スターダストテイル   作:米俵一俵

1 / 31
1.パラレルタイムトリップ

「うおー…。やっべ…」

 女子としてはあまりよろしくない言葉遣いで呟き、彼女は辺りを見回した。

 何しろ全力で方向音痴だ。しかも、一頃流行った地図の読めない何とかである。駅前からは離れていない筈だが、今時ガラケーで写メったPCのグーグル地図は、あまり詳細でない。要するに、迷った。

 数少ない友人から久々にお茶でもと誘われ、浮かれて行った都会の人混みコワイ。あれよという間に流されて、人通りが少なくなったなと思ったらこれだ。

 どこだよ。

 どう歩いたのやら、完全に住宅街だ。こういう時、ようやく、ああ妹の勧め通りスマホにしときゃ良かったなあと思うが、毎度、思うだけですぐ忘れ、ガラケーのままになっている。

 仕方が無い。地元密着型ローカルコンビニ店員ナメんなよ、コミュ障強制矯正施設なんだぞ。ギャグじゃなく。そんな情けない気合いを入れて、彼女は、通りがかった主婦らしき女性に声をかけた。

「すみません、道に迷っちゃったんですが、駅はどっちですかね…?」

「駅?」

 中年女性は目を丸くして、眉根を寄せた。

「駅ってあなた、だぁーいぶ来ちゃったわね。迷っちゃったんなら、ほら、あの信号、右に折れたら交番あるから、そこで聞いたほうが分かりやすいわ」

「あ、そうですか。すみません、ほんと、どうもありがとうございます、行ってみます」

 ぺこぺこ頭を下げながら、おかしいなあと首を傾げる。ぼっち属性のお約束通り、一人だと歩く速度がバカ速いのは確かだが、そんなに遠くへ来ただろうか。

 携帯をパカリと開いて時刻を確認、うん、そんなに経ってない、そこでふと気付く。

「マジか」

 圏外だ。都心で、地下鉄でもないのに圏外というのは滅多に無い。というか、最近は地下鉄でも電波入るっつーのに。

 遅刻のメールも入れられないのは困ったが、とにかく、たどり着いた交番の戸を潜る。

「どうしました?」

 人の良さそうな老警官が、にこにこと訊いてくれた。

「すみません、道に迷っちゃって…」

 ほっとしながら、彼女はデスクのビニールの下にある地図を見た。

「駅に戻りたいんですけど」

「駅? 駅に行くの? じゃあね、この道を左にまっすぐ行くと、大通りの交差点にバス停あるから」

「バス!?」

「うん。横断歩道渡らないでね、手前のバス停ね。渡っちゃうと反対側行っちゃうからね」

「え、あ…、えェー…?」

 しばし絶句し、それから、彼女は頭ごと視線を下に向け、地図を凝視した。

「あの、ちょっとすいませんけど、ここは一体、どこなんです?」

「ここ? これ、この赤丸してあるところだよ。現在地」

 指された場所に、蛍光ペンのピンク色。

 地名を目で追い、

「ンあ!?」

 二度見。

 来たのは、池袋の筈だった。

 地図には今言われたバス停と、大通りを辿って駅もあったが、知らない名前だ。…が、彼女は土地不案内だし、人生このかた地理と歴史を大敵として生きてきた。まあ、思ったよりよっぽど、遠くへ来てしまったのだろう、と無理矢理思う。

 とりあえず心を落ち着け、交番を出た。

「でんぱー…、でんぱー…」

 出るなり、とにかく電波を探して携帯を振る。

 万歳して上へ上げてみたり、次の角でしゃがんで低くしてみたり、路地がある度、少し曲がってみてうろうろ。

「何でだ…。こんな時に壊れたのかよぅ! ウソだろー!!」

 か細く悲鳴を上げても、無情な表示は圏外のままだった。

 パニック寸前で、ふと目に入った表札を見る。

 大きな日本家屋である。けっこうなお宅ですこと。

「………空条て」

 少々の間、門を眺め回し、はたと手を打つ。

「へー!! こんなところにモデル!? わーすげー! アニメで見たヤツ! いやもう忘れちゃったけど! ぽいぽい! はー…。てっきり仙台なのかと思ってた…そうか、承太郎さんは杜王町の人じゃないのか…。考えてみりゃ、杜王町以外ジョジョの地名なんて知らないから、勝手に思いこんでたな…。ここも聖地だったりすんのかな…観光客居ないけど…、いや一般の民家じゃ迷惑か…」

