「さて、帰りますかぁ」
「うん、帰ろう」
作戦終了後、すぐさま帰投のためのコースに変更して離脱している
その最中、戦闘の反応を捉えた
「戦闘・・・?」
「あぁ、しかし・・・コレは」
一方的だ、虐殺になっている
しかも・・・
「ねぇ、カズマ」
「安心しろ、俺はここにいる、アソコに居るのは別の存在だ」
俺の女性体にソックリだった
「イセリア、リオナ、先に帰還しろ、コレは俺の戦争だ」
「
「わかりました、ご武運を」
二人を先に行かせ、俺は今もなお戦い続ける人間の前に降り立つ
「・・・」
「ようやく来たか」
「その様子では、勘付いていたようだな」
「当然だ、私はお前の理想形の一つなのだから」
コイツは・・・やはりそうか
悪堕ちした俺の未来形だ、最悪にも程がある
「ここでお前を殺し、黄金錬成によって亡くしてしまった掛け替えのない人を取り戻せる安い取引をする」
「は・・・?」
今・・・コイツ、自分で言ったことを理解しているのか?
「おまえ、自分で言っても気付かないのか?」
「何を・・・?」
それほど大事なら、そこまで愛しているのなら。たとえ何を引き換えにしようとも、釣り合う天秤なんかないって分からないのか?
「掛け替えのないってことは代えが利かないってことだこのクソ馬鹿!!百万か一千万、それっぽっちで戻るもんモノなんざ安っぽすぎて唯一でも無二でもねぇんだよ!!」
かつて亡くしてしまったセリアもアヤナも含めて、俺の大切な親族も、もちろんイセリアも、お前が亡くした何処かの誰かも・・・断じてそんな代価じゃ戻らないし、戻してはいけないんだ!!
「地球とだって釣り合ってたまるか!!おまえがやってることは舐めてんだよ、ふざけんじゃねえッ!!そんなクソくだらねえもんのために、俺のものは渡さない!!おまえはそこらのゴミ山でも漁ってろ!!」
「・・・ゴミ?」
俺の怒声に、虚を衝かれた顔をしたのも一瞬。表情を怒りに変え、俺に向かって叫ぶ
「取り消せ!!」
「ゴミだろうがよ。おまえが捻り殺したエキストラで生き返る命なんか」
十万人だろうが一千万人だろうが、こいつはそれらを安い取引だと断じた。
かつて喪失したという大事なものより、自分にとって価値の無いものだと言い切った。
だったらそんな代価で取り戻そうという宝物は、"そんなもの"でしかないだろう!!
「人殺しが蘇生だ不死身だの図々しい!!ゴミ屑いくら寄せ集めても、黄金になんかなるわけないんだ!!」
恐らくそれが転生の取引条件だろう。だとしたらそれを可能とする存在が居るのは間違いない
だとしても、ここでコイツを見逃すことは断じて不可だ!!
「ならば・・・」
「戦うしかない!!」
意見は決裂した、だとしたら残るのは肉体言語だ
「でぇや!!」
「ぬぅ!!」
一気に押し出し、そのまま連撃のラッシュを叩き込む
「な、なぜ私がここまで・・・!?」
「お前に勝算など一分たりともない!!」
そのまま蹴り飛ばして距離をあけ、俺は告げる
「だからその目で見るがいい、俺が行き着いた先の答えを!!」
全ての武装をアクティブに切り替え、攻撃を開始する
「敵わないと知ってこの世界に来たその愚かさ。生涯をくだらない理想に囚われ、自らの信念を持てずにいる紛い物・・・それが自身の正体だと理解しているのか?」
「ただ救いたいから救うなどと、そもそも感情として間違えている。人間として既に故障しているお前は、初めからあってはならないニセモノだ。そんなものに、生きている価値などない!!」
「つっ・・・!!」
だからお前は俺に勝てない、何故なら
「俺はお前の理想の先に在る者だ。決して叶うことはないと理解したはずだが?」
「うぅぅおぉぉぉぉぉ!!」
「そうだな・・・」
剣戟を正面から受け、防ぐ
呆れて物も言えないくらいだ
「認めるわけには行かないのは道理だ。俺がお前の理想であり続ける限り、藍澤・カズマは誰よりもソレを否定せねばならない」
反撃するのも読めており、普通に防げる
「あえて聞くがな、お前は正義の味方になりたいと思っているのか?」
「何を今更、私はなりたいんじゃなくて・・・絶対になるんだ!!」
再び反撃してくるが、それを後ろ手に拘束し俺は続ける
「そう、絶対にならなければならない・・・何故ならそれは、藍澤・カズマにとって唯一の感情だからだ。例えそれが、自身の内から現れたモノでないとしても・・・」
「ぐっ・・・」
まだ抵抗するか!!
