初の共同作業! (アリーナ編)
――――これは哀れな人間についての
その人間は孤独だった。
生まれた時にはすでに孤独。そのあとも、孤独のまま無意味に生きていく。そういう運命だった。
しかし、そこに兄弟というイレギュラーな関係が生まれた。
そのイレギュラーは観測体にどんなを変化与えるのか? それが僕は楽しみでしょうがない。
ーーーーー
あの後、カレンから案内されたマイルームの中でキャスターと話をする。マイルーム内は壁紙、というよりは外の電子の海を思わせるイメージ映像を映しているだけなのだろうが全体的に青い。
だがそんな景色では飽きが来るだろうという配慮からかある程度は自由に模様替えを行えることができる。といっても自分にはどうでもいいのでキャスターに任せた。
それで出来上がったものはいわゆる旅館にある和室のような部屋だ。襖に畳、囲炉裏も用意してある。まさに和風尽くし、もしかして彼女は東洋出身の英霊なのかもしれない。
「それにしてもいきなり子供が対戦相手とは。黒野くんにとってこれは不幸なんですか? それとも幸運なんですか?」
子供を殺すことになるのは確かに不幸だ。だが、殺しやすいという点なら幸運なのだろう。
「さぁな。ただ、俺はここに来る前に何人もの命を殺めてきた。もちろん子供もだ」
彼女の問いかけに俺は明確には答えず濁す。――だけど
「やっぱり。辛いな」
幸運不運を除いても人を殺すのは辛い、それも自分よりも幼いものが相手なら尚更だ。よく慣れたなんて言葉を聞くがあれは嘘っぱちだ。気にしていないふりをしているだけでどこかでは必ず気にしている。実際に俺がそうだ。いつまでたっても、これからもきっと慣れることはないのだろう。
「あー。今のうちにお互い自己紹介でもしましょうか。これからは忙しくなりそうですし」
暗くなっていた雰囲気を変えるためか少しキャスターが話題をそらす。その気遣いに俺も乗ることにした。
「そうだな、俺の名前は名乗ったよな」
「ええ」
では、何を話そうか悩む。趣味? 好物? あいにくとおれはコミュニケーション能力がそこまで高くない。いくら人間ではないとはいえ目の前にいるのは美しい女性だ。俺が簡単に話を盛り上げることなどレベルが高すぎて無理だ。
そんな心情を悟ってかキャスターは助け船を出してきた。
「無難に家族構成、仕事、下半身事情でいいんじゃないですか?」
「そう――待て、最後のなんだそれ」
なんか聞き捨てならないものが混じっていた気がするぞ?
「冗談です、半分は」
「残りの半分は?」
「真実に決まっているでしょう」
彼女はこちらをまるで馬鹿を見るように見つめる。俺がおかしいのか?
「家族は……まぁ弟と姉が一人づつ。どちらも義理だけどな」
「あら、複雑なご家庭で」
痛くなった頭を押さえながら無視して勝手に自己紹介することにした。幸い彼女も興味を持ってくれたようで話に食いついてきた。
「仕事は”何でも屋”」
「何でも屋?」
「簡単にいうとお金さえ貰えれば何でも屋る仕事さ」
「都合のいいお仕事ですねぇ。どんなことをなさってたんですか」
「そうだな……今、地上では何が起きているかわかるか?」
ムーンセルから与えられた知識をしっかりと受け取っているなら把握しているはずだが、もし自分のように不備があっては大変だ。確認の意味を込めて尋ねる。
だがそんな心配は杞憂だったようでキャスターは平然と答えてくれた。
「西欧財閥とレジスタンスで争っているんですよね」
「それの被害を抑えたりするような仕事だ」
そう、現在地上では日々戦争が起きているようなものだ。
2030年代において圧倒的な武力と財力で世界の60%のシェアを管理・運営する巨大財閥であり、世界で最大の規模を誇る勢力。2032年の時点で48ヶ国が参加する北半球資源機構を主導しており、その48ヶ国で世界経済の67%、全世界の武力の90%を網羅している。
そのため事実上『世界』と言った場合は西欧財閥の管理下にある諸国を指す事が多い。
