玉座の間は4畳半   作:820

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皆大好きニグンさん、やっと登場ですが

エタってました。

ニグンさんは難しかったです。。。




祭り…

たっち・みーが遠隔視の鏡で見ていたものは、数台の軍用ジープであった。

その1台をズームしたたっちは、

「やはり、風間さん。」

「セバス、モモンガさんの所に行くぞ」

 

 

軍用ジープの1台

「風間隊長、なぜあんな町を助けるのですか?」

若い兵士が言う。

「あんな町だと!?」

腕を組み、俯いていた男は、顔を上げ若い兵士を睨みつけ言った。

 

「風間隊長、彼は」

「そうだったな、副長」

風間は若い兵士に向き直り

「ロストナンバーズだろうと、日本国民に違いない。それにな、俺も元々ロストナンバーズなのだよ」

 

風間たちの部隊員の多くは元々ロストナンバーズで構成されていた。

安藤総裁の肝いりで創設されたのだが、軍内部では浮いた存在だったのだ。

 

不用意な発言をした兵士は、安藤派の政治家の次男で所謂エリートだった。

 

「隊長。そろそろです」

「そうか、うん?なにか雰囲気が変だな。注意して進め」

「了解しました」

 

 

「モモンガさん」

悟は声を掛けられ振り向くと、そこにたっちとセバスが居た。

 

「セバス。どうしてたっちさんを?」

「すいません。モモンガさん。私が無理を言って来てしまったので、セバスは悪くないです」

たっちの背後で控えていたセバスは萎縮しながらも感激している様だった。

「分かりました。たっちさん。でもどうして?」

「遠隔視の鏡で見ていましたら、今この町に軍の部隊が接近して来ているのですが、その中に昔世話になった人が居たので」

「そうですか、では到着を待ちますか?」

町の取り纏め役の男性と並び、悟はジープの到着を待つ。

たっちとセバスは少し離れた所で待機する。

 

数分後、数台の軍用ジープが止まり、兵士たちが規律よく降りて整列し、そして最後に

1人の男が降りてきた。

 

「私は、国防軍第101特殊部隊長の風間です。この町の纏め役は?」

「私です」

「我々は、この町が国籍不明の部隊に襲われているとの情報を得て救援に来たのだが?隣の方は?」

風間は、仮面を被った悟に視線を送る。

その鋭い視線を受け、悟はどう言葉を発するのかを躊躇った。

 

「お久しぶりです。風間少佐」

たっちが悟の前に出て言葉を掛ける。

 

「君は?立木くんか、久し振りだな」

「風間さん、彼は私の知り合いでサイバロイドの研究者です」

「では、あれが?」

風間は少し離れた所で待機しているデス・ナイトとアルベドに視線を少し動かし、再び悟を見詰める。

 

「あのようなサイバロイドは、私は聞いた事も見た事も無い。申し訳ないがその仮面を取って貰えないか?」

「申し訳ありません。これを取るとアレの制御がどうなるか」

悟は咄嗟に答える。

「そうか…」

尚も疑惑の目を向ける風間。

その時

「隊長!周囲に敵部隊らしき者が!」

「副長、住人を後方へ。立木君、そちらの方と同行願えるかな?」

風間は町外れの空き家を指差し悟から視線を外さずに言った。

 

 

「各員、傾聴。獲物は檻に入った。我らが神の願いを叶える時。作戦開始」

隊長と思われる男の一声で兵士たちが動き出す。

 

 

空き家から周囲を確認する風間

「見た感じあの部隊の装備は、新中華連合か?そして、あの空中のサイバロイドらしき物は、新兵器なのか?」

 

「たっちさん、あれって炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)ですよね?」

「見た感じ、そうですね。ユグドラシルのプレイヤーですかね?」

「もし、プレイヤーなら先日のゼロって男と同じなんでしょうか?」

悟とたっちがこそこそと話をしていると、

 

「失礼だが、君達には何か心当たりがあるのかね?」

「風間少佐、我々は一般人ですよ」

たっちが即答する。

「確かにそうだな。失礼した。という事は私が狙いか」

風間は少し思案し、悟に話しかける。

「貴方のサイバロイドを貸しては頂けないだろうか?」

悟は、たっちの方に視線を送り、少し考える。

 

