絶望を超えし蒼穹と勇気ある花たち   作:黑羽焔

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対オリジナルフェストゥム戦決着編。

作者の祝福(オリジナル・強化要素)入ります。

2016/6/21 思念での会話括弧:【】を一部電話・システムなどの会話括弧:《》に変更。内容一部修正&戦闘内容加筆修正(友奈のシーンが主)


第13話 クロッシング(後編)

(こうもあっさりと倒せるとはな……バーテックスと対峙出来る程だからもしやと思っていたが)

 

バーテックスという規格外な生命体に対抗出来うる力を得た勇者は現代兵器を凌駕するとも言われている。迫りくるフェストゥムは倒されたのを見た総士は内心でそう呟いた。

 

「うん! これならいけるよ!」

 

「よくやったわ友奈。でも、安心するのはまだ早いわ。これからが本番よ」

 

勇者4人は皆城兄妹の元へと駆け寄ると、風が話を切り出した。

 

「……総士悪いけど、アタシらは真壁の援護に行くわ!」

 

「何!?」

 

「再生しまくるのだったらあのフェストゥムにアタシら勇者の力も叩きつけてやるわよ。さっきだってそれで倒せたようだし無意味じゃないわよ!」

 

「―――ッ。メチャクチャだ…!!! あの個体は倒せたとはいえ同じようにはいく保証はないぞ!」

 

「『なせば大抵なんとかなる』! やらないよりかはやってみるべきだよ!」

「みんなとならきっとやれます!」

「このままここにいても状況は変化しません…。だから、総士君…お願いします」

 

「……(彼女たちの意思が相当硬いようだが……たしかにこのままでは状況は好転しない。だが問題が山済みだ。第一、僕から離れてしまったらフェストゥムの読心が防げなくなる。読まれて同化でもされたら…)」

 

一時は反論するも勇者4人の決意をくみながら総士は考え込む。

 

「それがあなた達の決めた事なの? 危険だと分かっていても」

 

「うん。……私たちを助けてくれたように、今度は一騎君たちを助けたいの」

 

乙姫が勇者4人に訊ねると友奈が代表して答えた。東郷・風・樹も同時に頷く。

 

「そっか…それがあなた達の選んだ選択なのね」

 

勇者たちの意志に呼応するかのように傍らに彼女らの精霊が現界される。そして、乙姫の傍らに寄り添ってきた。

 

「……あなた達も勇者と同じように」

 

生き物?に近い形の牛鬼や犬神・刑部狸(ぎょうぶだぬき)は頷き、青坊主や木霊・不知火(しらぬい)は肯定の意志を示すように乙姫の周りをまわる。乙姫は精霊たちにそれぞれ触れると精霊は主の元へと戻っていく。

 

そして、彼女らの意思を受け取った乙姫は微笑むと意を決したように話を切り出した。

 

「……わかった。あなた達もフェストゥムと戦えるようにしてあげる」

 

「「「「え?」」」」

 

「……そうすれば総士も考えてくれるよね?」

 

まるで分かっているかのように語る乙姫の姿見た総士ははっと気づき静かに尋ねる。

 

「乙姫、その口ぶりだと」

 

「うん、例のシステムは完成したよ。だから、私はここに来たの」

 

「……乙姫としてはどうしてほしい?」

 

「……私のワガママになるけど、彼女たちには力を貸してほしいかな。だから…」

 

ここで乙姫はいったん一呼吸置く。そして、本心を告げた。

 

「彼女たちを導いてあげて、総士!」

【新たな戦士を導きなさい、総士!】

 

この時総士には乙姫の声に混じってもう1人の声が聞こえたような…気がした。

 

「(ッ!…この事なのか、乙姫…織姫…ならば僕のやる事は)わかった。なら…乙姫、頼む」

 

「任せて。みんな、端末を出して」

 

総士はそれを受け入れるかのように迷いなく、勇者4人は困惑気味に勇者システムが入った端末を取り出すと乙姫がに触れる。端末に何かがインストールされたようだ。

 

「乙姫ちゃん、…これはいったい?」

 

東郷の問いかけに総士が答えた。

 

「……これは『勇者システム』を僕らが使っている『ジークフリードシステム』に接続・反映できるようにしたものだ」

 

「それでどうなるのよ?」

 

「クロッシングを維持すれば、フェストゥムに思考を読まれることはなくなる。奴らとこれで対等の立場になれる」

 

「戦えるようになるって事…ですよね」

 

