少女Aの憂鬱   作:王子の犬

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★13 炎立つ

「嫌です。絶対に辞退したくありません」

 

 職員室に張りのある声が響いた。しのぎんは担任の先生を前にして丁寧な言葉を使っていたが、顔が強ばっている。

 

「話し合いの余地は無し、か」

 

 二組担任の先生はあえて(ファン)さんの意見を入れたらどうか、と提案したのだけれど、しのぎんは頑なに拒否していた。

 先生はモニターアームに手を伸ばして液晶画面の位置を調整すると、凰さんの顔写真を表示させて眉根をひそめながら考え事を始めた。

 窓の外は暗くなっていて無人の席がいくつかあったけれど、一年生担当の先生は全員残っていた。私と(ケイ)、そしてしのぎんが二組の担任の先生の前で椅子に座っていた。椅子は帰宅した先生の席から拝借(はいしゃく)したもので、教室の椅子とは違って背もたれが分厚くて座り心地が良かった。

 向かいの席にいた山田先生はキーボードを打ち込みながら心配そうにこちらを見ている。織斑先生も鉛筆でノートに書き物をしていたが、やはり気になるのか時々顔を上げた。

 凰さんの実績を考慮すれば代表を務めてもおかしくない。問題は一度は二組の総意としてしのぎんをクラス代表に決めたにもかかわらず、後から来た凰さんがひっくり返そうとしている状況だ。もしも嫌々代表を引き受けたのなら、しのぎんが代表を辞退すれば済む。だけどしのぎんはやる気だった。

 先生は画面を指でタップしたり、キーボードを叩いたりして調べ物をしている。何度かしのぎんを一瞥(いちべつ)して、怒りで顔を真っ赤にしたまま眼力に衰えがない様を確認した。数回クリック音がして、先生は液晶画面を全員に見やすい位置に動かした。

 大人らしい落ち着いた声音で優しく言った。

 

喧嘩(けんか)するなら場所を借りようか。いつがいい?」

 

 液晶画面にはアリーナ使用申請書や訓練機使用申請書の様式が表示されていた。マクロを使って定型文を一括挿入した先生は、顔をこちらに向けて答えを待った。

 

「来週がいいです」

 

 わかった、と言って何度か小気味よいクリック音を響かせる。

 

「来週金曜の放課後に第一アリーナを貸し切るわね」

「……お願いします」

 

 しのぎんが神妙に答えた。先生は入力を終えた申請書の内容チェックをすると、プリンターの場所まで行って二枚の用紙を持ち帰った。織斑先生に声をかけ、確認者欄への捺印(なついん)を求めた。そのまま教頭先生の元へ行って用紙を提出した。戻って来るなり先生はしのぎんに言った。

 

小柄(こづか)さん。約束して」

 

 先生があまりに真剣な表情なのでしのぎんはおろか、私まで背筋を正していた。

 

「生身でのステゴロタイマンは禁止」

 

 突然耳にした時代がかった言葉にびっくりしてしまった。留学生には酷な専門用語だった。とっさに横を向いて(ケイ)を見たらさすがにわからなかったらしく首をひねっていた。一対一の素手喧嘩という意味だとぼそっとした口調で教えてあげた。

 

「えーちゃん物知りだね」

 

 (ケイ)が目を輝かせてしきりに感心するものだから、私は気をよくしてふんぞり返った。

 

「もとよりそのつもりです。でも、何で?」

 

 しのぎんが先生に理由を聞いた。先生は椅子に腰掛けると、キーボードをたたいて学園規則とパンフレットの一部と思しき画面を表示させた。

 

「IS搭乗者なら試合で決着をつけましょう、というのがこの学園のルールです」

 

 先生はそう前置きしてから続けた。

 

「これは過去の事例ですが……」

 

 先生の話をまとめるとこうだ。過去に酒席の口論が元でISを部分展開したあげく傷害事件に発展したことがあり、その人は特権剥奪とIS委員会から除名処分を受け、選手生命を絶たれたという。ISで生身の人間を殴るとはつまり鈍器で殴ると変わらない。相手を死に至らしめる危険性が大となるため、決して無分別な行動を起こさないよう口酸っぱく注意を受けた。

 私がぞっとした様子で話を聞いていると、聞き耳を立てていた先生方がしきりにうなづく様子が目に入った。。

 

「重要ですよ」

 

 と山田先生が身を乗り出し、目前に大きなバストを見せつけながら強調した。つい下衆な考えが思い浮かび、子犬ちゃんとどちらが大きいのかと邪推していた。

 しのぎんが返事をしたので、先生は液晶画面を脇に寄せて机の上に山積みになっていたノートの整理を始めた。

 ようやく緊張から解放されたせいか、椅子に全身を預け片足で地面を蹴って左右に回転させて遊んでいると、織斑先生が顔を上げた。

 