 誰も居ないのを良いことに、独り言を言い放題に言いたてて、彼女はちょっと興奮した。そういえば、まとめのどこかで東京タワーがなんたら読んだような気もする。

「そうかあー…。まさか池袋の近所だとはなあ。……いや東京タワー見えねーし!」

 頭の中は草不可避。けらけら笑えば楽しくなってしまって、彼女は機嫌を直した。

「とりま、駅しかないな」

 バス停目指して歩き出す。

 携帯はやはり圏外のままだ。

 画面から顔を、上げて、数歩。

 止まる。

 角を曲がって来てこちらへ、隣をすいと抜けて行く大男に、彼女の視線も思考も、呼吸までが止まった。

 コスプレ…ではない。と思う。コスプレなど、ネットの写真でしか見たことは無いが、あのコスプレ特有のわざとらしさが無い。裾の長い学ランは、よく見かける学生服の鈍い光沢をきちんと持っていた。襟元に流れる鎖はボタンホールに留めてあるのだろうか、意外と小さい。どうにか振り返って見た学生帽の後頭部は、別段、髪と同化などしてはおらず、ただ少し、擦り切れたような傷が付いていた。

 声も出ない。

 それは単なる、背の高い、大柄な、通りすがりの学生だ。

 見送ると、彼は、彼女が先刻見ていた日本家屋の門を潜っていった。

「…ウソだーぁ…」

 小さくこぼす。

 彼女の心臓は、今更、バクバクと痛むほどに鳴り出した。

 言っておく。別に萌とか燃えとか目がハートになってとか、そんなんではない。

 ここがどこか、という、非常に恐ろしい想像に対してである。

「…いやそんなバカな、ね…」

 手の中の携帯が、汗でアスファルトへ滑り落ちて、ガンと嫌な音をたてる。我に返ってそれを拾おうとし、彼女はやはり青褪めた。

 圏外なのだ。ずっと。

 

 正直なところ、彼女は、ファンというほどではなかった。

 ジョジョの奇妙な冒険と言えば一般人にも有名で、漫画好きとしては、アニメがやるなら見ようかなというだけだった。

 第1部、第2部と見て、確かにおもしろいとは思った。だから第3部の前半も見た。年明けからのエジプト編、続きがどうなるのかと、ネットでちょっとばかりネタバレを探したりもした。結局ウィキペディアで概要を読み、まとめサイトからキャラクター伝いで続編の断片を見たり、ピクシブのファンアートかっこいーなー! と呟いたりはしていた。

 だが、原作本を大人買いして読むほどには至らなかったのだ。

 だからアニメで見ていた第三部のエジプト上陸前までしか知らない。

 

(…確かジョジョは、80年代の話だった…)

