メリークリスマス!
バイトですが(笑)
■
「いい?複雑な作戦を立てても混乱するだけだから大まかな役割分担だけしっかりするわよ」
鏡面界へ
「小回りの利く白野とイリヤで陽動と攪乱担当、突破力のある美遊は本命の攻撃担当ね」
「
「二度目の負けは許されませんわ!」
2人の魔術師に叱咤され、私たちが飛び出す。
「ねえ、なんか魔法陣増えてない?」
『だいたい1.5倍くらいになっていますね』
イリヤとルビーの会話が聞こえる。実際、空を覆う魔法陣の密度が上がっている。
と、そこに幾筋もの赤い光点が密集してくる—————って、
「うひゃああ!?」
慌てて前方へ回避するや否や、地面に初撃が着弾する。
『早く空へ!次弾、来るよ!』
ラルドに言われるまでもない。全力で低空を高速飛行———そして、後ろから爆発音が聞こえると同時に空中へと舞い上がった。
確認するとイリヤはもう魔法陣の弾幕を抜けようとしている。
美遊さんは…
「…ねえラルド」
『なに?はくのん』
「美遊さん、飛ぶってか、跳んでない?」
『跳んでるね』
美遊さんが空中をまるで足場があるかのように跳び上がっていく。
しかも踏みしめるたびに加速していっているような…。
『魔力を固めて足場にしているみたいだね』
「あんなこともできるんだ」
空中における自由度でいうと、私たちの方が断然高いだろう。
だが、ステッキによって強化された身体能力で跳ぶ美遊さんの方が瞬発力や一瞬の最高速度は勝っているように見える。
「ラルド。私もあれ、できるかな?」
長距離ならともかく、一瞬の隙を突く場合は跳躍の方が便利かも。
『んー。できなくはない、と思うよ。でも、連続しての使用は今は無理だと思う。自分の跳躍距離、速度、その他もろもろを計算して魔力を固めて足場にしないと、着地できずにバランスを崩すとか、固めた魔力に激突するとかやっちゃいそう』
「なるほど。つまりそんなことを考えながら実行できる美遊さんマジパねえ」
そんな会話の最中もイリヤが距離を保って散弾を撃ち続ける。
「と。私も!
イリヤの散弾は新たに展開された魔法陣に阻まれて届いていない、が、さすがに広範囲に向けて撃っているおかげか移動を妨害している。
そこで私の
爆風にさらされた英霊はわずかに魔法陣の陰から姿を見せ————イリヤの散弾に捉えられる。
——————よし!!!
少しずつだがダメージを与えている!
これで少しは隙を作れるはず。そうすれば美遊さんの
勢い付いた私は秘策を展開する。
イリヤの家から帰った後に思いつき、練習した技。
「
私の背後に6つの魔法陣が展開される。
ラルドの提案を受け、この魔法陣は私との距離の座標を固定しているので飛んでいても自動的に私についてくる。
「
発射される6つの
一撃一撃の威力は下がるが、散弾を撃てない私にとって数少ない密度で攻める攻撃だ。
ちなみに自動で
「いっけええええ!!」
私の魔力砲が爆発し、相手を揺さぶる。かといって回避しようとすればイリヤの散弾に捉えられる。
それが数度繰り返された後。
——————ここだ。
私は背後の魔法陣を二つ減らし、その魔力で
「
を放つ!!
今まで爆発を繰り返してきた魔力砲が急に段違いの速度で英霊を襲った。
それは完全な不意打ちだったようで、隠れていた魔法陣から完全にその姿を押し出すことに成功した。
「よし!」
「これで!」
キャスターを完全に無防備にする事が出来た今なら!