「スタンフォード」

 

 (ケイ)の名字の一つだった。三重国籍のせいで長ったらしく、何が書いてあるのかわからないフルネームを持っていた彼女だけれど、なぜか「(ケイ)」を好んで使うように言っていた。

 (ケイ)は珍しく名字でよばれたためか、きょとんとして織斑先生の顔を見つめた。

 

「やだなー。織斑せんせー。そっちの名で呼ばれると、かしこまっちゃうって言うか。切り替えが難しいんですよー」

 

 いつもの舌足らずな口調で取り繕うように慌ててしゃべった。

 織斑先生は(ケイ)が口を閉じるのを待っていた。

 

「選考の方はどうなっている」

「ぼちぼちでーす。カテリーナが復帰の意志を固めてるので、もしかしたらご破算になるかもです」

 

 カテリーナとはアイルランド代表のカテリーナ・マッキンリーのことだろうか。現在は交通事故で重傷を負って入院していたはずだった。

 

「だが、あいつの脚はもう……」

 

 織斑先生がぼそっと漏らしたように、マッキンリー選手は二度と()()()()()()()()()と報道されていた。私ははっとした。選考とは代表候補生の選考のことではないだろうか。(ケイ)はよく本国のIS委員会と話をしていたし、国費留学と言っていた。ISが好きなだけならパトリシア先輩みたいに政府の支援が受けられず私費留学を選ぶ生徒がいたけれど、先輩の場合は適性がそれほど高くない。(ケイ)は実技も座学も私より優秀だった。楽々とISの操縦をする姿に、セシリア嬢は「(ケイ)なら当然ですわ」とコメントしていた。しかし(ケイ)自身は一切立場について公表することを控えていた。

 

「ISを使えば歩いたり走ったりできまーす。試合する分には関係ないです」

「……わかった。進展無しだな」

「そーでーす」

 

 (ケイ)の正体に私の疑問は募るばかりだった。これ以上考えても仕方なかったので、

 

「あ、そうだ。山田先生」

 

 と声をかけると「なんでしょう」と答えが返ってきた。以前交わした雑談の続きでもしようかと思って口を開いた。

 

「以前、本を貸してくれるようなことを言ってましたよね……」

 

 

 二組に転校生が来た。

 月曜の一限目が終わってからずっと、凰さんの話題で持ちきりだった。

 四月の中途半端な時期に転入した留学生ということで話題性は十分にあった。しかも中国の代表候補生でかつ、専用機持ちとくれば話題に敏感なクラスメイトが食いつくのも当然と言えた。

 

「えーちゃん。話題の転校生、見てきたよー」

 

 相川が楽しそうに絡んできた。今頃二組の教室前は転校生の姿を一目見ようと人だかりができていた。どうやら相川は授業が終わってすぐ隣の教室に行き、凰さんの姿を拝んできたらしい。

 私は初対面でないせいか露骨に興味津々とまではいかなかったけれど、少しは気にしていたこともあって相川に向かって相づちを打ち返した。

 

「どうだった?」

 

 すると相川が目を輝かせながら声を上げ、

 

「可愛い! でも気が強そう……」

 

 と声を大にして堂々とする凰さんの姿を思い浮かべたのか、不安そうに声が尻すぼみになっていた。金曜に印象的な出会いを果たさなければ、今頃相川と同じように無邪気にはしゃげたのに、と痛切に感じていた。SHRの最中に口論と思しき声が聞こえてきたから戦々恐々としていた。

 相川は目と鼻の先の位置に顔を近づけ、つばを飛ばしながら言った。

 

「でもさ、なんか二組の様子がおかしかったんだよね」

 

 そう。凰さんを紹介したSHRの直後から隣の教室の雰囲気が変わったことに相川は気づいていた。私は彼女がどんな印象を抱いたのか聞きたいと思った。

 私はしのぎんたちの様子から得た印象を伝えた。

 

「二組って言ったら仲が良いぐらいが取り柄だったのに、どうしちゃったの」

「先週まではえーちゃんが言ったとおりなんだけど、今はぎすぎすしてるって言うか。前にセシリアが織斑くんに喧嘩をふっかけたじゃない。あのときに近いかな。いや……もっと険悪かも」

 

 相川の意見は予想通りというか、凰さんの主張はクラスを割ったらしく、しのぎんみたいな熱血が嫌いな人や学校行事に無関心な子、積極的になれない子、立場をはっきりさせない子がよりメリットが大きい凰さんに交代した方がよい、と判断したのではないだろうか。クラス行事はやりたい人がやればいい、面倒なことは他人に押しつけよう、という気持ちが働いていると思う。うちのクラスなど織斑を推薦した理由が単に物珍しいというだけだ。

 

「原因はクラス代表の件かな」

 

