IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは最低な嫌がらせ、境遇を察して行った治療だが···


嫌がらせ治療

「何とか間に合ったか?」

「おう、何とかな」

 

セリアに俺は確認する。間に合ったのはスコールの新たな身体だ

機械ではない純粋な人としての身体だ。

幸いにも、肉体を失う前に取っていた血液から培養に成功したので運が良かったと言える。

問題は···

 

「どうやって移植する気だ?」

「そこなんだよなぁ」

 

移植法を考えている最中だ、どうしようか?

 

「にしても、殺さず拉致とはね」

「面白いだろう?」

「最低だな」

 

ひでぇ、酷すぎる!!

 

「その上、嫌がらせのごとく肉体再生治療をするなんてな」

「ふはははっ!!なんとでも言うがいい!!」

 

嫌がらせでいいんだよ、理由はちゃんとある。

 

「理由はちゃんとあるんだろ?」

「あぁ···」

 

悲しいだけの人生を終わらせるために、俺は彼女を治す

 

「悲しいかな、俺を産んだ技術を使うハメになった」

「お前が忌み嫌うあの技術をか···」

「その上さらに重ねる」

 

記憶転写では別人が生まれるだけだ、だとしたら方法は一つ

 

「脳移植か」

「それしかあるまい」

 

脳自体を移植する、それがどれだけ危険でどれほど難しいか理解している

 

「成功確率はゼロに近いぞ」

「神経幹細胞を利用すればなんとかなる、それでも確実な接続にはナノマシンを用いねばならん」

 

問題は神経接続だ、それに関しては神経幹細胞を挟めてナノマシンで確実に接続する

 

「血管は?」

「地道に繋ぐ」

「うわ···何本あると思ってんのコイツ」

 

ざっと1億本かなぁ···小血管を含めて

 

「三時間で済ませるぞ、それ以上は脳細胞がヤバい」

「うへぇ、超繊細な作業を超高速なんてやってらんねー」

 

それでもやるんだよ

 

「なんでそこまで、やるんだ?」

「嫌がらせ」

「・・・」

 

死に損なうことが彼女に対しての最大級の嫌がらせだ、おまけに治療を施され肉体が戻るなど悪夢に等しいだろう

 

「最低だな、やっぱ」

「何を今更、俺は最低の人間だよ」

 

戦闘したいが為にかつて最悪の事にも手を染めた人間なのだ、当然といえる

それでもやっとつかんだなけなしの命、無駄にはしない

 

「さて、やるぞ、ついてこい助手」

「へいへい、やりますよ。ところでどちらが執刀?」

「俺だ」

「了解、従いますよ」

 

さて、手術開始だ!!

 

 

<数十時間後、病室>

 

「・・・」

「よぉ、死に損ない」

 

手術は奇跡的に無問題で終了した、その後ずっと横に寝ていながら起きるのを待っていた

 

「···!?」

「あっ、起き上がるなよ?」

 

ナノマシンで手術跡は治されているが、服を着せていないため布団を剥ぐと裸体だ

 

「どういう事かしら?」

「そういう事だよ」

 

目線の位置が下がっている事に気づいたのか、憎しみの目を俺に向けるスコールを俺は見ながら答える

 

「肉体を再生治療で治した、ちなみに慈善事業じゃないから後で請求する」

「勝手に···!!」

「するよ?」

 

笑いながら俺は彼女が言おうとした言葉を奪う

理解こそすれ、認めないからな?

 

「だいたい、悲しいだけの人生に価値はないさ。俺が言いたいのは前を向く事だ、マイナスで残るのは絶望しかない」

「そういう貴方はプラスね、何人救えるか、何人助けられるかなんて」

「大多数はプラスなんだよ」

 

そう言って頭を撫でる、嫌そうな顔をして彼女は睨んできた

 

「あぁちなみに、細胞培養の関係上、肉体年齢が15歳まで低下しているが気にするなよ」

「気にするわよどういう事かしら!?」

 

(º∀º*)ア- ヤッパリ?

···だろうな、気にしない方が無理か

 

「細胞の質があまり良くなかったんだ。だから応用がかなり効く俺の開発したナノマシンで急速培養した、その際に培養できる限界の年齢が15歳なんだよ」

「理不尽な···っ!!」

 

おうとも理不尽さ、それがどうした

 

「それに、やり直しにはいいだろう?」

「···?」

「人生をやりなおしてみろ、良い事も嫌な事も、もしかしたら子供も、生まれるかもしれんぞ?」

「え···子供?」

 

彼女は結婚歴がない、子供もいなかった事が判明している

それもそうだろう、物心ついた頃から戦争のために生きていたような人なのだから

 

「本当に、産めるのかしら?」

「あぁ、産めるよ」

 

実は彼女、子煩悩である。一夏達を襲っていながらダメージを軽くするなど、子供には弱いし、本来は優しい

それゆえに狂ってしまったのだが、問題さえ解決させれば戻れるはずだ

 

「やがて出来る大切な人と、共に歩んでくれ」

「感謝は、しないわよ?」

「ふん、しなくても構わん」

 

俺はそういいながら紙を出す、請求書を

 

「···え?」

「残念だが現実逃避は許さん」

 

請求額、12億円。全身規模細胞急速培養装置稼働費と、保険適用外手術費用だ

 

「・・・」

 

目が点になっている、法外な金額に

 

「安くしようか?」

「嫌な予感がするわね」

 

その予感は当たるぞ

 

「IS学園に、新しい名で所属するならチャラだ」

「どの面下げてそんな事が出来ると思っているのかしら!?」

 

この面下げて

 

「はぁ、どのみちそうするしかないのでしょう?」

「おう、ちなみにオータムは既に了承したぞ」

 

オータムはチョロかった、戦闘狂のきらいがある彼女は強敵と毎日遊べると言ったら二つ返事だった

 

「もう、どうでもいいわ」

「じゃ、了承したという事で」

 

書類を出し、書くように促す

 

「これから、どう生きればいいのよ···」

「自分で決めろ、縛るものはない」

 

自分で自分に命令して行う任務だ、他人に押し付けられるものではない

 

「そう···」

 

どこか遠い目をしながら、黙々と彼女は書類を書いていく




スコール救済策は最悪の嫌がらせでした。
主人公は酷い人。

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