『鷲尾須美は勇者である』並びに『鷲尾須美の章』の改変要素、人体欠損表現あり。
2017/5/1 後半部分加筆修正。おまけ追加。
-神世紀298年 樹海内 瀬戸大橋-
樹海と呼ばれる神樹に選ばれた少女たちが戦う結界。四国の玄関口と呼ばれる大橋に1人の勇者がいた。
「はぁ……はぁ…………」
橙色を基調とした装束を纏った少女『三ノ輪銀』である。戦闘不能になった2人の勇者を逃がし孤軍奮闘の活躍を見せた。しかし、周囲の激闘の跡を物語るように彼女の勇者服は敵の度重なる攻撃に裂け、敵のうちの1体が放つ光の矢により撃ち貫かれ右腕を失った……。
こうなってしまったのは3体の異形を退けるために防御を捨てた猛攻を行ったためである。今、ツケがまわっていた。銀は出血により常人ならもう命が落としてもおかしくはなかった。
「まだ……いるのかよ!」
退けたと思えた敵だったがその内の1体は侵攻を諦めてないようだ。銀はその敵を睨みつける。その眼にはいまだに燃え盛る焔のような闘志が宿っている。
(生きて…帰るんだ)
限界を超えた体をさらに酷使する。傷だらけなはずなのに不思議と痛みは感じなくなっていた。銀は左手の得物である斧を握りしめその一歩を踏み出す。
(みんなが待っている…アタシの護りたい人がいる所へ!)
銀を突き動かすのは友達や家族たちが住む町、それを護りたいという『思い』。それでも必ず帰るという強固な『意志』。
「このまま……出て行けぇぇぇ!!!!」
残っていた力を絞り出し跳躍、弾丸のような速さで突撃した銀は残っていた敵の体に深々と斧を打ち付けた。
銀の突撃の勢いに負け、敵の体は壁を越えた。
(どう……だっ…………人間様の…気合って………)
その刹那まるで花びらが散ってしまうように勇者装束が消滅、制服姿に戻った。同時に左手に持った斧が銀の手から離れ、制服のポケットから端末が滑り落ちた。そして、空を舞う銀も壁の外へと越え消えていった……。
――――――――――
-現在 某所 『特殊医療室』-
ミノさんと呼ばれた少女…『三ノ輪銀』は園子と『わっしー』と呼ばれる少女と一緒に勇者として戦い、日常生活では学び舎で供に学び、遊んだ間柄である。
見間違えるはずがなかった。あの時のバーテックスとの戦いで行方不明になっても彼女にとっては『ともだち』だ。
「園子、この子がミノさん…君と一緒に戦った勇者『三ノ輪銀』で間違いないの?」
「うん、ミノさんで間違いないよ」
来主の問いかけに答えると従者が小部屋の隔壁が開く。園子は眠り姫と化している銀の目の前へと連れられてきた。
「……ミノさん!」
学び舎で学んだ事、学校帰りに大型ショッピングモールに寄って遊んだ事、勇者として戦いその合間に鍛錬した事、辛い事も楽しい事も挙げればキリがない。
園子にとって戦い抜き不自由な身体となってからはの自らの支えであり只一つ残された思い出である。
来主と出会うまでは何度も何度も思い返す事で自らを保っていた。『ともだち』とずっと一緒にいれたらと夢に描いていたくらいだ。でなければ『園子』という感情を当の昔に失っていたかもしれない。
今、園子の目の前に銀がいるという現実がある。
「どうしたの? 私だよ。園子だよ」
銀に呼びかけるも反応はない。
「ねぇ、ミノさん起きてよ。園子だよ~目を…覚ましてよぉ」
何度も呼び掛けるが銀に届かない……いや、届いていない。
「……どうして眠り続けてるの?」
なぜ眠り続けているのか、それを来栖に訊ねようとしたが。
「あの戦いの後、彼女は戻ってきた。だけど、また眠りについた」
突如聞こえてきた声に一同は気づく。新たに部屋へと入ってきた女の子が園子たちの前に歩み寄った。
「……今の銀ちゃんは分岐を選ぼうとしている。彼女の意思が戻らないのはそれのせい」
園子にとってその少女は見覚えがあった。園子は2人の親友のほかにクラスメイトである男子生徒とその妹である女の子、親友ほどではないが日常を供にした兄妹の事が思い出される。
「……『つっきー』?」
「やっと会えたね。園子ちゃん」
