コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS R2~蒼失の騎士~   作:宙孫 左千夫

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①巻 10話『政庁 攻防戦 B』

(おかしい……)

 アーニャ・アールストレイムは“モルドレッド”のブレイズルミナスを展開し、四方からの銃撃を防ぎながら、状況を確認する。

 今、アーニャは敵に囲まれていた。

 この数分間おかしいことだらけだった。敵を追いかけても、すぐに撤退する。追いついて攻撃を加えようとすると、また違う場所から攻撃が来る。

 そして気付いたら見事に敵に囲まれていた。

 しかも、こちらには量産型の“グロースター”が多い。

 それらが、バリア――ブレイズルミナスを止めると。大型ランスを構え、それこそ槍衾のように襲い掛かってくる。

 射撃能力に優れた“サザーランド”を“トリスタン”に回し、格闘能力の高い“グロースター”を射撃武器は効果が薄い“モルドレッド”に回す。

理にかなった配分だ。おかげで、こちらにはミサイルを撃ち込むヒマもない。

(いや、それだけではない。この人たち、急に動きが良くなった……)

 政庁に突入した頃は、脆弱な守備力に落胆していたアーニャだったが、ある時を境に、急に全ての部隊が一つの意志の元に組織的に動くようになった。

 こちらの行動は常に先回りされ、驚くぐらい絶妙なタイミングで敵に補足され、奇襲を受ける。

 アーニャはやっかいだと思った。もちろん少しだけだが。

(と言っても……)

 大ピンチ、という程でも無い。

 アーニャは、チラリと上――天井を見る。そこには大きな穴があり、青い空が見えた。

 アーニャが政庁に突入するときに開けた穴だった。

 実は、アーニャは形勢不利と見るや、追い詰められるフリをして、ここまで戻ってきていたのだ。

(ブレイズルミナスを展開しつつ、上空に退避。天井を盾にして態勢を立て直し。折を見て再突入。ミサイルで一網打尽……)

 そこまで考えた後、アーニャは「あっ」と言って、顔を上げる。

(ちゃんと殺さないように注意しないと……)

 もし、こんな事で死人を出そうものなら、怒られるだけでは済まないだろう。下手をすれば彼に完全に軽蔑されるかもしれない。それだけは耐えられない。

 アーニャは“モルドレッド”を操作し、上空を目指す。

 下からの銃撃は相変わらず激しいが、ブレイズルミナスを下方に集中させれば問題ない。

 半分ぐらいの高さまで浮上した所で。

「!」

 青い空が見える大穴の中心を、下から赤黒い閃光が通過し、雲の隙間に消えていった。

 思わず宙に浮かんだまま立ち止まる“モルドレッド”。

「あれは……」

 間違いない。ハドロン砲の黒光だった。

「誤射?」

 いや、違う。それにしては。対象である自分と距離が開きすぎている。

 これは、きっと……。

(警告……)

