鈴木さん宅
久々の休日
なぜかちゅぶ台の前で正座している、悟。
原因は悟の前で鋭い眼光をした、セバス。
「え~とセバスさ~ん?何か」
「モモンガ様、お願いしたき事が。」
「はい!」
「メイドの件についてなのですが、これからは一般メイドも交代で、モモンガ様のお世話をさせていただけないでしょう?」
よく見てみると、少しセバスの顔に疲れが見られる。
「それは、またどうしてですか?」
「はい、この984時間に渡り一般メイドから要望が私の元に…」
軽い溜息を吐きながらセバスが答える。
その瞬間セバスは気付く主人の前でなんたる不敬な行動を取ったのかと、
なぜかこの場で会話する時、心が緩むのだ。
「はは、それは構いませんよ、でもお世話っていっても朝と晩だけですがいいんですかね?」
「慈悲深きご采配有難うございます。では本日からという事で、休日との事であられますので、3名連れてまいりました。入って良いですよ。」
「失礼致します。」
押入れから現れたのは、髪が金色のメイドが2人と緑色のメイド1人の3人、
それぞれが、セバスにならって正座し頭を垂れ挨拶していく
「シクススと申します。」
「リュミエールと申します。」
「フォアイルと申します。」
その挨拶に釣られ悟も頭を垂れ
「モモンガです。宜しくお願いします。」
3人のメイドは、悟の対応に固まる。
悟は、セバス・メイド・セバスとキョロキョロと視線を動かしていると、
シクススと自己紹介したメイドが突然声を上げ泣き出した。
悟の動揺が最高潮になる。
「せ・セバスさん何?どうしたの?」
「え~と、シクススさん大丈夫ですか?」
優しく肩に手を置き尋ねる、悟
その後、頭をナデナデする。
[これであっているのか?ペロさん直伝、優しい先輩風って。]
本当はこの後、アゴクイをしてキスするんですって教えられていたが、
どう考えても犯罪だと思って、悟は踏みとどまる。
「至高の御方の優しさに触れ、感極まったようです。」
セバスが説明してくれる。
シクススを連れて落ち着かせている。
落ち着いたシクススは元の位置に戻る。
「では、モモンガ様 私はナザリックの仕事がありますので失礼いたします。」
「あ、はいご苦労様です。」
主人からの労りの言葉を受けた、セバスは家令らしく毅然とした態度で押入れの中に消える。
「なんと慈悲深きお方」
セバスの叫びが聞こえた様な気がしたが、悟は3人のメイドに朝食の準備をしてもらい
メイドたちと一緒に食事をする。
もちろんこの場面に至るまでに、テンヤワンヤあったのはいうまでもない。
ナザリック内
第7階層の自身の部屋で資料に目を通す、デミウルゴス。
「ふむ、やはりこの地を第1候補にしますか」
現在、モモンガの部屋とナザリックが繋がっている転移門のコピーを作成し、実験を繰り返していた。
[ふむ、一度でもこのナザリックに転移した者を媒介にすれば作成は出来ると。]
現在、古田部長を使い、帝国商事の保養所と繋げている。
「この地を押える事が出来れば、至高の御方々もお喜びになられるであろう。」
「それにこの地は地位の高き者も訪れる、そこから更に…ふははは」
「失礼します。」
「お待ちしていましたよ。わざわざ呼び出してすまないね、桜花」
桜花…彼女は桜花聖域領域守護者であり、桜花部隊のリーダーである。
「君たちの力を借りたいと思いましてね。」
「私たちは、至高の御方々のみに従う者、越権行為では、デミウルゴス?」
「これは申し訳ない。現在このナザリックには御方々がいらっしゃらない。だがモモンガ様・ペロロンチーノ様とは、連絡を取る手段はあるのだよ。君も1度連れて行かなければね。」