「その理由はあの出来事。一面の炎と充満していた死の匂い、絶望の中で助けを請い、叶えられた時の感情・・・藍澤・ミナトの、俺を救い出した時の安堵の表情、それがお前の源泉だ」
「つっ・・・」
認めたくなくてもそれが事実だ、否定なんて出来はしない
「助けられた事に対する感謝なんて、後から生じたものに過ぎない。お前はただ、藍澤・ミナトに憧れた。彼女の、お前をすく抱いた時の顔があまりにも幸せそうだったから、自分もそうなりたいと思っただけ」
そう、あの時救われたのは俺だけでなかったのだ。救い出したあの人だって、ある意味で救われていたんだ・・・
「子が親に憧れるのは当然の事だろう。だが彼女は最後の最後に"呪い"を残した。お前はその時から"正義の味方"にならなくてはならなくなった・・・お前の理想は、ただの借り物だ、藍澤・ミナトという女が取りこぼした理想、彼女が正しいと思ったモノを真似ているに過ぎない」
「それ・・・は」
「正義の味方だと?笑わせるな。"誰かの為になれ"と、そう繰り返し続けるお前の思いは、決して自ら生み出したものではない!!そんな女が他人の助けになるなどと、思い上がりも甚だしい!!」
それと同時にビームサーベルをナイフモードに切り替え、脚を突く
「ぐ、があぁぁぁぁ!!」
その悲鳴を聞きつつ向き直り、俺は続ける
「そうだ、誰かを助けたいという願いが綺麗だったから憧れた!!故に、自身からこぼれ落ちた気持ちなどない!!」
そこから連撃のラッシュを始める
「それを偽善と言わず、何という!?好みは誰かの為にならねばと、強迫観念に突き動かされてきた!!それが破綻しているとも気づかず、ただ走り続けた!!誰もが幸福であってほしい願いなどおとぎ話だ!!」
「つっ・・・!!」
「そんな夢しか抱いて生きられぬのであれば、抱いたまま溺死しろ!!」
地面に剣を突き刺し、息も絶え絶えの別世界の自分に俺は告げる
「正義とは、秩序を示すもの。全体の救いと個人の救いは別物で、絶対に両立し得ない!!正しき救いを求めれば求めるほど、お前は自己矛盾に食い尽くされる!!ただの殺し屋に成り下がる!!それが解らぬのなら死ね、その思想ごと砕け散れ!!何も成し得ぬまま燃え尽きろ!!」
「・・・!!」
「そうだ、そうすればお前のような間違いも霧散する!!お前という命の痕跡を、俺自身の手で、消し去ってやる!!」
何故なら、その理由こそ・・・
「俺たちは、ただの痩せさらばえた、捨て犬に過ぎない!!何故なら、失くしたものは戻らないから。彼女はそれを誰よりも知っているからこそ、刹那を愛したのではなかったか!?」
「つっ!?」
「その煌めきを、燃焼を、疾走したからこそ光と仰いだ。それはすなわち、未来を信じていたからに他ならない!!」
彼女が本当の意味で残したのは呪いではない、祈りだとこの世界に来て、由宇と出会って初めて理解できた
それまで見えていた世界が、180違って見えるほどに
「おぞましいと自らそう弾劾し、使うべきではないと封じていた力を、彼女が最後に纏ってまで守り通そうしたのは何のためだ!?それをお前は、呪いとして甘えやがって!!それがお前の報恩か!?彼女との絆なのか!?」
「・・・」
「笑わせるなよ甘ったれ!!真に愛するなら壊せ!!」
可能性という内なる神を未来に求める為に彼女は俺に託したのだ、祈りを
それを呪いに変えるだと?ふざけるな!!
「お前のいるべき世界はここではない!!正しき居場所へと帰るがいい!!」
最後の一撃で死亡させ、そのまま帰投した
誰よりも絶望を知っているからこそ、ソレを分からない奴は許さないという事です
主人公のセリフなのに、時たま何言ってるか作者が分からなくなってくる・・・
感想ください、作者がハッスルします