 その射撃は“穴を通過しようとしたら、こうやって撃ち落す”と言っているのだ。

 今、ブリタニアのKMFでハドロン砲が装備されているのは三騎。この“モルドレッド”と“ランスロット”そして……。

 アーニャは恐る恐る、視線を地上に向ける。

 青い騎士の姿があった。騎士は、新しく装備された兵器――可変ハドロンブラスター狙撃モードの細長く展開された砲身を緩慢な動作で、この“モルドッド”に向ける。

 同時に、コックピット内に敵からロックを受けた事を知らせるアラームが鳴り響く。

「……」

 アーニャの顔に変化は無い。相変わらずの無表情な顔で、その青い騎士、ナイトオブゼロ専用騎“ランスロット・クラブ”を見つめている。

 しかし、その淡々とした顔には似合わない冷たい汗がだらだらと流れ始めていた。

 通信を知らせる電子音。

 アーニャは体を震わせた。無視するわけにもいかず、戸惑い気味に通信を開く。

 <音声オンリー>の表示。しかし、すぐに誰か分かった。その声はとても聞き覚えのあるものだったから。

『まだこんな馬鹿な事を続けるかい?』

 アーニャは、ここにきてその顔を一気に曇らせる。

 理解した。きっと、途中からこの人が指揮を執ったのだろう。ならば、手加減していたとはいえ、自分がこれだけ追い詰められたのも納得だった。

 言葉に迷ったが、無理やりひねり出した。何か言わないと怖くて仕方なかった。

「あのねロイ……私はナナリー総督のため――」

 アーニャはジノに言われた(丸め込まれた)言葉を思い出しながら、その<音声オンリー>と表示されているモニターに身を乗り出して話しかける。

 しかし、アーニャが言い終わる前に、

『アーニャ』

 本来ならば喜ばしいその呼びかけ。だが、今だけは、アーニャは悪寒にも似たものを感じ小さく肩を震わせる。

 嫌な予感がする。

『僕はね……まだ続けるのか? と聞いているんだよ』

 ドスの効いた声が響いた。

 アーニャは愕然とした。マズかった、これは非常にマズかった。この声は、温厚な彼には珍しく本気で怒っている時の声だった。

 アーニャは、急いで外部スピーカーの電源をオンにした。そして、

「降参する……」 

 と、即座に“モルドレッド”に両手を挙げさせた。

 

   ○

 

「まったくジノめ。アーニャまで巻き込んで」

 ロイは“クラブ”の狭いコックピットの中で大きくため息をついた。

 まず、空港に誰も迎えに来ていないという時点でもっと疑うべきだった。。

 エリア11への入国手続きをしている過程で、このエリアにラウンズの赴任決定は伝わっていたが到着時刻が知らせれていない事を知った。

 そのせいで手続きにはいつもの倍の時間がかかった。いま思えば、多分それもジノの計算の内だったのだろう。

 手続きの途中で政庁が襲われていると聞いて来てみれば、襲っているのは見慣れたKMFが二騎。

 ロイは、すぐジノの悪ふざけを理解した。

 その後、ロイはすぐに愛機に乗り込むと、司令室に通信を開き、ラウンズの権限の元に、この政庁の指揮権を拝借した。

 “モルドレッド”は両手を挙げて、ゆっくり降りてくる。

 アーニャはきっと、ナナリー総督のため。とか丸め込まれてつき合わされたのだろう。

 しかし……どんな経緯があれ、事を起こした以上それは本人――アーニャの責任である。それが一人前の騎士というものだ。

 友のために、というその動機は確かに美しい。だが、行動は決して許されることではない。

 鋭い瞳で、ロイは着地した“モルドレッド”を一瞥する。

 これで一つ片付いた。あとは“トリスタン”だけだ。

 再び“クラブ”のレーダーに目をやって“トリスタン”と交戦中の部隊の様子を眺める。

(流石といった所だなジノは。これだけの布陣で包囲しているにも関わらず、手間取らせるなんて……)

 改めて味方で良かったとしみじみと思う獅子奮迅ぶり。ロイは感嘆のため息をもらした。

 しかし、それはロイの予想の範囲内でもある。

(まぁ、時間の問題だな)

 ロイは、“トリスタン”と交戦中の部隊に通信を開く。

「ナイトオブゼロより各部隊に通達。G1、G2はライフルを捨て、大型ランスで接近戦をしかけろ、“トリスタン”の変形途中を狙え。チームアルファはそのまま前進。チームベータはポイントHに移動後、待機、“トリスタン”の視認を待て。チームガンマとデルタ、そしてシータはその場で分散し“トリスタン”への射撃を継続しろ。当てなくてもいい。広い範囲での掃射を心がけろ。とにかくジノ――じゃなかった。アンノウンに空を自由に往来させるな」

『イエス・マイ・ロード!』

 答える騎士達の声は力強い。最初、騎士達は命令しても、本当に自分たちがラウンズに勝てるのだろうか、と気弱な者も多かったが、“モルドレッド”を捕らえ、“トリスタン”と政庁守備隊の戦闘もいまやどうみても守備隊の方が有利。

