1.当話は『絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち』の『バッドエンド』版。第1話にて『神樹』が見たとされる最悪な未来というコンセプトで書いています。よって、鬱成分や胸糞の悪い展開が含まれています。
2.『勇者である』シリーズ側の設定としては原作通りで変更点はありません。ただし、大赦は当作品準拠の設定となっています。さらに勇者であるシリーズでは最新作となっている『楠芽吹は勇者である』要素が若干入っております。
3.『蒼穹のファフナー』側ですが、『勇者である』世界に来てしまったとされる『ミール』『フェストゥム(当話では『金色の祝祭』と表記)』のみ介入しています。
4.序盤の書誌を纏めている人はごく普通の名もなき一般人です。
5.(尤も重要な要素)原作キャラ死亡表現あり!
それでもいい人はそのまま、苦手であるまたは見たくないなどの人は見ないでください。素直にプラウザバックでよろしいです(反響が悪ければこの話は削除いたします)
『祝福されなかった世界にて』 ※閲覧注意
本日より大赦巫女様より、今度の御役目に関する報告をお纏めするという大役を仰せつかった。
神託のとおり神樹様を狙う人類の敵バーテックスの襲来期へと入り人類守護のため神樹様より与えられた勇者システムが新設されて2年ぶりである。四国全土へと候補者を拡大してからは初めての事だ。
神樹様により選ばれた名誉ある大役である『勇者』。今回の勇者はたとえこれまで普通であってもすぐに戦える。これまで日常を送ってきた子たちには酷な事だが、この四国を守り人類を滅ぼさせないためには名誉あることとして取り組まなけらばならない。
だけど神樹様はそんな子たちでも戦えるよう素晴らしい力をお与えになっている。その力は少女たちを護り、御役目をこなしてくれるであろう。
これからもその恵みのもとに歴史を繋ぐ。それを纏める大役は責任をもって当たらなければならない。だからこそ、やりがいというものを感じる。
ただ、唯一の懸念が『金色』に輝く存在ということだが……
大赦書史部 △△ 300.4.15
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最初の御役目が起きた。ほんの数瞬の出来事であったが確かに樹海化されたとの兆しがあったそうだ。
最初のバーテックスは選ばれた勇者たちにより見事に殲滅された。これも2年前にご活躍成された勇者様によりバーテックスの心臓部分ともいえる『御霊』が発見され、その殲滅のための機能は想定通りに機能した。
人類はまた新たな一歩を踏み出すことに成功したのだ。
大赦書史部 △△ 300.4.25
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慌ただしかったが、昨日の御役目の詳細な報告が入った。
……大変痛ましいが犠牲が出てしまったのだ。
御役目でお亡くなりになったのは2人で、1人目は大赦より派遣され讃州地方の担当となっていた犬吠埼家の長女。2人目は四国全土の調査にて歴代最大の適正値を叩き出し、大赦より『友奈』という名前を授けられた少女である。
原因はバーテックスではなく、神託にあった『金色の祝祭』という存在だったそうだ。
新たな勇者システムは『精霊』と呼ばれる。かつて西暦と呼ばれた時代、初代勇者たちに用いられたがあまりにも協力ゆえに封印された力を最適化し、勇者を死なせないようにした守護があったが、『金色の祝祭』の前には機能せず勇者2人は結晶となり砕け散った……。
『金色の祝祭』は残る勇者2人を残して去っていった。何を考えているのか…その生態は全くもって不明。唯ひとつ分かっていることはバーテックス以上の脅威を持っているという事だ。
大赦書史部 △△ 300.4.26
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昨日、勇者を2人も失った悲しみも明けぬ中、バーテックスの2度目の襲来が起きたそうだ。それも2年前、最悪な事態となった複数体出現のパターンだ。
残された勇者は犬吠埼家の次女と2年前の御役目に選ばれ記憶を喪失・足が不自由となってしまった先代の勇者。危機的な状況なもののこうして私がこうやって報告書を書いているという事は無事にお役目を達せられたようである。
勇者システムの切り札ともいえる『満開』。その圧倒的な力の前に複数体いたバーテックスも歯が立たなかったようである。
満開を行ってしまった勇者には近いうちに影響も出るだろう。しかし、その分新たな精霊や武器が増え、きっと勇者様の力となってくれるであろう。
『金色の祝祭』は今回の御役目には現れなかったのは気がかりだが、バーテックスという強大な敵もいる以上、近い将来対策をたてる必要はある。