複数の財閥が国家をまたいで結成した巨大な合体企業であり、魔術協会は「危険思想を持った反社会的勢力」として駆逐されており、跡形もなく解体され、「貴族」と呼ばれた魔術師の家もほとんど消滅させたと聞いている。
ただ、その徹底した管理に反対する声も多く、西欧財閥は常に武装集団によるテロの脅威に晒されている。遠坂凛などがそのテロリストの例だ。
かなり昔から人類規模の経済活動を行っており、世界有数の財力を誇る。また企業でありながら独自の軍隊を保有しており、アメリカ合衆国、イングランド王国、インド共和国は西欧財閥と緊密な同盟関係にあり、西欧財閥の軍事力の大部分を担っている。
またユリウス・ベルキスク・ハーウェイが所属している西欧財閥直轄の暗殺・諜報組織が存在し、凶悪なテロ事件を起こす反社会的勢力の掃討・鎮圧を行っている。俺らも争ったことは少なくはない。
西欧財閥が掲げる理想は”全世界の資源、資産の平等配分”。
彼らの資源管理は独占するための管理ではなく、効率よく配分するための管理である。初めてその理想を聞いたときは吐き気がしたな。何故ならそれは――
「人間の生き方ではないですからね、それは」
心を読まれたように俺の思っていたことを言われる。確かにキャスターの言う通りだ。酷い言い方だがいわば家畜のような生き方だ。実際に管理されている人間たちはみんな希望が持っているようには見えなかった。
無駄に生き、人生に意味を求めずまるで死ぬためだけに生きているのではないかと思わせるほどに。
ーー何故だかチクリと胸が痛んだ。
「でも本当に平等のためだけに管理しているんですか? 私欲はないんですかね」
俺の話を聞いたキャスターが首を横にコテンと傾けながら聞く。
「平等を謳いながらも、現在の指導者たちには特権意識があるのも確かな事実だ。だがレオ 、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイは自らが当主になればそれも消えると信じているらしい」
それを聞いたキャスターはつまらない話を聞いたように半ば呆れを含め、首を振る。
「正直、くだらないですよ。どちらにしろ長続きしないんですから」
「どういう意味だ?」
そこまで言い切るキャスターに尋ねる。
「黒野くん、考えてみてくださいよ。優秀な人物が統治者になって国が安泰してもいつかは崩れます。統治者の死亡、環境による変化、住民による底のない欲求。原因は様々ですが決して長続きはしません」
「そんなものなのか」
「そんなものなんですよ。なのに人間は永遠を求める。――本当に愚かで、救いようのない」
その表情は本当に下劣なものを見ている冷たさと、なぜだかわからないが楽しんでいるように見えた。その矛盾しかけている評価を与える彼女の横顔に……正直見惚れてしまっていた。
「さて、そろそろアリーナに行きましょうか」
そんな俺の気持ちを余所にキャスターは立ちあがり、こちらの手をとって廊下につながる扉を開けた。
「早くいきましょう?」
「あ、ああ」
英霊のはずなのに、温かい。そして柔らかい。普通の女の子だ。それを意識すると顔が熱くなる。
「黒野くん?顔赤いですよ?発情期ですか?」
「んなわけあるかっ!」
◆
アリーナ、それは霊子虚構世界が用意したいわゆるダンジョン。
「情報の海」ということから、現実の海をモチーフに作られていて、それぞれ二階層で構成されている。なお日没はシステムに制御されているので、通常、探索中に陽が沈むことはない。
入り口は誰でも共通で、一階の奥の扉だが、転送されるアリーナは対戦者同士のみが共通のものでそれ以外は個別。
不適格なマスターを排除するためムーンセル・オートマトンが産み出したエネミーが徘徊しており、これを倒すことで霊子虚構世界で流通している通貨などが入手できる――
というのが渡された携帯端末に書かれた説明文だが。
「どう見ても海をモチーフにされてないんだが」
