第一区分目東部の、第地下108層目のとある街角。俺こと来島 アキトは怪しげなパブの側の地下へ行く階段を降りていた。
「こんなとこが本部なのか?」
「うん、そうだよ♪」
「あの来るときにでっかい、入り口のない建物があっただろ?、そこへ繋がってんのさ」
「へぇー」
セキュリティーは万全のようだ。
まぁ、指紋認証とか、監視カメラとかは無いだろうが。
あったらあったで怖い。だって、ビルとかマンションとかそう言った類のマンションがないし。
「あとどれくらいだ?」
黙々と歩くキュロットに話しかける。
「………………まだまだ先」
「そうか」
しかし、この階段。まだ下の階が見えない。
どんだけ長いんだ。
★★☆
あれから二時間は歩いたかもしれない。いい加減に足が痛い。
「どうしたの♪」
こんな時でも楽しそうな不知火が羨ましい。まぁ、元から本部の人間らしいから慣れているのかもしれない。
「(実は魔人のおかげなんだ♪)」
そうでもなかったようだ。というか、俺はまだ不知火の魔人を見たことがないな。
どんなのだか興味はある。
そしてまたもやトロッコに乗っていた途中で、スバルから魔人には、人間に限りなく近い容姿や、物質と同化するもの、意思を持つもの。など、様々な魔人がいることを教えてもらった。
「ほら、もうついたぞ」
「はぁ~~。やっと着いたぁ♪」
何気に疲れていたようだ。
「………………キュロットだ」
キュロットがインターホンのようなものに話しかける。
すると、側面にあった壁が奥へスライドした。
先には大理石だろうか。石の床が奥へと導いていた。
最後に俺が入った途端、扉は閉まった。
何つーテクノロジーだよ。
「うわぁ、まだあんのかよ」
「いや、違う。この先はトラップ地獄だ」
「だからこっちについてきて♪」
思わず愚痴ると、みんなが壁に向かって走り始めた。すると、始めに走って行ったキュロットは壁に吸い込まれて行った。続いてスバルも入る。
走っていた途中で不知火がこちらを振り向き
「ほら、走って走って♪」
「おおっっと」
不知火が強引に押して
壁へぶち当てた。
「ぐはっ」
「あ、こっちじゃなかった。ゴメンね」
脳震盪起きなくて良かった。不知火は手探りで入り口を探す。
天然なの?生粋のドSなの?スゲー痛いんだが
「あ!、あったあったよ♪こっちこっち!」
壁に手を突っ込みつつ、手招きされる。
なんて言うか、とってもシュールだ。
「それっ!」
グンと引っ張り、中へいれる。
★☆☆
刹那、白い光が俺の視界を奪った。どーせここでテレポートすんなら始めからせえや。
広い空間に出た。いや部屋か?、多分そうだろう。明かりは蛍光灯っぽいあたりに張り巡らされたパイプのみ。ここが地上か地下かもわからない。…………って、元からここ地下じゃねーかw。
「おい、どうした。ホバマーク酔いはもう解けたはずだが?」
「お~い!起きてる?」
「んぁ、っとと。悪い、少しボーッとしてた」
「………………連れてきました。リーダー」
ヤバい、何かボケっとしてた。つーか、ホバマーク酔いってなんだ?例えて、バス酔いのテレポートバージョンってとこか?
「ハハハッ、そんな改まっていうなよキュロット。お前とは同期だろうが」
「………………そうだったね、クソ外道」
「………オマエ、前より口が悪くなってないか?」
「………………気のせい」
「おっと、紹介が遅れたな勇者。私の名前は黒沢 カイトだ」
「来島 アキトだ、以後よろしく」
自己紹介はサラッとクールにこなせ!よし、まあまあな出来だろう。
「りっくん、いないのー?」
「ああ、悪いな。ここには私と君たちしかいないんだ。キャラバンは、既に地上に上がって敵地へ向かっているよ」
「なーんだ。残念♪」
「何か楽しそうだね」
スバルの引き気味のツッコミが決まったァ!スバルはレベルが上がった。
………何してんだ俺。
まぁ、そんな戯言はボッシュートして、と。キャラバンは地上に上がって、既に敵地へ向かったか。
あ、そうそう。この第一区分目って地域は、地下と地上の間に魔法のシェルターで覆われていて、地上はモンスターがうようよいるそうだ。最近はその中でも異色な、異世界から人間を呼び出す魔物(魔女か?)が、モンスターを従え、シェルターに攻撃しているとか。
そんなんで、このシェルターは三年に一回、第一区分目の全魔法使いが結界を張るんだが、この頃は三ヶ月で消耗してしまい、魔法使いに多大な負担がかかっている。
そこで、もういっその事その魔女を倒してしまった方が早いのではないか。そう偉い人は考えたわけだ。で、巡り巡ってこのキャラバン…………名前なんだろう。
「エンプディルだ」
おうふ、地の文に突っ込まないで。エンプディルのメンバーはみんなこんなことが!?
だとしたら主役のピーンチ。座が危うい。何かって?言わなくてもわかるだろ、な?
「さて、もう出発するぞ。明日には追いつくだろう」
「え、もう!?早くね!?」
「………………善は急げ。用事の時間から早くて損はない」
「そうそう、大型のトロッコの手配も済ませてあるしね♪」
い、何時の間に。あ、スバルがため息ついた。………貴方がやられたのですね。キュロットさん、またパシッたか。
スバルも大変よのう。
「デスゾーン!」
おおっと、これはギルド『エンプディル』のリーダー、黒沢 カイト様の魔人が見られるのか?
って、何もいないし。まぁ、空間が一部紫色になって、奥へと光が吸い込まれている感じがする。ということは、あのテレポートも黒沢さんがやってくれたということなのか。
じゃあ、射程とかもあるんだろうな。現状では分からんが。
おお、少しだけドヤ顔してる。
「よし、君たち早く来いよ!」
「………………五月蝿い、クソ外道め。はよ行って」
「………。」
「あ、な、泣かないでくださいリーダー!」
「サキ。これは冷や汗だ。冷房が効きすぎていたのだろう」
「(そっとしておこう)」
ネーミングセンスのなさは仕方ないですよね。
あと、基本的に会話は「」で。始めての固有名詞などは『』 で。
あと、囁いている時は「()」で表します