 有利な状況に身を置くと、人間不思議なもので、恐怖心なんて一気に掻き消える。

「よし、ほとんどの問題はクリアされた。あとは……」

 眼鏡の分厚いレンズ越しに、レーダーを見ながら思案を巡らせていると、ピピピッという電子音。

 通信だ。開くと、モニターには、少々困った顔をした若い騎士の姿が映った。

『キャンベル卿。アールストレイム卿を確保――いえ、保護? いえ、なんと言いますか……』

 若い騎士はしどろもどろに喋ってやがて口をつぐんでしまう。騎士の後ろには、“モルドレット”から降りたアーニャの姿があった。

 どことなくその姿は、悪戯をして、叱られるのを待つ子供のように肩をショボーンと落としていた。

 思わず全てを許してしまいたくなるような姿だったが、ロイは兄貴分として、心を鬼にした。

「確保でいい。すぐに拘束しろ」

『ええ!?』

 戸惑う騎士。ロイは小さくため息をつく。

「それができないなら、ナイトオブシックスには罰として政庁にある女子トイレ“全て”の掃除をさせろ。本人には私がそう言ったと伝えればいい」

『いや、ですが――』

「話は以上だ、これより私はもう一騎の“アンノウン”の襟首を捕まえにいく」

『イ、イエス・マイ・ロード……』

 ロイは無造作に通信を切った。

「ったく……」

 “クラブ”のフロートシステムを起動させ、機体はフワリと空に舞い上がった。 

 

   ○

 

 天井の大穴から空に向かっていく“クラブ”を見ながら、ロイに通信を送った若い騎士は困った顔で息を吐いた。

「ロイは、何て?」

 後ろからナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムが不安そうな顔で話しかけてきた。

 若い騎士は、振り向きざま背筋を伸ばす。少し迷って。

「あの、ナイトオブゼロ様はナイトオブシックス様に、罰として政庁全ての女子トイレの掃除をさせろ、と……」

「……」

 ナイトオブシックスがスッと眉間に皺を作る。

 若い騎士は慌てて、

「ああ、すいません! やるわけ無いですよね! ナイトオブシックス様がそんなトイレ掃除なんか……」

「あなた」

「は、はい!」

 ビクッ! と体を震わせる若い騎士。怒られると思った。しかし、その可憐な桜色の唇から出た言葉は若い騎士の予想と違っていた。

「トイレはどっち?」

「……へ?」

 若い騎士が素っ頓狂な声を上げる。対してアーニャは淡々と言った。

「トイレはどこかと聞いてる」

「あ、あちらですが……」

「そう。ありがと」

 アーニャは若い騎士の指を指した方向に歩き出し、懐から携帯を取り出すと、どこかにかけて、それを耳にあてた。

 しばらくして、相手が出たようだ。

「セシル? 私。うん、そう。トイレ掃除のやり方教えて。何でか? ロイにそう言われた……」

 素直に、ナイトオブシックスは罰として課せられた政庁のトイレ掃除に向かっていった。

 

   ○

 