 うっかり二組の内部事情を口にしていた。私ははっとして、慌てて口をつぐんで相川を注視したけれど、

 

「耳が早いね。さすが」

 

 と勝手に勘違いをしたので助かった。SHR前の段階では、みんな二組に転校生が来ることまでしか知らなかった。私が二組分裂の原因を知るのは時間的に不可能だった。事情を正直に話してもよかったのだけれど、しのぎんたちの問題を面白おかしくからかう気分にはなれなかった。

 

「ま、まあね」

 

 いつも通りの虚勢を張ってたものの、内心は焦っていた。もっと(ケイ)みたいにうまく立ち回らなければと思った。

 

「二組の代表って小柄(こづか)で決まってるんでしょ。今のままなら織斑くんでも勝ち目あるのに……」

 

 相川が私にも見えるように携帯端末を傾けながらある記事を開いた。新聞部主催の新人戦、つまり一年クラス対抗戦について記事にしたもので、各クラスの代表の顔写真と簡単なプロフィールや使用IS、試合予想が載っていた。執筆者欄に薫子さんの名前が載っていなかったものの、実に(から)いことが書かれていた。優勝候補は三組と四組、一組と二組で最下位争いか織斑が今年のダークホースになることを期待、という内容だった。ちなみに去年は一組が全勝優勝していた。会長が代表で補欠としてウェルキン先輩を擁したという勝たない方がおかしい布陣だった。

 

「転校生の子って専用機持ちだもんね。もしその子に代表交代ってなったら……うちのクラスって結構まずいよね」

「間違いなく勝利の可能性が遠のくだろうね」

 

 相川が携帯端末に指を滑らせながら発言したので、私は下馬評通りに答えた。セシリア嬢が代表になっていたとしても、優勝は危ういのではないだろうか。ブルー・ティアーズの戦術分析を行って、クラス対抗戦までに準備を整えて挑んでくるものと容易に想像することができた。

 まして織斑の白式は近接戦闘特化という上級者でも扱いに困る仕様だった。セシリア嬢のように、離れたところからシールドエネルギーを削る戦術を採用するクラスが必ず出てくるに違いない。

 相川は携帯端末を一度ポケットに突っ込んで情けない声をあげた。

 

「ああ。半年間デザートフリーパスが遠のいていく……」

「今の下馬評だと四組が圧倒的優位だからね」

 

 私は追い打ちをかけるようなことを言った。事実とはいえ言葉にしてみると世知辛かった。ISの強さを決める要素の一つに搭乗時間があって、これは航空機パイロットの飛行時間と同じくISパイロットの熟練度を測る物差しとして用いられている。代表候補生ならば最低でも三〇〇時間は超えると聞いていた。

 

「三組の代表ってブラジルからの留学生だったよね」

 

 相川は再びポケットをまさぐって携帯端末を取り出すと、下馬評のページに指を滑らせ、記事の内容を読み上げた。

 

「ブラジル連邦共和国代表候補生。ブラジル軍正式採用のラファール・リヴァイヴを使用する」

「リヴァイヴの試合を見れるのはいいんだけどね……。織斑だとつらいかも」

 

 私がため息をつくと、相川もつられて息を吐いた。

 

「しかも四組は……更識(さらしき)(かんざし)なんだよね……」

「強いんだって。セシリアさんが言ってた」

「生徒会長の妹はさすがだよね。ホント、篠ノ之さんはよい子を捕まえたよね……」

 

 そのネタをまだ引っ張るのか。相川は頭に手を置いて小さく舌を出しておどけた表情をしていた。わざとなのは間違いなかった。

 

「この前、えーちゃんに教えたもらった映像見たよ。更識さん、ISに乗った時の性格で篠ノ之さんを攻めないのかな……気になる」

「その百合(ゆり)の花は造花ですよ」

「えーちゃんったらつれない。そこは乗らないと」

 

 高らかな声をあげて笑う相川に釘を刺すと、彼女は隣に移動して肩に手を回してきた。女の子らしい柔らかな感触に感動し、やはり岩崎とは違うとしみじみ思った。

 相川が思い出したように顔を向けた。

 

「そういえばさ、これ知ってる?」

「これって?」

「本音情報なんだけど、クラス対抗戦の最下位クラスには罰ゲームが課されるらしいよ」

 

 その情報は初耳だった。布仏さんが生徒会室に出入りしているのは周知の事実で、先日本人から生徒会書記を拝命されたと聞かされて驚いた。やることなすことゆっくりな彼女に書記がつとまるのかと思いきや、巨乳眼鏡の足を引っ張るので姉自ら厳しく接していると愚図っていた。布仏さん(いわ)く「いると仕事が遅れる」だとか。ちなみに巨乳眼鏡もとい、布仏先輩は超がつく有能でいつ仕事をしているのかわからないそうだ。姉妹でも全然違うのだ、とそのときは納得して聞いていた。

