ゆうかりんか   作:かしこみ巫女

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第三十九話 或る春の一日

 アリスの家での楽しいお泊り会7泊8日コースが始まりました。いやぁ、生まれて初めての楽しい旅行、いや、修学旅行かな? 

 なんにせよ、あの忌まわしい太陽の畑から出られたのは、本当にうれしいことだ。ちょっと私の彼岸花は心配だけど、もう春が幻想郷中にばら撒かれているから多分大丈夫だろう。

 そもそも、彼岸花は秋の花なんだけども、太陽の畑にそんなことは関係ない。生命力の限り咲き続けるだけ。

 

 ――で、すっごく楽しく過ごせるはずのアリスの家なんだけど、私はベッドでほぼ軟禁状態にある。家事などでアリスが離れるときは人形がつきっきり、それ以外はひたすらアリスが一緒である。これではアリスに迷惑だと思うのだが、反論は許されなかった。

 そして、魔法に興味があるといったのを覚えていたらしく、魔法学の初歩を教えてくれている。ベッドに寝ている私、アリスが横の椅子に腰掛けながらの授業だ。

 

「…………」

「どうかしたの?」

「い、いえ。別になんでもありません」

 

 なんというか、超過保護状態でやりにくい。『外の空気を吸いに散歩でもいこうかなー』と勝手に家から出ようとしたら、無理をしてはいけないと速攻で捕まった。

 お菓子は一杯くれるし、紅茶は美味しいし、ご飯も凄い美味しいのだが、やりにくい。

 私に向けられる優しさと気遣いが色々と辛い。ちょっと嬉しいけど、こちらが気を遣ってしまうというか。そんな感じ。

 こういうのに慣れてないせいもあるけど。むしろ、これに慣れてしまったときの反動が恐ろしい。よって慣れない様にしないといけない。実に悲しい努力である。

 

「あのー。もう身体は大丈夫なので、ベッドから出てもいいですか?」

「駄目よ。一週間も意識不明だったのだから、暫くは安静にしていなさい。絶対に無茶は許さない」

「自分のことは自分が良く分かります。よって私は外に出ます!」

 

 アムロ、いきまーす並の勢いで布団を蹴飛ばした。すぐに人形により抑えこまれました。

 

「お願いだから回復に努めて。外に出たら、また貴方はどこかへ行こうとするでしょう。今の貴方の状態だと、本当に死ぬかもしれない。だから、体力と精神が回復するまでは大人しくしていなさい」

「…………」

「お願い」

「わ、分かりました」

 

 こんな感じである。強情を張るに張れない。アリスに悪いから。昨日、死んでもいいので外にでたいと言ったら、本気で怒られたので懲りた。自由は欲しいけど、アリスに怒られるのはもっと嫌である。

 

「私はそんなに悪そうに見えますか? もう元気百倍なんですけど」

「悪そうに見えるわ。顔が青白いしやつれている」

「そうなのですかー」

 

 鏡を見てもそうは思わないのだが、自分では気付いてないだけかも。

 白玉楼でのことは結構記憶があやふやだったりする。西行妖の超スゴイ攻撃を防いだところは覚えている。それから先はいまいち。記憶に靄がかかっている。もしかしてこの歳でボケがはじまったのかもしれない。まだ10才のはずだけど、人間の年齢に例えるとすでに100才ですとかありえない話じゃないし。

 

 どうやら瀕死に陥ったみたいだけど、助かったのは実に幸運だった。亡命は却下されてしまったけど、良く考えたなら許可してくれると幽々子も言っていたし。頼りがいのある後ろ盾ゲットである。痛いのを我慢した甲斐はあっただろう。

 それと、これは誰にも話していないのだが、目覚めてから暫くは奇妙な感覚があった。身体がたまにふわふわするというか、浮く感じというのかな。そういうやつ。霊夢の空を飛ぶ程度の能力をラーニングしたのだろうか。でも最初から空はとべるから意味がなかった。今はその感覚はない。地に足がついたということだ。

 

 そして、改めて認識することができたのは、私は風見幽香が大嫌いだという事だ。あの顔を思い出すだけで、憎悪と殺意が溢れ出てくる気がする。変な話である。でも、それにも波があって、暫く経つとなんだかどうでもよくなったりする。感情がいまいち安定しない。思考がぐちゃぐちゃする。そういう時は、こうやって俯瞰的に自分を見る事で心を落ち着かせるのだ。意味が分からないが、そうなのだから仕方がない。

 私は情緒不安定なのだろうか。精神科の先生がいたら色々と相談したいところだ。永夜抄が終われば、永琳に相談できるかな?