「ペロロンチーノ様?」
ジト目でデミウルゴスを睨む、桜花
「モモンガ様!」
目からハートが出ている、桜花
過去にペロロンチーノと何があったのか聞いてみたい欲求がデミウルゴスの頭に浮かんだが、今は何としても桜花を納得させ、動かさねば計画が進まないのだ。
デミウルゴスは計画の一端を桜花に説明し問うた。
「どうですかね、君達の力を貸して貰えるかな?」
「分かりましたわ、そういうことであれば喜んで」
「ありがとう。桜花」
「まずはこの街で私達の力を使い、協力者を創造すればよいと。」
「そうですね、まずは君達に、この地に住まう者達の神を作って貰いたい。」
桜花部隊の姿形は巫女装束である為、この地に溶け込み仕事も捗るであろう。
出発していく桜花部隊を見送るデミウルゴスの頭の中では、すでにこの作戦は成功していた。
鈴木さん宅
3人のメイドとトランプでババ抜きをしている、悟。
3人との会話の中で、アルベトの話が出てある事を思い出した。悟はちゃぶ台に突っ伏した。
[やっぱり、最終日にアルベドの設定を変更したのが…]
ドンドンと扉が叩かれ、バンッと開かれる。
「モモさん居る?」
「ペロロンチーノさん!!いきなりなんですか?」
メイド達は頭を垂れ、ペロロンチーノを迎える。
「ちょっと、ユリを貸して下さい。」
「ど・どうぞ」
悟は、いきなりのペロロンチーノの土下座に驚き、即答してしまった。
フォアイルに頼んで、ユリを呼び出して貰う。
現れたユリにペロさんは、何か話掛け持っていた紙袋から何か渡していた。
その何かを持ってユリは押入れに戻り、数分後再び出てきたユリの姿をみた瞬間
「ペロロンチーノ~~~~~~ォ!!!!」
悟は叫び、シクスス・リュミエール・フォアイルは固まっている。
「こ・こんな姿…ぼ・ぼく…私…」
少し涙目になりながらユリが真っ赤になった顔を両手で覆う。
「うわ!ごめんなさい、すいません、間違えました。」
速攻で再度ユリに荷物を渡して押入れに押し込むペロロンチーノ。
「ペロさん!なんであんなもの持ってるんですか?」
「うん、正義だから」
笑いながら答えるペロロンチーノ。
その答えの意味を何となく理解した、悟は頭を抱える。
ユリの着ていた物は、スクール水着だった。
だがその水着の胸の部分の白い布地には、マジックで[まーれ]と書かれていた。
「ペロさん!なんでマーレなんですか!」
「それも、正義」
「いや、でもマーレは男ですよね!」
「ユリの様な大人の女性にも、少し小さめサイズのスク水はありか」
悟の疑問には答えず、一人納得していたペロロンチーノを見て、悟は闇の業の深淵を見た様な気分になった。
「おまたせしました。」
再度出てきたユリに、悟は感嘆の声をあげる。
ユリが着ていたのは、淡い藍色をしたパンツスーツ姿だった。
「じゃあ、借りていくね~」
某作業場
締め切り前の慌ただしさの中、私はペンを走らせる。
いつからだろう?自分の趣味を押し通して作品を作った、その作品に沢山のファンを出来た。
だが現在、単純作業になっている。
担当者は、キャラの表情や仕草などに注文ばかりする、うんざりだ。
ユグドラシル…そのゲームの中で、俺は自身の持てる全てを賭け48枚のデザイン画を書き上げた。
それを元に仲間達は、俺のデザインした衣装や小道具など文句を言いながらも完全に再現してくれた。
自信を持った俺は出版社に作品を持ち込んでみた。
最初に見てくれた担当は、最初やはりキャラの表情や仕草ばかり指摘してきた。
確かに売れる物としての為には仕方ない事と理解はしている。
だが彼は最後に衣装デザインに感嘆の称賛をしてくれた。