「クラスカード”ランサー”、
私たちの中で最も瞬発力のある美遊さんが距離を詰めようとしたとき、キャスターの姿が空中から掻き消えた。
「ミユさん、上!」
切迫したイリヤの声が響くが、一瞬遅かった。
美遊さんの上に瞬間転移したキャスターが手にした
「美遊さんッ!」
杖そのものにそこまでの攻撃力はない。キャスターそのものの直接攻撃力もだ。だが、斥力と魔力を纏わせた杖の一撃は美遊さんを空中から地面へとたたきつけるのに十分な威力があった。
「がぁッッ!?」
「ミユさん!」
「転移魔術ですって……!?」
「そんな、あの魔術は神代の…」
凛姉とルヴィアさんが驚いているが無理もない。空間転移なんてそう簡単にできることじゃないからだ。それはカレイドの魔法少女である私たちでも同じらしい。飛行の練習をするときに、飛ぶくらいならサイヤ人みたいに瞬間移動すればいいんじゃ?ってラルドに聞いてみたらそう言われた。
「と、ま、れえええええ!!!」
美遊さんへの追撃を防ぐように背後に待機させていた魔法陣から魔力砲を放つ。が、一度披露したからには隠す必要なんかないとばかりに転移を繰り返し、少しも妨害できている気配がない。
「ミユさん!」
イリヤの声に思わず下を見ると、無数の赤いレーザーライトに照らされる美遊さんがいた。起き上がろうといているが、タイミング的に回避は間に合いそうにない。
背筋に冷たいものが走る。
絶体絶命。
今まさに攻撃魔法陣が瞬こうとした時、
どんっ、と美遊さんの体が横にとばされる。
「…ルヴィアさん…っ!?」
「あんのバカ!」
美遊さんの驚きの声と凛姉の叫び声が響く。
「ルヴィアさん、ナイスフォロー!」
矢のようにイリヤが接近し、そのまま美遊さんを抱えて一気に飛翔する。
キャスターは美遊さんを狙っているのか、そのまま飛翔するイリヤを狙い続けた。でも、
「ぬっ、抜かりましたわ!爆撃の有効圏内にーっ!」
「さっさと
せっかくかっこよかったのに締まらないなあ。
「大丈夫?」
「うん、なんとか。ミユさんもけがはない?」
「ええ」
「にしても、どうするよ…」
背後の砲門の数を魔力の効率を考えて3門まで減らし、
「…1つ、手がある」
そんな時、美遊さんが提案してくれた。
「どうするの?」
「それに賭ける、しかないか」
「説明するわ。聞いてくれる?白野の速射を見て思いついたんだけど—————」
「行くよルビー!」
『いつでもどうぞ!』
充分な初速を付けてイリヤが一気に前進する。
「イリヤスフィールが前に!?」
「だーっ、あのバカ!せめて役割分担くらい守れーッ!」
下で二人が吠えているが気にしない。
美遊さんの空中跳躍を手本に、魔力を固めて足場にしてその場でステッキに魔力を集中させる。飛行するよりも、一か所にとどまるならこっちの方が魔力効率がいい。
離れたところで、美遊さんも同じように魔力を集中させているのが見える。
「どうせ逃げられちゃうのなら…どこに転移しても当たるような—————弾幕を張ればいい!!」
イリヤの声が響く。
「お願い!跳ね返して!極大の——散弾ッッ!!」
そして放たれた散弾は魔力指向制御平面の
キャスターもこれには驚いたようで、転移直後に防御魔法陣を作る。
だが。
「「最大弾速……」」
私たちは転移して回避できないこの状況を待っていた!
「
今までの
「や…やったか!?」
「イリヤダメそれフラグ!!!」
『まだです!敵の魔力補足しています!』
イリヤがあんなこというから!
と、返す暇もなくステッキを構えなおすが、
「
「
「「
凛姉とルヴィアさんの放った宝石魔術による大爆発に飲み込まれた。
「やっぱ…強いんだねあの二人」
『普段の言動を見ていたら疑わしいからね。今回は意外と役に立ったね』
私たちの下に展開されていた無数の魔法陣が消えていくのを見ながらラルドと話す。
横にはルビーが打ち上げたのか、イリヤ型の花火まで上がっている。
「降りてきなさい美遊。カードを回収して帰りますわよ」
ルヴィアさんが美遊さんを呼んでいる。
私たちもそろそろ降りよう。
足場にしていた魔力を霧散させ、飛行に切り替える。
『お疲れさまはくのん』
「ありがと。ギリギリだったね…。イリヤ型の花火、ルビーかな?」
『そうみたいだねー。祝砲らしいよ』
「?声は聞こえない…こともないけど、結構距離あるのに…通信機能でもあるの?」
『あるよ』
「あるんだ」
その時だった。
私たち全員が巨大な魔力を感知したのは。
「…ッ!?」
全員があわてて右方向を見る。
そこには———そこには巨大な魔法陣が三つ並び、その中心にはボロボロになったキャスターがいた。
「あの魔法陣は昨日の———ッ!?」
『まずい!空間ごと焼きはらうつもり!?』
驚愕に包まれている間に、美遊さんだけが動き出していた。
「ミユさん!ダメ!!」
「間に合わあない!!!」
私たちの悲鳴が重なる。
距離が開きすぎている!!!
———横から強烈なプレッシャーを感じた。
見ると、イリヤが巨大な魔力砲を作っていた。
これなら!!
何も考えず、魔力砲に
「ミユさん!
『はくのん!?!?」
そのままイリヤに撃ち出された。
圧倒的な速度で美遊さんに近付く。
美遊さんの跳躍と同じだ。魔力砲を足場にすれば一時的だが圧倒的に加速できる。
サファイアにランサーのカードを
—————なんだ。そんな顔もできるんだ。
昨日の帰り道やさっきの飛行訓練を思い出して、美遊さんの表情にちょっとにやけそうになる。
そのまま野球のバットのようにラルドを振りかぶり、魔力を貯める。
その意図を察してか、美遊さんも膝を曲げ、跳躍の体制をとる。
「そのまま—————いっけええええ!!」
そしてフルスイングと共に魔力砲に美遊さんを乗せて撃ち出す!!!