 

「罰ゲームって……眼前に(えさ)をぶら下げるだけじゃなかったのか」

「毎年勝負を投げるクラスが出るから、ケツに火をつけるのが目的なんだって。去年だと一組が強すぎて三組が勝負を投げたらしいよ」

 

 三組と言えば井村先輩のクラスではないか。あの人なら当時の状況を嫌々教えてくれそうな気がした。

 

「クラス代表がロシアの国家代表で、補欠が接近戦無双(ウェルキン先輩)とか誰も相手にしたくないから。絶望したくなるのわかる……」

 

 相川もセシリア嬢からウェルキン先輩の話を聞いているので、苦笑しながら相づちを打ったにすぎなかった。

 

「布仏さんから罰ゲームの内容って何か聞いてる?」

 

 相川は首を振った。

 

「罰ゲームがあるって情報以外は聞き出せなかったなあ。お姉さんがどうしても教えてくれないんだって」

 

 相川の言うとおり危機感を持たせることが目的だとすれば、得体の知れない罰ゲームのうわさを流して実はデブリーフィングでした、というオチを疑った。巨乳眼鏡が妹に機密を口外するようなまねはしないと考えられるので、布仏さん経由だとこれ以上探りようがないと感じた。断定するのは井村先輩の話を聞いてみてからでも遅くはないだろう。

 相川は神に祈るように手を組んだ。私の肩に置いた手を強引に引き寄せたものだから、喉に腕の内側が密着し、その状態から腕が親指側に九〇度回転したことにより気管が圧迫されて急に苦しくなった。

 

「どうか神様。二組の代表は小柄のままにしてください……」

 

 晴れ空のため、見えないはずのお星様に向かって凰さんの落選を祈った。

 

「ちょ……(のど)に腕が……やめっ……ひねらないで」

 

 私は腕を振り解こうと数秒間の抵抗を試みたけれど、(かな)わないと知るや必死に彼女の二の腕を何度もタップしてギブアップを主張していた。

 

 

「あちゃー。真ん中しか空いてないや」

 

 私は昼食が乗ったトレーを持って食堂を見回していた。最も混雑する時間帯だから仕方ないとはいえ、窓際や通路側のテーブル席がすべて埋まっていた。普段なら誰か一人が場所を確保するのだけれど、今日に限って全員が人気の定食メニューを選択してしまい、長蛇の列にはまって動けなくなってしまった。

 (ケイ)も背伸びしていたが、奥の席まできれいに埋まっている。真ん中のテーブル席が空いていて、ちょうどしのぎんの背中が見えた。二人で十人掛けのテーブルを占拠している。どういうわけか相席をする人がいない。そこで私はセシリア嬢に相席しようと提案した。

 

「今回は仕方ないですわね」

 

 同意が得られたので(ケイ)に声をかけ、しのぎんたちの席に向かった。

 

「すいませーん。相席してもかまいませんか?」

 

 しのぎんの正面に座った凰さんが二つ返事で承諾したので、私たちはしのぎんたちの対岸を陣取った。子犬ちゃんの隣に座って横を向くと、しのぎんと凰さんが仏頂面でチャーハンを食すところだった。

 そしてやや遅れて座った(ケイ)とセシリア嬢を見つめて、

 

「ちょうど良く空いててよかったね」

 

 と笑顔で告げた。

 セシリア嬢と言えば凰さんに流し目を送ってすぐに(ケイ)を見るなり、彼女らにしては胡乱(うろん)な英語で言葉を交わしていた。何を言っているのか聞き取れなかったので、私は子犬ちゃんと顔を見合わせてから首をかしげた。

 

「何を話してるんだろうね」

 

 私のつぶやきに子犬ちゃんは困惑したような視線を投げ返すだけだった。

 時々この二人はあまり他人に聞かせたくない話をするときはクイーンズイングリッシュ以外の方言を使うので、置いてけぼりを食らうことがあった。今回もその通りだったけれど、(ケイ)とセシリア嬢の視線が時々テーブルの対岸に向けられるので、二組のことを話しあっていると推測まではできた。

 

「えーちゃんごめんね」

 

 話が終わったのか(ケイ)が断りを入れてきた。私は食事の前で手を合わせながら答えた。

 

「いつものことだし気にしてない」

 

 私だって実家に電話するときは故郷(くに)の言葉を使う。(ケイ)からは「日本語?」と聞かれたので「地元の言葉」と答えを返したことがあるのでお互いさまだと思っていた。

 隣で子犬ちゃんが「いただきます」と小声で言うものだから、セシリア嬢はうれしそうに同じことを言って食事に箸をつけた。セシリア嬢を見ていると子犬ちゃんを猫かわいがりしているので、そっちの気があるんじゃないかとみんなで疑っている。子犬ちゃんは一部の者から魔性の女と呼ばれていて、私としては彼女を岩崎や生徒会長の前にけしかけてみたいという下衆めいた欲望がわき起こる時があった。あの生徒会長や巨乳眼鏡が理性を破壊される様子を観察して記録に収めてみたいのだけれど、実行に移す勇気はなかった。