 

「燐香。これ、新しい厄除け人形よ。念のために常備していなさい」

「あ、わざわざまた作ってくれたんですか?」

「ええ。気休めかもしれないけどね。一応少しは効果はあったみたいだし」

「ありがとうございます! 大事にします!」

「これが壊れるような事態にならないのが一番よ」

 

 アリスからもらっていた厄除け人形だが、実はバラバラになって壊れてしまっていたのだ。多分、落下した衝撃で下敷きにしてしまったせいだ。それをアリスに謝罪したら、気にしなくていいと言ってくれ、こうして新品まで作ってくれた。今度は壊さないように気をつけなければ。本当は鞄にしまっておきたいのだが、身につけていないと意味がないということなので、服のポケットに入れてある。

 

「さて。勉強は一旦お終い。少し寝ていなさい」

「もうですか? 全然眠くないんですけど」

「目を閉じていればそのうち眠くなるわ」

 

 そんな訳あるかいと目を瞑ったら、5分も経たずに寝てしまった。私はのび太の弟子になる素質があるかもしれない。もしくはアリスがなんらかの魔法を使ったか。

 その日はそんな感じで、一日中病人気分を味わったのだった。ベッドから出れないのはかなり窮屈だったけど、アリスが私のことを心から心配してくれているのを感じられて、ちょっと嬉しかった。それと同時に、迷惑を掛けている事に心苦しく思うわけで。早く回復したと認めてもらえるよう頑張ろう。何を頑張るのかは知らないけれど。

 

 ――お風呂まで人形を遣って入れようとしてきたときだけは、本気でお断りしておいた。手足は普通に動くというか、身体に異常はないのである。私は赤ちゃんか。

 

 

 

 

 

 

 次の日、相変わらず、私は自分の部屋からでることができない。正確には私の部屋ではなく、割り当てられている部屋なのだが。ベッドからは起き上がることは許されてはいるが、やっぱり窮屈だ。

 暇すぎるので、見張りの上海たちに彼岸花の花飾りを作っていたら、無駄に能力を使うなと怒られた。暇すぎるので遊びましょうと誘ったら、それは普通に了承された。

 

「これで何回目でしたっけ」

「次で83回目ね」

「なんだかパズルゲームをしている気分になってきました」

「突き詰めればカードなんてそんなものでしょう」

「神経衰弱でもやります?」

「やめておきなさい。疲弊するから」

 

 二人で延々とブラックジャックをしていると、ルーミアとフラン、美鈴が遊びに来た。4人でUN○をすることになった。幻想郷にもあるとは思わなかったので、私は喜んで飛びついたのだった。

 美鈴は相変わらずフランのサポート。実に瀟洒な従者である。門番だけど。もしかしたらフランの保護者役も兼任しているのかも。

 

「新聞で見たよ。大変だったね。死ぬところだったんでしょ? 顔色は……いまいちだね」

「そうですか? バッチリですけど」

「そうかなー」

 

 私は平気と親指をあげてみせたが、ルーミアは首を捻る。そこで頷けば自由になれたのに。心の友なのに意思疎通ができないとは何事なのだ。舌打ちすると、ルーミアが口元を歪めた。計算してのことだったらしい。性悪妖怪め。

 

「咲夜から聞いて、すぐに来ようと思ったんだけどさ。アイツ――じゃなくてお姉様が邪魔するんだもん。今日はルーミアに協力してもらって、叩き潰してきたから来れたんだ。奇襲してやったら、すっごい慌ててた!」

「あれはちょっとやりすぎですよ。咲夜さん、後片付けが大変だってまた泣いてましたよ」

「いいじゃん。それが仕事なんだし。嫌ならやめちゃえばいいよ。別にメイドなんていくらでもいるし」

「またそんな意地の悪いことを。妹様、もう少し咲夜さんに優しく――」

「じゃあ私と遊ぶように言ってよ。咲夜、全然遊んでくれないんだもん」

「あはは、仕事が忙しいみたいですから」

「はいはい。どうせ私の相手なんてしたくないんでしょーだ。いいよ別に」

「今度伝えておきますから」

 

