書かずに脳内に溜まったネタの墓場というかごった煮というか 作:むみあ
「やれやれ、すっかりあちらのペースだな、良いのかねキャスター?」
「あら、アーチャー・・・自分から私に話しかけて来るなんて珍しい事もあるものね。
このあと槍でも降ってくるのかしら?貴方目掛けて」
「やれやれ、この後に戦いが控えている従僕に呪の予言めいた冗句を飛ばさないで欲しい物だ。
槍ではなくて剣が降って来るかもしれないぞ?君に向かって」
「アーチャーのくせに矢を降らせると言う発想はないのかしらこの似非弓兵は」
「耳が痛いな・・・それよりも本当に良いのか、このままで」
「いいのよ、これはあの娘の戦いなのだから、本人がそういうのだから私は手を貸さないわ。
既にあの娘の治療、というよりも新生と言うべきかしら?それだけでも私からの持ち出しが過剰なぐらいだもの、この上で魔力を更に供給しろだなんて言われても、ね」
「全く、随分と甘くなったものだ。 それを後悔しなければいいが」
「ふん、実際あの子の自前の生成量は大したものよ、燃費の悪さで相殺されているけれど。
その上で私が魔力供給を行っても劇的な効果はないどころか―――」
「自身の闘いに差し障りが出る、かね?
だったら最初からこのようなお行儀のいい勝負に乗らなければよかっただろうに。
ここの地下の連中の事と言い君は今しなくていい苦労を―――」
「ああもう、小うるさいわね、小姑かなにかかしら。
言われずとも私自身が一番わかっていますとも、ええ本当に馬鹿みたいだわ!
これで満足かしら? 柄じゃないのも非合理的なのもわかっているのよ、だから何かしら?」
「ならば―――」
「もう沢山なのよ、『魔女らしい』立ち居振る舞いとか」
「―――なに?」
「狡猾、残忍、効率的、合理的、ええそうでしょうね、切り捨てるべきを切り捨て、望む物への最短距離を、それこそが総じて見れば最も賢く犠牲の少ない冴えたやり方でそこに情など不要で、むしろ私はそれを利用して相手を嵌めるのこそがお似合いでしょうよ。
ええ、ええ、そうでしょうともそうでしょうとも、クソ喰らえよ」
「キャスター、君は何を」
「そう言えば先日、私がマスターに料理を作ろうとして失敗してるのを見て、『何故レシピ通りに作らないのかね、そう言うのは得意だろう』とか抜かしたわね貴方」
「いや、だから何を」
「確かにレシピ通りに手慣れた『作業』のようにさっさとやってしまえば簡単でしょうよそうでしょうとも。
で、そこに私の気持ちは入っているのかしら? そんな物を万が一美味しいって言ってもらえて私は嬉しいのかしら?」
「一体どうしたと言うのかね・・・」
「そもそもマスターが、宗一郎様がどういった味付けが、何がお好きかも知らないのに・・・」
「
「―――キャスター・・・君は」
「ふう、勘違いしないで欲しいわねアーチャー。別に破れかぶれになっているわけじゃないの。
ただ、色々と思う所があったのよ。青臭い坊や達の寸劇を見たり、どこかの馬鹿な誰かさんの『夢』を見せられて、色々と、本当に色々と、ね」
「・・・・・・それで、最善を投げ捨ててこのような茶番に付き合っている、と?」
「あら、その茶番を眩しそうに眺めている貴方がそれを言うのかしら?」
「抜かせ、君こそ今更にセンチメンタルを気取ってなんだと言うのかね」
「ふん、言ってくれるじゃない。確かに本来の私の在り様からしたら温いにも程があるのかもしれない。けれどね、言ったはずよ。 そんなものはクソ喰らえよ」
「だから、さっきからどうしたというのかね・・・。
元々性根が貞淑な淑女とは程遠い真っ黒さではあるが口調が崩れすぎだろう」
「失礼ね、元々は蝶よ花よと愛でられた貞淑な乙女だったのだけれど?
