コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS R2~蒼失の騎士~ 作:宙孫 左千夫
②巻 0話『プロローグ』
「悪いが、君と馴れ合うつもりは無い」
差し出した手は、何者にも受け入れられる事は無かった。
首都郊外の一角にある巨大闘技場。その選手待合室。
新たにナイトオブラウンズに任命されることになったロイ・キャンベルと枢木スザクは、コンビを組んで、現ナイトオブラウンズであるジノとアーニャのペアと模擬戦を行う事になっていた。
ブリタニアの皇帝陛下の御前で、である。
現ラウンズ両名の武勇はよく聞こえてきている上に、相性が良いのかこの二人は戦場をもよく共にしている。それなりのコンビネーションを発揮して襲いかかってくる事は容易に想像できた。
対して、ロイが組む枢木スザクという人間は、エリア11のブラックリベリオンを止めた戦果に始まり、その腕前が十二分にある事は疑いようが無かったが、その人となりは分からなかった。
性格が分からなければ完全なコンビネーションは困難である。もっとも、それはある程度の時間を必要とすることであり、ロイ自身もそこまで望んでいたわけではなかった。だが、せめて初めて顔を合わせる時ぐらいはお互い好印象となって、コンビネーションを築ける足がかりにできればと考えていた。
だから、出会ってすぐに先に名乗ったし、手もこちらから先に差し出したのだ。
しかし、返ってきたのは冷たい視線と言葉、そして差し出されず彼の腰の部分で強く握られる拳の鈍い音だけだった。
「枢木卿。私に、何かあなたの不審を買うような行動があっただろうか」
尋ねながらも、自身の行動を思い起こすが該当するものが無い。身分卑しい出身の者を無条件で嫌うような類のものだろうかとも思ったが、そんな様子も無い。
事実、
「無いよ。そんなもの」
というのが、枢木の答えだった。
「ではなぜ?」
栗色のくせ毛の下に見える眉間に溝ができる。
感情を、ロイは感じ取っていた。
怒り、憤怒と言っても良い。
それがこれ以上なく、ロイに叩きつけられる。思わず身構えそうになる程に。
「枢木卿、どういう理由で僕にそんなものを向けるのか」
枢木は力を込めていた口元を緩め、
「キャンベル卿。答えは言えない、けどこれだけは言える」
絞り出すような声だった。
「君は悪くない。悪くないんだ。ロイ・キャンベルである君は。だから」
「なんだそれは、訳が分からない!」
ここに来て、ロイも苛つき始めていた。無意味に無礼な態度を取られているのだ。常人ならば怒り出しても誰も咎めない所である。
「必要以上に僕に近づかないくれ。頼む」
「答えになっていない。つまり、あなたは僕と永遠に仲良くする気はないという事なのか?」
肯定が返ってくるかと思ったが、逆だった。
「いや、そうではない。まだ、整理ができていないだけなんだ。もうしばらく待ってほしい」
意味が分からなかった、そうであるが故にまだまだ問いかけたいことも沢山あった。
しかし、それ以上のやりとりは、枢木が背を向けることによって出来なくなってしまった。
こんな第一印象なのだ、御膳試合の結果は散々なものとなった。
観戦していた有力貴族からは、既に絶大な戦果のある枢木はともかく、ロイのラウンズとしての腕前を疑問視する声が多数あがった。それが原因で、元々ナイトオブゼロに与えられる予定だった領地の授与も一年近く遅れる事になってしまった。