テーブルはやたらに長く、まるで映画の撮影用だ。中世ヨーロッパのお城にありそうなくらいで、ピカピカの燭台がもったいない。千時は、蝋燭さえ立っていたらアヴドゥルに火をつけてと頼むのにと、残念なくらいだ。
食堂とおぼしきフロアである。七人も座るとなると、個室やエントランスではちょっと足りなかった。
席が余っているからか、一行は千時を囲い込んでいる。お誕生日席っていうの? そこに千時を座らせ、左右にズラリ。ホル・ホースは千時の正面、最も遠い席に座るよう言われ、おとなしくイスを引いた。
「こいつァ婆さんがマークするわけだぜ。なんで俺の人生哲学を、このお嬢ちゃんが知ってんだ」
「モノローグって知ってる? いいかね、お兄さん。恐ろしいことにメディアへのぼる物語の登場人物は、心の声がダダ漏れなんだよ」
「ハァ? 何のこった」
「ちょっと待ってて」
千時は話しつつ、花京院のバッグから出てきたB5のスケッチブックを広げ、エンヤの手に乗っていたものを簡単に描いた。
「それじゃいくよ。アヴさんが言ってた件の、ホルホースさんがここに居る理由は、鏃と、この先の命運について聞きたいから、だと思う」
「その通りだ」
ホル・ホースは頷き、
「鏃とは何の事だ。矢の先っぽのアレか?」
ジョセフが遮る。
「そう。それが、エンヤ婆が発狂した理由で、私にスタンドが出ちゃったっぽい状況の理由。まずね、スタンド使いを増やすアイテムがあんの」
「何だって?」
千時の言葉に目を丸くしたのは、左隣に座った花京院。彼は生まれつきスタンドを持っていたから、人為的に、というのがピンとこないのだろう。
こんなの、と絵を見せる。うまいな。呟く花京院に、夢は漫画家って時代もあったさ、とおどけてみせる。
「こんなのが四つと、虫の彫刻がついてるのが二つあるんだって。デザインが違うだけで、効果はたぶん一緒。ちなみに、これは今回の旅で出てこないから、向こうじゃ見てない。私もさっき、エンヤ婆の持ってたのを見たのが初めて」
「向こうって、別の世界の未来ってやつかい?」
ホル・ホースが身を乗り出す。千時は正直に頷いた。
「簡単に言うと、向こうの世界じゃディオを倒す話がテレビアニメでやってたの」
「てっ、テレビアニメぇ!? ディオがカートゥーンだと!?」
ホル・ホースは腹を抱えて笑いだした。アヴドゥルがものすごい顔をしていたが、まあそれは置いておく。
「鏃については、ファンのまとめに書いてあった事を読んだだけだけど、適性のある人を傷つけるとスタンドを発症する、適性が無ければ死ぬって」
「つまり、婆さんがソレを持っていて、お前さんは触れちまったというわけか」
右隣のジョセフは、気を取り直したのか、ちょっと面白がり始めた。
珍しくポルナレフの方がナーバスに頬杖を付く。
「ジョースターさん、笑いごっちゃねえぜ。適性があったから良かったけどよ、無かったら千時は死んでたってこったろ」
「ゴホン。ま、そうじゃな」
「それについてなんだけど…」
ポルナレフは妙なところだけ鋭かったりする。千時は、何をどう取り繕ったら自殺の発想を隠せるか考えながら、首を傾げた。
「適性があったかどうかは、怪しいんだよね…」
「うん?」
「実はその鏃が、体ンなか入っちゃってるぽいんだよ」
「何ィ!?」
全員がギョッとして目を剥いた。
「転んだ時、下敷きにしちゃったはずなのに、どこにも無くて」
ただ一人、ハーン、と納得したように顎を撫でたのはホル・ホース。
「そんで見あたらなかったのか」
「あ、探したの?」
「そりゃな。見つかってさえいりゃあ、おさらばしてたかもしれんよ」