大赦書史部 △△ 300.4.27
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大赦で養成し先代の勇者の1人が使用していた端末を継承した三好家の娘が讃州地方へと入り、同じ頃に起きたお役目に参加なされた。
鍛錬を繰り返し、強力な援軍として調整された勇者はバーテックスを全く寄せ付けず。なんと1人で殲滅したそうだ。
1回目の御役目で想定外の事態があったものの12星座の内、撃退されたのはこれで5体目。バーテックス方面は至って順調のようである。
三好家の娘には期待できる。讃州地方の2人の勇者への支えとなり共に御役目をこなしてくれることを願いたい。
大赦書史部 △△ 300.6.5
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2度目の『金色の祝祭』の出現が確認された。今回は彼の存在のみの襲来であり、神樹様の樹海の展開もなされ勇者たちが迎撃に出撃なされた。
結果としては満開の使用により敵の撃退には辛くも成功したと言えるが、今度は三好家の娘が犠牲となった。霊的医療班によると中枢神経に異常が見られ現在も昏睡状態との事だ。
『金色の祝祭』には精霊の守りが通じない。先代の勇者の死をもってようやく実装された力……勇者を死なせないための守りがこれでは意味がないではないか。
……御役目と人類の生存のために勇者システムのさらなる改良と対策が急がれる。
大赦書史部 △△ 300.6.12
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本日は報告を2つ。
1つ目は、残された2人の勇者様だが日常を送るのが不可能になった。恐らくは満開を使った際のあの機能であろう。2人の勇者の処遇だが、大赦は直々な管理することを決め、大赦所有の病院へと移ることとなった。
2つ目は大赦…否四国としても大変痛ましい事実を書かなければならない。治療の甲斐もなく三好家の娘がお亡くなりになった。床についていた病室にて翡翠色の結晶が残されており彼女自身は忽然と消えてしまっていた。……最初に犠牲になった2人の勇者と同じ死亡例なのがその後の調査で明らかになった。
今回の事態を受け、上層部では極めて異常ともいえると判断を下した。早急な対策へと乗り出した。
しかし、勇者は御役目の期間内での補充は神樹様が選ぶため実質的には不可能である。これまでも御役目の途上での脱落などがあっても新たな勇者は選ばれることはなかった。事実、その後の調査でも勇者に新たに選ばれた少女は確認できなかった。
大赦書史部 △△ 300.7.1
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大赦上層部が非常事態宣言を発令することを決定した。対バーテックスに関しての殲滅は出現の周期が乱れているものの順調とのことだが、いまだに『金色の祝祭』に対する有効的な対処法が見つかっていない。
勇者の人数も足りない。そのため大赦は切り札として管理していた先代の勇者様を御役目へと投入することも決定された。
2年前の瀬戸大橋の決戦にて21回の満開を行い、現勇者の中で最も神樹様に近い彼女ならきっと現状を打破してくれると大赦は大いに期待しているとのことだ。
人類の希望はいまだに紡がれている。……上層部はそうおっしゃったが、私としても本当に四国を守り切れるのか……そう疑念を感じ始めていた。
大赦書史部 △△ 300.7.6
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巫女部より、神樹様の神託が導き出された。
……バーテックスの大規模な侵攻が始まる兆候がありとの事だ。
決戦までの詳細な時期は未定。大赦内では残された勇者を万全な体制にするための準備が進められている。万一に備え、戦力の拡大も決定。壁外のために組織された少女たちも戦線に加えるそうだ。
量産化された勇者システム…否、『防人』と呼ばれる少女たちも戦場へと駆り出すという事は余程切羽が詰まっているともいえる。
しかし、私たちにできることは数少ない。ただ一つできることは、神樹様に選ばれた勇者たちがこの四国を守ってくれるのを願うだけだ。
大赦書史部 △△ 300.7.7
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――― 大赦書士部の報告書はここで終わっている。その書誌を読んでいる女性が次のページをめくる。
内容はこの書誌を書いた著者の日記のようだ。どうやら、最後の報告書のあとに起きた出来事などが綴られていた。文字の書体を見ると丁寧にではなくむしろ殴り書かれているような感じである。