 ふて腐れるフランを宥める美鈴。レミリア、咲夜たちとの仲は相変わらずのようだった。以前より気安さが出た分、良い方向に向かっているのかもしれない。

 

 フランの話によると、こっそり招き入れていたルーミアにいきなり闇を展開させた後、フランが全力で攻撃を仕掛けたのだという。おやつタイム中だったレミリアはそれはもうひどい有様になったとか。ついでに紅魔館も。攻撃を受けたことよりも、プリンが駄目になったことにレミリアは嘆いていたという。美鈴、咲夜もあまりの早業で止められなかったらしい。紅魔館の面々は相変わらず賑やかで楽しそうだった。

 

「で、西行妖だっけ? 元気になって、リベンジにいくなら喜んで付き合うよ。徹底的に燃やしにいこう! あ、その木を盛大に燃やしてバーベキューしたら楽しそうだね! よし、白玉楼ごと燃やしちゃおう! 全部お姉様のせいにしちゃえば大丈夫!」

 

 何が大丈夫なのか分からないが、紅魔館と白玉楼の戦争になるのは間違いない。相当ヤバイ光景だろうけど、何故か私がボロ雑巾になっているイメージしか湧かない。どういう流れかは分からないが、風が吹けば桶屋が儲かる理論ではそうなのだ。大体私のせいになる。

 

「妹様、お願いですから止めて下さい。第一、冥界に行くなんて聞いたら、お嬢様が悲しみますよ。あそこは、生者が行くべき場所ではありません」

「知らないよそんなの。アイツがどう思うとか本当にどうでもいいし。庭のダンゴムシくらいどうでも良い」

 

 ダンゴムシ君の格が上がってしまった。

 

「あはは。本当に面白いなー。フランはとっても面白いね」

 

 ルーミアが手を叩いて喜んでいる。性悪妖怪の面目躍如。でも最後の最後は優しいところもあるのである。多分! じゃなきゃわざわざお見舞いに来てくれないだろうし。ただの暇つぶしではないということにしておこう。うん。

 美鈴はそれを見て、溜息を吐く。

 

「全然面白くありませんよ。ルーミアさんも笑ってないで止めて下さいよ。お嬢様からお叱りを受けるのは私なんですから」

「つまらないから嫌だよ。あ、これお見舞いの品なんだけど。凄くオススメのと、全然オススメじゃないのがあるけど、どっちがいい? オススメでいいよね?」

「勿論、オススメじゃないほうで」

「どうしても?」

「どうしてもです」

 

 ルーミアが舌打ちしながら、なんだか高そうなカステラを出してきた。一体どこで手に入れてきたものだろう。人里にお菓子屋さんでもあるのかもしれない。駄菓子屋はあると言っていた。いつか行ってみたいなぁ。

 

「アリス、これ切ってくれる?」

「はいはい。……ちょっと、そっちはしまっておきなさい。ウチでそんなの出さないで」

「分かってるよ。後で食べるだけー」

 

 ルーミアがアリスに、カステラと自前の珈琲セットを渡す。そして、できるだけ濃い珈琲を入れてくれとお願いするルーミア。ルーミアはブラック派なのだ。しかも味に結構うるさい。上質を知る人なのだと自慢していた。私もなのだと言ったら、鼻で嗤われたことは絶対に許さない。

 

 暫くすると、綺麗に切り分けられたカステラと、淹れ立ての珈琲が皆に配られた。私は特に何も入れずに珈琲に口を付ける。カステラがあるから、ブラック無糖。口にキレのある苦味が広がったのを確認してから、カステラを口に放り投げる。うん、美味しい。

 

「あー。それは駄目だよ。燐香はこれを入れなきゃ始まらない」

「ちょ、ちょっと。人のに何をするんです!」

「はい、どうぞ。これで完璧」

 

 ルーミアに勝手にミルクを入れられてしまった。カステラがあるからブラックで良いのに。まぁ、美味しい事に変わりはないから良いけど。

 黒い液体に白が渦を巻く。やがて混ざり合って茶色になってしまった。

 