「そうだ。だが、それでもフェストゥムに対しての危険が大きいがな。特にああいう新型だとな」

 

「やります。それで一騎君が助けられるのなら」

 

総士の忠告に友奈が即答する。3人も覚悟を決めているようで一歩も引くつもりは無いようだ。

 

「わかった。まずはみんな目を閉じるんだ」

 

「クロッシングのために勇者システムを登録する!…5秒待て!」

 

「あぅ!」

「っ!」

「いたっ!」

「きゃ!」

 

《……エンロール完了。クロッシングを開始する! みんな、目をゆっくり開けてくれ》

 

目を閉じちょうど5秒後に友奈・東郷・風・樹の全身に鋭い痛みが走る。その痛みに声をあげる4人だったがそれも徐々に引いていき、総士の指示通りに目を開く。

 

《…驚いたな…ここまで同じとはな》

 

「ちょっと総士、痛いじゃないの!!…って、ええ!」

 

「総士先輩の声が…頭の中に響いています!」

 

《霊的回路から被膜神経に接続して直接頭の中に語りかけている。一種の通信手段とだけ考えればいい。痛みは接続の際のものだ。……何か異常はないか?》

 

「特にはありません」

「うん。なんともないよ」

 

《そうか。これでジークフリードシステムの思考防壁が君達に反映される》

【システムで繋がっているから念じれば声を届かせることも出来るよ】

 

《こ…こうかしら?》

「おお! 東郷さんの声も聞こえる」

 

東郷がシステムを用いた通信をすぐに使いこなし友奈が感慨の声をあげる。

 

(あとは勇者たちをどう戦線に組み込むかだな。担当者である風先輩の立場もあるが…どうしたものか)

 

総士の考え込んでいる中、風が総士を見つめ話しかける。

 

「総士…たしか、アンタは前線指揮官…それやってたって言ってたわよね」

 

「そうだが」

 

「さっきだって真壁に対する指示が的確だったし、アタシらじゃフェストゥムの事を全然わからないわ…だからこそ、お願いしてもらってもいいかしら?」

 

総士たちの話を聞いていたのと実際にその指揮を目の当たりにしていたのもあって、この状況での最善な配置を風は総士に伝える。

 

彼女としてはフェストゥムに関して詳しい総士たちの方がうまくやれると思っていた。

 

風が意外とあっさり引いた事に総士は驚くもその意を受けた。

 

「…了解した。ここからは僕が指揮をする。みんな頼むぞ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

勇者達に指示を出す。受け取った勇者たちは行動を開始した。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

視点:前線

 

一方、すぐに再生するフェストゥムの相手をしていた一騎だが、

 

「これじゃあキリがないな……」

 

ノルン4機の援護もあってか進行を完全に食い止めていた。しかし、依然としてフェストゥムが即時再生している影響か決め手に欠けている状況である。

 

「《一騎!》…総士か!? そっちは大丈夫なのか?」

 

《こちらに出てきたフェストゥムは撃破した》

 

そこに総士からの思念が入りその報告に内心ほっとした一騎だったが、それでもいまだに戦闘中なのもあってか敵を睨みつけなおす。

 

《それよりも今そちらに援軍を送る》

 

「援軍?」

 

その言葉に疑問を投げかけようとしたがそれはフェストゥムの体の表面に何かが直撃し炸裂する。間髪おかずに何発も撃ち込まれその表面は削がれていく。一騎はその攻撃がきた方向にいたある姿を見た。

 

「(!?)あれは!!」

 

 

 

《東郷の遠距離攻撃で勇者の攻撃の有効性を確認する!》

 

「……了解」

 

一騎が見たのはうつ伏せの態勢での狙撃を敢行する東郷の姿だ。銀の長銃から放たれる正確無比な狙撃。神樹の力が宿っているその弾丸は容赦なくフェストゥムを撃ち貫きその外殻を削り取る。

 

 

 

「なんで東郷が……これは」

 

一騎は共有されている情報を見るとジークフリードシステムの登録者に勇者4人の名前がある事に気が付いた。

 

《私たちがお願いしたんです。そうしたら乙姫ちゃんが》

 

「乙姫がか!?」

 

友奈の声が聞こえてくる。どうやらシステム経由での思念のようだ。一騎もこれには少し戸惑ってしまう。

 

《一騎、言いたいことは色々あると思う。だが、今はあいつをなんとかするぞ》

 

「……当てになるのか」

 

