玉座の間は4畳半   作:820

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やっと
更新できた…安堵!





茶釜…走る

鈴木さん宅

ホロPCの操作をしている、デミウルゴス。

「おや?アルベド久し振りですね。」

「え~、デミウルゴスは今日も情報収集を?」

「ナザリックの維持費用等の問題点が複数出てきていますからね。」

「貴方の事だから、もう手は打っているのでしょう。」

「え~、先日手に入れたナンバーを使用してアンダーカバーを作成していたところですね。」

デミウルゴスが手に入れたナンバーとは、国民一人一人に割り振られた物だ。

このナンバーが無ければ生活が成り立たないが、裏社会ではそれなりに取引されている。

 

「出門 次郎として銀行口座を開き、資金調達の目途は立てましたよ。」

デミウルゴスが見ている画面には様々な株価チャートが見て取れる。

「アルベド、ところで君は何をしに?ここ暫くはモモンガ様の私室で何かしていたようですが?」

「え~いつでもモモンガ様をナザリックにご招待出来る様に色々とね。一応私室への出入りはご許可を得ているわよ。」

「今日はアウラとマーレの事をご相談に」

「あ~ペロロンチーノ様とシャルティアの邂逅絡みですか?」

「そうよ、最近アウラもマーレも第6階層からあまり出てこないのよ。」

 

すっとアルベドとデミウルゴスは臣下の礼を取り待機する。

「ただいま」

「お帰りなさいませ、モモンガ様」

「丁度良かった、アルベド・デミウルゴス2人に相談したい事があったんですよ。」

「相談など勿体ないお言葉、御命令してください。」

「いやいや命令なんて…」

「これをですね、アウラとマーレの2人にテストして貰いたいんです。」

悟が取り出したのは、動物の顔を可愛らしくデフォルメしたマスクだった。

「確か、アウラ・マーレには状態異常の耐性アイテムを装備していた筈だけど、ゲームのアイテムだからこっちの外では使えるか分からないし目立っちゃうだろうし。」

 

「では私が戻り2人に渡しておきます。」

デミウルゴスはマスクを受け取りナザリックに帰還する。

「あ、頼みます。一緒に夕食でも食べようと思ったけど…」

「アルベドさん、すいませんが一緒に食事でもどうです?」

「くふ~!有り難きお言葉、御一緒させて頂きます。」

アルベドはデミウルゴスのさり気無い心使いに感謝した。

 

 

 

ナザリック内

第9階層 バー・ナザリック

いつもの様に、デミウルゴスとコキュートスがグラスを傾けていた。

「コキュートス、今日はペースが早いね。」

「フム、モモンガ様ノオ役ニ立ツ機会ガ無イノガ苦痛デナ」

「フフフ…コキュートス、君は勘違いをしてる様ですね。」

「ソレハ?」

「君の武力はナザリック最高だ、その君を使うのは最終手段なんだよ。」

「この先愚かな人間がナザリックに、いや至高の御方々に牙を向けた時、完膚なきまでに叩き潰すためのね。」

「今、君という武力を前面に出せば、この世界を至高の御方々に献上するという我々の計画は失敗なのだよ」

「失敗トハ?」

「我々の正体並びにバックグラウンドが知られる事で、至高の御方々が消されるかも知れないという事だよ」

「今、私は権力者と呼ばれる者達を籠絡する為に餌を与えているところなのだよ。」

「権力者の夢はね、コキュートス。」

「不老不死」

「人間という生き物には寿命がある。これは権力者であろうともね」

「彼等は、そう私がナンバーという物を手に入れたんだがね。ナンバーを失ったロストナンバーズと言われるどうなってもよい人間を飼って、寿命を延ばす為の道具としているのですよ。」

権力者たちは、身寄りのない者を囲い自身の臓器移植などに使用していた。

そして奪ったナンバーを裏組織に流している。

「で私は桜花部隊を使い、彼等に夢を与えているのです。」

「夢トハドウイウ事ダ」

「彼等に治癒の魔法を掛けると現在罹患している病が完治する、それだけでも十分なのですが、続けてより上位の治癒魔法を掛けると、若返るんですよ。」

「ソレデハ、権力者ノ権力ハ手二入ラナイノデハ?」

「我々が行使出来る魔法では、若返りはもって数日だよ、まあ1人に絞れば数年は持つだろうがね、それが餌だよ。」

「ダガソノ権力ヲ狙ウ者達ハ他二モ多ク居ルノダロウ?」

「若返りという餌を与えて我々が操り、邪魔になりそうな者は彼等自身が勝手に手を下しているようですがね。」

「流石、デミウルゴス」

「有難う、コキュートス。だが思い出して欲しい、一番初めに我々が見たこの世界でのモモンガ様のあの古田という部長に対しての低姿勢を、脆弱な御自身の御姿を我々に見せる事によって我々が慢心することなく行動させようとされていたのだろうね。」

