とある新聞社
今日も取材を終えて記事を執筆する。
「卜部さん、デスクが呼んでいましたよ。」
「はあ、またか。お小言を聞きにいくか。」
「おう、卜部何だ!この記事は、クレームがきたぞ。」
「複合企業体の幹部の汚職記事ですが、それがなにか?」
「お前なぁ、分かっているのか!何時も、何時も変な正義感なんていらないんだよ。また上に目を付けられる前に少しは考えろよ。」
原稿を突っ返される。
俺は、記者として入社したが一度記事に複合企業体からクレームが来て、資料調査部に異動させられていた。
この資料調査部とは、名ばかりの部署で所謂リストラ部署と言われている。
数年間意地だけでこの部署で仕事をこなして2年前に記者として復活していた。
まあたまたま、記者の数が足らなくなったとう幸運があったのだが…
その調査部で腐っている時に幼馴染の彼奴が、ユグドラシルに招待してくれてどっぷりと嵌った。
小中高大と一緒だった、彼奴は文武両道を地でいく奴で、正義感も強くゲームでもよく人助けをしていた。
彼奴は夢を実現して、警察官僚の道へ進んでいる。
俺も彼奴に負けない位の正義感はあったが、武道関係が苦手だったので仕事として記者を選んだ。
ペンの力で正義を貫こうとしたが、失敗だった。
だが調査部の仕事も無駄にはならなかった。
様々な裏情報が手に入り、俺はこの情報を利用し裏取引等をして社内外で力を付けた。
まあ小物感一杯の悪者だが、正義という物を塗り潰す為に現実でもゲームでも悪に拘った。
席に戻った俺は、デスクが喜ぶ複合企業体の為の提灯記事を書き始める。
「卜部さん、手紙来ていましたよ。」
「おいおい、この時代に手紙かよ。」
受け取った手紙は上質な紙を使い、封印も蝋封と古風な物だった。
開封し中身を読み進める。
「なあ、このA・O・G財団って聞いたことあるか?」
「A・O・G財団?聞いた事ないですね。何て書いているんですか?」
「あ~、なんでも今回箱根に本部を作ったから取材に来てくださいとさ。」
「え~、箱根ですか!いいですね~、僕らじゃ一生縁の無いアーコロジーですね。」
「そうだな、あそこは環境破壊前に最初に出来たアーコロジーで政府の高官か企業の役員しか行けない所だしな。」
「僕も一緒に連れて行って下さいよ。」
手紙を読みながら後輩の言葉を聞いていた。
「あ~、だめだわ。今回は一人だけだってさ。」
「ちぇ!残念。お土産を頼んますね。卜部様。」
「現金な奴だな、こんな時だけ様付けかよ。」
「ははは、じゃあ僕取材行ってきます。」
鈴木さん宅
デミウルゴスはホロPCを操作し、過去のある動画を見ていた。
「あの地はこの様な場所であったのか。」
その動画は、過去にブームを起こした、温泉グルメ紹介娯楽番組だった。
富士山をバックに温泉に浸かりリポートをしている少し前まではアイドルをしていた女性タレントが映っている。
画面は切り替わり旅館での夕食風景、少し太った男性タレントが料理を口に運び
「この箱根は景色、温泉、料理と全てが詰まった…宝石箱やぁ~!」
などの台詞が流れる。
「やはりあの地を選んで正解でしたね。あの地を宝石箱に戻し、更にはこの
デミウルゴスは《伝言》を使い指示を出していく。
ホロPCの動画を終了させ、デミウルゴスは臣下の礼を取る。
「ただいま。」
「お帰りなさいませ、モモンガ様。」
「あ、デミウルゴス久しぶりですね。こっちに来るの。」
「はい、モモンガ様。お願いが御座いまして参らせて頂きました。」
「お願い?」
「はい、次の休日にご招待したい場所が御座いまして。」
「次の休みですか?大丈夫ですよ。」
「では当日お迎えを使わせますので、宜しくお願い致します。」
「はい、分かりました楽しみにしてますね。」
「勿体無きお言葉、このデミウルゴス感謝の言葉もありません。」
「はは、大げさだなぁ~デミウルゴスは。」
休日の日
「おはようございます。佐藤さんの奥さん。」
「あ、おはようございます。田中さんの奥さん。」
「ねえねえ、あれからどうなの?佐藤さんの奥さん。」
少し頬を赤く染め俯く佐藤さんの奥さん。
「うん、ばっちりよ。ふふふ…そういう田中さんの所はどうなの?」
「もうなんか旦那がコスプレに目覚めて、自分がコスプレ始める始末なの。もういやになっちゃうわ。」
「あら、凄い車が止まったわね。」
「やっぱりあの人、どこかのお坊ちゃんなのね。あんな安アパートに住んでいるのは仮の姿だったのね。」
「それより佐藤さんの奥さん、今日は新作のコスプレ衣装の特売日よ。早く行かないと売り切れちゃうわ。」
「本当、急がなくっちゃ。」
悟は到着した場所の前で感嘆していた。
「ここって、箱根一番の高級旅館じゃなかったかな?」
数十名の仲居が並び一礼し