「申し訳ありませんが御断りします」

「強制徴用という手もあるのだが?」

「そうであるならば、少々抵抗させていただきますが?」

「ははは、やはり立木君の知り合いだ。すまない冗談だ。一般人に助けを求めるなど軍人ではないからな。我々は中央突破し敵を引き付けるので、私個人の願いを聞いて貰えないだろうか?町の住人を…今一度守って欲しい」

そう言って、風間は頭を下げる。

 

 

悟に視線を送るたっち、悟は頷くだけだった。

「分かりました。風間少佐。町の人は私達が守ります」

「宜しく頼む。立木君」

「風間さん、これをお持ちください」

そう言って悟は、不格好な木彫りの人形を風間に渡した。

「ほお、あのようなサイバロイドを研究している人にしては、趣のある物だな。有り難く頂こう。では後は宜しく頼む」

空き家から出ていく風間。

少し遠くから命令を下している、風間の声が聞こえる。

 

「良かったのですか?あれを渡しても、モモンガさん」

「まあ相手がプレイヤーだったなら不味いかもしれませんが、困っている人が居たら助けるのは当たり前ですよね」

「ははは、流石ですね。モモンガさん、ではこちらも行動を開始しましょうか」

たっちが動こうとしたと同時に、

「失礼いたします、たっち・みー様」

セバスがたっちの鳩尾にパンチを入れる。

意識を失うたっち。

「セバス、辛い仕事をさせてすまないな。たっちさんを安全な所へ」

「畏まりました。モモンガ様」

セバスがたっちを抱えて退避するのを確認してから悟はメッセージの魔法を発動する。

「アルベド、デス・ナイトと共にこちらに……いやデス・ナイトには住人を守らせろ」

「畏まりました。モモンガ様」

 

 

 

「副長、少々装備類は心もとないが行くしかない」

風間達の部隊は富士の駐屯地で装備を受領していたが、軍主流派の嫌がらせで最低な装備のみだったのだ。

「車両は廃車間近のジープに、軍事博物館にあっておかしくない

自動小銃、突撃銃のみですからね。相手が完全武装なら笑うしかないですね」

「確かにそうだな。では中央突破で敵を引き付けて町から離れるぞ」

 

 

 

「隊長!前方より車両が!」

「来たな。狙うは風間のみ。他には目もくれるな。車両を走行不能にしろ」

数名の兵士がジープに向け手を翳す。

 

「隊長!車両が走行不能に!原因は不明です。」

「電磁兵器まで持っているのか?」

風間の乗ったジープが止まる。

「まあ他の車両は走行可能のようだな。各員命令通り行動」

 

止まってしまった車両を盾にし、風間は身を隠すが周りには炎の上位天使が布陣していた。

 

「うわぁ~……見逃してくれ」

若い兵士が頭を抱え蹲る。

 

「副長、すまないが、あれを連れて部隊を追ってくれ」

風間は若い兵士を一瞥して副長に言った。

「た…隊長……あのような者は捨て置けば?」

「副長、そういうわけにもいくまい、政治家の息子だ。安藤総裁の立場を考えればな」

「…わ、わかりました。隊長御無事で」

副長が兵士の首根っこを掴み引きずって行くのを確認した風間は、敵部隊に向き直った。

 

風間はホルスターから拳銃を抜き、天使の様な物に狙いを定め引き金を引く。

数回の乾いた銃声が響く中、音の数だけ天使の様な物が光の粒子となって消えていく。

 

「再度、天使を召喚し複数体をもって風間を狙え」

再び天使が風間目掛けて飛来する。

背後に回り込んだ天使が風間を切りつける。

斬り付けられた風間は車内に身を隠す。

[くっ…何体いるんだ、キリがないな。予備の弾倉も心もとない。やはり操縦者を倒さないと駄目か]

 