《そうだと判断したまでだ》

 

【分かった】と一騎は総士に思念を返した。総士なら考えもなしに戦力を動かしたりはしない。一騎は一先ず気になる事を後に回すことにした。

 

《(!?)総士君、一騎君、あれを!》

 

狙撃を加えていた東郷が敵であるフェストゥムの異変に気付き2人に思念を送る。

 

一騎が見上げるとこれまで火線を集中させても片っ端から再生されるフェストゥムが東郷の狙撃をくらったにも関わらずその再生は鈍っていた。

 

総士のシステムを用いた解析結果が提示される。すぐに彼は驚きの声をあげた。

 

《これは…敵のSDPが阻害されている! 神樹の力がコアに何らかの影響を与えているのか!?》

 

驚くも敵に有効打を与えられている事が確認した総士は思考を切り替えると指示を出す。

 

《一騎は一時態勢を立て直せ! 風先輩はそのまま攻撃開始》

 

「分かったわ。とぉぉりやあぁぁぁ!」

 

風が勢いよく突撃すると巨大化した大剣で上段に構え振り下ろす。フェストゥムは回避し振るわれた巨大な刃はその巨体を霞めその体表はぱっくりと割れる。

 

「ッ! 避けるならーーー!」

 

間髪入れずに斜めに切り上げる。今度はその巨体を捕え一部を切り裂いた。

 

「何度でも叩きつける!」

 

風は勇者の力に強化された膂力により巨大化した大剣の勢いを抑え込み何度も振るう。その外殻を大剣の腹で叩きつけ、切り裂き削っていく。

 

【―――!】

 

叩き込むたびにフェストゥムの困惑した思考が伝わる。

 

 

 

――― なぜ、あなたの考えていることがわからないの…と。

 

 

 

「(!?)」

 

その思考が風に伝わり僅かに動きが止めてしまう。その生じた隙を狙い布の尾を振るおうとした。

 

【!?】

 

しかし、それは振るわれることはなかった。フェストゥムの巨体を緑色のワイヤーが絡め取りその動きが封じられた。

 

《お姉ちゃん、今だよ!》

 

樹が先程と同じようにワイヤーを幾重にも束ね放ったようだ。4つの右手首の花環から放たれたワイヤーを必死で支えている。

 

《敵の思惑に乗るな、入り込まれるぞ!》

 

総士の叱咤により風は我を取り戻す。危うく前回みたいな過ちを繰り返しかけた。風の心にある種の怒りが立ち込める。

 

「このぉ! 口説くんだったら心なんて読まないでしっかり言いなさい!!」

 

大剣を掲げると縦一文字に射出口である尾を寸断した。

 

【―――――――!!!】

 

声にもならないようなフェストゥムの叫びが辺りに轟く。切り裂かれた尾は黒ずんだ状態で地面に落ちる。

 

自らの存在の危機を感じ取ったフェストゥムは脱出しようともがく。その力に樹は必死に耐えようと堪えるも少しずつ引き摺られていく。

 

「樹!!」

 

風は大剣を手放すとすばやく樹の下へと跳び彼女を支える。なんとか踏みとどまるも2人は身動きが取れなくなってしまった。

 

「(!?)あぁ!」

「こ、こいつ、樹の糸まで」

 

押され始めたフェストゥムだったがまだまだ抵抗を見せる。2人が動きを止めたのを見ると絡め取っているワイヤーをなんと同化し始める。接触している部分のワイヤーが翡翠色の結晶に覆われはじめる。

 

「樹、糸を切り離して!」

 

風が叫ぶも結晶が姉妹に向かっていく。樹は慌てふためしまい一種のパニックとなって次の行動に移れない。

 

【私に任せて!】

 

同化しようとしたフェストゥムに無数の光弾が突き刺さる。乙姫が8機のノルンのビーム砲の集中砲火をフェストゥムに浴びせ怯ませる。

 

【新しい力を見せてあげる!】

 

8機のノルンでフェストゥムの周囲を取り囲み障壁を張ると。ノルンからフェストゥムに向け光線が放たれる。

 

【!?】

 

フェストゥムの抵抗が急激に鈍ると同時に同化も止まる。樹はワイヤーを切り離した。

 

【止めれるのは短時間だけだよ!】

《わかった。結城!》

 

「了解!」

 

総士の合図と共に友奈がフェストゥムに向かって突っ込む。風と樹はフェストゥムの注意を引く役目だったようだ。友奈はロケットを彷彿とさせるような速度で敵との間合いを詰める。