 気がする。うろ知識だが、とにかく、少し過去が舞台だったはずだ。

「いやでもマジないっしょ。タイムスリッポンとか」

 ボケたって突っ込んでくれる人は誰もいない、いやこんなボケだと友人にだって、は? と聞き返されるだろう。

「あたしってほんとバカ…とか言ってる場合じゃないな…」

 彼女はゴクリと喉を鳴らし、バス停へと駆けだした。

 結果、二十分後には更に青褪めながら、元の場所へ戻ることになった。

 この恐ろしい事実を前に、どうすべきか、混乱の極地である。

 バスに乗ろうとして、料金箱に五百円玉を入れた。だがその途端コインカウンターがエラーを起こし、運転手は、取り出したコインを見て訝しげに言ったのだ。

「なんだ? この硬貨。あ、ゲーセンのとかと間違えてないですか?」

 80年代。

 それが頭をよぎった。

 時代の変遷など意識してこなかったため、ひどく朧気な記憶だが、この金色寄りの色をした五百円玉、小さい頃には無かった。彼女はそれを思い出したのだ。

 携帯の圏外も、まだドコモが始まっていないからかもしれない。

 そう考えると辻褄が。

 いや、合うわけない、そんなバカなことがあるはずが。

 運転手に突き返された硬貨を握りしめてバスを飛び降り、彼女は駆け戻ってきたのだった。

 空条邸の前へ。

 インターフォンを睨み据え、それからたっぷり5分は立ち尽くして、彼女はボタンを押した。

 向こうでピンポンと音が響き、はーい、と甲高い声が答える。

『はいはーい! どちら様ですか?』

 明るい声音が訊いた。

「すみません。空条ホリィさんでいらっしゃいますか」

 震える手でショルダーバッグを引きちぎらんばかりに掴みながら言う。

『ええ。私ですけど』

 絶望は、不思議そうに返事をした。

 一瞬だけ彼女は唇を噛んだ。

「あの、承太郎さんもご在宅なんでしょうか」

『あらっ! 承太郎のお友達かしら!? まー! 今出るから、ちょっと待っててね!』

「いやあの…」

 予想の範囲内ではあったが、ぐっと息を飲む。

 ほどなくパタパタとせわしない足音がして、褪せた金髪の白人女性が、戸を開けた。

「こんにちは! いらっしゃい、クラスメイトさんかしら?」

「あ、いえ」

 嬉しそうな母親の期待を裏切るのは忍びないが、こっちもそれどころではない。

「つかぬ事をお伺いいたしますが、ホリィさんは、高熱で五十日も寝込まれた経験がおありですか?」

「何ですって?」

 きょとんとするホリィに、彼女は必死の形相で続けた。

「五十日です。寝込まれましたか」

「いいえ…。そんなにひどい風邪、ひいたことないわ。…何の話なの?」

 さすがに表情を曇らせ、不審げになっていく。

「すみません。えっと、あの…」

 言葉に詰まりながらも、ホリィがまだ寝込んでいないなら、第三部の冒頭よりは前だと考える。

「いいィ今のは忘れてください、新型インフルエンザの流行に関する調査が大ピンチで、いやあの、そんな事よりですね、私、承太郎さんをお見かけして、カッコいいなーと憧れるファンの女子の一人なんですが!!」

 咄嗟に口からでまかせ。この際何でも良い、押す以外に選択肢が無い。

「おおおお話をお聞きしたくて、そうだ、承太郎様は何歳でいらっしゃるのでございましょうか!?」

 どんな訊き方だ!! 心の中でセルフツッコミをかますも、ホリィには効果があったようで、ぱっと笑顔が戻った。

「あらやだ! 息子に惚れてくれちゃうなんて嬉しいわぁ。承太郎は十七よ。違う学校の子? 承太郎ったら、仏頂面ですものねー。怖い顔されちゃ、女の子は訊きづらいわよねー」

「あ、はは…、ええ、はい…」

 まあそれはそうだ。そうでなくとも、こっちは背が150ぽっきりしか無い。2メートルありそうな巨漢、年下とわかっても声をかける勇気は出そうにない。

 …いや、いずれそうも言っていられなくなるかもしれないが。

「それから、あの」

 彼女は、泣きそうになりながら言った。

「ジョセフ・ジョースターさんに、どうしてもご連絡したい事があるんです。電話か何か、お取り次ぎ願えませんでしょうか」

「お父さん?」

「はい。突然のことで不審に思われるでしょうが、非常に重要な事なんです。スタンドの事だと伝えていただければ、分かってくださると思うんですが…」

「え、なぁに? なんて?」

「スタンド、です」

「すたんど? それを伝えたら分かるの?」

「はい」

 ホリィは頭の上にハテナマークを山ほど飛ばしている。それを見ていると、何となく落ち着いた。

「あの、私、ここでいくらでも待ちますから、どうか一度、お電話を、どうかお願いします。本当にすみませんけど、どうか」

「ええ、電話くらいかまわないけど…。すたんど、ね? …すたんど…?」

 自分が小柄な女で良かった、と彼女は心底思った。これが風体怪しい男だったりしたら、目も当てられなかっただろう。

 ホリィが中へどうぞと言うのを固辞して外で待ったのは、このとんでもない状況で空条承太郎というキャラクター…いや、人物に、会いたくないからだった。今の自分がまともな会話をできるとは思えない。いや、そもそも向こうが寡黙なキャラだ。現実問題、落ち着いてたってコミュ障にはハードルが高い。いや精々ハードルならまだ蹴り倒すこともできようが、これがウォールマリア@進撃のなんちゃらだったらどうする、飛び越すなんて絶対無理だし蹴ったら複雑骨折すんぞ。

 あらぬ想像を巡らせているうちに、ホリィが小走りで戻ってきた。

「あのね、お父さんなんだけど」

「はい」

「あなた、財団の関係の人?」

「いえ。違います」

「そうよね。学生さんだものね?」

「あー…いや、よく間違われますが、もう学生じゃないんです…。えっと、他に何か、ジョースターさんから質問は…」

「財団の人だったら電話に出せって言ってたんだけど…」

「そうですか…。あ、じゃあ、ちょっと待ってください、カタカナ読めますよね?」

「ええ、もちろん大丈夫よ」

「ですよね、すいません、えっと…」

 こういうふとした時に、ペンとメモは役に立つ。バッグから取り出すと、彼女は、幾つかの単語を書いた。

「お手数で申し訳ないんですが、このキーワードも伝えてもらえますか。きっとお話してくださると思うんです」

「これ? ええ、わかった」

 ホリィはますます首を傾げながら、奥へ戻っていった。

 やがて、案の定、ホリィは彼女を手招きで中へと呼び寄せた。

「お父さん、是非お話したいんですって。上がってちょうだい」

「本当にすみません。ありがとうございます。おじゃまします」

 しつこいほど平身低頭で玄関を上がり、長い廊下を奥へ進む。よそ行きの服を着ている時で良かったなあ、などとふと思う。いやまあ、単に安パイの花柄チュニックにスキニーという芸の無い服装なのだが、それにしたって、例えば自宅でPCに向かっている時だったら、くたくたのTシャツによれよれのカーゴだ。ほんと出先からで良かった。いや全体的には良くないが。