園子はその女の子の名前ではなく親しみを込めた愛称で呼んだ。『皆城乙姫』の姿がそこにあった。
――――――――――
「まずはようこそ。『Alvis』へ」
数刻後、一同は銀の病室の隣にある一室に案内された。乙姫が園子の対面に椅子をもってきて座り、来栖と従者が園子の隣のという形である。この部屋にもガラス越しに銀の姿が見ることができた。
「アルヴィス?」
「私と総士がもう1人の仲間と一緒に目的を果たすための組織って言ったとこかな」
「……『そーそー』もだったんだ」
乙姫の兄に対する愛称である。
「……っと、あなたとこうして向かい合って話すのは初めてだね」
「あの時は君たちにとって俺たちのミールは敵だったからね」
意味深な発言をする乙姫と来主に園子が声をかけた。
「あの~もしかして、『みおみお』がいた世界の話かな?」
「そうだよ…私たちの世界の事知っているの?」
「園子にはかつての俺がいた世界の事は話してある。それに…フェストゥムとしての話も」
「そっか。それなら私たちの正体も明かしてもよさそうだね」
乙姫は自分がかつていた世界 ――― 『楽園』と呼ばれる島とその島を中心にして起きた出来事(※勇者部に話した内容と同一)を先に話した。
「ほぇ~。波乱万丈だったんだね~」
「…なんか予想以上に驚いていないっぽい?」
「これでも驚いてるよ。勇者の存在を知ってなかったり、『みおみお』の話を聞いてなかったら多分信じられなかったと思うよ~」
来主から既に話を聞いていたためか園子の理解は早く、あっさりと受け入れた。むしろ園子にとっては、かつて身近にいた人が来栖と同じ世界にいた事の方に驚いていた。
「『つっきー』や『そーそー』も私たちのような御役目があったんだね」
「うん。やがて来る災厄である『フェストゥム』。それらに対抗するためにね」
「『フェストゥム』ってみおみおと同じ?」
「違うよ園子。このミー「乙姫よ」…あぁ、ごめん。それが君の名だったね。乙姫が言っているのは別のミール。…つまりは別の群れっていう感じかな」
「そうだね。ええと「来主操」…操の言う通りだね」
「そっか~」と声をあげる。一通りの話を聞いた園子は少し間をおいてから本題に入ることにした。
「ねえ、『つっきー』。さっき言っていた事ミノさんに関係があるの? そのせいで何があったの?」
銀に身に何が起きたのか。なぜ起きないのか。今の園子はそのような気持ちでいっぱいだった。
「気になるよね……」
乙姫がそう呟くと園子の思いに応えるように告げた。
「園子ちゃんは銀ちゃんがどうなったかは知っているよね?」
「うん……。ミノさんは私と『わっしー』を助けるために―――」
今でも園子にとっては出来れば思い出したくもない嫌な出来事である。複数体のバーテックスの襲来に対峙した園子たちだったが、バーテックスの連携により瓦解し園子と『わっしー』は戦闘不能となってしまった。唯一動けた銀は2人を逃がし1人で3体のバーテックスと戦った。
「ミノさんあの時ね。『またね』って手を振ってた。……私たちはなんとか動けるまで回復して戻ったんだけど……ミノさんいなくなってた……」
戻った2人が見たのは戦闘の跡ともいえる破壊痕、壁まで続く血痕。それを辿ったが最後に見たのは、銀の武器である戦闘で酷使され所々ひびの入った二振りの斧、画面が割れた携帯端末であった。
「わっしーと2人で探しても見つからなかった…大赦の方もミノさんは結局死んじゃって…神樹様の元へ還ったって……」
その後は自分らの運命を変えたあの決戦へと赴いた。園子が銀に関して知ることはそれだけである。
「銀ちゃんが発見されたのは園子ちゃん達があの決戦を終えてから騒動が収まり始めた頃だったかな」
乙姫は銀にあった出来事、園子にとっては日常から切り離さた後に起きた出来事の説明を始める。
「さっきも話した通り、私は元はコア型っていう人間とフェストゥムとの独立融合個体だったの。こちらの世界に来てからもその力は健在だった。その日、私はその力である気配を感じ取ったわ」
