まず先に言っておきますが、今回も賛否分かれるかもな展開があるので要注意です。
追伸.ファルコムユーザーなら知ってるかもですが、閃の軌跡ミュージカル化。しかもトワ会長は野中さん自ら演じるらしいです。カップリングはリィアリ派ですが、キャラ個人はトワ会長が一番好きなので、いろんな意味で気になります。しかしシフト勤務で今四国にいるので、行けるかどうか……
紙一重でエスデスを下すことに成功したリィン一向の前にブドー大将軍とイェーガーズ、そして暗殺部隊が立ち塞がる。しかしその直後、アルセイユをはじめとした飛行艇が出現、オリビエ達が援軍を連れて駆けつけてくれた。
現在、イェーガーズも暗殺部隊も持ち直して臨戦態勢に入っているが、直後に現れたA級遊撃士や守護騎士、さらにカシウス等”理”に至った使い手の戦闘力を直感で感じ取り、動けずにいた。
「さて、まずは貴公達の目的などについて話してもらおう。ことと次第によっては、王族とはいえこの場で始末せねばならんからな」
「その点はご安心を。私達はあくまで、交渉のために来ましたから」
「先ほど我々の連れがそちらの軍の者を攻撃してしまったが、正当防衛ということで大目にみてはもらえないかな?」
そんな中、ブドーが王族相手でも凄まじい威圧感を放ちながら会話を切り出すが、クローゼもオリビエもそれに物怖じしないで返すだけの胆力はあった。
二人ともかつて、リベール王国で暗躍していた結社の陰謀に自ら立ち向かうなど、それなりに死地を潜り抜けてきたのだから、当然だろう。
「まあ、状況的にも仕方ないものか。一国の皇子と女王自らこの場に臨んだということで大目に見ておこう。そして、交渉の話もまず言うだけ言ってみろ」
ブドーもそんな二人の様子に興味を持ったのか、話だけはまず聞いてみることに決めたのだった。たが、すぐに念を押すようにこう伝えてくる。
「ただし、それを承諾するかどうかは別だがな」
「まあ、それもそうですね。しかし、政治的な話をしようと思っているので、皇帝陛下及びに陛下に政治の実権を任せられたオネスト大臣に会わせていただきたいのですが」
「国にとっても、あなた方個人にとっても、利益になり得る話だ。聞くだけ損はないと思うのだが……」
しかしそれでも、クローゼ達は皇帝及びオネスト大臣に話すことを前提に話を進めようとする。ブドーがそれを鬱陶しそうな表情で見ていたが……
「どれ、中々に面白そうな話ですな」
直後に、ブドーの言葉を遮る男の声が聞こえたかと思いきや、太鼓腹に白髪とヒゲの大男がノスノスとこちらに歩いてくる姿が見えた。問題のオネスト大臣が、タルタルソースが大量にかかった魚のフライを頬張りながらこちらにやって来たのだ。
「オネスト……まさか貴様が城門前とはいえ、宮殿から出てくるとはな」
「ええ、自分でも驚いています。しかし、外の様子が面白そうだったのでつい来てしまいました。エスデス将軍が負傷しているようですが、貴方とイェーガーズ、そして暗殺部隊がいますから安全でもありますしね」
ブドーに返事を返しながらオネストはフライを食べつくし、指に付いた油とタルタルソースを舐める。自国の皇帝が発言中でも食事を取る不敬の男だ。今更、他国の王族を前にしてもやることは変わらないらしい。しかしそんな中でも、今自分が危険かどうかを判断できるだけの洞察力はあるようだ。地位的にも優位に立っているオネストだが、油断している様子がないのは武術経験者なので不測の事態も想定しやすいのだろう。
しかし、そんな様子にクローゼもオリビエも嫌な顔一つせず、まずは自己紹介に入る。
「貴方がオネスト大臣ですね。私はリベール王国の女王クローディア・フォン・アウステーゼ、以後お見知りおき」
「エレボニア帝国が第一皇子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールだ。できれば、そちらと仲良くしたいものだね」
