ゆうかりんか   作:かしこみ巫女

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第十九話 悪魔の罠

 猿でも分かるはじめての魔法(適当な訳)を読んだり、幻想郷についての講義を受け、魔力やら妖力についてなんとなくだが理解できた!

 魔法を使うには当然魔力……MPのようなものが必要になるわけだが、幻想郷内ではそれが勝手に回復していくのだ。そのための結界が張られているとかなんとか。逆に外の世界ではそれが減っていってしまうらしい。常に毒の沼に立っている状態。凄いピンチ。

 それを回復してくれるのが、自らに対しての恐れやら信仰という訳だが、弱体化した者達はそれが出来ずに消えるしかない。その消え去っていく者たちを救うために築かれたのが幻想郷。妖怪にとっての楽園だ。

 

 でも普通の人間にとってはどうだろうか。多分、楽園でもなんでもないだろう。それは外も中も同じ事。

 

 

「忘れ去られた者達の楽園、ですか」

「諦めの悪い者達のたまり場ともいえるわね」

「そんなことはないと思います」

「本当のことだからいいの。うちの場合はわざわざここに殴りこんだ訳だけど。レミィは変態だからね。吸血鬼の恐怖をまだ獲得できていたくせに。まぁ、外は我慢ならないほど騒がしかったから、丁度良かったといえばそうなんだけど」

 

 幻想郷に殴りこんだ、というと。あの異変だ。通称かちこみ異変。吸血鬼が勝っていたら歴史が変わっていたかも。そうはならないだろうけども。

 

 

「吸血鬼異変ですか?」

「あら、博識なのね」

「前にアリスから教わりました」

「なんやかんやあって、最終的に私たちは“和平締結”と言う名の敗北と屈辱を味わった。あの時のレミィの顔ときたら。ふふ、一カ月は退屈しなかったわ。今思い出しても笑えるわね」

 

 思い出し笑いを浮かべ、実に楽しそうなパチュリー。負けた悔しさは残っていないらしい。なんやかんやについて突っ込みたかったが、負けた歴史を詳しく教えてくれというのは相当に失礼である。

 私だって、幽香との戦いにおける敗北の歴史を語ってくれと言われたら嫌だし、軽く24時間は必要となる。しかも思い出したらぐぬぬとなる。やばい、今思い出してもムカついてきた。

 

 

「この前の紅霧異変で私たちは無事幻想郷の住民として受け入れられた。あれは通過儀礼だったのよ。あとはここが滅びるのが先か、私が死ぬのが先か。いずれにせよ、ここが私の最後の地となりそうね」

「……あの」

「ああ、パチュリーはこういう性格だから一々気にしなくて良いわよ。たまに後ろ向きなことをいうのだけど、別に悲観しているわけじゃない。単純に素直じゃないだけ」

 

 フォローしようとした私の肩に手をあてるアリス。

 

 

「冷静に人を分析するのは貴方の悪い癖よね」

「貴方に言われたくないわ」

「それはこちらの台詞よ。魔法使いはこれだから嫌」

「貴方も魔法使いでしょうに」

「だから敢えて言ったのよ。自嘲の意味も篭めて」

「相変わらず疲れる人ね。本ばかり読んでいるからそうなるのよ」

「それはお互い様でしょう。人形遣い」

 

 顔色を変えずに言い合う魔法使いたち。一見すると口論に見えるが、ただ単純にふざけあっているだけだろう。やっぱり友達というのは素敵である。眺めているだけで、なんだか幸せな気持ちになった。

 

 私の場合、初めての友達はルーミア。隙あらば私に人肉を食わせようとしてくるのが欠点だが、本当に素敵な友人である。

 アリスは友人と言うよりも、信頼出来る先生、あるいは姉のような存在だ。優しいし頼りになる。

 そんなことを思うと、もっと幸せな気持ちになった。なんだか明るい気持ちで一杯だ。NからL属性に少し傾いた気がする。でもバリバリのLはヤバイから気をつけよう。

 

 

 

 

 

