IS Striker   作:アーヴァレスト

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それはありえない出来事
織斑・マドカに起きる悲劇、それを引き起こしたのは・・・?


記憶喪失

「・・・」

「久しぶりだな、織斑・マドカ」

 

IS学園より少し離れた廃倉庫の中にある部屋の中で俺はそう告げた

相手は織斑・マドカ、一夏を襲い、一年の専用機持ちに手酷いダメージを追わせた女の子だ

 

「・・・何をしても話はしないぞ」

「話させる方法は別に薬と決まっていないさ、快楽漬けにすれば話は早いからな」

 

拷問や精神破壊の方法は簡単であるが、どれも廃人になる危険性が高い

ならば、遮断しようのない感覚である快楽を精神が屈服するまで与えればよいだけだ

その中で言葉をうまく利用して自分にとって最も上手く操れる駒にする事も可能である

 

残念だが、その気は毛頭ないんだが

第一、ここで捕まえている理由は彼女にとって、最悪だろう

 

「少しだけ、昔話をしようか」

「・・・」

「ある所に、人間の脳における記憶・・・海馬の機能を操作する技術をマルチフォーム・スーツのコアに連結させたマッドサイエンティストがいました」

 

これから語るのは最悪の一言に尽きる。

話すのですら躊躇われるそれは、俺がかつて生涯唯一の賭けとして実行した事なのだ

 

「その人物は、自分を超える力を持つ自身のクローンにコレを行い、彼女を逃す事に成功しました」

「何を言いたい?」

「まだ話は終わっていないよ」

 

ナイフを近くの床に投げつけて警告し、話を続ける

 

「彼がやりたかった事はなんだと思う?」

「知らん、興味もない」

「他人に押し付けられた法則(ロジック)から、その子を解放することだよ」

 

その言葉を言うと、意味が分からないという顔で俺を見てきた。まぁ、当然だろうけど

 

「私は私の目的で動いている」

「その中には、織斑一夏と織斑千冬の殺害も含めるのかな?」

「・・・」

 

沈黙は肯定だな、表情は微動だにしていないが、目の奥には復讐にも似た何かの反応があった

 

「悲しいな、自らを縛り、涙を忘れるとはね」

「・・・」

「だから、用意してあるんだよな」

 

部屋の電源を完全に入れる、彼女を捕らえている装置を中心に用意されていたのは

 

「まさか・・・!!」

「その通り、君が今思ったこと、正しくそれを実行する装置群だよ」

「貴様・・・!!」

 

あいにくと完全ではないため出来るのは精々、記憶喪失に留まる

人格を変えるほど器用なことはできないのだ

 

「殺す・・・!!」

「いつでもどうぞ、既に装置は電源入っていて、逃げることもできんがね」

 

途端、彼女は暴れだした。

当然だろう、自分の記憶が、自覚できる形で失われていくのだから

 

「やめろ・・・やめろ・・・」

「・・・」

「やめろおぉぉぉぉぉっ!!」

 

最後に絶叫を残し、彼女は意識を失う寸前に行く

その前に、俺はメッセージを残す事にした

 

「予定とは、異なっているのかもしれない」

 

このメッセージこそ本命にして切実な願いなのだ、その為に捕らえた。

 

「だが、ここまで辿り着き、このメッセージを聞いているのなら・・・」

 

未来の流れを考えるだけで、彼女にとって、とても辛いことがあるだろう

それもわかっているが、それでも残したい

 

「そう、なんであれ、君は取り戻せる。あるいは既に、その手に抱いているのかもしれない」

 

しかし、残すこと自体には意味こそ存在はしない。辿り着く事(・・・・・)に意味があるのだ

 

「記憶喪失によって解放された自己解釈の広がり、あるいは個人の感覚の中では、それぞれの時間や空間の概念も異なり、時たまに曖昧だ。だから、鶏が先か卵が先か、私が誰であるのかもとりとめのないものなのだろう」

 

あぁ、でも、ちょっと心配だな

 

「君は私が誰か知っているかもしれないが、それを私に知る由もない。だが、手を尽くさねばならないことは知っている」

 

これを付け加えればとりあえず、間違いはないだろう

 

「人が生み出した災厄は、人の手で刈り取らねばならない」

 

そう、彼女のDNAを調べたことで判明したことがあったのだ

それこそ、織斑千冬のDNAと80%が一致したのだ、残りの部分も、手を加えられた形跡がある

 

「同様に、人類が生み出してしまった悲劇である君には、一つの世界すべてを賭けてでも、幸せになる権利と義務がある」

 

だが、彼女を利用しようとする輩も多い・・・

 

「しかし奴らは、再び君を犠牲にしようという。従ってそこに、一つの可能性を用意しなければならなかった・・・」

 

でも、残念な事に、これは賭けだ

 

「これは生涯唯一の賭け、私の我侭(エゴ)だ」

 

そう、何故なら

 

「君にかつて運命づけられた在り方が、無慈悲な少年・少女兵だったとしても。いや、そうであるからこそ」

 

君の、その名こそ、本来の意味としてとらえて欲しいものだ

 

「君の見る空が、鳥籠や、戦火の中であってはならない」

 

限られた可能性や、絶望であって欲しくない

可能性がある限りどこまでも飛べる存在であってほしい

 

「その思いと、私が誰かに伝えられなかった言葉。そして確信を込めて、この計画(プラン)を設定する」

 

だから、生きてくれ。どんな結果になろうと、誰かを泣かせるためでなく、守るために

 

「おめでとう、織斑・マドカ。私の手を離れたこの先に、何があったとしても・・・君は必ず、運命に勝利する」

 

彼女の視線の先にあるのは、その計画の名前を書いた一枚の紙

それを捲り、本来の名前を出す

その計画の名は

 

「Break Destiny」




主人公が犯罪行為に及んでいる件について
まぁこれから先が本番さ(`・ω・´)キリッ


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