IS Striker   作:アーヴァレスト

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決戦の火蓋は切られ、それぞれがそれぞれの戦いに向かった
そして、死んだはずの人間が、戦闘をしている


亡国機業VS民間軍事会社(2)

「これで、お題目はクリアだな」

 

戦場でそう呟くのは死んだはずの俺、藍澤・カズマだ

実際には死んでいない、こうして生きて戦っている

理由は簡単、これから戦う人物にとっての、最大の嫌がらせだ

 

「流石ね、エグゼ」

「スコール!!」

「ここまで寄せてくるなんて・・・いや、これも私の望んだ事だけだけども」

 

こちらに来ることは想定していたが少々早い、つまり目的は離脱までの防衛か

 

「何の用だ?黙って戦えばそれで済むだろう。もっとエムを見習ってみろ」

「あの子は必要な牽制よ、今からでも、引くことでも検討したら?」

「何を、いまさら」

 

そうそう簡単に"はいそうですか"と引けるものか、何を考えている

 

「善意だけで成り立つ社会が存在しないように、必要最低限の反抗勢力は必要不可欠なのよ?」

「必要悪に必要善か、そんな事務的に人の命を扱うんじゃねぇ」

 

システムとして生きることは確かに重要だ、しかしそれが事務的に扱われてはいけない

そんなことを言う奴は必ず墜とす!!

 

「情動的な部分と機構(システム)的な部分。その両立が必要よ?」

「はん、やけに機械的な物言いじゃねぇか。ここで退けると思っているのか?」

「何のため?」

 

あぁ、それか

 

「俺のためさ」

「・・・信義、ね」

「お前が進む道には人を使い捨てていく未来しかないのは俺の勘違いか?」

「いいえ、その認識で間違いないわ」

 

やはりな、どうりで繋がったわけだ

やはりコイツは、全身義体(サイボーグ)

 

「じゃあどう理屈こねくり回しても許容できんな、たとえここで負けようと」

「だからこそのPMCかしら?」

「そうだ、俺の作った組織であり、俺達の意志でもある」

 

 

だいたい、亡国機業のやり方に対して俺は・・・

 

「お前らのやりたい事は理解できる。だが、ソレを俺達は下らないとしか思えない」

「くだらない・・・?」

「あぁ、くだらんな。人を消費し続けるだけのマッチポンプにどれだけの価値があるという!?」

「価値・・・価値ですって!?

 

次の瞬間、イグニッションブーストで迫ったスコールの指が首を捉え、俺を締め上げていた

 

「命の価値など、とうの昔に忘れたわ!!」

「がぁ・・・!!」

「私たちわね、貴方達がまだ生まれてもいない頃から戦い続けてきたのよ!!平和というモノが夢物語だと知っていても死人を減らすことはできる!!そうして実現するなけなしの安寧でも、守る事は出来ると信じて!!」

 

そのまま攻め寄る彼女を睨みながら俺は聞く

 

「私達は戦い続けた!!戦力不足や肉体の破損を志半ばで倒れた仲間の肉体で補ってでも!!だが、上はそれを時間稼ぎの捨て駒として処理したのよ!?その意味が貴方に分かる!?私達の戦いは、一枚の紙切れ(書類)で終わったのよ!!」

「んなもん、わかってるさ!!」

 

蹴り返し、彼女と距離を取る。このままでは少々危険だ

 

「残った仲間も一人、また一人と戦闘や後遺症で死ぬ、それだけなら貴女もこうはならない!!」

「えぇそうよ!!私達の代わりに政府が治めてくれたのなら捨て駒になっても良かった!!だけど現実は何!?」

「つっ・・・!!」

 

戦争は今も続いている、どこかの国で。それを無くしたくて彼女とその仲間は戦ってきたのだ

それが叶わないと知り、発狂した彼女の選んだ道が、ファントムタスクへの所属とISの強奪・・・そして!!

 

「世界から戦争がなくならないのは、それが人間のやり方、意志だからよ!!ならそれを使って導いてやるわ!!」

「それが貴女の本音か!!」

 

なんてヤツだ・・・本気で狂ってやがる!!