ウインク一つ。つい苦笑させられる。
「鏃のこと知ってた?」
「いいや。俺は生まれつきのスタンド使いだ。ただ、ディオと婆さんが話しているのを聞いちまった事があるんで、薄らぼんやりとはな。鏃だとは知らなかった」
「そうかあ。ダメだよ、不用意に触っちゃ。危険物だよ」
千時はぐるりと全員を見た。
「隕石から切り出して作られた物なんだって。ポルナレフが言うには、ウイルス性の」
「ちょちょちょ、ん? 俺? 俺がなんで出てくんだ?」
「あごめん」
口が滑った。実は、3部以降で知っている情報というのが、ほとんど彼伝いの事なのだ。ウィキペディアでJ=P・ポルナレフの概要を読み、その関連用語をググった先が鏃の情報源なのである。…が、またそれを話すと、どんどんややこしくなるだろう。
千時は、んー、と天井を見上げ、どうするかなと考えてから、続きを始めた。
「そこは今おいといて」
「おいおいィ!」
「とにかく、隕石に付着したウイルスに感染して、適合した場合の進化がスタンドの発症だ、って説があるわけよ。だから不用意にウイルス触っちゃダメ絶対」
「テメエはどうなんだ」
承太郎が口を開いた。
「それが体内にある、と言ったな。それは危険じゃあねえのか」
「あの、ごめん、それなんだけど、ほんとごめん、高校生男子に頼むこっちゃないのを承知で承太郎に頼みたい事がありますですよ」
「何だ」
承太郎は帽子の鍔を少し上げ、ふかしていた煙草をテーブルへ押しつけて消した。思わず注意したくなったが、千時はグッと我慢で彼を見た。
「スタープラチナで透視して、探してもらえないかな」
「透視?」
「そう。体の中、透かして見られる…はず」
隣でちょっとばかり、花京院が身じろぎしたのが、視界の端に映った。そりゃそうだよね、ごめんよ思春期。
承太郎は落ち着いたもので、テーブルへ腕をついて身を乗り出した。
「…俺はかまわねえが、ジジイの念写のほうが、お前も気楽なんじゃあねえのか」
「いや、もし鏃の欠片が中にあったら、取ってほしいんだ。それは多分、スタープラチナの透過性と精密動作性が同時に無いとできないから」
「そうか。どこを見ればいい」
「ここ」
と、パーカーのジップを下げ、切れたシャツの穴に指を突っ込んでみせたが、いかんせん背が低いのでテーブル越しだと難しそうだ。千時が席を立つと、承太郎も席を立って、隣へ来た。
向かい合うと、背後に、勇壮なスタンドが姿を現す。
「…すごい」
千時は思わず呟き、見とれた。
あの時、ピンクの障壁の向こう側にも見えてはいたが、それは単に目に映っていたというだけだった。能動的に見る余裕が無かったのだ。
今ようやく、初めて見た、という気がする。
正直に言えば千時は、アニメを見ている時、スタープラチナをちょっと笑った。2部からデザインを引き継いだ感のある姿をしていたからで、他のスタンドと比べると何とも古風だと思ったからだった。
だが、実際、目の前にすると、それは全く違った。デザインがどうこう、なんて話ではなかった。美術館の古い彫刻。オーケストラのクラシック演奏。古典文学。そういう、永続性のあるものと同じ美が、そこに集約されている。
「見終わったか」
少し呆れたような承太郎の言葉で、千時は我に返って頭をかいた。
「や、ごめんごめん。お願いします」
スタープラチナはするりと前へ出、千時の顔の前あたりに頭を寄せた。胸元を見、顔を上げる。バチッと音がしたんじゃないかと思うような、強い視線だった。
「あったぜ」
「えっ! もう見えたの? 早っ」