「いつも食べるおやつより、美味しい! ただのカステラなのになんでかな。特殊な何かが入ってるとか?」

「ふふ、皆で食べると美味しいものですよ」

「なに偉そうに笑ってるの? 美鈴のくせに生意気!」

 

 フランが美鈴のすねを蹴飛ばしている。結構いたそう。

 

「そ、そんな。別に偉そうになんてしていませんよ」

「うるさい馬鹿」

「貴方達、静かに食べなさいよね」

「す、すみませんアリスさん」

 

 皆も美味しそうに食べている。なんだろう。すごいまったり空間。ベッドの上は退屈だなーと思ったけど、中々幸福である。お見舞いに来てくれた友達を歓迎しているような。そんな感じ。病人じゃないけど、ちょっと嬉しい。

 

 そんなこんなのやりとりをしているが、UNOは既に始まっている。アリスがカステラを切っていたからちょっと中断していたけど。勝負再開だ。

 

 私のターン、リバースカード! ルーミア、お前の番ないから! ニヤリと笑うと、ルーミアがちょっとイラッとした表情を見せた。これは貴重な光景である。よし、どんどん食らわせてやろう!

 

「で、燐香。本当に大丈夫なの? お腹に穴開けられたって聞いたけど」

 

 フランが私のおなかをつんつんしてくる。私は問題ないとお腹をポンと叩いて見せた。

 

「これでも妖怪なんで問題ありません。ただ、アリスが自由に動くのを許してくれないんです。ケチなんで」

「ケチで結構よ」

「……うーん。ちょっと待ってね」

「な、なんです? ちょ、ちょっと近いんですけど!」

 

 ルーミアが、顔を私に限界まで近づけてくる。目をジッと見開いて。綺麗な顔だなぁと思ったりするが、ちょっと近い。本当に近い。近くで見ると牙が本当に鋭い! これは齧られたらやばいことになるのは間違いない。うん。

 というかこの女、スキップで私の番飛ばしやがった! アリス、仕返しするのでリバースプリーズ! こなかった。

 

「前より黒が濃くなった? いや、輪郭が少しぼやけてるせいかな。……うん、暫くは寝てたほうがいいよ。アリスが全面的に正しい。白が擦れて不安定に見える」

 

 哲学的すぎて意味が分からなかった。たまに謎の言葉を吐くのだ。多分、ルーミアはポエムが好きである。間違いない。

 

「ああ、心の友よ。なぜそんな余計なことを言うのです。私は外に出て春の空気を楽しみたいのですよ」

「無理すると、本当に死ぬよ。多分、存在が消えてなくなる」

 

 ルーミアの真顔。こんな顔もできたんだなぁと思うが、言っていることは完全にボケている。

 

「死にませんよ。人魚姫じゃあるまいし」

「うん。でも死ぬよ」

「死にません。……た、多分」

「とにかく寝てた方が良いよ。暫くすれば、安定すると思うし。知らないけど」

「分かりました、って、今はUNOやってるんじゃないですか。しかもまた攻撃されてるし!」

「死んじゃったね。はい2枚あげる」

 

 私にドロー2が炸裂しているじゃないか。しかもやったのはルーミアだ。この野郎、スキップに続きドロー2だとぉ! 私のリバースが相当腹に立ったらしい。どうよと言わんばかりの笑みをこちらにむけてくる。超ムカツク。ムキー!

 

「ふふん。流石だと言いたいが、甘いですよルーミア! 私のターン、ドロー2! アリス、私の気持ちを上乗せしたので是非受け取ってください」

 

 お許し下さい、アリス先生! でも勝負の世界は非情! ルーミアの2枚+私の2枚でアリスは4枚――と思ったら。

 

「私もドロー2を出すわ。フランは?」

「もちろん持ってるよ。ついでにUNO」

「私はドロー4。すごいね燐香、皆の気持ち独り占めだよ」

 

 意地悪く笑うルーミア。馬鹿な、こんなことはありえない。いや、そもそもだ。

 

「ちょっと待った。なんでドロー2をドロー4で返せるんですか! そんなことは私は認めません。よってこれはノーカンです」

「これは幻想郷ルールだから大丈夫」

「そんなの聞いてないです!」

「最初に聞かなかったほうが悪いよ。ドヤ顔しておいて返されるなんて滑稽だよねー。はいどうぞ」

 