まあ、淑やかなお花は摘み取られて踏みにじられて今ではこんな有様ですけれど。
ああ、なんて可哀想な私。 だから人を踏み躙って幸せを望むしかなくなってしまったのね」
「―――恐ろしい程に棒読みだな」
「―――ハッ、それはそうでしょうよ。 こうして自分で言ってみると薄ら寒くて吐き気がするわ」
「だが、事実ではあるだろう。 自業自得な面は多々あったかもしれないが、そうして転がり落ちて行く最初にして最大の要因は、君になんの落ち度もなかったはずだ。
それに関していえば『君は何も悪くなかった』違うかね」
「・・・ふん、当てつけかしら。まあ『夢』の話を最初に持ち出したのは私だからその非礼には目を瞑りましょう。 ええ、その通りかもしれない、あの時の私は『何も悪くなかった』のかもしれない。
けれど、その後にその境遇を嘆いて、他を羨んで、自分から積極的にその状態から這い上がろうとする気概が足りなかったのは確かでしょう。
そりゃあ、必死に、それこそ懸命に頑張ったつもりではあるけれど、それだってこうして振り返ってみれば結局はズルズルと状況に流されて転がり落ちて行っただけ。
それも周りを引きずり降ろして、挙句自分も這い上がれず、結果誰も救われないというオチがついてね。
それに関して最初のきっかけを持ち出しても、言い訳にはならないでしょう?」
「・・・確かに、それに関して君の行いを肯定は出来ない、が」
「だが、そうなってしまうのも致し方ない、とでも言うつもりかしら?
他でもない、そう言った連中を最終的に刈り取って来た貴方が」
「・・・・・・」
「はあ、アーチャー・・・貴方、後悔しているのかしら」
「無論だ・・・私は、いやオレは―――」
「―――英霊になるべきではなかった、とでも?
呆れた、貴方も、いえ・・・『よりにもよって貴方が』それを言うの?」
「・・・・・・『私だからこそ』だ。
ああ、そうだとも、私は・・・今まで切り捨てて来た、取りこぼして来た彼ら、彼女らを・・・君達のような者をこそ、助けたかったのだ。 既にこれ以上ない程に痛感していた筈だったが、まだ認識が足りなかったと君達の『夢』を見て思い知らされたよ」
「呆れた。 感傷的になっているのはむしろ貴方の方ではなくて?
何か変に協力的になったから訝しんでいたのだけれど、まさかそんな理由だったとはね」
「・・・否定はしないさ」
「全く・・・本当に馬鹿な『坊や』だ事。
あの娘の前であれだけの啖呵を切った坊やと『同一人物だとは思えない』わね」
「・・・・・・」
「あら怖い。 そんな目で婦女を睨む物ではなくってよ。『正義の味方はフェミニスト』なのでしょう?」
「・・・茶化すな、キャスター。 私は」
「ああもう、うっさいわね。 そういうのはもうお腹いっぱいなのよ私は。
もう沢山、もうウンザリ、クソ喰らえなの。 今更なのよアーチャー、過ぎた事よそれは」
「・・・だが、君は『帰りたい』のではなかったのかね」
「ええ、『帰りたかった』わよ? でもね、勘違いしないで欲しいの。
私は『故郷に帰りたかった』だけであって、あの時に戻りたいだなんて思ったわけじゃないのよ。
アーチャー、貴方ひょっとして何、私がやり直したいだとか『あの時』に戻って弟じゃなくて馬鹿な『私自身』なり『あの男』なりを八つ裂きにしてばら撒きたいとか考えていたとでも?