 固定電話は、台所の隅にあった。

 手渡された受話器が、大した重量でも無いのに、ずっしり重い。

 恐る恐る耳に当て、もしもし、と声を出す。

 …で、少し音声を聞いていた彼女の目は丸く見開かれ、額にはどっと冷や汗が浮かんだ。

「……やばい! 英語わかんない!!」

『What!?』

 向こうで悲鳴のような怒鳴り声が続き、彼女が泡を食っている間に沈黙する。やがて、別の声で流暢な日本語が聞こえてきた。

『もしもし。英語がお解りでないようですね。私が通訳します』

「あっ、はい! はい!! お願いします! 日本語しかできません!」

『一度、ホリィさんに代わっていただけますか』

「はい!」

 彼女は後ろのホリィに電話を渡した。何事か英語で話していたが、ホリィは、その場を離れるように言われたらしい。済んだら呼んでちょうだい、と言い残して、台所を出ていってしまった。

「もしもし…」

 受話器を耳に戻すと、向こう側で小さく遣りとりが響く。

 通訳が本題を切り出した。

『何故あなたは、先ほどの言葉をご存じなのでしょうか』

「あー…の、電話で話してしまってかまわないのか、訊いてもらえますか? いいなら話しますけど…」

 メモに書いて伝えたのは、カーズ、ワムウ、ハーミットパープル、マジシャンズレッド、だ。過去と現在を知っている事を明示するために思いついた名前だった。人名だと、どうにかして調べられないこともないかもしれない。それよりは、あからさまに人外のほうが食いついてくれるに決まっている。

 受話器の向こうは、しばらく静かだった。

 やがて通訳が戻った。

『あなたが何者なのかお尋ねです』

「何者…えっと、少なくとも、敵ではありません」

『……、…、…、スタンドユーザーですか?』

「いいえ」

『………、あなたの目的は?』

 きた。

 彼女は息を詰めた。

 確かどこかで、ディオ…DIOと書くべきか…、あの男の調査こそ写真を基に財団で行っていたが、ジョースター家の因縁や能力については極秘事項だとか、そんな設定だったはず。とすると、どうせ電話では、詳しい話をできないだろう。

 ゆっくりと、自分で噛みしめるように、彼女は吐き出した。

「私はあなたに、これから起こる幾つかの未来を教えることができます。引き替えに、助けてほしいんです。正直に言いますけど、今、私、独りぼっちで、帰るところもお金も何もかも失くしたみたいで、あの、ほんと、ちょっともうどうしようも無い状況で…」

 受話器の沈黙が長い。

 彼女は通訳に呼びかけ、追い打ちとばかり、続けた。

「あなた達に敵対する意志はありません。むしろ味方したいです。私の知っている事が本当なら、助けになりたいと思います。でも、もし私の存在を敵が知ったら、逆にあなた達が厄介な事になってしまうかもしれません。私は非力な、ただの人間だから。

 それを踏まえて、どうか、会って話を聞いてほしいんです」

 あえてディオという名は口にしなかった。通訳が、それを聞かせて良い相手かどうか分からないからだった。

 ジョセフなら気付くだろう、ていうか気付いてくれ。彼女はひたすら祈りながら待った。

 

 ここが本当にジョジョの物語の中なのだとしたら、ジョセフ・ジョースターに頼る他に無い。

 先刻、バスの運転手が、五百円玉を五百円玉と思わなかった。偽造硬貨が問題になって新硬貨に切り替わったのは、平成に入ってからだ。それどころか、本当の本当にここが一九八〇年代なのだとしたら、紙幣が全滅である。紙幣も平成で切り替わっていて、古いものは財布に無い。というかもう、時々レジで見かけて、おお、と思うくらいにしかお目にかからなかった。いや、そもそもだ、ここが架空の物語の中なら、デザインや何やらが根本から違うかもしれない。パラレルワールド系の話によくあるではないか、何もかもが微妙に違うとか! そういえば文字が同じで良かったな、おい。

 とにかく、今、おそらく彼女は無一文なのである。

 その上、身分証明書すら役に立たない。ここの年号が昭和だとしたら、まだ存在しない元号である平成の免許証なんぞ、ナメねこちゃんのオモチャと同じだ。

 それら一切を取り繕うための財力とコネを持っていて、こちらからアクションを取れる唯一の相手が、かの不動産王なのである。

 

(…ああ、そうなら暫定、本当に独りぼっちだ…)