 

 アリスに、パチュリーと魔術について話したいことがあるから、暇なら図書館を見てまわって良いと言われた。最初は遠慮して会話に耳を傾けていたのだが、言っていることがさっぱり分からなかった。よって、言われた通り図書館探索へと出発する。

 理解出来ない謎の単語や理論が一杯登場して、本気の眠気が襲ってきたのが主な理由である。お経みたいだった。

 

 

「――おお。まさに本の森! すごい!」

 

 凄まじい本の量。何がどこにあるのか探す気すら起こらない。パチュリー曰く、魔術を用いて管理を行なっているので、全く困らないらしい。利用客が少ない理由は主にそれではないかと思った。

 何か探したいものがあるのかと聞かれたが、私は曖昧に誤魔化した。探す本の内容を聞いたら多分止められるから。私が探すのは、ズバリ『デス○ート』! もしくは呪い系統の魔術書だ。ザキとかムドとか楽に勝てそうなのを覚えたい。子供の玩具じゃないと先ほどは叱られたけど、それぐらいでヘコたれるような私ではない。リスクを犯さなければ、リターンもないのである。現実の私はハイリスクノーリターン。少しは還元してほしい。

 

 と、とにかく幽香に効果のありそうな何かをゲットしたいのだ。いいかげんギャフンと言わせないと気が済まない。

 先日の組み手のとき、私が使った呪霧は一応の効果をもたらしたものの、肝心なときに切れてしまった。あれでは意味がない。もっとこう、『な、なにィ!?』みたいに幽香を驚かせたいのである。具体的にいうと、心が折れたベジータぐらいの表情をさせてみたい。さぞかし気分が晴れやかになることだろう。想像すると笑みが止まらない。

 

 そのために、幽香ご自慢の身体能力、或いは妖力を一気に低下させるのが良いと私は考えたわけだ。その状態なら、この私でも勝てるだろうと。見事に失敗したわけだけど。畜生。姑息と言われてもいいので、とにかく勝ちたいし見返したいのだ。やってやんよ! という意気込みが大事なのだ。

 確かに、この前の敗北で一時的に心は折れたけど、何度でも復活してやろう。そう、私のモットーは七転八倒だ。

 

 

「……うん? 何か違うような」

 

 

 ――と、学術書の棚から、日本文学の棚に来てしまっていたらしい。これなら私でも読める。有名な物語から、聞いたことのないものまで一杯ある。そこから適当に一冊取ってみる。『桃太郎』ではなく、『MOMOTAROU』だった。パラパラと捲ったが、吸血鬼を仲間に加えた桃太郎が、何故か宇宙にいくとかいう超展開だった。しかも吸血鬼が主役を物理的な意味で喰らってるし! これを書いたのは誰だ! 『作者 レミリア・スカーレット』。よし、見なかった事にしよう。多分、相当な黒歴史である。ここに堂々と置いてあるのは、パチュリーの嫌がらせだろうか。

 

 

「ん?」

 

 他人の黒歴史を元に戻してあげようとしたところ、なにやら違和感を覚えた。じーっと見つめると、違和感が更に大きくなる。何か、この隙間にあるような気がする。いや、隠されているような?

 

 

「うーむ」

 

 グラスの鍛錬で培った、相手の力を見極める能力でもよく分からない。でも、何かあるような気がする。

 こういうところには、大抵不思議パワーを持った何かがあるわけで。この大図書館ならきっと凄いものが隠れていそうだ。是非ともお目にかかりたい。『良く見つけたわね』とアリスに褒めてもらえるかもしれない。

 なんでも鑑定呪文、インパスでも覚えていたら見つけられただろうに。なんとかならないかなぁ。

 というわけで、私はインパスインパスと心の中で100回ほど唱えてみる事にした。なんだか少しずつ見えてきたような。私は更に集中し、妖力を限界まで篭めて唱え続けた。

 

 

 

 

 

 ――見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、貴方の考察は、大体当っていると私は考える。しかし、それだけで十分だとも思えない。とうにアレが試しているでしょうしね。何か、問題があるのよ」