「どうした。風間隠れているだけか?大人しくその命を我らが神に捧げよ。さすれば苦しみを与えず送ってやる。この私、二・軍祭(リャン・グンサイ)自らな」

 

 

A・O・G財団 悟の執務室

遠隔視の鏡を見詰める、デミウルゴスとコキュートス。

「コキュートス、君はこの戦闘をどう見る?」

「ナゼ、モモンガ様御自ラ出陣ナサレルノカ?我等守護者二任セテ頂ケレバ良イモノヲ」

「それは、モモンガ様の優しさ、厳しさの表れだろうね」

「…ソレハ?」

「分からないかね?コキュートス。我々が万が一にも傷付くのを気にされているのだよ」

「我等ハ御方々ノ剣デアリ、盾ダ。御方々ヲ守ル為ナラバ、コノ命惜シクナドナイ」

「我々のその考えを、モモンガ様はお認めにならないのだよ。我々が傷つく事を悲しまれるからね。そして…」

コキュートスは、デミウルゴスの言葉の途切れ方に違和感を覚え視線をデミウルゴスに向けると、デミウルゴスの体は小刻みに震え握り締めた拳から血が滲んでいた。

「すまない、厳しさの件だが、我々を完全には信用されておられない…いや信用はされておられるだろう。だが信頼はされていないという事だろうね」

「ナラバヨリ一層忠義二励ミ、我等ガ力ヲ示シテ信頼サレレバ良イダケデハナイカ。デミウルゴスラシクナイ…」

「…コキュートス、有難う確かにそうだな。より一層忠義に励みましょうかね。」

デミウルゴスはハンカチを取り出し、涙を拭う。

 

 

 

「くそ!弾切れか…」

風間の周囲に展開していた天使らしき物が一斉に襲いかかる。

 

[ここまでだな]

そう風間の頭の中に響いた瞬間、風間は町の住人が避難している建物に居た。

 

「こ…ここは?」

キョロキョロと周囲を見回す風間。

「風間さん、ここは避難所ですよ」

「立木君…」

気を失う風間

 

 

「初めまして、新中華連合の皆さん…私は」

「貴様何者だ!?風間をどこに隠した!」

「おやおや、人が挨拶をしている最中に…ま、いいか」

悟は手にした山河社稷図を広げる。

二・軍祭が再度口を開きかけた瞬間に周りの空間が闇に包まれる。

 

「この空間は隔離させて頂きましたので…話をしましょうか」

「貴様と話をする時間など無い!風間をどこにやった?」

「こちらは、色々と聞きたい事があるんですがね。風間さんなら町に移動させましたよ」

「ま、まさか貴様も創造されし者か?私の邪魔をするならば貴様を先に殺して風間も殺すのみ」

「創造されし者?」

「そうだ、私は神聖人と呼ばれていた究極の御方々によって創造され、御方々の願いを叶える為に存在するのだ。天使隊を突撃させろ」

数体の天使が悟目掛け殺到し手にした剣で悟を貫く。

「終わったな。他愛もない、風間を追うぞ!天使隊を後退させろ…うむ?」

 

「ダメージはないか、少し痛みは感じたが」

悟が両手を広げた瞬間、剣を刺していた天使たちが光の粒子に変わり消えていく。

 

「な、なんだと!」

 

[上位物理無効化のスキルのおかげか]

 

「知りたい事がどんどん増えるな。用があるのはお前だけだ、暗黒孔(ブラックホール)

悟の指先から小さな黒い塊が発生し天使たちを召喚していた術者を飲み込んでいくはずだったが、二・軍祭からオーラが立ち上り効果を打ち消したのだ。

 

「な、なに!魔法効果範囲拡大(ワイデンマジック)内部爆散(インプロージョン)

再度魔法の効果は打ち消される。

 

「無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!」

「魔法が効かないだと!そんなものゲームには無かったはずだ」

 

「このぉぉ下等生物どもがぁぁ」

悟が呆然とする中、アルベドが突進する。

アルベドがバルディッシュを一振りするたびに天使を召喚していた術者たちが消えていく。

 

「き、貴様たちは、何者だ?なぜ我らが、究極の御方々の願いの邪魔をする」

「究極だろうが何だろうか貴方たちは、私の大切な方を傷つけたのよ。許されるとでも考えているの?素直にモモンガ様の言葉に従い頭を垂れて命を差出せばいいのよ」

二・軍祭に対してバルディッシュを振り上げ慈母の笑みで語りかけるアルベド。

二・軍祭は、アルベドの慈母の笑みを、冷汗を流しながら聞いていた。

[なぜだ?なぜだ?なぜだ?私は神である御方々の為に…なぜだ?なぜだ?]