「ここ以外に帝国を名乗る国があるとはね……しかし片方は女王ですが、もう片方は皇子とな?」
「もともと、私は庶子の出で皇位継承権に縁遠くてね。今は自分で放棄して、父である現皇帝や正妻の実子で皇太子の弟をサポートさせてもらっている。肝心の弟はまだ学生なので、代理としてこさせてもらった次第だ」
「あらあら、それは謙虚ですね。そしてわざわざ、ご苦労様です」
しかしそのまま談笑に入るオネストとオリビエ。オネストに関してはご機嫌取りも兼ねているのだろうが。
「大臣様も大将軍も、こんな奴らの話なんて聞くだけ無駄です! あんな巨大な物を見せつけてくるなんて、どうせそいつらも異民族共同様、帝国を侵略する悪に決まっています!! 」
その一方で、立ち上がったセリューが声を荒げながらそう進言する。偏った、決めつけたものの見方しかできない愚物のソレを見せつけていることに本人は気付かず、ブドーもオネストも無視している。
そして談笑を打ち切って少し考え、オネストは答えを出した。
「……まあ、ここまで派手なことをされたからかして、私も興が乗っています。その話に乗るかは別ですが、話をだけなら聞くだけなら大丈夫でしょう」
「その判断、感謝いたします」
「ただし、私がそのことを陛下に話すかも別ですので、あしからず」
オネストの返答に対して礼を言うクローゼだが、当のオネストは本気で話を聞くだけというオーラを醸し出していて、交渉に乗る気は微塵みもなさそうだ。しかしだからと言って諦めるという選択は、クローゼもオリビエもとらない。
そして、そんな中でクローゼはついに目的について語り始めた。
「率直に言います。この帝国と、私たちの住むゼムリア大陸の国家連合で同盟を結びたいのです」
そのクローゼの言葉にオネストはおろか、ブドーやイェーガーズの面々まで目を丸くする。唐突に現れて、正当防衛とはいえ攻撃してきた方が言い出したのだ。当然だろう。しかしそれに構わず、オリビエも交えて話を続けた。
「まず、我々の国とこの国、技術や生活の水準を見ると圧倒的な差があると見た」
「まあ、あなた達はあんな巨大な空飛ぶ船に乗ってここまで来たみたいですからね」
「しかし、帝具というロストテクノロジーがあることもあってか、武器に関する技術はそれなりに高い。超級危険種なる凶悪な生命体への対処、その素材や超高度のレアメタルの加工技術、我々としてもほしいところだね」
「そこで、お互いに技術提供をできないかと思いついた次第です」
確かに帝国は移動手段に馬車や乗馬、調教した飛行危険種といったものを用い、遠方への通信手段も伝書鳩の類を用いている。にも拘らず戦闘面では、Dr.スタイリッシュの作品を筆頭に武器として機関銃やミサイルなどの機械兵器が用いられている。明らかに技術に偏りが生じていた。報告でこれらを知ったクローゼやオリビエは、ここに同盟に付け入る隙があるとにらんだのだった。
「私たちがこの国に干渉したそもそもの理由、一年前に帝具使いによるものと思われる犯罪が起こり、その犯人の手がかりを追ったことがきっかけですね」
「だからその犯人を調べるためにも、この国とは友好的にしたいわけなんだ。それに、まだ幼い皇帝陛下に味方は多い方がいいとも思った次第さ」
「ほう、それはそれは……でもご存知かもしれませんが、今この国は反乱軍、向こうは生意気にも革命軍を名乗っている反帝国勢力と戦争中です。まずはそれを終わらせなければいけませんねぇ」
オネストも最初は感心するそぶりを見せるも、すぐに革命軍との戦争状態であることを引き合いにして拒む様子である。
「ええ。ですから、まずはそれを終わらせようと思いますね」
「勿論、やり方は我々のやり方で行かせてもらうがね」
しかし間髪入れずに二人はそう返す。そしてそのまま続けた。