目の前に広がる光景は一面の砂。周りには何かの遺跡やピラミッドを模した構造物がある。海の要素など微塵にも感じられない。
「しいて言うなら砂漠の海、か?」
「無理やりすぎやしませんかねぇ。ま、幸いにも私たちのために道は整備されているので文句は言いませんが」
彼女の言う通り砂漠が広がるのは通路の外側、つまり俺たちは砂に触れていない。簡単に言うと水族館みたいにガラス張りの中で風景を見ているようなものだ。
そんな風景を見ながら数歩歩く。そこで先頭を切っていたキャスターがこちらへ振り返り一言。
「では、エネミーを200回潰すことにしましょう」
「はい?」
無垢な笑みを浮かばながら何を言っているのだろう? うちのサーヴァントは。
「私の体もなまっていましてね、本来なら英霊として召喚されることなどありえないのに無理矢理格を落としたからさらに弱くなってます」
キャスターは肩をぶんぶんと回しながら悔しそうに自らの状態を教えてくる。
それに加えて、と続ける。
「スキルも少ないですし、その少ないスキル自体も威力がまぁ大変なほどに弱体化してまして」
――つまり
「リハビリ、と」
「あ、そうですね。リハビリです」
上手いことを言いましたねとこちらに感心の目を向ける。別にうまいことを言ったつもりはない。
「まぁ、賛成だが、いざとなったら帰るからな」
「ええ、ですが余裕があればトリガーも取りましょう」
…………あ。
「……忘れてたな」
「うっわ、大事なことなんですから忘れないでくださいよ」
「そ、そういえばお前の武器って何なんだ? いちいち魔術使うのか?」
「ふふふ、よくぞ聞いてくださいました」
幸いにもうまくそらすことができたようだ。
「てってれ―! う~ち~わ~」
どこぞの猫型機械のような声を出しながら懐から取り出したのは白い団扇。いや、よく見ると所々に赤色の文字が見える。
「なんだその包帯まみれは」
キャスターは俺のつぶやきに不満を感じたのか少し頬を膨らませる。
「包帯じゃありません。呪符ですよじゅふ!。これ巻かないと魔力が漏れちゃうんですよ。それより、来ましたよ!」
遠くにいる球体のエネミーが色を変えて此方に向かってきた。身構える俺の前にキャスターが出る。
「ここは私に任せてください」
そう言われたのでおとなしく見守る。彼女の実力を見てみるいい機会だ。
「ほい」
一振り。ただ軽く振っただけで轟音と共に竜巻が生み出された。それは容赦なくエネミーを巻き込み、共々消滅した。あまりの呆気なさに呆けた表情で見ていると不満そうにキャスターがこちらを指さす。
「ほら、黒野くんも頑張ってください」
「といわれましても」
礼装もカレンからもらった基本的なものしかない、少なくともこれ単体ではエネミーを相手取るなんて無理だ。そう訴えるとかわいそうなものを見るような目線を向けられる。いや……正確には”使えね~こいつ”みたいな視線だ。
「……契約切っていいですか?」
「仕方ないだろっ!」
「なら私の戦い方を見ていてください。サポートするなら癖ぐらいつかんでいないといけないでしょうから」
彼女の言う通り実際に指示をするのは俺だ。現在の自分では戦闘ができないのならより良いサポートをして彼女の戦闘を手助けするのが俺の役目だろう。
「よしっ!」
気合を入れるように頬を叩き先に進んだ彼女を追う。
◆
アリーナ内では時間の流れがゆっくりだと聞く。一度入ると出る際には必ず夜になっているのはそのせいなのだろうか。運営側にとっては必要ないだろうがこちらとしては時計ぐらい設置してほしいというのは贅沢だろうか? いったいどのくらいの時間が立ったのだろう。体中汗だらけになりダルイ。
「もう疲れたんだが!」
文句を半ば叫びながらに伝えるとキャスターは涼しい顔で答えた。
「あと115体ですよ」
なんであいつは疲れないんだ、と思ったがそもそも彼女はサーヴァントだ。俺らとは基本ステータスが段違いだ。しかも俺の礼装”麒麟の護符”で微量ながら回復している。おそらくフルマラソンしても汗一つかかないのではないのだろうか?