 ポタージュスープがついていたので口をつけると、思わず舌鼓を打った。

 

「うわっ、これおいしい」

 

 子犬ちゃんも同感なのか何度も首を縦に振っている。四〇〇円定食とは思えない味だった。

 私の声につられてセシリア嬢や(ケイ)もスープを口にするなり、一度動きを止めから同じような反応を見せた。

 セシリア嬢が頬を緩ませ目を丸くして絶賛している。

 

「まあ……! チェルシーが作るよりもおいしいですわ」

 

 チェルシーとはセシリア嬢の友人だろうか。

 先ほど先輩が単体提供の可否を聞くのを耳にしたけれど、定食用の限定メニューで別途提供の予定はないという。

 値段が安いだけ合って量が少ないのだけれど、それ以上においしかったのでみんな満足していた。一段落ついたところで対岸に視線を向けると、しのぎんと凰さんが同時に杏仁豆腐を食べ終わってレンゲを置いていた。

 二人は食事中互いに目を合わせることなく、互いの剣呑(けんのん)な空気をぶつけ合っていた。そのため誰も近づくことができず、他の生徒は多少不便を感じても奥の狭い席を選ぶほどだった。

 一年二組に転校生が来たのは周知の事実で、代表候補生ということも他国の留学生経由で瞬く間に情報が知れ渡っていた。

 私は小声でセシリア嬢に話しかけた。

 

「雰囲気悪いね」

「二人は渦中の人ですもの。当然でしょう。さて、どうなるかしら」

 

 セシリア嬢は私に視線を向けることなく、口元をにこやかに曲げ、目を細めてしのぎんたちの様子をうかがっている。悪趣味だけれど他人の不幸は蜜の味だろう。よくよく周囲を見渡してみれば、多くの生徒が二人がどのようなやりとりを交わすのか期待して聞き耳を立てていた。

 特に二組以外の生徒の立場ならば、クラス代表がしのぎんか凰さんになるかで対応が変わってくるので興味津々といったところか。もし凰さんに交代した場合は二組も優勝候補の一角をなし、一組が台風の目になるか、と新聞部主催のトトカルチョのレートに変動が発生するのだ。すでに食券やデザート券を抵当にして賭に参加する者が出ており、彼女らとしては喫緊(きっきん)の課題だった。

 最初に口火を切ったのは凰さんだった。

 

「あたしの後をつけて何がしたいの」

 

 予想通り剣呑な声音だった。鋭く研いだ言葉の(やいば)がしのぎんに降り注いだ。

 

「話をするためだ」

 

 先生からステゴロ禁止が申し渡されているためか、しのぎんは冷静さを失っていない。

 

「話すことはないわ。アンタがおとなしく代表を譲れば済む話よ」

「譲る気はない」

「アンタじゃ勝てないわよ」

 

 目を伏せ、お茶を飲みながら素っ気なく告げた。

 

「クラスのことを考えてみなさいよ。あたしが代表になった方が勝率が上がる。あたしは代表になって満足。優勝すればアンタも学食の半年間デザートフリーパスが手に入って満足。最高じゃない」

 

 事実に基づいた予測を淡々と述べた。半年間デザートフリーパスを入手することを目的とするならば、しのぎんが代表辞退を申し出た方が目的達成の可能性が大幅に高まる。逆に今のまましのぎんが参加した場合、優勝どころか最下位争いをしかねなかった。私としてはしのぎんの成長速度にもしや、と期待をかけているのだけれど、現実はそれほど甘くない。

 

「素人の一組はともかく、三組と四組は代表候補生。専用機持ちではないとはいえ、実力はそれ相応なのよ」

 

 四組の代表は更識さん、三組の代表であるマリア・サイトウは日系ブラジル人だった。凰さんが警戒するような口ぶりだったので、こっそりセシリア嬢に視線を移すと同意を示すように軽くうなずいていた。

 

「四組はまだ専用機が完成していないだけだ」

「更識ね」

 

 凰さんがお茶で軽く唇をしめらせた。

 

「あたしが警戒しているのはあの猫かぶりよ」

 

 猫かぶりとは言い得て妙だった。試合映像を見たときは私ですら別人に思えたぐらいだ。試合する姿を見てからISから降りた更識さんと接すればそのように感じるのかもしれない。彼女は半年前の親善試合で中国の代表と弾幕戦を繰り広げた末、結果的に敗北したとはいえ一度は代表に土をつけていた。凰さんもその試合を見ていたはずだった。

 

「それに相手がサイトウなら、大きなミスさえしなければ勝てるわ」

 