「いろいろと不安要素はありますが、政治や思想、宗教など多方面のスペシャリストも用意できています。三か月以内に解決させてもらいます」
「ほぅ、えらい自信ですね。しかし、彼らはよっぽど私や陛下のやり方が気に入らないのか、激しい憎悪を抱いています。それが平和的なやり方を受け入れてくれるでしょうかね?」
「まあ、我々も理想こそ語るが、綺麗ごとだけで世の中やってはいけない、清濁併せ呑む必要もある。王族皇族に生まれた身としては、それはわかっている。でも、仮に戦うことになっても勝つための用意はできているがね」
オリビエがそう言うと、ある人物が前に出てくる。
「今の内に言っておくが、俺たちは帝具に匹敵する、もしくは凌駕する力を有している。今から、それを見せておこうか」
そう言い、前に出てきたのは何とリィンだった。そして彼に続いて、エステルとロイドも出てくる。そしてその力を呼び出す準備に入る。
「「「来い……」」」
目を瞑り、利き手で握りこぶしを作って胸の前にやるリィン達。そして、目を開くと同時に拳を開いて天に掲げ、叫んだ。
「灰の騎神、ヴァリマール!」
「琥珀の騎神、ドルギウス!」
「
順にリィン、エステル、ロイドが叫んだその名、それに反応したのは、各飛行艇のドック内にあるものだった。
『『『応』』』
そしてそれらはまばゆい光に包まれて姿を消したかと思うと、リィン達の背後に姿を現した。
「な、何だこれは……!?」
「巨大な騎士? あのドラギオンとかいう兵器みたいなものか?」
エスデスの言う通り、それは騎士を模した全長八、九アージュ程の人形だった。これこそがエレボニア帝国の内戦で用いられた人型兵器、機甲兵の原型となった存在『騎神』だ。
エレボニア帝国には古来より、大きな動乱が起こると巨大な騎士が現れて戦いを平定するという言い伝えがあり、騎神こそがその正体である。かつて帝国で権力争いが元で勃発した獅子戦役でも戦いの裏で用いられ、リィンが搭乗するヴァリマールもドライケルス大帝が乗機としていた。タツミがヴィータに連れらてたあの遺跡にも、クロウが生前に愛機とした騎神が安置されている。このような遺跡がエレボニア帝国の各地にあり、そこで試練を乗り越えた者に、騎神の操縦者である
一見すると人形兵器のような古代ゼムリア文明の物と思われがちだが、それ以降にエイドス信仰が興るまで続いたという暗黒時代に造られたという。
ヴィータ曰く、この強大な力を有する騎神を見守り導く事こそが、かつて地精と協力関係にあった
「これが俺たちの切り札、騎神だ」
「言ってみれば、人が中に乗って動かす、巨大な兵器人形ってところね」
「そしてゼムリア大陸には、これをもとに量産可能な兵器人形を大量に有しているし、他にも帝具のように使用者を選ばない兵器も多い。下手に戦いを挑んでも返り討ちにあうと思ってくれて構わない」
そう言うと、リィンたちの体がまばゆい光に包まれ、騎神の中に吸い込まれた。リィンは中央に立つ灰色の騎神ヴァリマール、エステルはその右隣の琥珀色の騎神ドルギウス、ロイドは左隣の翠色の騎神ウィルザードだ。
『これなら、革命軍や超級危険種が相手でも十分対抗可能だろう。平和的解決が難しいと判断したら、これで武力行使に出るつもりだ』
『まあでも、私たちは絶対に平和的解決で乗り越えるから、その様子を指をくわえてみていなさい』
『エスデスさん。俺はあなたのやり方を認めないから、俺のやり方でそれを否定させてもらいます』
それぞれの騎神からリィン達の声が聞こえ、それと同時に背部からジェット噴射で空に飛びあがっていく。
「まあそういうわけだから、僕たちに革命……反乱軍の方がいいか。まあともかく、彼ら敵対勢力への対処は任せてくれたまえ」
「それでは、次は前もって準備してからの会談をしたいので、さっそく事に入らせてもらいます」