どうやら、最後の報告書を書き上げたのち、突如として神樹の結界である壁が崩壊し空を埋め尽くすほどの金色の存在が現れた。その著者は何もわからないまま、他の人々とともに避難場所まで逃げ込んでから日記のように纏めるという経緯から始まった。
またページをめくる。次に書かれていたのは著者がボロボロの状態で避難所へと駆け込んできた少女から聞いた事の顛末である。少女は『防人』と呼ばれる役職に就いており勇者たちと戦ったそうだ。
少女たちの話は避難所の人々を愕然とさせた。バーテックスとの決戦の最中、『金色の祝祭』が乱入、勇者・防人の連合チームとバーテックスを相手にした3つ巴へと発展したのだ。
勇者たちは満開を使い両存在と相対した。防人たちも必死に応戦したようだが、量産型システムとして作成された『防人』ではあったが精々星屑を相手取るのが限界であった。
勇者たちは殲滅と防人援護という板挟みとなり、何度も満開を繰り返した。だが、それも限りがあった。バーテックス側が半ば壊滅状態に陥ったところで『金色の祝祭』は勇者への集中攻撃を開始した。
『金色の祝祭』が放つ黒い球体が3人の勇者を焼き、一人また一人と勇者は力尽きていった。勇者という戦力の中心でもあり精神的な主柱を失った防人たちであったが、敵の脅威に戦場から逃げ出す者が出始め、戦いどころではなくなった。
『金色の祝祭』は逃げ出したものから襲った。命乞いする者も命からがら逃げようとする者もみんな死んでしまった。避難所まで逃げてきた少女には同じ小隊員に属している2人と慕っている指揮官と仲が良かったようだが、その3人が大赦や四国の人々にこの事を伝えるために道を切り開いたことでなんとか逃げおおせた事も話してくれた。その絶望ともいえる報告に誰しもが絶句し、その少女を慰めたり非難することもなかった。
内容を確かめながらページをめくる。日記は続いていたようだが数ページの後にそれは途切れた。書かれていたのは身を寄せ合い励ましあうような落書きであった。
「大丈夫」「ここにいる」「生き残る」等々、最初は必死に前向きになろうとしていた。
しかし、時間が経つにつれ精神も憔悴し始めたのを象徴するかのように「帰りたい」「両親に会いたい」など暗い書き込みも目立ち始める。
「―――ッ!!!」
女性が息が詰まったような声をあげる。衝撃的な書き込みが最後のページ全体に書かれていた。
【どうせ みんな いなくなる】
これを書いた人は相当追い詰められてしまったのであろう。閉鎖環境ゆえの恐怖が狂気へと変わった。その精神状態を如実に示したものであった。
「私が見た最悪の未来……」
『神樹』は目をつぶりゆっくりと書誌と閉じた。ぽつりと呟くとその書誌がぱっと光がはじけるように消えた。
「……このような未来にならないために私は」
頭の中で反芻を終え再びその双瞼がひらかれる。立ち上がると傍にある芽に手を翳すと女性の周辺の空間に網目状にこの世界の記憶のような概念が展開される。彼女はその記憶をひとつひとつ確認していくと、突然として概念が一斉に動き始める。
「また未来が…変わった」
いくつもの概念が役目を終えたかのように消え、新たに追加され、並び変えられ繋げられる。道のように繋がっていた概念は無数にあるが、今の動作で繋がっていた概念の数は随分と減ってしまっていた。それだけの未来への選択肢が絞り込まれたのである。
「あの世界の人々が来てから、ようやくここまでとなりましたか」
自らの決断はいまだに正しかったとは結論づけることは出来ない。しかし、自分たちだけではここまでの未来を繋げる道は見えてこなかった。少なくとも『神樹』は自らの世界に未来をもたらしてくれる可能性があると考えている。
あの世界からやって来た『来訪者』の戦いは未だに続く。『神樹』が思い描く『未来』へのために彼女もまだ戦い続けるのである。
……思い付きでやってみたけど、バッドエンドはあまり書きたくないかな……。
<解説>
●大赦の御記に近い報告書
『乃木若葉は勇者である』中にあった避難者の日記のイメージ。
●最後にあった一文
『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』の劇中にあったあの場面のものです。
●『神樹』の未来を読み解く場面(オリジナル設定)
『蒼穹のファフナー EXODUS』でのSDP『予知』での未来干渉のイメージ。ただし、見れるだけで体験並びに未来更新は不可。例外としてその世界の記憶が一番強い概念の呼び出しならできる程度(劇中の書記呼び出し)
作者はこういうバッドエンドは嫌いではないですが…やはり作ってみて辛いとしか言えないですね。
本編ではこのようなENDではなく、未来につながるような自分なりのエンドは考えていますので、それにつながるよう書けるように努めていきます。