 凰さんが言うとおり、マリア・サイトウは更識さんよりも格下と見られていた。若手選手会の戦績から見て明らかだし、何度か更識さんと対戦してストレート負けを喫していた。武器展開速度や反応速度は決して劣っているとは思えなかったが、三次元機動時での次手の読み合いで負けていた。

 しのぎんは鋭い視線を保ったまま、口元だけにこやかな笑みを浮かべた。

 

「すごい自信だな」

「あたし、強いよ」

「知ってる」

 

 凰さんが自信ありげに鼻を鳴らしたけれど、しのぎんは動揺することなく静かな声で事実を認めていた。

 

「土日に親善試合の記録を見た」

 

 そう言ってお茶を飲み干す。すると凰さんの瞳が艶やかさを増した。

 

「熱心ね。でもその情報、古いから」

 

 ふっと軽く笑みを漏らす。ツインテールが軽く左右に揺れた。

 

「動きの癖とか参考になったし、凰の性格も少し分かった。古かろうが何も得られないことはない」

 

 今のところ穏やかな口調のままだった。しかし私はこの緊張がいつ決壊するのかと思い、はらはらとした気分だった。

 しのぎんの取り澄ました態度が気にくわなかったのか、凰さんはとびっきりの笑顔を向けた。

 

「今すぐ殴りかかってきてもいいけど?」

「それじゃあ意味がないんだ」

 

 しのぎんは誘いに乗らなかった。まっすぐな視線を正面に向け淡々とした様子だが、それでいて眼光は鋭い。

 

「私はISで白黒はっきりさせたい」

 

 凰さんは目が笑ったままため息をついた。

 

「残念ね。立ち上がる気力も起こらないほど徹底的にたたきのめしてあげたのに」

「そりゃどうも」

 

 雑談する時のようなおどけた口ぶりで凰さんの攻めをかわし、すぐにドスを利かせた重く低い声音に切り替えた。

 

「私は……粘り強いのが信条だから。簡単には膝を屈するつもりはない」

「ISに乗り始めて一月も経ってないのにすごい自信ね」

 

 凰さんはつまらなそうに言った。彼女が指摘するようにしのぎんは素人に違いなかった。しのぎんは落ち着いた真剣なまなざしを凰さんに向けた。決意表明とも取れる強い瞳だった。

 

「凰に負けたくない」

「どうして?」

 

 凰さんが真意を聞いた。私も気になって耳をすました。

 しのぎんは目を閉じて肺を空気で満たそうと大きく息を吸った。騒々しい食堂にもかかわらず、その息づかいが聞こえてくるように思えた。彼女は息を四割方吐ききったところで止め、目を開けた。

 

「世界一になりたいから。だから更識さんに挑戦して勝ちたい」

 

 その瞳は自信と確信に満ちていた。凰さんは大風呂敷を前にしばらくの間、目を見開いてびっくりしていたけれど、そのうちにツインテールを小刻みに揺らし出してお腹から笑った。

 

「ハハ! アンタそれ本気?」

「だからこそ私はIS学園(ココ)に来て凰の前に座っている」

 

 凰さんのおどけたような口ぶりに臆することなく言い切った。

 

「理想家ねアンタ」

 

 そう言って腹を押さえながら大口を開け肩を揺らして笑っていた。しばらくして息が続かなくなってきたのか、正面を向くや深呼吸をしてみせた。そして好戦的な様子で頬に笑みを浮かべ、身に押し隠していた殺気を露わにしながら口を開いた。

 

「現実の厳しさを教えてあげる」

「上等。その(はな)(ぱしら)をへし折ってやる」

 

 

 昼食後カバンの中から本屋の紙カバーをつけた本を数冊取り出すと、小脇に挟んで職員室に向かった。金曜日に山田先生から借りた本を返すためだ。

 一冊はIS理論の参考書で、山田先生が現役時代に使っていたものだからかハードカバーだった。もともとしのぎんが借りたものだけれど、彼女は土日の間に部屋にこもって読み切ってしまった。私も本を借りていたので、ついでだから一緒に返却することを申し出ていた。ちなみに私が借りた本と言えば新書サイズのノベルスである。

 職員室に入った私は一年生担当教師の机を探した。

 先生方の机はいくつかの島を形成していた。学年ごとに島が分かれ、教頭クラスと研究部門はまた別々に机が与えられていた。よく見られる島型オフィスで中学の職員室も今より規模は小さかったけれど、似たような配置だった。

 私は自席で弁当箱を片付けている山田先生の姿を見つけ、脇に抱えた本を落とさないように両手で支えながら近づいて声をかけた。

 

「山田せんせー」

 

 すると山田先生は弁当箱を足元に置いたカバンにしまって私の名を呼んだ。

 