「私が裏で動き始めた頃を見計らっての、シャルティアのキャンギャルデビュー。そして桜花部隊が行動を開始した時のメイド隊のデビュー。」

「すべては耳目をそちらに集めさせ、私が動きやすい様にとのモモンガ様の助力…」

「ソレハ、デミウルゴスノ動キヲ読マレテイルト?」

「私がそう動くように仕向けているのでしょう。私の考えなどモモンガ様の智謀にかかれば赤子同然、流石です。」

「オ~流石、至高ノ御方々ノ頂点二君臨サレタモモンガ様」

「一度はモモンガ様のお考えの一歩先を歩んでみたいですね。」

グラスをあわす2人の夜が更けていく。

 

ナザリック内

第6階層

1本の大樹の前に、悟との食事を終えたアルベドが…

「アウラ・マーレ」

「何?アルベド」

その大樹の上方の窓からアウラが顔を出し返事をする。

デミウルゴスから渡されたマスクを遊びで被っている。

「モモンガ様からのご依頼よ」

「モモンガ様から!」

慌てて大樹の家から出てくる2人はアルベドが手にしている物に気付く

「この画用紙とクレヨンと呼ばれるもので絵を書いて欲しいそうよ」

「絵?」

「なんでもぶくぶく茶釜様との想い出を描いて欲しいそうよ。」

「が・頑張って、か・書きます」

「なんか分かんないけど、気合入れて書こう」

「よろしくね、2人とも」

アルベドが去って行く姿を見ながら、アウラが呟く。

「最近、アルベド優しくなったよね。」

「そ・そうだね…お姉ちゃん」

 

 

 

某スタジオ

「お疲れ様でした。」

「おつかれさまです。」

収録が終わったスタジオで彼女はソファーに座り溜息をついていた。

「はぁ~!やっと終わったわ。」

「お疲れ、邑子ちゃん」

「おつ~、ハラミン」

「今日は、いつも以上に疲れてるみたいね?」

「うん、今日の最終回の収録でちょっと昔の事思い出しちゃってね。」

「ふ~ん、まあ聞かないでおくわ。そうそう来週CDイベントでしょ?」

「そうなんだけど、私みたいなイベントに来てくれる人なんているのかな?」

「え~大丈夫でしょう。天下の五島邑子さんのイベントよ!」

「そうかな?精々頑張ってみるけど。」

「当日ビックリしても知らないからね。じゃあまたね。」

「はは、うんまたね。」

 

彼女が思い出していたのはユグドラシルの事、最終日収録があった為にログイン出来なかった後悔。

その夜は、軽くアルコールを摂取し眠りにつく。

 

 

 

鈴木さん宅

いつも通りの朝食会。

今日は、アウラとマーレがちょこんと座っているが2人ともソワソワとしていた。

「アウラ・マーレ、絵は描いて来てくれたのかな?」

「「はい!モモンガ様、描いてきました」」

アウラが大事そうに抱えている画用紙は、綺麗に巻かれてリボンで結ばれている。

そのリボンの結び目にはギルドサインの蝋封がされてあるので、悟は見せて貰うのを諦める。

 

「じゃあ、行こうか?」

今日はアウラとマーレを連れて外出する。

闇妖精である2人は耐性強化アイテムを装備しているのでこちらの世界の汚染大気内でも活動は出来るが、外見が目立ち過ぎる為に、先日悟が商品化の提案をしていた防護マスクをしている。

その防護マスクはサンプルとして悟が作らせていたもので、形がナザリック内でアウラが飼っている、フェンリルのフェンとイツァムナーのクアドラシルの顔を可愛くデフォルメしたものだ。

アウラがフェンのマスク、マーレがクアドラシルのマスクを装備してる。

 

 

トワーレコード…

イベント会場で悟は熱気に押されていた。

[やっぱり凄い人気なんだな~]

横を見ると、アウラとマーレはノリノリで軽いステップを踏んでいる。

 

握手会が開始された。

悟は予約をしていた、3枚にCDを購入し握手券をアウラ・マーレに手渡す。

「お久しぶりです、茶釜さん。終わったら食べて下さい。」

悟は茶釜がゲーム時代にベタ褒めしていたスイーツをプレゼントする。

「モモちゃん!来てくれたのありがと、それとごめんね最終日ログイン出来なくて」

「お忙しいのは分かってましたから、気にしないで下さい。」

「凄い人出ですね。びっくりしましたよ、こんなイベントは初めてなんで。」

「まあね、私もびっくりなんだけどね。」

邑子は悟の背後からチラチラ顔を出している2人に気付く。

「モモちゃんの知り合いの子供?」

「ほら、プレゼントを渡すんだろ。」

2人はモジモジとしながら邑子に丸めた画用紙を渡し、恥ずかしそうに手を差出し握手をする。

 

「茶釜さんの大ファンで連れて行ってとお願いされましてね。」

「今日は、ありがとね。モモちゃんとオチビさん達。」

 

帰宅した邑子は、悟からプレゼントされたスイーツを取り出し紅茶と一緒にテーブルに置く。

一息つき、悟が連れて来ていたオチビさんから貰った画用紙を広げる。

 

そこに描かれていた物を見て、邑子の瞳から一筋の涙が流れる。

彼女は引き出しから1枚の古ぼけた紙を取り出し見比べる。

 