「ある気配?」
「人とフェストゥムが混じりあったようななんとも言えない感じだった。それで総士と一緒にそれを探してみたの。見つけたのは町中を彷徨う傷だらけの彼女だった」
「(!?)ミノさんが帰ってきてた…」
ここで園子は不可思議な点に気づく、あの惨状から見ても彼女がバーテックスとの戦闘で相当な手傷を負っているのは明らかである。それが時間が経ってからふらっと自力で戻ってきたのである。勇者システムの端末を手放してしまったことから神樹の力の恩恵もないはずだ。
「園子ちゃんが思うとおり、銀ちゃんだけでは戻るのは不可能だよ。壁の外にもあの存在がいるからね」
乙姫も同意を示す。園子もそれに関しては承知の上である。大赦の情報を集める中、大人たちが隠しているある秘密を知っているのだ。
「アルヴィスで保護して検査したけれど、銀ちゃんは……普通なら命を落とす程の傷を負ってた。そして……彼女から……」
園子は何とも言えない不安感が沸き上がった。そして、乙姫の口から園子でも思い描けない報せが語られた。
「銀ちゃんからある生命体の反応が検出された。今は壁の外にいるもうひとつの災厄……『フェストゥム』に間違いなく接触してる」
「え……?」
思わず声が出る。園子を驚愕させるには十分な内容だった。
「ミノさんはどう…なるの…」
問いかける園子だったが、乙姫は複雑そうな表情を浮かべる。
「今の銀ちゃんにあるフェストゥムの因子が彼女の損傷した器官を補っているように同化している。このまま同化現象まで発展してが症状が進行してしまうかもしれない」
「なんとかならないの!!」
「そのフェストゥムに呼びかけたけど、意識の奥底に入り込んでいるようで、そのフェストゥムが何をしようとするのかまでは……」
「嘘…だよね…」
「私にとってもはじめての反応だからどう言えばいいか……」
「治せないの? それともずっとこのままなの!?」
「……フェストゥムの因子を取り除くのは困難…成功したとしても今度は銀ちゃんの命がもたない」
乙姫が沈痛な面持ちで説明した。銀がフェストゥムと同化している事。それが彼女にとっては未知なる反応であるためうまく説明ができないようだ。
園子はここで来栖の言った『君にとってはつらいもの』の意味をその身をもって理解し顔を俯かせ泣き続けている。それを見た来主もさすがによい顔とは言えない。恐らく人で言えば申し訳のない気持ちであろう。
園子の目からぽろぽろと涙が溢れていった。
「せっかく……会えたのに……。えっぐ……ひっぐ……」
もう会えないと思っていた銀がここにいるのに、乙姫から語られた最悪になるかもしれない可能性。園子は不安に駆られ、天から地へと叩き落されたような気分となる。
次第に園子の声は嗚咽が混じったようになってくる。
「どうしようも…ないのかな……」
銀はもう目覚めない。否、むしろ今以上に悪くなるかもしれない。園子は次々と悪いほうへと考えてしまう。
「だけど彼女は生きている」
泣きじゃくる園子に来主は意を決して声をかける。
「2年間も俺たちと同じにならなかったんだ。これは彼女の意思がまだそこにあるって事だよね」
「え?」
来主の言葉に園子は顔を見上げる。すると、彼女のベットの傍にある機械から規則正しい音が鳴っているのに気づく。計器は銀が正常に呼吸し、確かに彼女が『生きている』のを示していた。
「操の言う通りよ」
「じゃあ、ミノさんは?」
「こんな状態だけど、今はこれだけは言えるよ。銀は『ここにいるよ』」
来主と乙姫の救いともいえる声で園子の眼には仄かな光が戻る。
【またね】
すると、園子は銀が自分と『わっしー』に告げたあの言葉を思い出す。あの時、彼女はいつもの下校時の気軽な感じの在り来たりな言葉だ。銀は約束事に遅れることはあってもそれを破るといった事はなかった。もしかしたら、あの時も彼女は生きて帰ってくるという意味で告げたのではないかと園子は思った。
(ミノさん、私たちとまた会うために……)