「それと、勝手ながらリィンさんも連れ帰らせていただきますわ。私たちの国でも、重要人物なので」
その直後、クローゼ達がアルフィンも交えて会話を締める。そしてティータ達の乗る機械兵器”オーバルギア・シリーズ”もジェット噴射でそれについて飛んでいく。
「……そこの面子、全員が戦士として上玉な素材のようだな」
「いずれ、世に名を轟かせる使い手になれるだろうことを願っておこう」
「勝手にそなたらの国に入り込み、失礼した。今の評価は、その手間賃代わりと思ってもらいたい」
最後にカシウス等がイェーガーズや暗殺部隊の面々の実力の評価を伝えたかと思うと、飛行艇から垂らされたワイヤーに残りのメンバー共々捕まって、そのまま飛び去って行った。
「な、何だったんだ今の?」
「外部勢力からこの帝国への干渉……しかもここまで大胆に宣言するとは」
ウェイブやボルスがキョトンとする中、ランは冷静に状況を分析する。やはり文官志望だけあって、頭の回転はこの中で一番早いようだ。
「忌々しい……悪の分際で反乱軍を平和的に抑えるだと? 奴らは帝国の正義にあだ名す悪なんだ、殺し尽くさないといけないのに」
「でも、なんか私たちのこと純粋に評価してくれてたみたいだね」
「クロメちゃん、真に受けたらだめです。ああやって、油断させて次会ったときに不意打ちでもするんじゃ……」
その一方で、セリューは彼らの介入を快くは受け入れていない様子だ。それどころか一方的に憎悪すらしている。しかしクロメはいくらか心を許していたようだ。
「まあでも、任務なら玉砕覚悟でも斬りに行くけどね」
しかし、私情は挟まないという暗殺者の冷酷な思想は覆らないらしい。
「……まあいずれにせよ、国というものがある以上は戦はいくらでも起きる。反乱軍の兼が本当に平和的解決になろうと、新しい戦が起きれば私はいいがな」
「エスデス将軍、そんなことを堂々と他者の前で公言するな。私はどう転ぼうと、帝国の安寧に繋がれば構わん。それに、我が身はこの国を守るためだけにあるのだから、することは変わらんしな」
「さて。それじゃあ、私たちは宮殿に戻りますかね」
エスデスとブドーの意見が出た直後、オネストが一同を先導する形で宮殿に戻っていく。そんな中、あることを考えていた。
(まあ、私も彼らの話を受け入れる気は元々ないですからね。陛下に嘘八百を語って、至高の帝具を使わせてもらいましょう。そしてあわよくば、例のゼムリア大陸とやらも隷属させてもらいましょうかね)
初めからオネストは一同の提案を聞かないどころか、噂の至高の帝具を使って殲滅する気のようだ。どこまでも貪欲で、暴虐的な思想。まさにこの世の悪を体現すべく生まれたような男であった。
しかしオネストが私室に戻った直後、何人かの人物がそこを訪れた。オネストの側近サイキュウと、数人の衛兵と侍従である。
「オネスト閣下、緊急事態です!」
「皇帝陛下が失踪しました!」
「へ?」
あまりに唐突な報告に、思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。しかしその報告を脳内で反芻し、理解することで彼に動揺が走った。
「ど、どどど、どういうことですかそれは!?」
「先ほど、陛下の私室に変えのシーツを届けた際にノックをしても返事が来なくて、それで開けてみたらこのような物を残して……」
「それで、オネスト様が先ほど出ておられたため、私に真っ先に報告したという次第で…」
「それに関してはいいです。それで、その置手紙というのは?」
そして見せられた手紙には、こう書かれていた。
『しばらく信頼のおける人物とともに、見聞を広めに出ていく。その間、政治の全権は任せるが、戻ってきたらすぐに返すように』