スタープラチナは体を後ろへ引きながら姿を消し、代わりに承太郎が、千時の肩を掴んだ。
ひどく珍しい、驚愕と焦燥が、その目にあった。
「お前、本当に何ともねえのか」
「ないよ。なんで?」
「心臓に刺さっていやがる」
「マジで!?」
周りも一斉に驚愕の呻きをこぼした。
「周辺にも細かい破片が入ってるが、一番大きい石は心臓に食い込んで、一緒に脈動しているぜ。どういうこった」
「承太郎! スタープラチナで抜き取れないのか!?」
ジョセフも慌てて席を立ち、千時の胸元を見に来たが、承太郎は首を横に振った。
「それこそ大量出血で死ぬだろうな」
「何故そんな事に…」
全員が千時を見た。
「…え、いや分かんないよ。こんな効果、書いてなかったもん」
「何?」
「鏃の効果は、適合者にスタンドを発生させる事と、スタンドを直接傷つけた時にややこしい事になる、って、そういうのだった。こんな、体の中に入っちゃうんじゃないはずだよ、だって、一個ずつ一人の体に収納されちゃったら、どうやってスタンド使いを増やすのさ、六個しか無いのに…」
言っている内にだんだんと恐ろしくなってきて、血の気が引く。千時は何気なく、肩に置かれた承太郎の手に手を重ねて、自分の指先の冷たさにびっくりした。
長い沈黙の末、声を出したのはホル・ホースだった。
「残りの五つは?」
「え、あ」
千時はホル・ホースへ顔を向け、かち合った視線にストンと冷静を取り戻した。ホル・ホースは、表情こそニヤついていたが、それがわざとだとあからさまに分かるような目をしている。
「どうして?」
「他に一つ、エンヤがディオにやったものが人手に渡ったと言ってたが、あれはハッタリだったんだろ? ディオが持っている可能性は?」
「ああそっか。無いよ。その話は挑発するために混ぜた本当」
レクイエム化について詳細は言わなかったが、彼は千時のハッタリを聞いていたのだ。鏃はディオが勝つためのカギだと。
「ディオは持ってない。他人へあげちゃってる。余計な効果にも気付いてない。そもそもこれらの事が判明するのは、本当なら十数年も先だから。大丈夫、ディオは負ける」
ジョースターの二人を左右に置いて、千時は、暗殺屋に笑いかけた。
「所在不明は五つじゃなく四つ。探すつもり?」
「そうさな。君子危うきに近寄らずとは言うが、どうせ職業柄、そうもいかねえ。何より、金の匂いがする」
「あ。ジョセフさん、財団から報酬出してよ」
「何?」
急な話を振られたジョセフは、目を丸くした。ホル・ホースも、おや、という顔をしている。今思いついただけの事だったが、さも考えておりましたという態度で、千時は向き直った。
「ディオほどの金額は出ないだろうけど、鏃を探す調査員としてこっちで雇い直すってのはどう? 鏃を見つけたら、スピードワゴン財団に連絡を入れるだけの簡単なお仕事。あと半月もせずに死ぬオーナーより、財団のほうが安泰なバックだと思わない? レシート取っときゃ必要経費だって落ちるかも」
「ハーッハァ!」
ホル・ホースは笑った。
「てっきり味方になれだの言われるかと思っていたが、そうきたか! いやいや、賢いベイビーだぜ。末恐ろしい。大人だったらプロポーズしてえところだ」
「そりゃどーも」
うんいや分かってたけど、またも子供扱いで冷たくなってしまうのは致し方無い。ていうか外人勢が大体ひどい。
「逃げるなら、一ヶ月くらいエジプトの裏側に居るといいよ。地球の反対側とか、ディオが面倒くさがりそうなあたり…、…どこなのかな」
「エジプトの裏は海だろ。精々、アメリカじゃあねえか」
「じゃそこ。私たちがエジプトに入ったら、ディオはあなたどころじゃなくなるから」
