玉座の間は4畳半   作:820

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あれ?どうして?

こうなった?



京都青薔薇事件簿・・・

弐式炎雷とナーベラルを見送った悟は、京都の街を歩いていた。

 

「朝飯でも食べるかな」

悟は一軒の店に入る。

 

 

「おう、腹減ったな。飯喰おうぜ」

「「蘭子、さっき食べてた」」

「うん?さっきってどれだ?皮被りのソーセージか?ムキムキのホットドックか?」

「「さっき、童貞というホットドッグ食べてた」」

「智菜!智亜!ストレート過ぎよ」

「花子、いいじゃねえか。さあ飯喰おうぜ」

 

店内は早い時間ではあったが客の数は多かった。

 

「一杯か仕方ないな。兄さん相席いいかい?」

「あ!どうぞ」

「すまないね。お~い、智菜こっちだ」

「蘭子、盛り過ぎ」

「はは、食い放題だぞ。これでも少ない方だ」

智菜は悟に一瞬視線を向けるが黙って席につく。

悟は蘭子の勢いに威圧されていた。

 

「うん?この匂いは、兄さんどこかで会った事あるか?」

蘭子は微かな香りに反応し悟の方を見る。

「いえ、初めてですよ」

「そうか、どこかで嗅いだ匂いなんだがね」

「匂いフェチ、フェチ」

「う~ん、何処だったかな?ま、いいか飯にしよう」

 

[いきなりなんだ?加齢臭がでてきたのか!おれ?]

悟は自分の体に鼻を近づけて嗅いだ。

 

「最近、なかなか年代物にあえなくてねぇ。」

「小さいのが正義」

「どこがいいんだ」

「手取り足取り全身取り教えるのがいい」

「はっ!そんなの頭の中知識と妄想で詰まった童貞がいいんだよ」

「ぶほっ!ど、童貞!」

「うん?そういや~兄さん。あんた童貞だね、匂いで分かるよ。私が…」

「ち、違いますよ!失礼な」

「ふふふ、そういって否定するのが何よりの証拠だよ。思い出した!あんたの匂い東京で藍に付いていた匂いだ。間違いない、20年物の童貞の匂い」

蘭子は恍惚の表情になる。

「ピチピチがいい」

「智菜!分かってないな!20年物になるとな…無垢なる少年の香りになるんだぞ」

「無垢なる少年!クンカクンカ」

「え!いや嗅がないで!舐めないで!」

「いい匂い。それにおいしい」

「そうだろう!そうだろう!智菜。お前も分かってきたな」

上半身は蘭子に抱き締められ、下半身には智菜が纏わりつき悟のズボンのベルトを外そうとしている。

「いや!ちょっと!こんな所で…く!逃げられない」

「心配しなくてもいいぞ。天井の吸音用の穴の数を数えているうちに終わるから」

蘭子にマウントポジションを取られシャツを脱がされかけた時

胸のモモンガ玉が光り蘭子と智菜は驚き力を抜いた瞬間に、悟は二人の拘束から逃げ出す。

 

 

[はあ!はあ!危なかった。これのおかげで助かったな]

そう呟き悟は胸のモモンガ玉を撫でる。

 

「どうしたの?蘭子、智菜」

「隊長。すまないな、緊急作戦が発動した」

「発動した」

「え?ちょっとどこいくの?二人とも荷物はどうするの?」

蘭子と智菜は走り去りながら

「「すぐ戻るから見ていてくれ」」

 

プレートを持ったまま立ち尽くす花子

「はあぁ~。仕方ないか。智亜か藍ちゃんが居てくれたらよかったのに」

今日はサイバロイドである藍の定期メンテの日だった。

智亜がなぜ毎回付いていくのかは、花子には分からなかったが、帰ってきた藍は疲れた顔をしていて、智亜の肌はツヤツヤしていた。

 

花子は席に座り食事をはじめる。

 

「失礼、フロイライン。こちら宜しいでしょうか?」

背後から声を掛けられ驚く花子。

普段の彼女であれば相手の気配を感じ背後に回られることなどなかったのに、

今声を掛けてきた人物の気配を一切感じなかったからだ。

 

「あ!ど、どうぞ」

返事をした花子は振り向き、その男を見て更に驚いた。

 

 

 

 

「くそ!どっちに行った?」

「あっち!クンカクンカ」

「よし!智亜、オペレーションDTOG(童貞王子GET)発動だ」

「了解!…ところでどんな作戦?」

「あ~!捕まえて喰っちまうんだよ」

 

 

 

花子は、なぜか両手を広げ、そして左手を帽子のつばに添えて座る軍服姿の男の仕草に釘付けになっていた。

 

[デミウルゴス卿の依頼で、モモンガ様を追いかけて来たのですが。モモンガ様はどちらへ行かれたのでしょうか?]