「思ったんですが、こんな時に対戦相手が来たらまずいですよね」
不意にぽつりとキャスターがつぶやいた。
「やめろよ、そんなこと言うとほんとに来るぞ」
「フラグは立ちましたね!」
「立たせたのはお前だがな」
「
……何でこいつは妙におやじ臭いというか、
残念美人というのはこういうのを言うのかと考えながら彼女の背中を見ていると彼女が突然振り返りこちらを鋭い視線で射抜いた。
「ど、どうした?」
「黒野くん、サーヴァントの気配です」
ふざけを感じさせない声色とその内容に思わず体が固まる。場所はどこか、近いのか遠いのか確認する前にとあることにきづいた。
「……? 何か聞こえないか?」
「ええ、無駄に大きい声を出している輩がいますね」
地響きのような音が聞こえる。
どちらにしてもこの場にいては始まらないので音の聞こえる方向に歩みを進める。段々と音が大きくなるな中開けた場所にそいつはいた。
「AAAALaLaLaLaLaie!!」
こちらの体が揺らされるようなほどの大声、堂々したその声の主は俺らを気にせずに牛が引く戦車の上で叫び続けている。
隣のキャスターを見てみると口を開けて呆けている。たぶん俺も同じ表情をしているのだろう。
「なんです、あれ?」
「……対戦相手の、竜太のサーヴァントじゃないか?」
今アリーナにいるのは俺らと敵性エネミー、そして対戦相手。考えられるのは対戦相手だろう。もしあんなものがエネミーだったらおかしい。なにがと聞かれたら具体的に答えられないがとにかくおかしい。
「む? おい坊主。どうやら対戦相手が現れたようだぞ」
ようやくこちらの存在を認識したのか牛車を止めよう手綱を引いた。しかしあまりの勢いになかなか止まらずアリーナの床を大きく削り、煙を上げてようやく止まる。
「きますか!」
警戒する。しかしどれぐらいたっても竜太は降りてこない。
どうしたのかと警戒心を抱いたまま疑問に思っているとため息をこぼしながら男は荷台から竜太をつまみ上げる。白目を剥きながら口から泡を吹いているその様子は少なくとも無事とは言えない。
「……しっかりせんか!」
「ふぇ!」
男にバシンと背中を叩かれようやく意識を取り戻したようだ。
「あー大丈夫か?」
どうやら戦車内での衝撃に気絶していたらしい。
「ええ、お気になさらずに」
ふらつきながら牛車からおりる竜太。その視点は定まっておらず、足元もおぼついていない。
「黒野さん、それにサーヴァントさんどうもこんにちは……うぇ」
「大丈夫なんですか、貴方のマスター」
酔ったのか口元を抑える彼の姿を見てキャスターが心配する。敵同士だがそんなことすら忘れてしまうほど悲惨な状態だったからだ。
そんなマスターの様子をみて竜太のサーヴァントはボリボリと頭をかく。
「もうちょっと頼りにならんかのぉ」
「うぅ、ライダー、あと頼んでいい?」
男は”ライダー”、そう呼ばれた。
深紅のマントを羽織り、獅子を思わせる顔は厳ついながらも何処か人懐っこさを感じさせる気がする。しかしその覇気は紛れもなく強者のものだ。
だが俺とキャスターが驚いたのは堂々とクラスをばらしたことだ。
ーーこれはブラフか、それともうっかりか。はたまたクラスをばらしたところで痛くも痒くもない実力の持ち主なのか。色々な考えが頭をめぐり、辺りが緊張感で包まれる。
「えっと、やります?」
キャスターがこちらに確認をとる。”やるのか”と、つまりここで戦闘を開始するのか、どうするのか尋ねているのだ。
「……いや、やめておこう」
俺は少し考え、そう答えた。
戦うにも情報が足りなすぎる。只でさえこちらは弱体化しているのだ。そんな状態で挑むなど自殺行為に等しい。それに加えてアリーナでの戦闘を大分行い披露しているのだ。何が何でも戦闘は回避したい。
「うむ、”とりがー”とやらも入手した余も戻るとするが……その前にお主らに問わなくてはならないことがある」
戦車の中でライダーは深刻そうな表情を浮かべる。
「我が名は”征服王イスカンダル”。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した! うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある」
ごくりと唾をのみこみながら目の前の男に注目する。キャスターは俺ほど緊張はしていないようだが警戒はほどいてはいない。
数秒溜めた後にライダーは大きな声で、だがはっきりと落ち着いた声で問いを投げた。
「――ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか? さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する愉悦を共に分かち合う所存でおる」
「「はぁ?」」
キャスターと声が重なる。
「いや、なに言ってるのかよくわからないんですけど、つまりは譲れと?」
「かみ砕いて言うならばそういうことだな」
キャスターが無言でこちらに顔を向ける。その顔には”私にはもうお手上げです”と書いてあるようにみえた。つまり判断は完全にこちらに委ねられたということだ。当然俺の答えは
「断る」
これしかない。
「だ、そうで。というよりもこの聖杯戦争は”勝者は一人”そのルールをお忘れですか?」