「と願うがね。まあいい、悪かない。何より、あんたを気に入った。そのクソ度胸はなっかなかのもんだぜ」
「ハハハ…」
子供扱いのくせに! 千時は苦笑いしたが、ふともう一つ、言い募った。
「辿るはずだった運命も教えてあげる。あなたは一度、ディオの下へ戻って銃口を向け、敗北する」
ホル・ホースは、快活だった表情をとり落とし、険しい視線を寄越した。
「俺が、ディオに銃口を?」
「そう。そうしてやっぱり自分には無理だと悟る。別の誰かと組んで、またこっちを襲いに来るけど、失敗して自滅し、再起不能で病院へ担ぎ込まれる…だって。そう書いてあるのを読んだ。
信じられなければ止めない。戻ればいい。もう一度襲ってきたって、私はかまわない。この人達があなたには負けない事を知ってるから。けど、できれば傷つかずに生き残る人が増える方が嬉しい」
信用などしておらず、このガンマンが今後、どうするかは、見当も付かない。だが、告げたのは本心だ。それに気付いていてくれることを願うばかりである。
ホル・ホースはテンガロンハットの鍔を下げ、唇だけで弧を描いた。
車に積んでいた缶詰やら乾燥雑穀やらを引っ張り出し、屋内だというのに簡易コンロで調理して、ちょっとキャンプのようにも思える適当な夕飯。
それが済むと、ジョセフはアヴドゥルと相談し、全員に仮眠を取れと指示した。
普通、こんな薄気味悪いところで寝るのは気が引ける。が、何しろゾンビの数が半端じゃなかったそうで、その上、傷を負わないように戦うというのは大変だったらしい。
「テメエが、ケガするなでも気をつけろでもなく、傷を負うな、と言ったからだ。妙だと思ってな」
承太郎から全員に、最初からそれが伝えられていた。で、周辺をアヴドゥルが焼き払う間に残りがホテルへ突入、エントランスまでを花京院とジョセフが押さえ込み、承太郎とポルナレフがその隣に入ってきた、という段取り。
夕飯の間、アヴドゥルが食べるのもそこそこにあくびを連発していたのは、たった一人で相当数を相手取り、ホテル正面を封じていたからだそうだ。
六時間仮眠して、深夜0時に出発予定。次の経由地、カラチには、昼過ぎに到着。そう説明を受けて、全員、適当な部屋へ引き上げた。
エンヤはこちらの基本戦法と同様、各個撃破を考えていたのか、個室のベッドなどは割合きれいなものだった。多少の埃があったのは、エンプレスの報告以降で方針転換したからかもしれない。……なんてもう既に意味の無い分析を花京院が真剣な顔でブツクサやっていたのを、千時は毛布にくるまりながら、BGMにして眠った。
ホル・ホースが逃走する最後のチャンスだったはずだが、時刻になってエントランスへ降りると、彼は、よう! と帽子を取ってみせ、面々を呆れさせた。
ホテルの外へ出た時、千時は、唖然として声も出なかった。真っ暗な中、車のヘッドライトが照らす狭い景色の中には、何も無かったのだ。
アニメでは墓地だったはずだが、墓石ほどの岩がごろごろしているだけである。
「あれぇ…?」
やっとそんな声を絞り出して、千時は、前に居るアヴドゥルの背中を見た。
「あの、ここ、墓地じゃなかったですかね?」
「うん? そうだが」
振り返ったアヴドゥルは、ぽかんとする千時の顔を見て、ニヤリとした。
「車とホテルだけを避けるのは、なかなか骨だったぞ」
「じゃまさかあの岩、墓石!?」
「骨が残ると、霧を纏って再生したのだ。土中の灰まで焼き払う内に、石の表面が溶けた」