その後、この場にいる全員で皇帝不在は隠ぺいすることとなった。ただでさえ外部勢力の大胆な干渉宣言があったのだから、余計な混乱を招くので当然だろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
帝都から離れた上空、カレイジャス。リィンとエステルはそこの格納庫にそれぞれの騎神を収納する。エステルはアルセイユに戻るつもりだったが、リィンの他の仲間たちが気になってついてきたのだった。ヨシュアもそれが目に入ったので、アルセイユからカレイジャスの垂らしたワイヤーに飛び移って、こちらに合流したのだった。
「リィン君!」
カレイジャスに帰還したリィンは、ヴァリマールから降りると同時にある人物に抱き着かれる。その人物は少女と見間違えるほど小柄だが、リィンよりも年上の女性だった。
彼女の名はトワ・ハーシェル。リィン達の士勧学院在学時の生徒会長で、エレボニア帝国の内乱を共に戦った人物だった。
「トワ会長……って、もう生徒じゃないから会長じゃないですよね」
「ううん、いいの。リィン君が呼びやすいように呼んで、じゃなくって!?」
リィンとのやり取りの中、彼女は涙目で彼に思いを伝える。
「リィン君が暴走して、そのまま捕まっちゃったって聞いて……今日、ようやくこの国に来れたらそんな知らせが来て……本当に心配したんだから」
「会長……心配かけてすみません」
「リィン、心配していたのはアリサや生徒会長だけじゃないぞ」
リィンがトワに謝罪した直後、今度は男性の声で語りかけてくる人物が。そして声のした方を振り向くと、二枚目だがぶっちょ面が目立つ金髪の青年がいた。リィンの学友で四大名門の一つアルバレア公爵家の次男ユーシスだ。そしてそれ以外に、青い髪をポニーテールにまとめた女性、アルゼイド子爵の娘ラウラ。童顔にオレンジの髪の少年、第四機甲師団を率いるクレイグ中将の息子エリオット。眼鏡に黒髪の青年、帝都知事カール・レーグニッツの息子マキアス。皆、リィンと同じく特科クラス《VII組》の仲間だ。
「殿下から聞いてたが、みんな来てくれたんだな」
「当たり前だろ。旧VII組メンバー全員の任務で、しかもクラスの重心だったお前に危機が迫っていたんだからな。幸い、領地経営も軌道に乗ってきたから、この任務に参加する余裕もあった」
「私もそなたの危機に駆けつけるのは当然だと思った。それに、この国の現状はタツミ達から聞いてなんとかせねばと思ったしな」
「僕もエリオットも同じくだ。実質、君のおかげでクラスが回ったものだからな」
「いくらでも力になるから、頼ってよね」
口々にその思いを告げるVII組メンバー。そんな中、アリサがリィンに言葉をかける。
「リィン、ほら。みんなだってあなたと一緒に戦う意思はあるのよ。だから、さっき脱出する直前みたいな弱音なんて、二度と吐いちゃだめだから」
「みんな……」
アリサの、VII組メンバー全員の、ともに背負いたいという思いのこもった言葉。それは、よりリィンの心に染み入り、彼の糧となっていく。二度と折れない、鋼の心を作るための糧に。
「みんな……せっかく剣聖になったのに頼りない言葉を伝えることになるけど、みんなの力を俺に貸してくれ。代わりに俺も、みんなに力を貸す」
「何を当たり前のことを……」
「そうだぞ。我々VII組も、そうやって様々な出来事を乗り越えてきたのだからな」
「ああ。俺もカッコ悪いと思いつつ、それが一番正しいって理解できたところさ」
ユーシスとラウラが代表して意思を伝えると、リィンも返事を返しながらアリサの肩を抱いて引き寄せる。
「大事な大事な、俺の恋人のおかげでな」
「リィン、ちょ……恥ずかしいってば」
そのリィンの行動と言葉に、アリサも顔を赤くする。まあ、まんざらでもなさそうな様子だったが。
「あはは、お熱いね」
「全く……付き合いだしてから、遠慮しなくなったな」
「まあでも、余裕があるのはいいことだけどね」