 長すぎる沈黙に、涙が出そうになる。

『もしもし』

 通訳の声に、すがりつきたくなるほどだ。

「はい」

『現在、氏はアメリカに居られます。今、日本へのフライトを手配いたしまして、成田到着が明日の午後です』

「はい」

『明日17時、そこに居てほしいとのことです』

「わかりました。17時。明日の夕方5時ですね」

『はい。では失礼いたします』

「ありがとうございました。失礼します」

 受話器を置く。

 たっぷり息を整えてから、彼女は、廊下へ顔を出してホリィを呼んだ。

「はぁいー。終わったの?」

「はい。ありがとうございました、本当に…」

「あら。大丈夫? なんだか顔色が悪いわ」

 ホリィは彼女の肩を軽く抱いた。そのまま背後の椅子を一つ引いて、座らせる。

「ちょっと休んでいきなさい。本当に真っ青よ」

「…すみません…」

 電話が上手くいって、興奮が一段落してしまったからだろう。彼女自身、冷え性の手がこれ以上無いほど冷たくなって、震えていることに気付いた。

 ホリィはテーブルのポットで緑茶を煎れた。

「そういえば、お名前、聞いていなかったわね」

「あー…」

 彼女は、本名を名乗るかどうか悩んで、目を泳がせた。

「…ちとき、です。いけ…がみ、ちとき。と、いいます」

 しまった。有り合わせの偽名にしてもひどい。が、口に出してしまったら後の祭りだ。ホリィは、ちときちゃん? 珍しいお名前ね、とにこにこしている。

 咄嗟に池袋が頭に浮かび、しかしそんな珍しい名字じゃな、池、池、あっ某わかりやすいニュースのあの人! でポンと出てしまった名字と、名前の方は飼い犬だ。何ともしょっぱい。長生きしますようにと散々考えて付けたが、みんな一瞬、ん? という顔をする。いい加減してから、それだったら千歳でちとせにすりゃ良かったんだ、と気付いたが時すでに遅し、役所にまで届けた後だった。オーケー、ネーミングセンスが無いことは認める。

「ちときちゃん、お父さんと難しそうな話をしてたわね。お仕事してるの?」

「いやーぁ、フリーターですよ」

「フリーター?」

「あ」

 そうか。フリーターもニートも現代用語だ。当時は無かったのかもしれない。コンビニはどうだったろう。あったような無かったような。

「…いや販売員のことです。雑貨屋の店員ですよ。アルバイトで」

「そうなの。承太郎と同い年か、それより下かと思っちゃったわ」

「あはは…。ひどい童顔で、大学の時に中学生と間違われたくらいです。最近、やっと飲み屋で身分証出せって言われなくなりました」

「まあ! 一体いくつなの?」

「…何というか、二十代とだけ申し上げておきます」

「あらぁー! びっくりするほど若いわねぇ」

「若いんじゃないんですよ。子供っぽいんですよ。ハァ…。何事もほどほどが大事ですよね…」

 ディオの事が頭をよぎって、彼女は笑ってしまった。

 吸血鬼の物語に、現代の吸血鬼が乱入しました、なんて。

 そう、若いのは童顔のせいだけではない。前述の通り150センチのチビっこで、ちょっと丸めの頬。さらに、調子が良いのは暗くなってからな夜型。軽度のヲタで、類友なインドアの友人ばかり。コミュ障と相まって重度のヒキコモリを発症。アルバイトも基本店内。こうきたらまあ、紫外線に当たらないのである。そのせいで肌が劣化しなかった。やたらに見た目年齢を引き下げられる原因の数々だ。まさに、平成の世の吸血鬼。

 そこから少し、二人は他愛ない話をした。

 泳いだ目が、ふとシンクの奥の片隅に止まる。

「あの」

 彼女はハッとして、ホリィを見た。

「そこの新聞、ちょっと読ませていただけませんか」

「え? ええ、いいわよ。どうぞ」

 突然の申し出にも関わらず、ホリィはラックから新聞を取って、手渡してくれた。

「何かに使うの? 古いのも向こうにあるけど」

「いえ、ちょっと気になる事がありまして…、ああ、大丈夫でした。すみません」

「ううん。もういいの?」

「はい。どうも…」

 すぐに返して、彼女は頭を下げた。

 ホリィは新聞をラックに戻したが、振り返って唖然とした。

 目の前の彼女が、そのまま俯いて、ぼろぼろと泣いていたからだった。

「ど、どうしたの、大丈夫?」

「ずびばぜっ…」

 うーっ、と嗚咽に喉が詰まって、返事ができない。

 新聞の日付は、一九八八年だった。

 

