玉座の間は4畳半   作:820

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今回は短いです。

やはりるし★ふぁーさんネタは難しい…




恐怖公、恐怖する

ナザリック内

 

午後3時、今日もプレアデスの一員である、エントマが巡回業務をこなしている。

 

いつもの時間に、いつもの場所。

 

「おやつの時間ですぅ。」

そう呟きながら小さな部屋へ入るエントマ。

 

そう彼女は第2階層にある黒棺で、恐怖公の眷属である黒い物体を捕食していたのだが、

今日に限っては、普段黒い物体で一杯の部屋が壁を始め、床まで真っ白であったのだ。

 

「おやつ…が、居ないぃ。」

ナザリック始まって以来の異変が発生している。

 

エントマは、泣きながら報告の為に第9階層に転移するのであった。

 

 

 

とある戸建て住宅の台所で、恐怖公はその物体を観察していた。

その物体とは、赤い三角屋根の長屋の様に見える。

 

「ほお~、何と魅惑的な建物でしょう。」

その長屋は心擽る香りを発して、誘惑してくる。

 

 

だがその後、恐怖公は恐怖する。

既に数十匹にも及ぶ眷属が吸い込まれ帰って来ない。

「このような恐ろしい罠があるとは…人間とは恐ろしい生物だったのだな。」

 

 

恐怖公は残った眷属たちを引揚げさせ、とある部屋の押し入れに隠れた。

 

 

鈴木さん宅前

「あら!佐藤さんの奥さん」

「あ、おはようございます。田中さんの奥さん」

悟が出社の為、部屋を出てきた。

「あ!出てきたわ。佐藤さん、ほらあの人最近お盛んなようね。」

「そうね、なんだか溌剌としてるわよね。」

「でもあれって、コスプレって言ったかしら?彼女さんにメイドの服なんて着せて。」

「あら?今日もまた違う人ね。」

「なんであんなにモテルのかしら?」

「あっちの方が凄いとかかしら?」

「もう佐藤さんったら。」

「ねえねえ、田中さん一度試してみましょうよ?」

「え~!旦那に試すの?やめて恥ずかしいわ。」

「首領鬼宝手に色々売ってたの、今から行ってみましょうよ。」

 

 

 

 

とある戸建て住宅

 

「はあ~、ペロロンチーノはなんで俺に仕事を振るんだ。それもややこしいデザインを…」

 

男の携帯端末が着信を知らせる。

「もしもし、るし★ふぁーさん。」

「お前か!ペロ。」

「そうそうデザイン出来ましたぁ?」

「お前なぁ、あのデザインってナザリックのレメゲトンだろ?昔にデータ渡してたろ。」

「あ~、あれ失くした。」

「失くしたってお前な~!」

「そうそう、るし★ふぁーさん残してたやつ作る気ある?」

「残してた?」

「うん、ナザリックのレメゲトンのゴーレム。」

「ユグドラシルは、もう終わってんだろ。まあ今でも有るならお前のややこしい仕事の息抜きの為にやってみてもいいかな。」

「言いました?言いましたね!ふふふ…」

「あ~!喧嘩売ってんのか?ペロ。」

「すんません、すんません。」

「覚えとけよ、もしナザリックがあったら、あいつをお前の部屋にぶっこんで無限召喚させるからな。」

ペロロンチーノとの電話を終わらせた、るし★ふぁーは頭を冷やす為にビールを取りに台所に行く。

[カサコソ、ガサコソ]

「うげぇ~なんだこりゃ!」

ゴキブリホイホイは大漁だった。

「久し振りに帰ってきたからなぁ。もうこいつをペロの所に送りつけるか。」

 

「るし★ふぁー様」

押入れの隙間から覗き見る恐怖公は涙ながらに呟く。

 

 

 

 

鈴木さん宅

「えっ!恐怖公が行方不明?」

コキュートスから聞き周囲を見回す悟。

 

ナザリックの女性陣は、エントマを除き安堵の表情で日常業務を消化しているそうだ。

 

[帰りに殺虫剤買ってこようかな?]

悟は、そんな事をぼんやりと考えながら出社する。

 

 

「田中さんの奥さん、出てきたわよ。今日も違う女の子ね。」

「もう佐藤さんの奥さんったら。」

「あら?田中さんの奥さん、今日はなんだかキラキラしてるわね。」

「うふふ、そうかしら。やっぱりあれって凄いわね。」

「あれって?」

「コ、ス、プ、レ、昨日は旦那が凄かったのよ~。」

「え~!羨ましい~、うちなんて見向きもしてくれなかったのに。」

「女優にならなくっちゃだめよ。」

「じゃあ、田中さんの奥さんにならって、今晩頑張ってみるわ、私。」

 

悟の知らない所で、倦怠期の夫婦の危機を救っていた。

 

 

るし★ふぁー宅

[カサコソ、ガサゴソ]

[カサコソ、ガサゴソ]

[カサコソ、ガサゴソ]

[カサコソ、ガサゴソ]

[カサコソ、ガサゴソ]

 

「今日はお帰りにならないのか。るし★ふぁー様は。」

恐怖公は自身の眷属召喚スキルは使用していないが、ご近所のお友達が多数集まって来ていた。

 

深夜

帰宅したるし★ふぁーは、昨夜設置数を増やしていた台所のゴキブリホイホイが、

1日で満杯になっているのを見て、驚愕する。

「なんで急に増えてるんだ。」

 

 

「まさかな、昨日のペロの話を気にし過ぎかな?」

ビールを飲みながら、ユグドラシルの事を思い出している。

 

ビールを数本空け少し酔ってきたるし★ふぁーは、禁断の言葉を発する。

 

「恐怖公、居るなら出てこいよ。遊ぼうぜ!」

[居る訳ないよな。]

そう考えた瞬間、押入れが開いた。

 

「るし★ふぁー様~、お呼びですか。」

そこには、30cm大のゴキブリが優雅な一礼をする。

「くお!きょ、恐怖公!」

「はい、お呼びに従いまして、我が眷属達と共に馳せ参じました。」

「恐怖公!止めろ、止めてくれ召喚は…」

 

るし★ふぁーの叫びもむなしく無限召喚が開始されてしまう。

 

 

黒い物体に覆い尽くされる部屋。

そして数分後

「ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

るし★ふぁーの叫び声は、黒い物体に包まれ外には漏れない。

 

 

 

 

「お~、このようにお喜び頂けるとは、この恐怖公感無量で御座います。」

 

 

こうして恐怖公は満足顔で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

3日後、ナザリック内

「今日は、おやつ帰って来たかなぁ?」

エントマが定時巡回の為、黒棺にやってきた。

 

 

「おやつ、いっぱいぃ、帰ってきたぁ。」

満面の笑みでおやつを食べ始めるエントマ。

 

報告を受けたアルベドは力なく床に両膝をつき叫ぶ。

「なんで帰ってくるのよ~」

 




主役は、田中さんの奥さん、佐藤さんの奥さんになってしまった。


エントマがおやつを食べれたという事で許して下さい。

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