―――何それ素敵じゃない、少し心が揺れたわ」
「真面目に答える気はないのかキャスター」
「失礼ね、私は至って真面目だし、素面よ。 あの坊や達の前でも言ったでしょう。
私は辿り着いた『今』に満足している、と」
「・・・ならば、何故もっと勝ちに拘らないのか。 君ならもっと他にやりようが―――」
「だから、言わなかったかしら、クソ喰らえよ。
私は今までを悔いつつも、嘆きつつも、やり直したいとは思っていないとは確かに言ったわ。
けれどね・・・いえ、だからこそ、『焼き直しなんてうんざり』なのよ」
「・・・今更、真っ当にやって勝ち取るつもりだとでも言うのかね。 正気か?」
「何を今更、とでも言いたげね。 それこそ馬鹿じゃないかしら。
何を悟ったような事を言っているのかしらアーチャー。 それで『貴方は救われたのかしら?』
『1を捨てて9を救った正義の味方』さん?」
「―――」
「ほんと、興味深い『夢』だったわ。 私のような、下手したら私以上に哀れでロクでもない連中が刈り取られる胸糞の悪い英雄譚かと思えば、その打ち倒す方も全く幸福が訪れないどころか・・・ね。
見ていて腹が立ったわ。 お笑い草よね、この私が、這い上がろうと見苦しくもがいていた私みたいなのを奈落に叩き落して回っている輩の姿を見て『これだけやって報われないなんて間違ってる』なんて思うなんて」
「・・・な、に?」
「何かしら、その意外そうな顔は。 いいザマね、とでも言えと?
馬鹿にしないでくれるかしら、私達みたいなのを踏みにじって幸せになりましたとか言われたら縊り殺してやりたいぐらいに腹が立つわよ確かに。 けれどね、それで結局何も報われずに恩知らず共に手の平返されて同じように不幸になりました、とか言われたらもっと腹が立つのよ、わからないかしらね?」
「なんだねそれは・・・いや、わからなくもないが」
「そんなザマになるなら最初からしゃしゃり出て来て邪魔なんかしてんじゃないわよこのスカタン、と言いたくなるってものでしょう?」
「・・・・・・いや、いやいや、キャスター、君はちょっと今世というか俗世にかぶれ過ぎではないかね、ちょっと色々考え過ぎて錯乱していないか?」
「だまらっしゃい、兎に角もう青白い馬に乗って病原菌とか撒く系の役回りとかご免なのよ、冗談じゃないのよ、私は幸せになるのよ、式は似合わなくても真っ白なドレスとか白無垢来てケーキとか入刀するのよ、バッドエンドにもルールブレイカー入刀よ、希望の未来へレディーゴーなの、お判り!?」
「待て待て落ち着けキャスター、病原菌を撒かないのはわかったが、かわりに自身でそれをキメてしまったようなその言動を自覚して落ち着け・・・!」
「私は冷静よ、別に変なものもキメてないわ。 ただ覚悟を決めただけよ、正直素面でやってらんないとか思わなくもないけれども、あの子達を見ていると・・・!!」
「やはりヤケクソになっているじゃないか、いや、アレを見ていると色々馬鹿らしくなる気持ちは痛いほどよくわかるが」
「もう婚礼呪も送ったことだし今ここで結婚式上げようぜシロウちゃんよー!」
「ああ、アレか、ケーキ入刀しようぜ
「それだ!士郎、カリバーン投影して二人の初めての共同作業、イリヤスフィール入刀だ!」
「場所も教会だし丁度いいか、神父が居ないが・・・そう言えばここの神父はかなりイイ性格してたみたいだけど、不在ってのが残念だな」
「ふざけんなお前ら!絶対そんなことしないからな!!」
「神聖な王剣を馬鹿にしてるんですかシュウジ!というかシロウ、貴方はカリバーンの投影が・・・!?」
「え、いや、したことないけど・・・。 あ、あー・・・できる、かも」
「エンダァァァァァァー!!」
「喧しいわ!やらないって言ってるだろうが!!」
「アカサ、それ元ネタ的に男の方が死ぬぞ」
「イヤァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ああ、わかってて歌ってるんだな。 よし衛宮、逝ってこい」