 

すると、フェストゥムを囲っていた障壁の一部が解除されノルンが数機足場となるように展開する。

 

【使って!】

「分かったよ、乙姫ちゃん!」

 

友奈がノルンが展開した障壁を足場にしてさらに接近。その接近に気付いたのかフェストゥムが無理に布の尾を動かし迎撃しようと構える。

 

「友奈ちゃんの進路を!」

 

東郷が友奈の突撃を援護するために狙撃銃の引き金を引く。放たれた銃弾は布の尾に命中炸裂しはじけ飛んだ。

 

これによりフェストゥムの抵抗するための手段はすべて失った。

 

友奈は動きが止まったフェストゥムの目の前に浮遊するノルンへと到達すると構えた。

 

「はぁぁぁぁ!!! 勇者ァ…パァァァァァンチ!!!」

 

勇者内で一番の破壊力をもつ友奈だが、フェストゥムに長時間の接触は同化の危険が高い。だが、総士は敢えてこの一撃を繰り出せる友奈をトドメ役に選出した。

 

そして、東郷・風・樹の持つ勇者の特性を活かし、友奈の得意な間合いへと誘った。そして、彼女たちは手筈通りに事を進めることにこの瞬間成功した。

 

友奈は全身全霊の力を込め桜色に輝く右拳をフェストゥムの巨体に叩きつける。叩きつけた部分が罅割れていきその外殻はバリンという音と共に砕けた。

 

そして、友奈はその体内に光り輝くものを見つけた。

 

「あった! コアだよ!」

 

【結城、そのまま破壊できるか】

 

「やってみるよ!」

 

友奈はその場からジャンプすると空中で構える。その右拳に再び桜色を纏わせるとコアに叩きつけようとした。

 

「え!?」

 

しかし、それは突如現れた不可視の障壁によって阻まれた。手甲と障壁が接触し青白い火花が飛び散る。

 

「最後の最後にバリアなの…このぉ!!」

 

友奈は無理にでも拳を突き入れようとする。それにより火花が大きくなる。

 

【!?】

 

友奈の傍らに桃色の牛のような生き物…精霊の『牛鬼』が現れる。彼の精霊は友奈の周りに光を纏わせ障壁を張り、そのエネルギー放出を防ごうとする。

 

「・・・きゃぁ!!!」

 

障壁により友奈は弾かれその体が宙を舞った。すぐにノルンが彼女の下へ向かうと障壁を展開しキャッチする。

 

「いたた……硬すぎるよぉ…」

 

「(!?)お姉ちゃん、見て!」

 

樹がフェストゥムの再生が再開された事に気づき姉である風に伝える。

 

「まずいわ…今トドメささないと堂々巡りだわ!」

 

 

 

【……分かっているな、一騎】

【あぁ!】

 

この状況についに一騎が動いた。態勢を立て直した一騎はルガーランスを握りそれを頭上に掲げる。

 

【あの障壁は該当がある…フェストゥムの障壁と同じだ。……再生する前に()()であのコアを仕留めろ!】

(ただの攻撃じゃ駄目だ……もっと…確実に仕留められる一撃を…それなら!)

 

総士から解析結果を受け取ると一騎は目を瞑り集中する。そして、心で穏やかにしザインに対して念じ一種のクロッシング状態へと入る。

 

【(俺はお前…お前は…俺だ!)】

 

ルガーランスの持ち手が翡翠色の結晶に覆われる。穂先が展開すると先程からおこなっている砲撃よりも凄まじい量のエネルギーがほとばしり始める。

 

【そう、受け入れることがあなたの力】

 

【友奈、離れろ!】

 

【(!?)うん!】

 

一騎の思念を友奈は受け取る。彼の意図を察したのか跳んでその場から離れた。

 

「ほぇ!」

 

跳んだ瞬間にノルンが友奈の周りに障壁を張る。友奈が驚いているのをよそにノルンが障壁に包んだまま彼女を守るようにその場から離れていく。

 

「でりゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

一騎はエネルギーが十分に収束され輝きを増したルガーランスを振り下ろしコアにその穂先を向け引き金を引いた。

 

「「「「ッ!!」」」」

 

ルガーランスから轟音と辺りを震わすほどの衝撃と共に放たれたのは巨大な光の奔流と言うべき閃光。勇者4人は目がくらむような閃光に思わず手を翳し、樹海内の木々が揺れ葉が勢いよく煽られるほどの凄まじい衝撃に精霊たちは反応しすぐさま障壁を張り勇者達を守る。

 

そのまま白銀の閃光は障壁を張っている結晶体(コア)に直撃する。光の奔流はそのまま障壁やフェストゥムごと結晶体(コア)を飲み込む。

 

【ギャアアアアアあああぁぁぁぁぁ…….....