それからトントン拍子に話が進み認められ仕事として軌道に乗った。
その彼は今や編集長としての重責の中仕事をしている。
「こんにちは、先生」
五月蠅いのが来たようだ、アインズ・ウール・ゴウンの仲間ペロロンチーノだ。
彼とは、イラストなどの面では共感できる。
「先生は、止めろと言っているだろうペロ」
「ははは、すいませんホワイトブリムさん」
「今日は、秘書さんと?」
「いえいえ秘書じゃあないですよ、ご意見番ですよ。」
「ご意見番?」
「え~と先日頼んでました。メイド服のデザイン48枚出来ました?」
「あ~あれか、出来てるよ」
ペロに紙の束を渡す。
2~3枚に目を通したペロロンチーノは、背後に控える彼女に渡す。
受け取った彼女は、ワナワナと震えながら1枚1枚じっくりと目を通していく。
その彼女の目に涙が溢れ、流していく。
「素晴らし過ぎて、言葉もありません、皆で着て自慢したいです。」
彼女の真剣な眼差し、心のこもった言葉に、俺は茫然とする。
ペロと彼女はこれは誰に似合うとか言い合っている。
そんな言葉も耳に入らない。
「ホワイトブリムさん、これ全部製作してみません?各々のサイズはこれで」
「おい!幾ら掛かると思ってるんだよ。」
「彼女にも着て貰うんですから」
人懐っこい笑顔のペロに何度騙されたことか、リアルの世界でゲーム用のデザインを何度書かされたことか。
「賞金貰ったばかりでしょ?来月の受賞パーティーまでに頼みますよ。」
そう俺は、最近ノーベル文学賞を貰ったのだ。
日本人で百数十年ぶりの受賞とかで話題になったものだ、だが単に俺自身の気持ちの中で
あまりにも惰性で仕事をしていて、鬱憤を晴らす為だけに、メイド服愛を全開にしたエッセイというか小説をシリーズ物として出版していた。
「わかったよ、作ったらいいんだろ。」
「ありがとうございます、至高のホワイトブリム様」
「その言い方はやめろ!」
笑いながら帰って行くペロ。
[あの彼女どっかで見た事あるような?]
そんな事を少し考えたが、48枚の俺デザインのメイド服、衣装屋の怖い顔が浮かぶ。
鈴木さん宅
「戻ったよモモさん」
「お疲れ様、ペロさん・ユリさん」
「なんかエロった?モモさん」
「な・何言ってるんですか、ペロさん」
「ユリ、さっき渡した物見て、皆で練習しといて。」
「畏まりました、ペロロンチーノ様」
「モモさん彼女たちに用事ある?」
「いえもうないですよ。」
「そう、じゃあユリ皆連れて帰って練習開始で頼む。」
誰も居なくなった部屋で、ペロロンチーノが問い掛ける。
「あ、そうそう朝来たときモモさんなんかヘタってなかった?」
ペロの言葉で朝アルベドの件を思い出していた、悟はまたまたちゃぶ台に突っ伏して
「すいません、ごめんなさい、実はユグドラシルの最終日にアルベドの設定変えちゃって」
「え?何て変えたの」
「最後の1文にビッチってあったから、可愛そう過ぎて…」
ゴニョゴニョと最後の方の言葉が聞き取り難かったペロは再度聞いた。
「モモンガを愛している…です。」
大爆笑するペロ。
「ダブラさんが作った設定を弄ってしまったんですよ、申し訳なくて。」
「あはは、ごめんごめん」
「あの設定ね~、やっと最後の最後で変更したんですね。ところでモモさん、あの設定じっくり読んだことあります?」
「ゲーム時代何度か読みましたけど?」
「あ~やっぱり気付かなかったか~」
「え?どういう事です。」
「うん、最初に気付いたのうちの姉ちゃんなんだけどね。ダブラさん自体気付いてなくて話したら、やったねって納得してAIの行動設定で設定付けしたんですよ。所謂隠し設定です。」
訳が分からない悟は小首を傾げる。