「しねえよ!」
「くっぅ・・・シ、シロウ・・・ッ。 その、言い辛いのですが、彼の剣を投影可能であればして頂けると私としても嬉しいと言いますか、その・・・」
「セ、セイバー!?」
「い、いえ、違いますから!イリヤスフィールに岩に刺さった選定の剣の如く突き立てたいとかそんな事は思ってませんから! そこからシロウと二人で仲良く剣を引き抜きたいとか思ってませんから!!」
「うわあ・・・なんかポンコツっぷりに磨きがかかって来たんじゃないかあの馬鹿食い低燃費騎士」
「アレだな、衛宮に染まればポンコツになる的な。 成る程、女騎士を自分色に染め上げるシロウちゃんか、くっころならぬくっシロ『くっ・・・シロウ、ください、貴方のカリバーンを・・・!』なにこれエロい」
「・・・『呑み込んで・・・俺のカリバーン』って何言わせるんだよ。 まあ、呑み込む羽目になるのはあのバーサーカーと
「ケーキ入刀でケーキが即落ち二コマすんのか、何それ新しくね?」
「別に新しくもないだろ、擬人化って奴だよ、ウエディングケーキの」
「ああ、白いしな」
「ああ、白いし」
「『悔しい、でも・・・ビクンビクン』ってかぁー!カァー、このスケコマシロウ!!」
「まあ、既に色々スジが浮かび上がってビクンビクンしてるけどなアレ、ちょっとキモくない?」
ブチブチッ、ブチチチチチィ!!
「あっ、ああ・・・!? お、お嬢様から先程から断続的にレディというか人体から聞こえてはいけないような何か色々と捻じ切れるような音が・・・更に酷く!!」
「絶許」
「リ、リズ!? お、お嬢様から感情が流れ込んできているのは解りますが、そのハルバートは収め・・・ああ、駄目です落ち着きなさい! というかアカサシュウジにマトウシンジ、貴方達いい加減に・・・!!」
「もうやだ、おうち帰りたい」
「遠坂ァ!? なんか虚ろな目してないで何とかしてくれ!!」
「やだ、じぶんでなんとかすればいいじゃない、このへっぽこすけこましろう君」
「ああああ!? 誰も味方は居ないのかっ―――ガハッ・・・!」
「シロウ!? ぐあ・・・っ!」
「□□□□―――ッ!」
「おっと、流石にちょっと煽り過ぎたか?どう見るアカサ―――おい、どうしたんだ?」
「―――っと、いや、さっきからちょっとごちゃごちゃしててな・・・おい!」
「はいはーい、どうしたのかなアカサ?」
「いや、ちょっといきなり感覚共有ぶち込んで来て聴覚をリンクさせんのは勘弁してくれ」
「あはは、ごめんごめん、でもいい話だったでしょ?」
「いや、アイツらの内面の変化とか知れたのはいいけど、別にわざわざリアルタイムで感覚共有してまで知る必要ないよな?」
「なんだい?お前のサーヴァントはピーピングの趣味まであるのか、うわあ、ちょっと気持ち悪いからお前らちょっと近寄んないでくれる?」
「喧しいわ、痴女を連れ歩くお前に言われる筋合いはねえ!」
「飛び火!? というか誰が痴女ですか!!」
「反応するってことは自覚アリって事だな、シンジお前コレどういう事だよ」
「アカサ、間違っているぞ。 これは『アイツの』だ。 僕の趣味趣向でこうなんじゃあない、解るね?」
「・・・ああ、そういえば、お前じゃないもんね、そうだね。 そっか、大人しそうな顔しといてあの娘ってばそういう・・・」
「なっ!?ち、違っ・・・サク・・・ゴホン、あ、あの子はそういう趣味ではありません!」
「「ふーん?」」
「・・・小僧とセイバーがボロ雑巾のように吹き飛ばされ続けている中でアレとは。 いや、それよりも」
「・・・こちらの会話がどうも筒抜けだったみたいね? 本当に目ざわりな泥人形だこと。 まあ、流石とも言えるのでしょうけれど。 アレ一人ですべてひっくり返せるだけの規格外、本当に忌々しい主従だこと」
どうせ回想なんだしもっと飛び飛びでも・・・いい、です・・・よね?(白目)