「これ。ありがとうございました。しのぎんが借りた分もついでに返しますね」

 

 お礼を言って山田先生に本を渡した。すると驚いたような顔をしたので、私は頬をかいた。

 

「もう読み終わったんですか」

「しのぎ……じゃなくて、小柄さんが土日に全部読んだと言ってました」

「この本、三〇〇ページ以上ありますよ」

「せっかくだから私も目を通しましたけど、二日で全部はちょっと無理ですね。内容も難しかったし」

「この本だと二学期以降に習う内容が含まれていますからね……代表候補生や国家代表ならまだしも……今の時期だと一般生徒には難易度が高い内容です」

「……なるほど」

 

 そういえばしのぎんから本を受け取ったとき、彼女をはじめとした二組の気迫を感じてぞっとしたことを思い出した。時折彼女と端末片手に話しあっている生徒が彼女の部屋にこもっていて、しのぎんと一緒になって過去の試合の動画を見ながらメモを取っていた。二組の生徒がもう一人いて、第一アリーナのシミュレーションモデルを表示させながら、怒濤(どとう)のごとくキーボードをたたいていた。全員が凰さんに勝つつもりで真剣に言葉を交わしていた。一組にはない雰囲気だった。頑張っているのが印象的で、うちのクラスみたいな浮ついた感じがしなかった。

 私は自分が借りた本についての話題に切り替えた。

 

「時代小説は有名どころしか読んだことがなかったのですが、意外と面白かったです」

「でしょう。私も五郎丸(ごろうまる)さんが是非(ぜひ)に、と強く推すので半信半疑読んでみたら、びっくりしましたから」

「先生が時代小説を推すとは思っていませんでした。長束(なづか)志摩(しま)シリーズかあ。むしろ織斑先生に勧められる方がしっくりきたんですよね。剣道を(たしな)んでいるだけあって、こういうのが好きそうなイメージがあるんですよねー」

 

 私につられて山田先生もほほえみながら織斑先生を一瞥した。織斑先生は名前を引き合いに出されたせいか、顔を上げてじっとこちらを見つめていた。

 私は声の調子を落として、ささやくように続けた。

 

「この作家ってBL出身ですよね。だから私、ついつい色眼鏡で見てましたけど、認識を改めなきゃって思いましたよ」

「奇遇ですね。五郎丸さんってああいうのが好きだから、最初警戒しちゃいました」

 

 くすくすと笑う山田先生につられて、私も相好を崩していた。職員室にふさわしくない内容はこれまでと思ったので声の調子を戻した。

 

「この……騎士白(きしじろ)嘉市(かいち)って、他に本出してないんですか?」

 

 騎士白嘉市はとても狭い界隈(かいわい)において野々師(ののし)韻龍(いんりゅう)シリーズの作者として名を知られていた。姉崎の従姉(いとこ)である五郎丸が特に好き好んでいることから内容は推して知るべしだった。

 

「ゴホッゴホッ!」

 

 突然苦しそうにむせ返る声が聞こえてきたので、びっくりして声の主を見たら織斑先生だった。

 

「お、織斑先生。大丈夫ですか?」

「ああ……すまん……」

 

 山田先生は織斑先生から見て斜向かいの席に座っていたけれど、ハンカチを手渡そうと身を乗り出した。織斑先生はポケットに手を入れようとしていたが、差し出されたハンカチに気づいて申し訳なさそうな顔をしてから受け取った。ハンカチは無地に花柄のワンポイントがあしらわれていた。口にあてがい、しばらく涙目になって()き込んでいた。

 

「……もう、大丈夫だ。心配をかけたな」

「びっくりしましたよ。突然むせかえるから……」

 

 織斑先生は目元を潤ませていた。なかなか新鮮な構図だけれど、私は内心を悟られないように面白がるようなしぐさを控えた。ハンカチで目元を押さえたけれど、幸いなことに化粧崩れはなかった。織斑先生は一見化粧っ気がなさそうに思えるが、アイラインを薄く施しているのが分かった。浅学非才の身ながら鋭い顔立ちや雰囲気、言動から同姓に人気があって、異性には敬遠されるタイプに思えた。

 私は落ち着いてきた頃合いを見計らって織斑先生に話しかけた。

 

「織斑先生もこういった小説を読むんですか?」

 

 ハンカチを机の脇に置いて、取り澄ましたような表情で答えた。

 

「結構読んでいるな」

 

 山田先生が相づちを打って話に参加した。

 

「織斑先生の部屋に文庫本がたくさん積んでありましたよね。あれ、全部読まれたんですか」

「ああ。最近、気分転換がてら昔に買った剣客(けんかく)ものや捕物帖(とりものちょう)を少しずつ読み進めているんだ。そろそろ整理しないといけないんだが、なかなか気が回らなくてな」

「それ分かりますよー」

 

