやと眠るがいいわ!」

 

 腰に手を当て、右手を翳す。キリッとしたポーズがなんだか取りたくなってしまう。うん、やっぱりアリスは凄いや!

 

「……貴方のお仕置きとお説教は後でたっぷりしてあげるわ、燐香。死ぬ程長くなるから覚悟しておきなさい」

「げえっ! な、なんでバレてるの!?」

「あはは、超バレバレだよ。その人形だって見覚えあるし。というか気配でなんとなく分かるし、顔と目を見ればもう間違えようがないかなー」

「そ、そんな馬鹿な」

 

 ルーミアのツッコミ。肝心なことを忘れていた。私の変装は完璧でも、この赤毛が特徴的な人形のせいでバレてしまうではないか。そう、全部この人形のせい! でも後で怒られるのは確定だ。テンションダウン。

 というか、今日会った人妖全員にバレている気がする。私の変装はなんだったのか。でも、なんだか楽しかったのでいいとしよう。少しでもアリスになれたのは実に良い気分であった。

 

「ま、魔理沙さん。どうしましょう」

「何も問題ない。ここまできたら前に進むまでだ! とにかく、邪魔するなら撃つぜ! この異変は私たちが――」

「黙りなさい、霧雨魔理沙。私は燐香に関わるなと忠告した。それを無視した貴方は――」

「今日こそ食べても良いのかなー?」

「それは、しとめてから考えましょう。とにかく、五体満足でいられると思わないことね。元気があり余ってるみたいだし、腕の一本や二本、なくなっても気にしないでしょう?」

「へっ、冗談じゃないぜ!」

「じゃあ、そろそろ始めましょうか」

 

 アリスとルーミアがいきなり襲い掛かってきた。魔理沙は私の服をつかむと箒に無理矢理乗せ、竹林の中を低空で飛び始めた。

 

「ど、どうする気なんです!」

「とにかく全力で逃げるんだよ! アイツらとやりあってたら霊夢たちに追いつかれちまう! 逃げながら黒幕のところを目指すぜ! 一石二鳥だな!」

「そんな無茶苦茶な!」

「はは、無茶は毎度のことだ!」

 

 弾幕バトルのつぎは、弾幕レーシング! 本当にわけがわからない。やっぱり幻想郷は常識にとらわれてはいけないらしい。東風谷早苗がここにいたら、さらに混沌としていたことだろう。

 


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