「いらっしゃいませ。鈴木様。本日は当館をご利用頂きまして有難うございます。」
案内を受け、悟は恐縮しながら旅館に入る。
部屋に着き一息つく悟。
「一般人なんて来られない所なのに、どうやってデミウルゴスは予約なんて取れたんだ?」
「失礼いたします。モモンガ様。」
部屋に入って来たのは、アルベドだった。
「あ、アルベド!」
「はい、今回は我等守護者一同の招待に答えて頂きまして、誠に有難う御座います。」
「ありがとう。でもどうやってここの予約取ったの?」
「はい、こちらの旅館はデミウルゴスが買収いたしました。ですからモモンガ様のお好きなようにお使い下さい。」
「ば、買収したぁ~!?」
デミウルゴスが投資などをしているのは知っていた悟だったが、ここまで大きく手を広げていると思わなかった。
「はいそうです、ですので本日はモモンガ様の貸切りになっております。お風呂など如何ですか?」
「はあ、そうさせてもらいます。」
呆れて考える事を放棄した悟は温泉に行くことにし部屋を出るが、背後に従うアルベド。
「アルベドも温泉へ?」
「はい、モモンガ様。お背中をおながし致します…くふ~」
アルベドの金色の瞳が肉食獣の輝きを纏っているのを見た悟は身の危険を感じる。
「いや、1人で入るんで大丈夫です!」
「モモンガ様、本日は全ての温泉は混浴になっておりますので…くふふ~」
「じゃ、じゃあ、アルベドは温泉だね。俺先に観光してきます~!」
逃走をはかる悟。
「もう、モモンガ様ったら、いじわるです。」
旅館の離れ
「ここか、A・O・G財団の本部は。」
「卜部様、本日はお越し頂き感謝致します。私、当財団の代表をしております、出門と申します。」
「初めまして、卜部です。本日は宜しくお願いします。所で他の取材の人は?」
「本日、お招きしたのは卜部様おひとりだけです。」
「1人?」
卜部は、少し警戒する。
「では、こちらへ。」
応接室へ案内され、ソファーに腰掛ける。
「では、率直にお聞きしますが、この財団の設立意義は?」
「慈善事業です。困っている方が居れば助けるのが当たり前ですから。」
「ほう、では活動資金などはどのようにして?」
「大半は善意の寄付ですね、残りは私の投資の利益などですね。」
「ここ、箱根だけでの活動なのですか?」
「今は、そうです。困っている方が多くいらっしゃいますので。」
「この箱根で困っている者がいるとでも?」
「卜部様ならご存知の事だと思いますが、過去この地から始まった計画を…」
デミウルゴスの言葉を遮るように。
「ヴァルハラ計画…」
「そうです。1人の人物が提唱し5大国の支配者によって進められた、後に6大神と言われた者達による世界支配計画です。だがその計画も途中で頓挫しました。その理由は1人の裏切りにより計画者である人物の抹殺で幕を降ろしますが、その裏切り者も歴史から消去されています。今の歴史では4大神となっていますね。その後4人の思惑通りに事は成就し4人の政治家の利益の為の世界支配が始まりましたが…」
デミウルゴスの言葉を遮るように卜部が話し始める。
「アヴァロンの反乱、計画者であった彼に付き従いしアヴァロンの9姉妹の内の8人による、神の書き換え、50年前の世界大戦の原因。」
「そうです。始まりの終わりです。そして20年前の…」
また、デミウルゴスの言葉を遮る。
「英雄の出現。政府に代わり企業がボーダーレスに世界を動かし始め、人類の救世主となる。」
「今、世界を支配する13の複合企業体の誕生ですね。」
「待ってくれ、複合企業体は12のはずだ!」
「いえ隠される必要はないのです、卜部様。」
「なぜ、出門さん。あなたはその事を知っている。俺が調べ上げ俺しか知らない事実を…」
「13番目の企業体の存続期間は短く人々には知られていないですが、この企業は12の企業体の計画を裏切った。かのアヴァロンの9姉妹の残り1人の直系の子孫を奉じてヴァルハラ計画の復活を目論んだ。ヴァルハラ計画、政府でも企業でもない人間が人間として
この
「出門さん、あなたの目的はまさかヴァルハラ計画を復活し人類の救世主になること。」
「救世主ですか、それも楽しい事かも知れませんが、私の目的は卜部様と同じだと思いますが。」
「俺の目的と…?」
言葉を切り、考え込む卜部をデミウルゴスは過去を懐かしむ様な目で見つめる。
「そうか、俺の目的か、悪をもってして12の複合企業体を潰し、この世界を綺麗に更地にし、新たに世界を創造する為に神をも飲み込み悪を貫き通す事。」
その言葉を聞き、出門は跪き一礼する。
卜部がその行動に驚いていると、出門の姿に靄がかかる。
「お帰りなさいませ。ウルベルト・アレイン・オードル様。」
なんとか、ウルベルトさんネタが書けました。