キャスターの小馬鹿にしたような言い方にライダーは気にした様子などなく答える。
「ふむ、確かにそう定められているが、必ずではない」
「は?」
キャスターが間抜け声を漏らすが俺には何となく言いたいことがわかった。
「例外があると?」
「うむ、そういうことだ」
俺の答えに満足したようにうなずくライダー。
「……黒野くん、どう思います?」
今持ちうる知識を用いて少し考えてみる。
「……無理ではないだろうな、例えばサーヴァントの宝具で消滅をやり過ごしたり、敗北が決定する前に決戦場から退出すればな」
――――だができるかどうかは別として
「俺には俺の願いがある。ライダー、この話はどう転んでもなしだ。勿論これから先もだ」
そう言い切る。誘いを断ってへそを曲げられてしまい、最悪戦闘になるか不安だったがライダーは残念そうに口をすぼめるだけだった。
「むぅ、ならば仕方あるまい。だが気が変わったのならば余はいつでも受け入れるぞ!!」
ガハハと高らかに笑いながらぐったりした竜太を戦車に投げ入れアリーナをあとにする 。
「なんていうか、変わったかたでしたねぇ」
「英霊なんてみんな変なやつばかりだと思うが」
「ですよね」
……お前のことも言っているんだけど。
そんな皮肉を気づいているのかいないのかわからないが、疲れたと文句を垂れる彼女を見てトリガー探しを今回は見送り、とりあえず帰還することにした。
◆
マイルーム、薄暗い中燭台で炎が揺れる。
いつの間に模様替えなんてされたのか疑問に思ったが電子手帳によるとサーヴァントに合った雰囲気の部屋になるらしい。
そんな中キャスターはお茶を入れていた。勿論俺の分は用意されていない。
「それにしても早速英霊の名前がわかってしまうとは思わなかったな」
「信じていいのか不安ですがね」
英霊とは昔の人物が偉業をなした後に死んだ後に生まれる。言わば英雄の幽霊だ。詳しいことは長くなるので省いたらしいが以前にそう教えてもらった。
つまり今目の前で湯呑に入ったお茶をすすっている彼女も死んでいる存在なのだろう。だがそういわれても実感がわかない。ましてや英雄になるほどの逸話を持っているようには見えない。
「なぁキャスター。聞いてなかったがお前の真名はなんだ?」
今まで疑問に思っていたことを尋ねる。そんな俺の問いかけにきょとんとする彼女。しかしすぐにはクスクスと笑う。
「おや?ナンパですか?嫌ですねぇ若い方はお盛んで」
「おい?」
からかう声についつい声を低くする、しかし彼女は臆することなくケラケラと笑いながら冗談ですよと言う。
「冗談はおいといて、私の真名はまだ教えません。私はまだあなたをマスターと認めてませんから」
マスターと認めていない。その一言に少し傷つく。確かに彼女とは出会ってそんなに時間が立っていないのだ。
絆なんてできるわけがない、事実だが悲しい。
「……私も黒野君のことを知りませんしお相子でしょう。ですが――」
いつのまにか近づいていた彼女はチョン、と額を指ではじかれる。そしてフォローするように言う。
「どうしても知りたいなら私に認めさせてくださいね」
「……上等だこの野郎」
いつか吠え面をかかせてやる。そう意気込み、初日の夜は過ぎていった。
ステータスを記述し忘れていたので
マスター:岸波黒野
クラス:キャスター
真名:「???」
身長:169cm / 体重:70kg(羽含め)
属性:混沌・善
▼パラメーター
筋力:E
耐久:E
敏捷:EX
魔力:A
幸運:E-
宝具:B
▼クラス別能力
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地を作り上げることができる。しかし彼女の性格、能力から月の聖杯戦争で使われることはない。
▼保有スキル
魔道:EX
ありとあらゆる魔道の使い手である証。東洋の術で使えないものはないと思われる。禁じ手ではあるが条件が整えさせすれば死者の蘇生も可能としている。
魔力放出(炎):A++
自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。 魔力とスキルのランクが高ければ大幅に強化できるがその分制御が難しくなってしまう。彼女の場合魔力を帯びさせると体が炎に包まれる。
カリスマ:C-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。ランクがC-だと国家運営は出来ないが彼女の場合は”人間”と”神”以外ならば国を作り上げることができる可能性がある。が本人は「大人数でいることなんてめんどくさいだけなので、お断りです」と乗り気ではない。
千里眼:A-
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。集中すれば短時間のみ未来の”相手の行動”を予測できる。
宝具:「???」
「???」
「???」
特技:猥談、飲み比べ
好きなもの:人間、酒、親、煎餅。
嫌いなもの:人間、高僧、自分、父親。
天敵「???」
イメージカラー :ワインレッド
岸波黒野
サーヴァント:キャスター
年齢:21歳
誕生日:10月7日/血液型:A型
身長:175cm/体重:57kg
イメージカラー:透明
特技:なし
好きなもの:紫陽花
苦手なもの:雨
天敵:「???」
では、誤字及び間違いがございましたらご連絡を。感想も待っています!