エリオットとマキアスに続いてフィーの声が聞こえたと思うと、ガイウス等が合流してくるところだった。よく見ると、タツミとサヨの姿もある。二人とも一目で最初に会ったときより強いのが見て取れ、サヨもすっかり健康体になっているのが明白だった。二人にとって、ゼムリア大陸に行った経験は糧となったようだ。
「リィンさん、まだ準遊撃士ですけど強くなって戻ってきましたよ」
「まだ未熟ですが、皆さんの手伝いになるだけの力も知恵もつけたつもりです。今度は私たちが皆さんを助ける番ですよ」
「二人とも、立派になったな……頼りにさせてもらうよ」
リィンも助けた彼らの成長に嬉しくなり、そのままタツミとハイタッチを交わす。
「へぇ。リィン君、いい仲間じゃないの」
「ああ。共に学び戦った、自慢の仲間たちだ」
「タツミ達も彼らと研鑽したらしいし、みんな頼れそうだね」
エステル達のお墨付きも入り、VII組もタツミ達も絶好調なようだ。そして、皆で格納庫から離れようとした直後……
「リィン君、無事だったみたいね。マクバーンはやってくれたみたいだわ」
直後、聞き覚えのある妖美な声が響くと、魔法陣が格納庫の床に描かれ、そこからある人物が現れた。
「皆さん、ごきげんよう」
現れたのは、なんとヴィータとカンパネルラ、そしてその二人につれられる一人の少年だった。
「な……クロチルダさん?」
「カンパネルラ……君までどういうつもりでここに?」
突如として現れた結社の使徒と執行者、その姿にエステルとヨシュアが警戒を強める。主に、カンパネルラに対してだ。
「あらあら。ずいぶん嫌われているわね、カンパネルラ」
「ひどいなぁ、もう。他の執行者もそうだけど、みんな僕のこと嫌いなのかい?」
それを可笑しそうな様子で尋ねるヴィータと、おどけた様子で返すカンパネルラ。相変わらず、結社の人間は考えの読めない様子だ。
「マクバーンから聞いているとは思うけど、今回は敵対目的じゃないから安心して」
「確か、結社の計画に帝具が邪魔になるから壊す、だっけ?」
「そうそれだよ、エステル。で、後ろに控えてる子の少年は、それを楽にするためのカギになるかもなんだね」
そういうカンパネルラが、後ろに控えていた少年を前に出す。少年は緑の髪で、まだ10歳かそれより下の年齢と思われる幼い外見だった。しかし身に着けているものは高そうな服と帽子、地面に引きずるほど長いマント、そして金色の錫杖だった。明らかに高貴な家の出身である。
「そなたらか。ヴィータ殿が言っていた、ゼムリア大陸とやらを救いし英雄達は」
「えっと、この子は一体?」
「明らかに格好と言葉遣いが、一般人のそれじゃないんですけど?」
まず、エステル達が少年の素性を怪しんで質問すると、驚くべき答えが返ってきた。
「余はこの帝国を治めし、皇帝だ。ヴィータ殿の紹介でそなた等のことを聞いたが、見聞を広めるために供に行動させてもらいたい」
直後、カレイジャスに悲鳴の大合唱が響いた。
一行が落ち着きを取り戻した後、ブリッジに集まって事情を説明する。当然、アルセイユとメルカバ二隻にも連絡を入れ、スクリーン越しに話を伝える。皇帝も、艦内ので高い技術力を知り驚愕するが、落ち着いてからゆっくりと事情を説明した。
「そんなわけで、ブドーは武官が政治にかかわること自体プライドが許さないから、外敵からしか守ってくれない。だから政治面では自分しか頼れないが、余は大臣に政治面を任せきりで、世情にも疎い。そんな中、ヴィータ殿たちがそなた達のことを教えてくれた」
「なるほど……ならば、これは好都合かもしれないな」
『ですね。皇帝陛下自ら、この話に乗ってくれるのは、私達にとっても好都合ですから』
そして、クローゼとオリビエが皇帝に事情を説明する。
「なるほど。何者かはわからないが帝具使いが……帝具を作った始皇帝に代わり、謝罪しよう」