 ルーミアが有無を言わせずにカードを大量に私に押し付けてきた。この女、鬼である。

 

「ぎゃー!!」

 

 12枚ゲット! 残り2枚だったのに14枚に増えた。お金持ちっぽい。しかもリバースとか数字しか引けてないし。駄目だこりゃ。

 

「さ、サレンダーしたいんですけど」

「駄目だよ。最後まで頑張らないと。はい、私はあがりっと。やった、一位!!」

 

 フランが満面の笑みを浮かべてVサイン。私は一応勝者を讃えて、嫌々ながら拍手をしておく。顔をぐにゃぐにゃと歪めながら。

 

「妹様、さらっとあがりましたね。お見事でした」

「お、お見事です。い、一位が取られてしまった。私は一位だけを狙っていたのに! 畜生!」

 

 ならばせめて二位を確保しなければ。そう、玄人は初戦は二位を狙うのだ! 最初に目立っては後で狙われてしまうからね。うん。

 

「UNO。あと1枚よ」

「私もUNO。ついでにスキップ」

 

 アリスとルーミアが連続リーチ宣言。馬鹿な。それでは私の一人負けになっちゃうし。私は手札で団扇ができちゃうほどカードあるし。阻止のために攻撃しようにも有効な手札がない。今更リバースしてどうするのか。

 というかこっそり手番が飛ばされている。お前は何回私を攻撃してくるんだ!

 

「ちょ、ちょっと待ってください。なんで私だけこんなに手札が一杯なんです! しかもリバースだのスキップだの私ばっかり攻撃されてない? されてますよね?」

 

 多分気のせいじゃない。さっきからリアクションを取っているのは私だけだし!

 

「燐香はリアクションが面白いから、つい攻撃を仕掛けたくなるんだよね。ね、ルーミア」

「うんうん。眺めてると滑稽で面白いから。それにこの前、『美味しいから別に悔しくない』とか言ってたし。だから遠慮なく攻めてるんだけど」

「ぐぬぬ」

 

 あれはただの負け惜しみである。芸人としては美味しいけど。バラエティでのゲームは一番の腕の見せ所である。

 

「お、おのれー。後で覚えていろ、心の友かつ我が宿敵たちめ! いずれ仕返ししてやります!」

 

 ふふん。覇王たるもの、全てを打ち倒した勝利にこそ意味がある! ……やっぱり今の嘘。発想が世紀末の修羅の国っぽかった。最後はなんか悔いなしとか言っちゃいそうだし。

 

「そうなんだー。でも、すごい負け犬の遠吠えっぽい」

「わ、わおーん」

 

 犬走椛をイメージして吠えてみた。本人が見たらすごい怒るだろう。でもいないのでOK。

 

「自分から罰ゲームをするなんて、本当に燐香は面白いなぁ。ね、美鈴!」

「そうですね。見てるだけで十分面白いのは確かです」

「ね、やっぱりウチで雇おうよ。私直属のメイドにしたいな」

「妹様、我が儘は駄目ですよ。友達をメイドにすることはできません」

「……ふん、ただの冗談だよ。一々本気にするな、この馬鹿美鈴!」

「あはは、すみません」

 

 紅魔館で雇ってもらう。その発想はなかった。でも、色々と迷惑を掛けそうなのでやめておいたほうが良さそう。近すぎるし!

 

 で、負けたのでお代わりのカステラはなかったけれど、フランがもってきてくれた赤色シュークリームを食すことができた。これは血ではなく、葡萄で着けた色なんだとか。これもまた美味しかった。お菓子ばっかり食ってる場合じゃないと思うのだけど、今の貴方には丁度良いとアリスがOKを出してくれた。エネルギーを消耗しすぎているとかなんとか。そういえば、少し身体がほっそりしていた気もする。よく分からないけど。

 

 

 晩御飯まで皆で一緒にわいわいやった後、フランと美鈴、そしてルーミアは帰って行った。そのまま泊まっていってほしかったけど、よく考えるとここは私の家じゃなかった。なので自重した。

 その後はなぜか、アリスの部屋で一緒に寝る事になった。意味が分からないけど、ぐっすりと寝られた。何故かはやっぱり分からない。




ほのぼの日常スタート!
ついでにのんびり更新にギア変更!
どうぞのんびりお読み下さい。

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