 ナイトオブスリーと政庁守備隊の戦いは、ナイトオブゼロの予想に反して攻守が完全に入れ替わろうとしていた。

「……っ!」

 ジノの神妙な顔から発せられる呼吸音と共に、死神の鎌にも似た“トリスタン”の槍が“サザーランド”の頭部を切断する。

 作動する緊急脱出用のイジェクション・シート。遠くに射出された箱型のコックピットを横目で見て、ジノは言った。

「七騎目!」

 振るった槍を構えなおす。同時に、背後の二騎の“サザーランド”が黒い銃口をこちらに向ける。

 それに気付き、ナイトメア形態のまま脚部に力を溜めて素早く飛び上がる“トリスタン”。

 “サザーランド”の騎士達は一瞬引き金を引くべき対象を見失った。

 ニヤリと笑う。なぜなら、ジノにとってはその一瞬で充分だった。

 巧みに操作された“トリスタン”は“サザーランド”の背後に着地し、一閃。

 次の瞬間、二騎の“サザーランド”は兵器としての機能を完全に奪われ、四つの塊となって、崩れ落ちた。

「八騎! そして九騎!」

 慣性で揺れる金髪の前髪から汗が飛ぶ。続いてジノは視線を全方位に巡らし、敵を探る。

『でやああああ!』

 “トリスタン”の側面から大型ランスが迫る。グラストンナイツ。エドガーの“グロースター”だった。

「しつこい!」

 ジノは槍でその一撃を受け流す。返す刀でその“グロースター”にトドメを刺そうと、槍を振り上げた。

 しかし、

『させるか!』

 今度は違う方向からクラウディオの“グロースター”がランスを構えて迫ってきた。ジノは咄嗟の判断でトドメを刺すのを中止して防御に転じた。

 重量の違う二本の槍が接触して火花を散らす。負けたのは大型のランスの方だった。

 グラリと体勢を崩す“グロースター”。すかさず“トリスタン”の槍が上段から襲い掛かる。

 もらった! ジノは心で小さく呟いた。MVSの刃はKMFの命とも言えるエナジーフィラーの格納部分を易々と切り裂いた。

 小さく立ち上る煙。爆発はしない、コックピットは当然無傷、騎士にも怪我は無いはず。そうなるようにした。

 それらを見届け、ジノは追い詰められているにも関わらず笑みすら浮かべて言った。

「十騎!」

『よくもクラウディオを!』

 体勢を立て直したエドガーが、仲間がやられた事に対する怒りに任せて、至近距離でスラッシュハーケンを打ち出す。

 “トリスタン”はそれに素早く反応。身を回転させるようにして躱し、“グロースター”に肉薄する。

『……!』

 息を飲むエドガー。繰り出される“トリスタン”の槍。グラストンナイツの腕をもってしても、回避行動すら取れなかった。

 刹那。槍は一呼吸で“グロースター”の頭部と脚部を完全に破壊した。

「十一騎……。よし!」

 勝利に浸る余裕はない。

 ジノは急いで“トリスタン”を戦闘機に変形させ、全方位から迫る“サザーランド”からの銃撃を飛び上がってかわす。

 張り巡らせた緊張を解くように、大きく息を吐いた。

 状況は、包囲されたころより好転した。

 退却するのに一番のネックだったグラストンナイツの“グロースター”を片付けた。

 これにより、“トリスタン”に追随できる腕を持つ騎士はこの場にいなくなった。

「さて、こうなったらスタコラサッサだ」

 ずいぶん数の減った“サザーランド”を無視して、ジノは機首を退路に向け、足のペダルを踏み込む。

 風の層を突き破り、加速する“トリスタン”。退却を阻む者はだれもいない。

 が、そう上手くはいかなかった。

「!」

 ジノは、背筋に寒気のようなものを感じて、“トリスタン”をKMFに変形させて減速、フロートを唸らせて急浮上、急旋回させた。

 刹那、先ほどまでの“トリスタン”の進行方向を妨げるように、幾筋もの紅黒い光が、彗星のように降り注いだ。

 光は地面を浅く削り、小さな煙を立てる。

「これは、可変ハドロンブラスターの拡散モード……」

 ジノは気の抜けたようにはぁ、と息を吐く。

「なんだ、そういう事か」

 ここにきて、ジノもアーニャと同じ事を納得した。

 いくら手を抜いていたとはいえ、ナイトオブスリーである自分を追い込められるような人間は、冷静に考えてみればそんなにいない。