 

断末魔のような声とともに障壁は解けるかのように消滅し、光の奔流に結晶体(コア)は耐えきれずに砕け、残ったフェストゥムの残骸も閃光が空の彼方に過ぎ去ると消滅していた。

 

ルガーランスのエネルギーを放出しつくすと持ち手と一騎を同化していた翡翠色の結晶が砕け散ると刀身が閉じる。一騎はゆっくりとルガーランスを降ろす。

 

【敵反応消滅……増援らしき反応もない。戦闘終了だ】

 

3体のバーテックス、介入してきた多数のフェストゥムとこちらの世界での独自に進化したフェストゥムという未曽有の侵攻は、恐怖を克服した1人の勇者、命を終え新たな役目と居場所を得た少女、そして2つの世界の力が合わさる事で殲滅に成功した。

 

総士からその言葉を聞いた一騎は戦闘態勢を解く。そして、ようやく戦闘が終わった事を実感した。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「ははは……今度はビーム砲ですかい…真壁のやつ、どんだけ規格外なのやら……」

 

風は驚きのあまり目が点となり心ここに在らず状態になっていた。敵が倒されたことに緊張の糸が切れてしまったのか樹は喜びを隠せずにはしゃぎそのまま風に抱きついた。

 

「やったーーー! やったよぉ~お姉ちゃんー! 私たち勝ったんだよね!」

 

「そうね……もう大丈夫よ」

 

我に返った風は樹の頭にポンと手を置き撫でた。その姿を見た東郷は微笑むがすぐにはっとした表情となる。

 

「(!?)そうだ! 友奈ちゃんは」

 

「東郷さ~~~ん!」

 

ノルンの障壁に乗った友奈が右手を振りながらゆっくりと地面へと降りたつと東郷の元へと駆ける。

 

「友奈ちゃん、よかった…怪我とかない?…あっ…」

 

東郷の手を握る友奈だったが、どうやら先程のコアが発生させた障壁と打突の衝突の影響か友奈の勇者の装備である右の手甲が擦り切れたように傷付いていた。傷付いた姿を見て落ち込む東郷だったが、

 

「東郷さん、見た目はこうだけど意外となんともないよ」

 

「痛くないの?」

 

「うん、少しヒリヒリするけど…牛鬼が咄嗟にバリアを張って守ってくれたみたい」

 

「そう……。本当に無事で…よかった」

 

すると、敵がいなくなったのか樹海が揺れ始めたのに一同は気づいた。現実への帰還の時が来たようだ。




またかなりかかってしまった……。そして、ようやくのタイトル回収。次話は戦闘後処理回で一騎・総士・乙姫の事を勇者部にすべて打ち明けます。

●勇者部の強化内容
・勇者システム適性者のジークフリードシステムの登録許可
フェストゥムの一番の特徴である読心能力を防ぐ恩恵の付与、思念によるシステム内での通信手段の確保、感覚共有による連携力の強化

なお、後々に強化は追加する模様……。

茶番:今話ラストシーンNG集(犬吠埼風メタ発言レベル増大版)
「やったーーー! やったよぉ~お姉ちゃんー!」

敵が倒されたことに緊張の糸が切れてしまったのか樹は喜びを隠せずにはしゃぎそのまま風に抱きついた。

「私たち勝ったんだよ! ……? お姉ちゃん?」

樹は顔を見上げると風の目が点となっており彼女は声をあげた。

「……な、なんなんなのよーあのビームはぁぁぁ!!! …マテ○アル・バー○ト…もしくはライ○ーソー○なのか…それとも全力全壊収束砲(スター○イト○レイカー)……ともかく人間戦略兵器ってレベルじゃないわよーーー!」

「(!?)メタすぎるよぉ~! おねえちゃんー落ち着いてよぉーーー!」

あまりにも規格外的な光景に風が振り切ってしまったようだ。それを樹はなんとか宥めようとした。

没理由:シリアスだったのにこういう終わりは流石にないと思ったため。マテ○アル・バー○トを入れた理由は風の中の人の出演作品ネタである。他二つは言わずもがな。

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