涙溢れる瞳で銀を見つめる園子。来主はそんな園子の震える肩にそっと手を置いていた。
――――――――――
園子は来主を引き連れ自らの病室へと戻った。もっと乙姫と話したかったが先に戻った従者から時間だという連絡が入ったためである。
戻った園子は少し気分を落ち着けたいとの事を来栖たちに告げた。
この日は色々ありすぎた。最も園子にとって感慨深かったのは銀が生きていた事だ。もう現実で会う事はないと思っていた。せっかく仲良くなったのに別れてしまった親友の片割れ、園子にとってもしもまた一緒にいれたらいいなと思い何度も夢見た。
そして、日常を共にした兄妹の片割れである乙姫から告げられた事実。園子たちの住む世界にバーテックス以外の災厄、それが園子と出会った少年来主と同じフェストゥムである事。銀はその存在に接触している事。
乙姫から彼女の所属する組織でこれからも銀を治療または目覚めさせるための行動をし続けるらしい。乙姫曰く、銀が襲来したフェストゥムの手掛かりに成りうる事だと言っていた。深くは聞かなかったが、乙姫の口ぶりから以前にも今の銀と同じようになった人がいるかのような素振りだと園子は思えたそうな。
「園子、おはよう…落ち着いた?」
翌日、園子の様子を気にかけながら来栖がやって来た。園子の希望で今は彼だけだ。
「おはよ~。うん、色々あったけど、今は平気」
「そっか。園子が落ち込んでないかなって、ちょっとハラハラしてたよ」
必要以上に気を遣わせない様、いつもの調子で挨拶を返す。元フェストゥムである来栖には正直に自分の気持ちを表す。ちょっとした嘘ですらまともに受けてしまうからだ。
園子は本題に切り出す。
「『みおみお』、昨日はありがとう」
「ん、どういたしましてって言えばいいのかな。園子にとって辛いものを見せちゃったから……」
「ううん……私が『みおみお』と出会わなかったら……ミノさんが生きているって知ることはなかった…」
「そっか。力になれて何よりだよ。それで俺に何の用なのかな?」
「あのね……」
園子はいずれ選ばれるであろう御役目を行う勇者たちの事を話した。勇者システムは大型のバーテックスを倒すことが出来るほどに向上したが、以前から大赦で勇者の適合者を賄いきれないという問題が浮上。ついにその候補者探しを極秘裏に四国中に拡大したらしい。
その御役目は過酷で残虐な人見御供だが、園子はそれが自分たち住む世界を守るためにやらなければいけない事だと認識はしている。だが、大赦はそれを『残酷な真実』と判断し知る必要はないということで隠した。彼女にとって大赦の決定は許しがたいものだった。
最終的に神樹様に選ばれるといってもその候補者たちはその真実を何も知らない。自分たちの時代で何も真実を教えられずにあまりにも多くのものを失ったのをその身をもって経験した園子はその少女たちも多くのものを失い打ちひしがれる姿を容易に想像できた。
「……伝えればいいじゃないかな? 俺も何も知らないでやるっていうのは意味のないようなものだと思うし」
「うん、知らずにいるのは哀しいよ」
だからこそ、例え残酷な真実であっても伝えるべきだと園子は来栖に伝えた。
「だけど、園子はどうしたいの? 伝えるだけでいいの?」
「う~ん」
来主は真実を伝えることに賛同してくれた。だけど、園子はそれだけでいいのかと聞いてきた。言葉が出ない。園子としては伝えるだけで、その後の推移を見守るつもりだった。
「伝えるだけでいいよ……」
来主の問いに暗い表情になる。
「……この身体でも出来る事はそれだけだから」
どこか諦めたような感じで語る園子。
「園子、俺って頼りないのかな? どうも俺には園子の本心に聞こえないよ」
本質だけを見る来栖にあっさりと看破された。元はフェストゥムであるためか読心の能力は健在で人の嘘や偽りを見抜ける。
「やっぱり、『みおみお』には分かっちゃうよね」
園子は観念した様子で本心を語ることにした。
「あのね。私、あなたに会うまでどこかで諦めてたような気がするの」