「お前かよ、ロイ……」

 頭上に視線を送る。

 そこには、やっぱりというかなんというか、右肩の短い砲身を構えた青い騎士――“クラブ”の姿があった。

『ジノ……まさか、あの包囲から突破するなんて。完全に予想外だったよ』

 外部スピーカーから響く同僚の声に、ジノは「ハッ」と息を吐き軽く笑って答えた。

「ナイトオブスリーの実力も安く見積もられたもんだ」

『そうかもしれないね。これでも、君の強さは僕が一番良く理解してるつもりだったんだけど』

「だろうな。けど、実戦で予想を越えるなんて事は良くある事だ」

『全くもってその通りだ。次からより一層気をつけるよ』

 “クラブ”は、フロートを起動させつつ静かに着地した。それに伴って、“クラブ”を中心に円形状に風が吹いて、ほこりが舞う。

 ジノはフフンと笑った。

「アーニャはどうした?」

『トイレ掃除』

「おお、それは災難。アイツの事だから、お前に言われた事は徹底的にやるぞ」

 ジノは肩をすくめる。

 ロイはそれに対して、淡々とした口調で答えた。

『そうかもね。まぁそれは置いておいて……ジノ』

 ロイの声のトーンが一段下がった。

 

『悪ふざけが過ぎるんじゃないか』

 

 その底冷えするような声。

(うわ、怒ってるな~)

 ロイとは、友人となってそれほど長い年月は経っていないが、その考えは手に取るようにわかる。

 だから、ジノは不敵に笑った。

「そうかな?」

 ジノは軽薄に答えた。

 ロイのムッとする顔が鋼鉄の装甲越しでも見えるようだった。

『……大人しく降りてくるんだジノ。そして、皆に謝れ』

「嫌だ。と言ったら?」

『……ジノ』

 押し殺したロイの声。しかしアーニャと違い、ジノはそんなものでは物怖じしない。いや、むしろ……。

「私はラウンズ。お前もラウンズ。立場は同格。だったら私がお前の命令に従う必要は無いよな?」

『……』

「さて。となると、この後の展開はおのずと決まってくる」

 ジノは、MVSの微細振動を再起動させる。全てを切断する刃がその対象を求めて断続的な唸りを上げる。

 “トリスタン”は地面に着地し、同時に槍を自身の周りで数度回転させ、刃先をクラブに向けて構えた。

「“私を止めてみたまえ”。ナイトオブゼロ」

『……』

 “クラブ”から反応は無い。ただ突っ立ったままだ。

 それでもジノは“クラブ”をジッと見続ける。まるでその中にいる騎士の心まで覗き込むように。

 やがて、

『……いいだろう』

 青い騎士は背から、スラリと二振りの刃を取り出して構えた。

 ショートソードだ。“トリスタン”の槍と同じMVSの刃が、重く不気味な振動の音を立て始める。

『ラウンズを止めるのは、確かにラウンズの役目だ』

 “クラブ”は腰を少しだけ落とし前傾姿勢になる。

 見つめ、口元を緩めるジノ。同時に、ゾクゾクとした感覚が彼の背中を駆け上る。

 ――逆らうな。あいつを怒らせたら怖いぞ。

 ――いや、良い機会だ。

 二つの思考。両極端の感情。そして狭間に立つジノ・ヴァインベルグ。

 その擦れ合い。その狭間に身を置く感覚が何ともいえない恍惚にも似た感情を生み出す。

 所詮騎士だの、貴族だの着飾ってはいるが、それ以前にジノは一人の男の子であり戦士。強い相手と戦えるという事実はその心を興奮させる。

 小細工無しのガチンコなら尚更だ。

「本気で来いよ、ロイ」

『……一つ確認したい』

「何だ?」

『脱出装置は正常か?』

 ジノはその言葉を聞いて、思わず呆気にとられた。

 挑発とも取れる言動だが、それは軽口ではない、ドスの効いた脅し文句。

 そんなの、今までロイに言われた事がなかった。

「ふ、ふふ、ふふふ。くっくっく」

 頑張って押し殺す。でも、ジノは笑いが止められない。

 ロイとの戦い。

 二人とも味方だ、その上技量の高いラウンズだし、何より友達だ。当然本気の戦いにはならないだろう、でも……。

「言うねぇ!」

 熱い戦いにはなりそうだった。

 ジノは槍を振り上げ、ランドスピナーを加速させた。


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