千時は、あっと目を丸くした。ピンクの障壁を作っていたスタンドが手を開いた瞬間、熱風が入ってきたことを思い出したのだ。ローブを借りるほど寒かったはずの外気が熱すぎる事にも、あの時は気が回らなかった。石をも溶かすような火力が炸裂していたなんて。そら熱風にもなるわ。
「はあぁー! もったいない! アヴさんの使い勝手の悪さが超絶もったいない!!」
アヴドゥルはワハハと声を立てて笑い、頷いた。
「使い勝手が悪いか。確かに。人の居る市街地で、こんな事はできないからな。ここまでの炎は久々にかましたよ」
「なんかちょっとスッキリしてらっしゃる!」
「まあな」
そういえば、まとめで読んだなあと千時は思い出した。彼は強すぎたから退場させられた、という考察があったほどだ。弱点が、周囲への被害を考慮し、徹底的に威力を制限しなければならない事、だとか。
「…いける!」
「何だ?」
「なんでもない! こっちの話!」
待ってろよディオ! と叫びたいのを我慢する。ここで言うわけにはいかなかった。
「おおーい。出発するぞ!」
少し先に停まっている車から、ジョセフが言う。
千時はなんとなく、今までずっと後ろだったし今度もと、また先に入った。続いて乗ってきたのは、まさかのホル・ホース。
「うわ、そーだった。ホルホースさん居たんだったね」
「悪ィな、嬢ちゃん。次の街まで、足がねえもんでよ」
「ギュウギュウだあ…」
「しょーがねえだろ、俺の車を燃しちまったのは、あのオッサンだぜ」
「オッサン言うな!」
「おいおい千時、勘弁してくれ。傷つくじゃないか」
「私じゃないいぃ!」
千時がツッコんでいるところにアヴドゥルが乗ってくるものだからもう、てんやわんや。
海外の4WDで七人乗り、とはいえ、千時以外の面々がでかい。何しろでかい。縦も幅も普通サイズじゃない。若干マシかもしれない花京院とホル・ホースですら、日本人基準で言うとでかい。
こりゃあとうとう適当なところでトランクに積まれちゃうかもしれん。そんな想像をしていると、ホル・ホースが千時をひょいと掴んだ。
「女の子の特等席に案内するぜ。狭いよりはいいだろ」
「冗談じゃねえ!!」
まさかのお膝!!
思わず悪しざまに絶叫して暴れたが、狭い車内じゃ無理がある。腹の前で組まれたホル・ホースの腕が外れない。
「いいじゃあねえか。男をこき使うのも女の仕事の内だって」
「ちょっと! アヴさん! 無視しないでよ! おいィ!!」
だがしかし隣のアヴドゥル、ホル・ホースの車を燃やしちゃった負い目か、そのほうが狭くなかったからなのか、見て見ぬフリ。ムカついたので膝を蹴ってやったが知らんぷりを決め込んでいる。
「いてっ」
何故かホル・ホースのほうが呟いて、千時は騒ぐのを一時停止した。ん? と振り返るとウインクされ、げんなりして首を戻し、今度は腹にまわった手を引っ剥がそうと下を見る。
「あ」
火傷だ。袖と手袋の隙間に、爛れた肌が一瞬だけ見えた。
うわぁやり辛い。アヴドゥルが黙っているのは、これのせいもあったのかもしれない。戦いの上での事だし、誰のせいでもなく、あえていうならむしろ攻撃を避けられなかった本人のせいなのだが、それでもちょっと気が引ける。
もごもご、千時が困っている間に、運転席へ乗り込んできたジョセフが、こっちを覗いてきた。
「あっ! 何をしとるんじゃ、お前達!」
「ジョセフさん!! ちょっと! 何とか言って!」
「ズルいぞ、敵だったくせして。わしだってまだ乗っけてないのに」
「いやちょっと!? ねえ! 誰か!!」
…結局、千時はホル・ホースの膝にのっけられたまま、挙げ句、しばらくしてうっかり寝入ってしまった。他人の体温は、睡魔を誘発する悪質な罠だ。