不自由な身体になって以来、園子はどこか現実から逃げていたことを語った。四国を守るために力を使った代償でこうなった園子はそれを逃避するかのように思い出を振り返り、また夢の世界で過ごした日常を振り返る。園子はそれを繰り返していた。
目を閉じれば『また会える』。繰り返した園子にとってそれが当たり前のように思えていた。――― 来主と出会うまでは。
そして、彼との生活、彼からもたらされた現実や真実を知った事で自らに芽生えたある気持ちに気づいたことを来主に語った。
「ミノさんが生きてるって知って、私思っちゃったんだ。…やっぱり治りたいっていう気持ちが強いよ。……歩いて……友達を抱き締めに行きたいよ……。ねえ、『みおみお』。私、どうすればいいのかな?」
その問いに来主は迷いなく答えた。
「何度でも伝えればいい。治りたい。これが園子たちが望んだことがこれじゃないって、君の神様である神樹にに」
「だけど……、それは……」
園子の考えていることは言うなれば四国の神様である『神樹』に逆らうのに近い行為である。
「俺もさ、園子と同じ事があったんだ」
来主はかつて所属していたミールのフェストゥムの1体だった。所詮ミールの意思に準ずるだけの存在だった。ミールの意思の通りに動くことが正しいと思っていた。
しかし、人を理解し『空が綺麗』と思っていた時点で『個』を持っていた事と竜宮島の人たちとの邂逅で意思が揺らぎ所属するミールに疑問を持った。板挟みとなってしまった彼は苦しんだ。譲れず相いれなかったことで彼自身も争いに介入するのに発展した。
最終的には恩人の説得により『戦いたくない』という意思を自分でミールに伝えることが出来た。
来主はその経験談を園子に伝えた。
「この世界の神様もミールみたいに同じだと思うよ。結局は、抽象的にしか分からないんだ。だからこそ、これは違うとか理解できるように教えないと」
「そう…なのかな」
「だから…園子はどうしたいの?」
何時にもなく真剣な表情で園子に問いかける。
「私、やっぱり選ばれる子達に真実を伝えるよ。だけど、それで終わりじゃない。もう、私や『わっしー』、『ミノさん』みたいな悲劇はもう見たくない!
だから私は、いずれ選ばれる勇者たちと一緒に神樹様に伝えたい。私たちはこうでありたいって!」
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戦いで多くを失った少女は、かつて『祝福』と呼ばれた存在と出会う。
彼との出会いで少女は真実を知り、友がいるという事実を知った。
そして、苦難へと立ち向かう勇気が湧いた。
『乃木園子』と呼ばれる少女は現実へと航海する。それが彼女にとっての『EXODUS』の始まりだ。
――― 『絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち』外伝【乃木園子の章】最終話『EXODUS』
●三ノ輪銀に関して
3体のバーテックスを1人で追い払った際に最後の攻撃で四国の外へと出てしまったという原作改変。そこでフェストゥムが同化し、四国へと舞い戻った。3体のバーテックスにより瀕死の重症だったが失った機能を補うように同化された形で延命、まだ意識は戻っていない。
これは後々に重要な要素となります。
●おまけ【英雄2人が信じる可能性】
「総士、この子が例の?」
「あぁ」
アルヴィスへ復帰した一騎は総士に連れられ病室に眠る少女との邂逅を果たしていた。
復帰したことにより秘密を共有する立場となったため、眠り続ける『銀』という少女の事を聞いていた。
「治るのか?」
「見通しは不明だ。だが、僕としても諦めたわけじゃない」
「そうか」
淡々と答えていく総士。
「そういうお前はどうなんだ」
「俺も信じるよ」
「ほう。どういう根拠で」
「なんとなくだけどアイツの事もあったからな」
「ふっ」
2人はなんとなく銀はいつか目覚めるのを信じてみたくなった。今の銀はかつての島の仲間と同じ状態だ。だからこそ、2人はよりいい方へ賭けてみたくなったのだ。