 

 パチュリーが、小悪魔に注がせた紅茶を飲みながら淡々と結論を述べる。

 会話の内容は新魔術、賢者の石、自律人形の完成にむけてなど多岐に渡り、最終的に燐香の話題になった。

 

 

「つまり、今の段階では判断できないということ?」

「だって、判断材料が少ないもの。もう少し情報が必要ね」

「仮に私の考えが正しいとして、そんなことは本当に有り得るの? いや、そんなことができるの?」

「現に存在しているじゃない。それに、スキマとかいう訳の分からない能力を使う化物もいる。どんな妖怪がいたって私は驚かない」

「本当に?」

「少しは驚くかもしれないけど、顔には表さない。だって悔しいから」

「あっそ」

 

 パチュリーの軽口にアリスは呆れた表情を浮かべる。

 と、そこに図書館探索を終えたらしい燐香が、一冊の本を脇に抱えて戻ってくる。

 

「ああ、お帰りなさい……って。貴方」

 

 燐香の赤毛が、半分ほど黒に侵食されていた。顔には獰猛な笑みが浮かんでおり、制御に成功しているはずの威圧感が徐々に増してきている。隙間から溢れるように、それは大きくなっている。

 

 

「……何だか、様子がおかしいみたいだけど。それが、さっきの話にあった?」

「ええ。ちょっとした発作みたいなものね。すぐに対処しないといけないわ」

 

 警戒を露わにするパチュリーを横目に、アリスは早足で燐香へと近づいていく。不意の一撃だけには気をつけるつもりでいる。

 だが、焦点の合っていない澱んだ目は、アリスを映そうとはしない。

 

 

「燐香。待ちなさい」

「ごめんなさい、アリス。ちょっと大事な用事を思い出しました。今日はここまででいいでしょうか」

「駄目よ。……その本はどうしたの?」

「棚に入っていたのを見つけました。これを読んでいたら、今すぐにやらなくてはいけないことを思い出したんです。だから、すぐにやりにいきます」

 

 と、そのまま立ち去ろうとする燐香。アリスは強引に肩を掴んで止めようとするが、凄まじい力で阻止できない。

 逆に、燐香がパチンと指を鳴らすと、図書館の床に黒い靄が発生。アリスの足に赤の彼岸花が生い茂り、絡みついてくる。避ける暇もなく足が囚われてしまった。

 

 

「こ、これは!?」

「ごめんなさい。私が行ったらすぐにとけますよ。今の私ならいけそうなんです」

「待ちなさいッ!」

 

 ――変化したら『昏倒させろ』といった幽香の言葉が頭を過ぎる。説得はこの状態の燐香には意味を為さない。

 恐らく、放っておけば図書館を出て一直線で風見幽香のもとへ向かうのだろう。また殺し合いになるだろう。次こそ風見幽香は燐香を殺すかもしれない。その可能性は、ほぼゼロに近いとは思う。そんなことをするはずがない。だが妖怪は気まぐれだ。それに、酷く痛めつけられるのは簡単に予想できる。だから止める。

 情が移りはじめていることはアリスは自覚している。だから、ここで止めることにする。

 催眠効果をもたらす魔術の詠唱を開始する。燐香の抵抗力を上回るだけの魔力を篭める必要がある。

 だがその間にも燐香は歩を進めていく。間に合うか。

 

 

「そんなに慌てた貴方の顔を見るのは、初めてかしら。これは貴重な経験になりそうね。今日は本当に面白い一日になったわ」

「茶々を入れないでッ!」

「詠唱の速度は大体同じ。ただ、魔力を溜め始めるのは私の方が早かった。一瞬の判断の差がこの場での優劣につながったというわけね。私情がもたらす弊害を経験できたことに、心から感謝するわ」

 

 パチュリーがそう言いきった瞬間、燐香の足元に光り輝く魔法陣が発動。目を見開いて抵抗しようとした燐香だったが、苦悶の声を漏らすと、そのままくずおれた。

 