その古ぼけた紙は、彼女が中学時代に知り合った姉弟から貰ったものだった。

その姉弟は活発な姉と少し控えめな弟だった。

2人の親は共働きで、夜までよく邑子が世話をしていた。

邑子は中学時代放送部に所属していて昼休みの放送でラジオドラマの真似事をしていて人気者だった、その流れで声優を目指すきっかけでもあったのだ。

その姉弟を相手によく練習していたのだが、2人がいつもリクエストしたのは、

分福茶釜の昔話だった。

「「邑子姉ちゃん、ぶくぶく茶釜のお話しして~」」

「ぶんぶくだよ、ぶ・ん・ぶ・く。」

 

だが2人は突如姿を消す、姿を見せなくなって数日後2人の両親は複合企業体が所有するアーコロジーへと越していった。

この時代、環境が保護されたアーコロジーに住めるのは一部の特権階級だけだ。

あの2人が、両親によって複合企業体の支配者に売られたと知ったのは、邑子が声優を始め社会の仕組みを知った時だった。

 

理不尽を知り、2人を救えなかった自分の非力さを知り彼女は生きる希望を無くした。

数年ぶりに自宅に戻り社会との接点を切り離して引き籠っていた彼女はふとクローゼットを開ける。

そのクローゼットの引出しにその紙はあった。

その紙には、クレヨンで邑子を、そしてその両側からあの姉弟が抱き締めている拙い絵であった。

その絵には[ゆうこおねえちゃんだいすき!]と上部に書かれていた。

泣き続ける邑子。

 

 

数日後、あまりにも見かねた愚弟が邑子をユグドラシルを紹介しプレイを始める。

そしてアインズ・ウール・ゴウンのメンバーになり。

 

アウラとマーレを創造する。

どこかあの2人に似た双子の闇妖精を…。

 

邑子は決心する、今度こそ守る、仲間を、アウラとマーレを!

アインズ・ウール・ゴウンの絶対盾として。

そんな昔を思い出しながら邑子は

オチビさんから貰った絵を見ると、

花冠などで飾られた邑子のアバターに両側から抱き着く闇妖精の2人

そして上部には[ぶくぶく茶釜様だーいすき]と書かれていた。

まあその絵の背景に五体投地している鳥人、そしてその鳥人を介抱する骸骨が描かれているのはご愛嬌だろう。

右隅に[アウラより]と

もう1枚には、邑子・餡ころもっちもち・やまいこ・あけみ・アウラ・マーレの6人でのお茶会の様子が描かれている。

こちらの上部にも[ぶくぶく茶釜様だいすきです]と書かれている。

こちらの絵にも土下座する鳥人、そしてその鳥人を介抱する骸骨が背景に描かれていた。

右隅に[マーレより]と

[な・なんであの子達が、そんなつもりで創造してないのに、なんで?]

声にならない嗚咽が部屋に響く。

 

邑子はペロロンチーノを呼び出す。

 

土下座をしているペロロンチーノ、

「愚弟!あんたなんか隠してない?」

「なにも隠してないです、姉ちゃん」

「確かあんたこの前のゲームキャンペーンで、シャルティアみたいな娘連れてたわよね?」

「あれは…!!!!」

「さっさと楽になれ、愚弟!」

「モモさんの家に居るんです、ナザリックのNPC達が…ごめんなさい黙ってて」

「じゃあさっさとモモちゃんの家を教えなさい!」

 

走り出す邑子。

 

 

鈴木さん宅

ご満悦な表情で悟と夕食を取っているアウラとマーレ

プルプル♪

「はい、鈴木です。」

「モモさん…逃げて…姉ちゃんが…姉ちゃんが…」

「ペロさん!どうしたんですか?何が…」

接続が切れる。

 

ペロロンチーノからの不可解な電話に小首を傾げる悟。

その瞬間部屋のドアが激しくノックされ乱暴に扉が開け放たれる。

 

「モ・モ・ち・ゃ・ん!」

「茶釜さん!?」

「な・ん・で・わ・た・し・に・だ・ま・っ・て・た・の!」

「な・なにをですか?」

邑子の気迫にタジタジになる悟。

 

突如現れた邑子にアウラとマーレは目を白黒させて慌てる。

「「ぶくぶく茶釜様!」」

その言葉で我に返った邑子は、アウラとマーレ2人を抱き締める。

「ごめんね、ごめんね、ごめんね…二人を守れなくて…」

涙ながらに謝罪のお言葉を繰り返す邑子。

「「い・痛いです、ぶくぶく茶釜様」」

「茶釜さん!落ち着いて下さい」

アウラ。マーレ・悟の言葉で我に返った邑子。

 

悟を真剣な顔で見つめる。

 

「モモちゃん!借りてくね、2人を…」

 

アウラとマーレの手を握り引張ってまだ駆け出す邑子

 

 

 

1人ポツンと取り残された悟。

「何だったんだ?」

 

 

 

この後、邑子の自室にて、アウラとマーレの身に起こった事は…

言わずとも…

 




なんとかアウラ・マーレも茶釜さんに会えました。


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