そう現れたのは、エントマから人面蟲を借り受けて変装していたパンドラズ・アクターだった。

 

[なに?この人…カッコいい!今の席につく時の仕草なんて…すてき]

 

「フロイライン、私の顔になにかついていますかな?」

「あ!いえ。すいません」

[なんなのこの人、今の左手の肘を付いて人差し指と中指の間から私を見詰める視線。それに体を向けている角度…完璧だわ]

「フロイライン、失礼ながら緑黄色野菜が少ないようですね。」

 

「やっと巡り逢えたというの。瞳が共鳴している!

私は、貴方を見つけるために、幾星霜の時を経て此処に来たの。」

 

「フロイライン、やはり貴女は…覇王真眼の持ち主…ですがまだ力の制御が出来ていないのですね。体を向ける角度は43度、指を開く角度は23.5度ですよ」

そう言って立ち上がり実演してみせるパンドラズ・アクター

 

「いえ!違うわ。体を向ける角度は42.7度、肘を曲げる角度は88度、そして指を開く角度は23.3度よ!」

「ほお~、よくぞ間違いに気付きましたね。おっと失礼」

こめかみに手を添えるパンドラズ・アクター。

 

「探し人も見つかりましたので。私はこれで失礼させて頂きます。そうそう肘を曲げる角度は87.8度ですよ。フロイライン」

颯爽とコートを翻して去って行こうとするパンドラズ・アクター。

「待って下さい。またお会い出来ますか?」

そのまま1回転するパンドラズ・アクターの手には携帯端末が握られていた。

「あ、すいません。直ぐに赤外線モードにします」

心臓が早鐘の様に鼓動し、自身の携帯端末を持つ手も震える花子。

 

「私は、ルトサ。フロイラインは?」

「わ、私は、はな…ラキュースです。」

「フロイラインラキュース、よいお名前ですね。では」

右腕を横に振り、踵をカツンと合わせ敬礼し去って行くパンドラズ・アクター。

 

花子は全身の力が抜けたように席に座りこむ。

[ル、サ、ト…様]

 

 

店外に出たパンドラズ・アクターはメッセージでデミウルゴスと連絡を取り

悟の救出に向かった。

 

 

 

「ふふ、もう逃げられないぞ。童貞王」

悟の前に蘭子、背後で既に悟を羽交い絞めにして匂いを嗅ぎながら首筋を舐めている智菜。

 

[あ~、俺の純潔もここまでなのか?こんなおっさんみたいなのに、首筋を舐められて力が抜ける。]

 

Die Welle des wahren Dunkelheit(真なる闇の波動)

蘭子と智菜が吹き飛ぶ。

「「な、何が起こった…」」

そのまま意識を失う2人。

 

「モモンガ様、御無事でしたか」

[え!あの恰好って、パンドラズ・アクターだよな。でも顔が俺そっくり]

 

「あ~、助かったぞ。パンドラよ、礼を言うぞ」

「勿体無き御言葉です。Mein Gott , die höchste(至高なる我が神よ)

「でもなぜここが分かった?」

「はい、デミウルゴス卿のご依頼で護衛の任についておりました」

「そうか。デミウルゴスにも礼をしないとな」

「では、私はまたモモンガ様の護衛に付かせて頂きます」

「いや、パンドラもうナザリックに戻ってよい。まもなくナーベラルと弐式炎雷さんも戻ってくる頃だろう」

 

 

こうして悟の京都旅行は幕を閉じた。

 




デミ「流石、モモンガ様20年物は深みがありますね」
モモ「ワインやウイスキーは熟成が大事だからな」
デミ「私自身の手でモモンガ様20年物のコルクを抜いても宜しいでしょうか?」
モモ「え!デミ…ウルゴス何を言ってる」
デミ「アルベドやシャルティアには負けれません」

BARナザリックに悟の声が木霊する。

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