「うぐぅ…、ご迷惑ばかりおかけして、申し訳ない…」

「いいのよいいのよ、それより、本当に大丈夫なの?」

「アい…」

 目も鼻もグズグズ。今なら、私のスタンドはこの両手のティッシュとゴミ箱だアッ! とかやれそうだ。

 必死に涙を止めて、顔を上げた。

「大丈夫です。今、ちょっとややこしい状況に居て…。でも、明日の夕方、ジョースターさんにお会いしたら少しは、あ、すいません、そうだ、明日のことなんですが…」

 そういえば説明していなかった事を思い出し、彼女は頭を切り替えた。

「ジョースターさんが会ってくださるそうなので、夕方5時に、またこちらへおじゃますることになりました。勝手に決まっちゃって、すみません。またお世話になります」

「えっ! パパこっちへ来るの!?」

 ホリィは目を丸くしたが、嬉しそうだ。胸をなで下ろし、彼女は、さて、と湯呑みを見つめた。

 どうしたものか。

 金が無い。場所も怪しい。時間軸すら過去。ホテルには泊まれないだろう。とりあえず交番に戻って地図でももらって、歩きで駅まで出てみようか。いや、バスの距離だと、また戻ってくるのが大変だ。弱った。十一月の寒空に、したこともない公園で夜明かしだとか、そんなの、できるものだろうか。いや公園どこだよ。いっそ歩き回って動いている方が寒くないかも。くたくたになりそうだなソレ。

 事態が事態とはいえ、さすがに泊めてくれとは言えない。

 参った。お手上げだ。

 またぽろぽろと涙が出てくる。

 その時だった。

「あらっ?」

 ガチャン、と、何かの落ちる音が、かなり離れた場所から聞こえてきた。

「また承太郎かしら。ちょっとごめんなさいね」

 ホリィは眉根を寄せ、慌てて台所を出て行った。

 見送った彼女はティッシュで顔を拭ってから、ある事を思い出して、バッと席を立った。

「悪霊!!」

 そう、承太郎は物語の冒頭で「悪霊に取り憑かれた」なんて言っていた。すっかり忘れていたが、留置場が始まりのシーンだった気がする。

 ホリィは「また承太郎かしら」と言ったから、もう何度もこのガチャーンが起きているのだろう。スタンドが何なのか分からず、コントロールを試しているのではないだろうか。

 発症時期などの細かいことは覚えていない。ファンというほどじゃあないのだ、そんな情報は聞き流しだった。だが、彼は自ら留置場に行くほどだから、けっこうな期間、悩んだだろうと推察できる。もう発現しているとしたら、

「あぁぁ、警察行かない内に教えてあげなきゃ…」

 どう考えても警察が迷惑だ。アヴドゥルさんがいろいろ焼いちゃってたり、スタプラが鉄格子ひん曲げちゃってた気がする。

 廊下に飛び出し、広すぎて迷路にしか思えない部屋を、声の方へ向かう。

「すいませーん! ホリィさぁーん!」

 とうとう声を上げると、いきなり隣の襖がすいっと開いた。

 居る。

 でかい。

 実物コワイ。

 ホリィの隣に、空条承太郎が立っていた。

 目が合うなり承太郎は小さく舌打ちし、くるりと踵を返して部屋を出てしまった。

 ようやく畳を見ると、花瓶だったのか、粉々の陶器と水の上に花が散乱している。ホリィは、もう! なんて憤慨しながら、それを片付けにかかっていた。

「あ、あ、あの!」

「あら、ごめんなさいね。気にしないで。危ないからお台所で待っててちょうだいな」

「いやそうじゃなくて、承太郎さん…と、お話したいんですが、よろしいでしょうか!?」

「あら積極的!」

 やばい。玄関での出まかせがまだ効いてる。

 ごめん! 息子さんのファンてわけじゃないんだよ! なんて言えず、彼女は、教えられた二部屋先へと小走りに向かった。承太郎の私室だという。

 襖なのにノックすべきなのかどうか、迷って、声をかける。

「もしもし。…空条承太郎さん?」

 しばし静寂。あれ? 聞こえなかった? と繰り返しかけた瞬間、襖は開いた。

「誰だテメェ」

 コワイイイイいいぃぃィィ!! 不良コワイ!! しょっぱなから怖い! 威圧感がハンパ無い。彼女、これまで戦ったことがある他人なんぞ、バイト先の雑誌棚で立ち読みならぬ座り読みをするDQNくらいしか無い。それも精々、すわらんでください! うっせぇ! 程度の口論である。2メートルの不良とか、マジ超怖い。パンチどころかデコピン一回でKOされそうな気がする。あっ、ライダー出てきた時のウェイバー君in聖杯戦争、あのチビッちゃった気持ち! 今なら分かる! 