「答えはね、アルベドの設定文章の385行目からの頭文字を縦読みすると」
「モ・モ・ン・ガ・を・あ・い・し・て・る…ってなるんよ。」
「アルベドを創造した理由って、モモさんの嫁でいこうって話で纏って作ったけど、設定でその文言入れたらモモさん速攻で書き換えてたでしょ?」
「あたりまえですよ、仲間が作った子供ですよ!」
「ダブラさんも悩んで、モモさんが書き換えるだろうって事で、最後の1文ビッチ設定にしたんだけど、たまたま姉ちゃんのズボラ能力が、その縦読みを見つけたって訳。」
「もう皆で万歳三唱してパーティーしたんだけど、その時モモさんもいたよね?」
「いや参加してましたけど、そんなパーティーって知らない訳で、茶釜さんが声優アワードのグランプリ受賞記念パーティーだと思ってました。」
「だからアルベドはあんな積極的なんですね。」
「そうなの?」
「はい、怖いくらいです。」
「なんで?積極的にせまってくれるって男冥利じゃん。」
悟が散々ペロに弄られ遊ばれたのは、ここに書くまでもない。
ベッドの中で悟は、アルベドの事を考えていた。
[う~ん嫁設定があったなんて、確かにアルベドをNPC披露の場で見た時に一目惚れしたのは本当だけど、だから最終日に書き換えて数分だけの恋人として満足してたんだけどな~]
ベッドの中でゴロゴロと身悶える
「うん、頑張ってアルベドの気持ちに答えて、リード出来る男にならないとな。頑張れ俺!」
1か月後
朝からなぜかペロさんと一緒に歩いてる俺。
なんでも今日はホワイトブリムさんのノーベル文学賞受賞パーティーに行くぞ~って
連れ出された訳だが、後ろを見るとナザリックのメイド全員が数歩離れてついて来てる。
「ペロさん、これなんの罰ゲームなんですか?」
「いや~バスでもチャーターした方がよかったね。」
周囲の視線を全身に浴びながら、なんとか会場に到着したのだがメイド達は会場の裏で待機させてるペロさん。
「なんで彼女たち控室で待機させるんです?」
「うんちょっとしたサプライズするから」
「でも目立ってましたね、俺たち」
ペロロンチーノが嬉しそうに言う。
「もう今回だけで勘弁してくださいよ」
「でも1番はペストーニャでしょ」
「え~犬頭ですからね」
「まあ防護マスクの類と思われてたみたいだけどね、作ったら流行るかな?」
「確かに子供用で作ったら売れるかも、今度会議で提案してみます。」
パーティー会場で久々にホワイトブリムと話をして楽しい時間を楽しむ
音楽が鳴り出しと同時に会場内の照明が落ちスポットライトで舞台が照らされる。
「始まりますよ」
ペロさんの言葉で3人とも舞台に視線を送る。
そこには、48人のメイド姿の女性たちが、音楽に合わせ歌いダンスをしている。
「あ・あの衣装は俺の…」
「あ・あれってナザリックのメイド全員」
「2人とも正解!そうナザリックメイド隊による、ホワイトブリムさんへのお祝い。」
ホワイトブリムは舞台を凝視し感動で打ち震えている。
悟は、なんでペロさんこんな事を考えさせると異常なまでに能力を発揮するのか不思議がっていた。
「まさかユリを連れて行ったのは、この為だったんですか?」
「そうだよ~」
あれ以降部屋にメイドが現れなかった事への答えを得た、悟。
センターはもちろん
ペストーニャ・ショートケーキ・ワンコです。
悟さん
ペロさんに主役取られちゃう~~~(笑)
ホワイトブリムさんは、メイド服の違いで名前を憶えていたので、
スーツ姿のユリさんを見ても気づきませんでした。(なんとなく見た事がある程度には理解してるかと)
なぜペロさんが登場すると、文字数がUPするんだ?