「いやいや。悪いのはその帝具を使っている連中ですよ、陛下」
『それより、同盟の兼ですがどういたしますか?』
皇帝が素直に、帝具による犯罪を謝罪した。やはり、この少年は純粋な年相応の人物なのだろう。それに高潔さや気品、カリスマ性を併せ持った立派な人物だ。それを悪用しようとするオネストに、リィン達は心の奥から怒りが沸き上がる。
「すまぬが、まだ技術や世情に疎いから受け入れていいのかわからぬ。だから、今後でいろいろ学んでからでも構わないか?」
「まあ、それよりも前に反乱軍を止める必要があるから時間はあるさ」
『三か月と大臣に話しましたし、時間もあります』
そしてクローゼ達から、話を聞いた皇帝はふと何かを思い、問い尋ねる。
「余が直々に休戦を申し出れば、彼らも答えるのではないか? 一応、余が皇帝なのだし」
「原因があの大臣だからと言って、彼らの怒りや恨みはそう簡単には消えないでしょうね」
『利用されているとはいえ、あなたにも責任があるのはあります。だから、あなたにもいくらか恨みの念が飛んでいても不思議じゃありません』
「そうか……だが、時間があるならその間に現状や様々なものを見ておこう。それが今後に繋がるんだからな」
しかしすぐに事情を理解し、今度はリィン達に向き直る。
「そういうわけだから、そなた等にも力を貸してもらいたい。おこがましいだろうが、頼めるだろうか?」
「俺たちも異存はないです、陛下。平和な世に不都合はないですから」
「ありがとう。では、よろしく頼む。オリビエ殿も、よろしく頼む」
「ええ、よろしくお願いします」
そして、皇帝とリィン、そしてオリビエは固い握手を交わした。これは歴史にかかわる、大きな一歩だろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おいおい。どうやら、ゼムリア大陸の連中が本格的にここに絡むらしいな」
帝都を離れて飛び去る飛行艇を目の当たりにしながら、うんざりした様子の一人の人物がいた。青年と呼べる年齢の男で、白髪と褐色肌、顔についた×字型の傷跡という目立つ容姿に、獣のような鋭さの中に下卑た何かを思わせる不快な物を感じる目つき。明らかに民間人のそれではない。
「だが、世界を玩具としか見ていないお前にはそんなの関係ないんじゃないか?」
「ああ、違いねぇ」
そんな青年に声をかける別の男。木陰に隠れて顔はわからないが、青年の仲間と思しき様子で声をかける。
「さて。シュラ、まずはお前の言うおもちゃとやらのある場所まで、行くんだったな」
「ああ。本当はそのあとでも遊んでいたいが、あんたの持ち込んだあの話を親父に早いとこ教えてやんねぇとな」
シュラ、リィンが牢に捕らえられている間にオネストの口から飛び出した息子の名前。この白髪の青年こそが、そのオネストの息子シュラだった。
そしてそのシュラの名を呼んだ男が木陰から出てきて、その容姿が明らかになった。
青みがかった黒髪をオールバックにまとめた、眼鏡の男だ。しかし、その眼にはシュラ以上に邪悪な何かを感じさせる、不気味なものがあった。
「頼りにしてるぜ、ワイスマン」
その男こそ、リベールの異変や百日戦役の元凶、死んだはずの見喰らう蛇が先代第三使徒”白面”ゲオルグ・ワイスマンその人だった。
エステルとロイドにもオリジナルの騎神を用意しましたが、否定派もいるだろうと承知でやりました。終盤の展開で、二人だけ別行動OR空気化の展開になりそうなので、タツミを含めた四人の主人公で最終決戦に臨む展開にするため、已むを得ませんでした。
そしてまさかの、ワイスマン復活! 大臣とため晴れそうな腐れ外道なので、どうしても使いたかったです。
そして余談ですが、二部からED曲のイメージがハルモニア(空の軌跡 THE ANIMATION ED曲)になります。