「———————————……ッッ!!!!!!」
そして、今度こそ。
呪いの槍は魔術師の英霊を貫き、キャスターを撃破した。
「美遊に向かって魔力砲を撃つなんて!なんて無茶をしますのこの子はーっ!」
「あんたもよイリヤ!あんなことぶっつけ本番でやるな!」
「「痛だだだだだだ!?!?」」
2人して凛姉とルヴィアさんに頭をぐりぐりされる。
超痛い。
「ああもう。反省した!?」
「「ず、ずびばぜん…」」
2人して涙目で答えたら、美遊さんのこともと言われた。
断ることもなく、そのまま暴走しそうなルヴィアさんから逃げるように美遊さんのところまで行く。
「おつかれ美遊さん!」
「ケガ、ない?」
「ええ。大丈夫。ありがとう」
おろ?
なんか心なしか表情が柔らかい気がする。
「?なんかかわったねミユさん」
イリヤも感じたのかそんなことを言っている。
「そ、そんなこと…それよりも、そろそろ戻ろう?」
あ、なんかはぐらかされた。
「なんか隠しt」
ズドォォォンッッッ
と響いた重低音に、私の言葉は遮られる。
『……最悪の事態です』
「ど、どういうことルビー!」
「あり得るのそんなこと…」
『完全に想定外…ですが、実際に起こってしまいました…!』
「…っ!凛、姉!!!」
『やばいよ…!』
視線の先には。
全く動かない凛姉とルヴィアさん、そしてその二人を見下ろす黒い剣士。
「2人目の敵なんて……」
◆
ソレはそこにあった。
うっすらと滲むキャスターの魔力の元を探していると、そこは橋の麓だった。
———士郎は知る由もないが、その場所はイリヤたちが
その場所で、突如俺の目の前で世界にヒビが入った。
「な……」
どう見直しても、亀裂だった。
さらに言えば、その向こうからより濃厚な魔力が流れ込んでいる。
「これが…地脈の歪みの原因なのか…」
キャスターよりもさらに覚えのある魔力に腰が引けそうになる。だってそうだ。
この魔力は———————
物思いに耽りそうな思考を無理やり正される。
実際に聞こえたわけではない。
ヒビが入っているからといって伝わるわけではない。
だが。
この魂は。衛宮士郎の魂は聞き間違えることはない。
土蔵での輝くような出会いを。
私の代わりに■と契約した彼女を。
————大空洞にてライダーと共に戦った彼女を。
改めて、虚空に浮かぶヒビを見る。
これならば、境界を切り裂かなくても届くかもしれない。
「
昨日考えた剣を、丁寧に複製する。
その宝剣の意味を。意義を。概念を。決して漏らさないように。
そしてできたのは両刃の中華剣。
刀身に文字が彫られているその宝剣の名は
「
三国志の英傑、魏の曹操が所持していた宝剣の一振り。
鉄を泥のように切断し、人を支える剣として所持していたが、その本質は天によりかからせる、天を貫く剣だ。
そして天とは人とは違う領域のことを示す場合がある。
その概念を固め、異界へと届かせる剣に改変したのだが————おそらくは空間に亀裂がなかったら干渉する事すらできなかっただろう。
でも。
今回はその亀裂を貫き————俺を届かせた。
■
私の前で、宝具が放たれた。
三人の中で唯一転身したままの私がイリヤと美遊さんをその余波から守る、が。
「凛姉!ルヴィアさん!」
返事は帰ってこない。
圧倒的な黒騎士の前に私たちじゃかなわないと、ルビーとサファイアを使い凛姉とルヴィアさんが立ち向かった。
だが、押しているようにもみえた状況は黒騎士の放った宝具により一変する。
「
「あの有名な…アーサー王だというの…?」
呆然としたイリヤと美遊さんの声が聞こえる。
早く
————凛姉たちを置いていけない。
そんな葛藤の中、誰も動けないでいると、突如その光は現れた。
私たちが始めに
眩いその光に、黒騎士も含めた全員の目が奪われる。
そしてその光が収まるとそこにいたのは、
「お兄…ちゃん…?」
「…士郎…兄…?」
「……っ」
美遊さんの息をのむような雰囲気も感じるがそれどころじゃない。
そこにいたのは赤い布を左手に巻き付けた
年内の投稿はあと一話いけるかなーというところです。
凛とルヴィアの戦闘は原作と同じなので割愛。
小説だとルヴィアがせっせと準備した魔法陣が167個も展開されていて、漫画だと6個だったのにやべえ…
次回、オルタVS士郎
HFにてライダーと共に戦い、ようやく辛勝した相手にどうするのか作者。
…まあ、アーチャーの腕からの浸食がリアルタイムでないだけましかな
誤字脱字などありましたらよろしくお願いします。
アンケ、感想も待ってます。
…もうオリ宝具なんて考えねえ(爆