 

「…………」

「別に感謝の言葉はいらないわよ。でも、いつでも受け付けるからご遠慮なく」

「……助かったわ」

「どういたしまして」

 

 早足で燐香の元へ向かい、身体を観察する。髪の毛は元に戻っている。発作はおさまり、変化までは至らなかったようだ。

 そして、その横に落ちている一冊の本へ目を向ける。タイトルは擦れてしまい分からない。だが、かなりの魔力の残滓を感じる。

 

 

「これは」

「それは……確かかなり前に紛失した魔術書ね。高度な呪術について記されているけど、対策なしに読んだ者を発狂させる罠がある。どこにいったのかと思っていたのだけど」

 

 パチュリーが本を手に取ると、中身をパラパラと捲る。

 

 

「……しっかりと罠は発動している。だけど、魔力は逆に全部吸い取られているわね。この本が誰かに害をもたらすことはもうないでしょう。貴重な呪われし本が、ただの本になってしまったわ。どうしてくれるの。一品物だったのに」

 

 ガッカリしているパチュリー。なくしていたくせに良く言えたものだ。本当に管理できているのか怪しいものである。

 それにだ。

 

 

「呪いですって? 早く解呪する方法を教えなさい」

「慌てなくて大丈夫よ。少々精神に害を為したみたいだけど、発狂までには至っていない。つまり、この本の魔力を無事吸収することに成功したということ。おめでとう」

「全然めでたくないわ。なんでこんな危ないものがそこらへんに転がっているの!」

「私に聞かれても分からないわ。紛失したのは大分前だもの。しかも無くした記憶が私にはない。おかしい話だけれども」

「貴方、とぼけていないわよね」

「数少ないまともな客人と、大事な友人にこんなことをする必要はないし、する気もない。ちなみに、最有力容疑者は近くにいるからそっちを詰問するといいわ」

 

 アリスがにらみ付けると、パチュリーが視線を容疑者へと向ける。と、脇に控えていた小悪魔の本当に僅かな舌打ちの音が、耳に入った。

 

 

「貴方、何かやった?」

「なんのことでしょう」

「答えなさい」

「知りません。知っていても教えません」

「パチュリー、貴方が尋ねてくれる? 私相手だとこいつは嘘しかつかない」

「別にいいわよ。小悪魔、貴方、この子に何かした? 嘘をついたら罰を与えるから覚悟して答えなさい」

 

 パチュリーが淡々と問いかけると、小悪魔が嬉しそうに頷く。

 

 

「はい、しましたよ」

「何をしたの?」

「はい、何かをしました」

 

 質問をはぐらかそうとする小悪魔。パチュリーの詰問は続く。

 

 

「本を紛失したと見せかけて、隠したのは貴方?」

「はい! いつの日か誰かがうっかり引っ掛かるのを心待ちにしていました! いやぁ、今日は来るべき時が来て、経過についてだけは概ね大満足ですね」

 

 心底嬉しそうに返事をする小悪魔。

 あまりに頭の悪い回答にアリスは眉を顰める。パチュリーは慣れっこなのか、特に動じてはいない。

 

 

「その場所まで風見燐香を誘導したのも貴方なのね?」

「はい。本が隠されている場所まで、本棚の通路を塞いで物理的に誘導しました。気付かれずにやるのは中々大変でした。でも、あの隠蔽された本を発見するなんて、中々やりますねぇ! 将来有望ですよ。しかし、その潜在能力のせいで肝心の罠が無力化されてしまったので、私のしたことはただの無駄骨でした。いやぁ、本当に参りましたね! 腸が煮えくりかえりそうですよ、クケケッ!」

 

 小悪魔が舌を蛇のように延ばしながら哄笑する。思い知らせるかと魔術詠唱の準備に入るが、パチュリーに目で止められた。

 

 

