玉座の間は4畳半   作:820

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今回は短めです。

少しデミデミに語ってもらいました。


ハンバーグとミンチカツが好きな方ではないです。




悪魔は語る

鈴木さん宅

 

三つ揃えのスーツを嫌味なく着こなした男が、デスクの上のホロPCを操作し数十枚にも及ぶホログラムに映る情報を1つずつ読み込んでいく。

 

「流石は、モモンガ様このような道具を使いこなし、高みに到達しておられるであろう知識を、貪欲にも蓄積され続けられておられる。」

「私も、一歩でも近づきたいですね。」

悟からホロPCを使用する許可を貰い、今日も情報を集めているデミウルゴス。

 

「失礼、こちらでしたかデミウルゴス。」

背後から声を掛けられたデミウルゴスは、

「おや?珍しいですね、貴方からお声が掛かるとはセバス。」

振り返らずに答える。

 

「はい、デミウルゴスに相談したい事が…」

「相談ですか?セバス。」

座ってい椅子を回転させながらセバスに向き直るデミウルゴス

「聞かせて頂きましょう。」

 

「その前に、貴方は最近ずっとその道具をお使いですが、なぜなんです?」

「セバス、思い出してもみたまえ、あの世界で我々は至高の御方々のお役に立ってましたか?」

「そ・それは」

「そう君達は、御方々にお仕えしお世話はしていた。だがあのナザリックに1500人という不埒な侵入者どもに蹂躙され、最後は御方々のお力で救われた。」

「今度こそ、この世界での御方々の役に立ちたいとは思わないですか?」

「お役に立ちたいですね。」

「そうその為には、この世界の情報が必要なのです。この道具は様々な情報を映し出してくれるんです。」

「それで、何か分かったのですか。」

デミウルゴスはPCを操作し地球の全体図を表示し、動かしていき。

「これが、今至高の御方々がいらっしゃる地球というものです。」

セバスは興味深げに覗き込む。

 

「この世界には、数多くの国家、企業があるようですね。まあいってみればギルドの様なものですかね。」

「セバス、私はねこの世界を至高の御方々にお送りしたいのだよ。」

「そう全ての国家、企業を、我ら≪アインズ・ウール・ゴウン≫で染め上げたい。」

「そしてこの地に、ナザリック地下大墳墓を…」

「それは、至高の御方々のお力をお借りしてですか?」

「我々の力だけでだよ。セバス」

「この地での至高の御方々のお力は脆弱だ、それゆえ表に出してしまえば消去されてしまうだろう。」

「そこで我々だけが動き、至高の御方々の本当のお力を広めるのだ。」

「そして皆様の前で、この世界を献上するのです。」

デミウルゴスの壮大な計画に、セバスは興奮のため身震いする。

 

興奮が冷めたセバスは、1つの疑問をデミウルゴスにぶつける。

「悲しむ者は出ないのですかね。」

「悲しむ?」

「そうです、過程においてです。」

 

「ふふふ、セバスそれは不可能な願いだよ。」

 

「勝者と敗者…もちろん勝者は我々ですが、敗者は一時期でも悲しむだろうね。」

「それでは…御方々が悲しむのでは?」

 

「あ~、困ってる者が居れば、助けるのは当たり前ですか?」

セバスはデミウルゴスに殺気を放つ。

そうセバスの創造者である、たっち・みーの座右の銘を小馬鹿にされたと思ったのだ。

「おやおや、すまないね、別にたっち・みー様を馬鹿にした訳ではないよ。」

殺気は抑えたが、セバスはいつでも戦闘を開始出来る体制は崩さない。

 

「1つ質問しよう、セバス。たっち・みー様は何人救えるのかね?」

「答えるまでもないですね。全てです。」

「それは1つ1つ処理していってだろう。1回で1万人なら?」

「それは…」

 

「ではもう1つ質問しようか、セバス君個人としての答えを期待するよ。」

 

「2人の空腹で困ってる人がいたとしようか、君の手には1つのパンがある。どうする?」

「それは」

答えようとする、セバスをデミウルゴスは手で制止する。

「答えなくても、わかっているよ。パンを半分に分けて与える。」

「私でも、そうするだろうからね。」

デミウルゴスは微笑みながら発言する。

「ではパンは1つ、困ってる人が1万人ならどうする?」

「……」

回答を導き出せないセバスは困惑する。

 

そんなセバスを見て、デミウルゴスは少し愉悦の笑みを浮かべ

「パンを1万人に分ければ良いだけだ。君の理論だよ、セバス。」

「それでは…」

「米粒1つの大きさもなく、満足出来ないだろうね。」

「そして、力ある者が、力なき者を襲い奪い取るだろうね。そして、それは繰り返され

9999人は死んでしまう。」

「まあ私は、その過程を愉しみ、希望に満ちたその最後の一人にも絶望を与えるがね。」

セバスの握り締めた手からは血が出ている。

 

「昔、ウルベルト・アレイン・オードル様がある国の神話を語ってくれた」

「創造神が5日間で世界の全てを創造し、6日目に自分の姿に似せた人間を作り7日目は休んだそうだ、その休んでいる時に人間が増え、創造神を尊敬することもなくなり好き勝手に行動する様になり創造神を冒涜しだしたそうだよ。」

「創造者を冒涜する!」

「セバス、我々ではありえないことだよ」

「だが人間とはそういう生物だそうだ。」

「続けようか、創造神は考えを改めるチャンスを与えたそうだが、改めなかったそうだ。」

「崇拝を忘れなかった1家族を除いてね。」

「それで神はその家族に啓示を与えて船を作らした、その光景を見ていた人々は、その家族をも馬鹿にしだしたそうだ」

「その後、神は嵐を起こして人が住む全ての大地を水に沈めてしまい、船を作らした家族以外の人間を滅ばしたとね」

「セバス、君の論理でいけば、この神は悪ではないのかな?」

「創造者を冒涜する創造物など…」

「セバス、その考えは私と同じだね。」

デミウルゴスは少し困惑した笑顔をしていた。

 

「だがね、ウルベルト様はこう仰った。」

 

「そのような甘い事はせずに、全てを滅ぼし更地にし、再び創造すれば済む話だとね。」

「その1家族を残す事によって再び人間の数が増えた時、同じ事を繰り返すからだそうだ。」

 

「セバス、1家族残す神は善で、全てを滅ぼす神を悪と誰が決めたのです。」

「善である神だけが居れば済む事に、なぜ神の影の様に悪は存在するのか?」

 

「ウルベルト様の答えは、神とは人が生み出した善であり悪でもある1つの無意識体だと、そこで知識ある者が知識ない者を利用する為、相反する存在として生み出し、道徳心という物で縛り、そこにある矛盾を悟らせない、なぜならその矛盾を突かれれば世界支配は崩壊するからだ。その矛盾すら塗りつぶす為に悪に拘ると、そうすれば世界は救われると。」

 

「善を善として押し通したのが、たっち・みー様」

「悪を悪として押し通したのが、ウルベルト様」

「2人は境界線上で交わる平行線なんです。セバス」

 

セバスは言葉が出ない。

いつも争っていた2人が、

1本の道を反対の方向に進んでいると思った2人が、

平行線ではあるが同じ方向に歩んでいたとは。

 

「では私は、戻るとしましょう。」

 

ナザリックへと向かうデミウルゴスの背後で、無言で一礼するセバス。

 


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