「用がねえなら帰れ」

 固まってしまった彼女に、承太郎は襖を閉めようとした。

「あるあるある!! 悪霊に困ってませんか!?」

 彼女の言葉で、承太郎は手を止めた。

 ギロリ、とこちらを睨み付ける。やはり怖い、が、彼女はようやくその目の中の困惑を読みとった。

「あの、それは悪霊じゃありません。私は、見えないけど正体を知ってます。よかったら、説明させてください」

「テメェ、何者だ」

 彼女は一瞬言葉に詰まったが、こう告げた。

「池上千時。よろしくどうぞ」

 

 承太郎は、私室へは入れなかった。代わりに、少し離れた客間らしき部屋へと案内した。

重厚なローテーブル。よく手入れされたふかふかの座布団はいたたまれない。

「聞くだけ聞いてやる。話せ」

 どっかと正面に陣取った承太郎が、室内だというのに被りっぱなしの帽子の下から、鋭い視線を寄越した。

 千時は無意識に正座していた足を…途中で痺れると面倒なので…崩し、ゆっくりと話を始めた。

「えー、それはスタンドと呼ばれていて、あなたの精神の具現化? のような…」

 自分で招いた事態の割に、頭の中はごしゃごしゃである。何度も言うが、そんな、ディープなファンでもないのに理屈なんぞ覚えていない。要するに精神で出来たポケモンな! くらいのものだ。だがしかし残念、この時代にはポケモンもいない。…と思う。

「具現化とはちょっと違うのかな…。精神と連動しているのは確かなんですけど。頭の中で願うと、物を取ってくれたりしませんか?」

 承太郎は黙ったまま、微動だにしない。

 しばし悩んで、千時は腕組みをした。

「うーんとね、スタンドっていうのは、傍に立つ者、みたいな意味で、自分の分身と思うと良いかも。今はあなたがおっかなびっくりだから制御が効いていないのかもしれませんが、本来、望む通りに動くはず…なんだと思います。私そんなファンタジーなもの持ってないから、感覚的にどうなのか分かんないけど。

 ソレの名前はスタープラチナ。近距離パワータイプ。精密動作やら視力がハンパないやら、バラバラに能力が出てくるけど、最終的にまとめると時間を止める能力だったらしい。やばい。自分で言っててバカみたい」

 独り言を付け加え、チラッと目をやるも、大柄な学生さんはただ聞いているだけである。

「…それが出たのは、あなたの、おじいさんのおじいさん、ジョナサン・ジョースターって人が倒したディオという男が蘇ったから、なんですけど、ジョセフさんからまだ何も聞いてませんか?」

 沈黙。

 うーん困った。

 これがまさしくうろ知識というやつで、一方的に喋るにも限界がある。他に何か無いだろうか。覚えていること。

 覚えていること? 

 いいや、違う。

 どうせ細かいことは覚えていない。それよりは、今持っている断片的な情報を信じさせる事の方が簡単だ。

「明日、ジョセフさんが来てくれる事になってるの。私の話を聞きに」

 いつのまにか丁寧語の語尾も忘れて、千時はテーブルへ身を乗り出した。

「念写が済んでるかどうか忘れちゃったんだけど、ディオって男のことを訊いてみて。首…肩かな、左肩に、星形のあざがあるから」

 物語の通りならね。

「何?」

 初めて承太郎が反応した。同じあざは、ジョースター家が全員、持っているはずだ。

「ディオってのは端的に言うと吸血鬼。死にかけた時、ジョナサン・ジョースターの体を奪って生き延びた。だから、体はジョースター。そのせいで、ジョセフさんのスタンドが…あー何て言えばいいの…遠隔透視? で探査を仕掛けた時に、ディオもこっちの存在に気付く。で、あなたも襲われる事になる…と、思うんだけど」

「小説か何かの話ならヨソでやれ」

「まさにその通り物語の問題で、いやゴメン、私も微妙なんだ」

 話し始めると、どこから何を繋げてどこへ着陸させればいいのか、てんで分からない。

 千時は体を後ろに引き、あー、うー、とうめいた。

「とりあえず、直近の事を予言しとくよ」

「何だ」

「ジョセフさんが全面的に私の言うことを肯定する」

「……、何?」

「いいから明日訊いてみて。ところでさ」

 千時は少しばかり声を潜めた。

「今のこの感じ、まだ警察行ってないよね? 留置場で牢屋入ろうって思ってた?」

 承太郎はほんの少し肩を揺らし、小さくため息をついた。

「テメェ、本当に何者だ」

「やっぱ考えてた。やめときな。留置所がフルボッコなだけだし」

「アァ?」

「ん? …はっ! そうか! フルボッコて現代用語か! 伝わんないなー…。いやこっちの話。それより、それ、いつ行く予定だった?」

「何故」

「留置場に入ったら、それがスタートなんだよ」

「分かるように話せ」

 千時は、ストーリーの冒頭を必死に思い出したが、何しろ、アニメ前半2クール、見たのは半年以上前だ。

「あなたが留置場に居座るでしょ…、困ったホリィさんがジョースターさんに連絡して、助けに来てもらう。で、アヴドゥルさんて友人を連れて来る。彼のスタンドとバトルして、あなたは納得して出てくる。そしたら…うーん…」