「動機を教えなさい」

「発狂させてしまえば、噂の風見幽香がどういう反応をするか興味がありまして。ちなみに罪はパチュリー様に押し付けるつもりでした。後はアリスさんのために、良かれと思ってやったんですけど。まぁ誰でも良かったというのも本当です。永遠に気付かれそうもない、凶悪な罠を使う絶好の機会だったので。最初は霧雨魔理沙に試そうとも思ったんですけどね、そんなことしたらパチュリー様にぶっ殺され――」

 

 小悪魔の髪から炎が燃え盛る。勢いを増した炎はそのまま全身に燃え移り、ぎゃーと喚きながら外へと出て行った。図書館で放つ魔法ではないと思うが、魔法防護が効いているらしく問題ないとパチュリーが呟く。

 

 

「ごめんなさいね。あの馬鹿のしでかしたことについて謝罪するわ」

「私じゃなくて、燐香に謝りなさい」

「貴方にも謝ったほうがいいと思って。だって、気に入っているんでしょう? だから小悪魔がより積極的に動いたのよ。人の大切な物を奪ったり汚したりするのが大好きなのよ。悪魔だから仕方ないんだけど」

「そういうことを率直に言うのは止めてくれないかしら。反応にこまるから」

 

 アリスは僅かに眉を顰めて、睨む。敵意ではなく、注意である。簡単に言うと、恥ずかしい。

 言いながら、燐香の身体を起こし、椅子に座らせてやる。

 

 

「ええ、次からそうするわ」

「それよりもアレ、なんとかならないの?」

「性根は悪魔そのもので厄介なんだけど、ここを整理する能力に長けているのよ。それに小物だから能力的にも御しやすい。定期的に躾ければ、暫くは大人しくなる。後で徹底的にやっておくから、十年は大人しくなると思うわ」

「三倍増しでよろしく」

「承ったわ」

 

 ふぅと、アリスは息を吐く。なんだか急に慌しいというか、トラブルが盛りだくさんだ。風見幽香の言う通り、確かに退屈はしない。忙しい日々。特に煩わしいとは思っていない。むしろ、楽しんでいる自分がいることに驚いているくらいだ。意識を失ったままの赤い髪を撫でる。黒は完全に消え失せている。これなら大丈夫だ。

 

 

「……ねぇ。見せ付けるのをやめてくれないかしら」

「何のこと?」

「師弟愛とでもいうのかしら? そういうのは自分の家で存分にやりなさい。ここだと小悪魔が喜んで鬱陶しいから。……ああ、目が覚めるまでの間に、お詫びとして小悪魔にお菓子を用意させましょう」

「何も入れない様に念を押しておいて」

「勿論よ。次やったら半身を消し飛ばすわ」

 

 パチュリーが頷くと同時に、図書館の扉が勢い良く開かれた。口元を歪め、特徴的な牙を剥き出しにした、帽子を被った金髪の少女が現れた。背中にはこれもまた特徴的な羽が生えている。

 

 

「頭痛の種がまた来てしまったわね。最近は大人しかったのに。封印も掛けなおしよ。というか、本気を出したらぶち破られる封印なんていらないと思うのよね」

 

 パチュリーが肩をすくめながら愚痴を零す。

 

「おはようパチュリー。なんだか挑発的なオーラを感じちゃったから封印をぶち破って来ちゃった。で、勇敢で無謀で無知蒙昧なヴァンパイアスレイヤーさんはどこのどちらかな? まぁ私は毎日暇しているから、いつでもOKなんだけど。朝から晩までいつでも大丈夫。でも今は強引にたたき起こされたようなものだから少し気分が悪いかも。でも気にしないでいいから。いつでもOKと今言ったからすぐに私が相手をしてあげる。久々の獲物だからアイツになんか渡さないよ。さぁさぁさぁさぁ、早く殺し合いを始めようよ!」

「……はぁ。図書館にいるだけかと思ったら、貴方も意外と苦労してるみたいね」

「分かってくれて嬉しいわ。同情してくれる相手がこの館にはいないのよ」

 

 アリスとパチュリーは顔を見合わせ、大きく溜息を吐いた。トラブルはまだまだ終わらないらしい。


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