 私は相づちを打って、実家で誇りをかぶっている大量の漫画本のことを思い出した。それらは入学前に母親から、夏休みに帰省したら処分するように約束させられていた。

 ふと思いついたことを口にする。

 

「織斑先生も騎士白嘉市とかそう言ったのを読むんですか?」

 

 山田先生から借りた本について話していたから、その流れの延長にあるものと思ったので他意はなかった。

 すると織斑先生の目が泳いだ。一瞬、何かを言いかけて口をつぐんだ。変だ。先生らしからぬ様子だった。山田先生を一瞥したが、どうやら気づいていないらしい。そして織斑先生は当たり(さわ)りのない言葉を選んだ。

 

「ま、まあな」

「ちょっと気に入ってる場面があるんですけど……」

 

 織斑先生は正太郎コンプレックスの意味を正確に理解していたことを思いだし、ちょっとした悪戯(いたずら)を仕掛けてみようと考えた。中学に上がったら突然腐った同級生に無理矢理読まされた、あるシリーズ物の一場面についてわざと誤った内容を口にするつもりだった。もし織斑先生が訂正したのならば黒。訂正せず受け流したら白。すっとぼけたら保留とする。

 

七南酒(ななさか)(はん)出奔(しゅっぽん)の折、国境(くにざかい)で待ち伏せした田宮道場の二反地(にたんち)数馬(かずま)との死闘は……」

「数馬は韻龍と同門だ。一刀流小野道場が正しい」

「そうでした? うっかり勘違いしてましたよー」

 

 騎士白嘉市処女作「出奔」の一場面である。刃傷沙汰が原因で脱藩を図った野々師韻龍を、同門にして親友である二反地数馬が国境で待ち伏せし愛憎に満ちた死闘におよぶ、という展開だった。織斑先生は決してメジャーとは言えない、それどころかマイナーな作品に対して正解を口にした。間違いなく黒だった。少なくとも先生か、その友人が腐っているに違いない。私は衝撃の事実に頬が緩むのをこらえることができなかった。

 一方、山田先生はきょとんとしていた。借りた本にはそんな場面は存在しないからだ。織斑先生は黒い笑みを浮かべた私を見て、むっとした様子で言いとがめた。

 

「気持ち悪い笑い方をするな」

「顔に出てました? すいませんー」

 

 私はしれっとした様子で無邪気な笑顔を作り、頭を下げた。今度織斑先生が一人になったときに、さりげなく話を振ってみようと思った。意外とあっちの話に詳しそうなので期待が持てた。

 不審がる織斑先生が私に向かって追求を試みるべく口を開けた。ちょうどそのとき、二組担任の先生が疲れた顔で大きなため息を吐きながら、山田先生と相対した席に座ったので、織斑先生は口を閉じて前を向いてしまった。

 

「聞いてくださいよー」

 

 椅子の背に体を預けたかと思えば、机に肘を突いて山田先生を見つめた。

 

「うちのクラス。ちょっと大変なことになってるんですよ」

「ああ、先週の」

 

 山田先生が相づちを打った。

 

「クラス代表の件で凰さんと小柄さんが揉めたのが先週。金曜日に白黒はっきりさせようとしたら、クラスまで意見が割れてずっと険悪な空気が流れてて……私は担任だからどちらかに肩入れできなくて」

 

 先生は再び深く椅子の背にもたれかかると、両手を地面に向けて投げ出した。顔に弱気の色が見えた。

 

あの子(小柄さん)、ものすごく一生懸命で向上心があって、四組の更識さんに勝ちたいって言ってたんです。だから応援してあげたいんだけど、実力の面だと凰さんだし。凰さんは自分にも機会を与えろってアピールしてくるんですよね」

「そういうの。私にも経験ありますよ」

 

 山田先生が懐かしそうな顔で目を細めてほほえんだ。

 

「そういえば山田先生は元代表候補生でしたね」

 

 先生の言葉に山田先生がうなずいてから口を開いた。

 

「一生懸命なんですよ。お互いに正しいと思ってるから揉める。今回は凰さんが喧嘩を売った構図だけど、遅かれ早かれ二人はぶつかってますよ」

「ですかね。はあ……気が重いなあ」

 

 先生が深くため息をついたので、すかさず山田先生が身を乗り出した。

 

「先生、元気出してください。私もできるだけ相談に乗りますから、みんなで一緒に解決していきましょう」

「……はい」

 

 自信がなさそうに返事したけれど、しばらくして覚悟を決めたのか先生の瞳に輝きが戻った。

 

 

 




【補足】
三組の代表候補生について
(原作1巻P.170より)一年の代表候補生は四名。一夏をのぞいて専用機持ちは二人という記述があります。専用機持ちがセシリア、簪だとすれば、名前が出てこない代表候補生が二名存在することになります。本作では、二名のうち一名を三組に割り当てました。

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