 ホリィさんが倒れるのと、肉の芽院に襲われるのと、どっちが先だったっけ? ジョセフの説明どこに挟まってた? もうそのあたりからあやふやだ。

「とにかくそこからが問題になる」

「テメェの話がどうだとしても」

 承太郎は、ビッと人差し指を突きつけた。

「俺には無関係だな」

 千時は口を開きかけた。ホリィが倒れる事を伝えようとして、だが、口を閉じた。本人と対面してみて、何となく、彼の感情のストレートさを理解したからだった。

 彼は無口で、無愛想だ。本当に怖いし、正直、感情もわかりにくい。だが、スタンドのことで狼狽えていたのも、今の話の突飛さに困惑したのも、見ていれば分かった。

 母親が死にかける、なんて、考えてみれば十七歳の少年相手に、酷な話である。…見た目アレだけど。

「まあ、込み入った話だしね…。とりあえずスタンドの事をさ、ジョースターさんに聞きなよ。少なくとも、その悪霊を持っているのが自分だけじゃないって事は確実に分かる。後は、物語の通りなら…」

 承太郎は、ひどく訝しげな視線を寄越した。

「どうせ関わるハメになる。これも予言てことにしといて」

 千時は立ち上がり、少しだけ承太郎の言葉を待ってから、部屋を出た。結局、承太郎は何も言わなかった。

 千時はホリィを探して、花瓶の割れていた部屋へ戻ったが、居ない。では台所、と戻りかけ、うわぁしまった、この家の息子を探すのに慌てて出てきて、方向も分からない。

「まだ用か」

「うぎゃあ!!」

 背後からの奇襲ッ! …いやただの声掛けだが。

「…ほ、ホリィさんどこかなと…」

 出てきた承太郎は、廊下でさまよう得体の知れないチビに、ちょっと顎をしゃくった。

「居間は向こうだ」

「えっ、あ、はい、ありがとう…」

 千時はぽかんとしながら承太郎を見送った。

 テレビでは、彼を取り囲んだ女の子たちを怒鳴りつけていた気がするが、だとすると、

「…すげー混乱してらっしゃる?」

 ということだろう。

 大柄な背中が私室に入るのをぼんやり見送ってから、彼女は居間へと足を向けた。

 混乱といえば、自分だってそうだ。何が何だか。

 明日、ジョセフ・ジョースターに会うまでに、何をどう話せばいいのか整理して、カードを控えておかなければ、助けてもらえないかもしれない。この寒空、知り合いも無く無一文で、帰る手だても分からずに、……うわ野垂れ死にしそう。

 襖を二枚開けてみて、居間らしき部屋を見つけたが、ホリィは居ない。ここまでたどり着くと、そういえば、たぶんすぐそこが台所だったような。ほらよしビンゴ。

 廊下から覗くと、ホリィは何事か、電話で話し込んでいる。英語だから分からない。中学レベルの単語くらいは拾えるが、じゃあ何の話かなんて事はまるっきりだ。

 しばらくそのまま待っていると、ホリィは電話を切り、振り返って目を丸くした。

「あら! もうおしまい?」

「え?」

「室内デート」

「いや…」

 ダメだこのお母さん、かわいいだけに手に負えない。

「あの子も思春期でしょ、急に恥ずかしがるようになっちゃって、お友達が遊びに来なくなっちゃったのよねー。女の子なんか特に。中学の時はいっぱい来てたのに」

 ああ、あの回想と写真で出てくる、衝撃的キレイな承り…。あれなら女友達も遊びに来ただろう。今はきっと怒鳴って追い返す。ヲタでもヒッキーでもないのにもったいない。じゃなくて。

「すみません、その、用が済んでしまったので、おいとまします」

「え? でも、泊まるでしょ?」

「はい?」

「今、お父さんと電話で話したわ。ちときちゃん、お父さんに会いにわざわざ遠くから出てきて、今日まだ泊まるところ決めてないんでしょ? どうせ明日会うんだもの、うちでいいわよ。ホテルなんか駅向こうだもん」

 千時は絶句した。

 いやちょっとあの、警戒心とかそういう…精神構造をしていたら、スタンド発動で死にかけたりしないのかもしれない。うわぁ…。

「部屋はいくらでも余ってるんだから、遠慮しないで」

 渡りに船ではあるが、どういう事だろう。純然たるホリィの善意か、それとも、こっちが助けてくれと言ったから、ジョセフが設定を足して話したか。

(あの孫が居るしチビ女一人くらい平気、とか思ってんのか…)

 電話だったからチビかどうかは向こうに分からないのだが、千時もあれやこれやでパンクしていて気付かなかった。

 断るに断れず、また平身低頭、感謝し倒すばかりだ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。