 

「くっ!これを使うしかないのか」

二・軍祭は着込んでいたローブを脱ぎ捨てる。

「アルベド!下がれ!」

二・軍祭の行動で我に返った悟は叫ぶ

 

 

「アレハ、何ダ?」

遠隔視の鏡で見ていたコキュートスが立ち上がり叫ぶ。

「あれは、アオザイと呼ばれる民族衣装でありんす。私もペロロンチーノ様より賜ってありんす。普通は女性が着るでありんすが?」

途中より経過を見に来ていたシャルティアが説明する。

 

二・軍祭が身に着けていたのはシャルティアの説明通り、東南アジアベトナムの女性用の民族衣装であるアオザイだった。

白い生地には伝説の聖獣である麒麟の刺繍があった。

 

悟目掛けその麒麟が眩い光とともに飛び出した。

 

「イージス、ウォールズ・オブ・ジェリコ、ミサイルパリィ、カウンターアロー」

アルベドが続けざまにスキルを発動し悟の前に立ち塞がりバルディッシュを横薙ぎに振る。

だが向ってくる麒麟の様な光は、アルベドの全てのスキル効果を無視し眉間に吸い込まれる。

[お前の心の望みを叶えよ]

アルベドは意識を失う瞬間に、その声を聞いた。

 

異界門(ゲート)

悟は開いた異界門に気を失ったアルベドを入れ、異界門を閉じる。

 

「後は、貴様だけだ。もう一度チャンスをやろう、我らが神に跪け」

「答えは、NOだ」

「ならば、後悔しながら死んで逝け。スクロール善なる極撃(ホーリー・スマイト)

 

[くっ!これがダメージの痛みか。相手には魔法が効かない。直接の物理攻撃ならいけそうだがどうすれば?]

 

「ハハハ、神の聖なる光の中で逝け」

「これしかないか!? 時間停止(タイム・ストップ)魔法遅延化(ディレイマジック)

上位転移(グレーター・テレポーテーション)上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)

 

二・軍祭が気付いた時には、既に全身鎧姿の悟の腕の中だった。

「く!離せ!」

 

「さて、こういう趣向はどうかな?」

悟はそう言って、左手に握ったアイスの棒の様な物を折ると

ゲーム時代のアバターであった姿になる。

 

死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)!」

二・軍祭は動かせる腕、足、頭で悟に攻撃するが、拘束を解除出来ない。

「う~ん、近いが正解ではないな。どうだ魔法詠唱者に腕力で敗北する気分は?」

「くそ!くそ!くそ!この私が、究極の御方に創造されし…私が敗北など」

「時間も無いし、お前には色々と聞きたい事もあるから終わらそうか」

悟は抱き締めた腕に更に力を込める。

 

周囲に大木が折れたかの様な音が響いたと同時に、二・軍祭の体から力が抜ける。

 

悟は伝言(メッセージ)を詠唱する。

「セバスか、たっちさんは…そうかでは、たっちさんに風間さんの件は任せてナザリックに帰還するぞ」

 

悟は、二・軍祭の遺体を肩に担ぎゲートを開きその中に姿を消した。

 




シャルティア「あ~モモンガ様の白磁の様な高貴なお姿(ハート)。さあアオザイに着替えて御迎えするでありんす」

コキュートス「最後ノ時、モモンガ様ノ胸ガ明滅シテイタガ。ドウシテダデミウルゴス?」

デミ「私の推測ですが、死の支配者という本来のお姿でいられる時間に
   制限があるのかも知れないですね」

一同「お~流石、デミウルゴス」


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