 

「そうよ!!安定して、必要最低限の戦争!!やがて局地化した戦争(それ)は単なる商材へとなり下がり、多くの人々はその利益を享受しながら実戦とは無縁の生活を送る!!」

「消費され続ける人間にはどう報いる気だ!?」

 

俺の質問に彼女は叫びながら答えた

 

「何千何万が無残に死のうと、何億何兆の人間が幸せに暮らせればそれで良い!!完全な平和社会など存在しない、人類は戦争から解き放たれることはない!!なら、限定管理された戦争、それだけが絶対多数の平和に繋がる!!」

「狙いは戦争の継続でも、拡大ではなく縮小か!!」

「そうよ、いずれ戦争は商材以下の手段になる。コストだけがかさむ、くだらない手段として!!」

 

望みが何かわかった、少なくとも、スコールの望みは

 

「貴女の、目的はまさか!?

「私達に、慈悲はいらないわ、哀れみも!!私の目的は、私達の戦争が何の意味もなく、無駄死にだと嘲笑される日が来ることよ!!」

「自分たちの全てを否定するのか!?」

 

想像なんてできない領域だ、俺でさえ驚く

だが同時に納得もできる、それ故に方針変更だ、殺さない!!

 

「そうよ!!戦争で死ぬのなんて馬鹿らしい、一銭にもならない、価値もないと、そういう差別階級に戦争をおいて!!平和に暮らす者が戦う者を侮蔑すればいいわ!!」

「それが貴女の、信義か」

「理解できたのなら撤退しなさい!!私も貴方も有用な戦争機械(ウォーマシーン)、ここで失うのは惜しいのよ!!」

「なおさら退けるかよ!!貴女達がどんなにお題目唱えようとやっている事は地獄のお膳立てだろうが!!」

 

それに、スコールは答える

 

「だからどうした!!」

「それが、人のやることかよ!!」

 

ボロボロになった状態で何とか撃破した。倒れたスコールは気絶している、スコールの撃破が今回の真の目的とは言えいささかダメージを負いすぎている

ファントムタスクの戦力はスコールの側に偏重していたので今回の作戦はこれで終了となる。

はてさて、死人となっている俺はどうするか・・・

 

「カズマ!!」

「どうした?通信はするなと厳命したはずだぞ!!」

「すまない、それよりもこのデータを見ろ!!」

 

すぐにデータが送られてくる。戦闘様式のデータのようだ、見て、愕然とする

 

「いま、ソイツがそちらに向かっている!!」

「あぁ、冗談だと、思いたいね!!」

 

二回戦が始まる、本当に死ぬかも・・・

 

「貴様・・・!!」

「よぉ、セリアの大したセリフを吐いたようじゃないか、見違えたぞノイン」

 

ノイン、正確な名前はノインツェーン。俺の19番目のクローン。より正確に言うと、俺のクローンの中で最も完成度が高く、唯一比肩できた女だ。

まさか転生していたとは思っていなかったが帰りがけの駄賃だ、相手をしよう

 

「誰の、事だ?」

「俺の教えた戦闘様式(コンバットパターン)を見間違える訳が無いだろう。理想(イデア)の為だと、何をしているのかと思えば、やれやれ・・・」

「私に、縁故の者はいない」

「はっ、冗談を抜かすな。オリジナルの顔も忘れたか?」

 

押し黙る彼女に俺はさらに告げる

 

「どうした、他に言う事はないのか?」

「私の子供はどうした?」

「死んだ、売り飛ばした。あぁ、君は知らないだろうけど高値だったよ」

「・・・お前、やっぱり人でなしだ」

 

嘘を言うのってしんどいね、実際にはちゃんと生きていると言いたいけど

 

「そうかい、だがお前も俺と大して変わらんだろう?比類したことだけは流石だと褒めてやる」

「私の戦いは人類の為のものだ!!お前のような個人的なことじゃない!!違うっ!!」

「そうそう、違うよねぇ、明確に。俺は俺個人の為になる戦争をして、お前は理想(イデア)の為に戦争をする」

 

しかし、同じ部分がある。それは・・・

 

「だが、どちらも同じ人殺しだ。わかるかな?」

「つっ・・・!!」

「そんな輩が人類の未来を語るのはまだ許せるが、左右するなどおこがましいにも程がある。それを手ずから思い出させてやろう」

「お前に教えられる事など、何もない」

 

いいや、ちゃんとあるぞ?

 

「いいやあるとも、セリア、アヤナ、お前たちは覚えているな?」

はい(ダー)!!」

「オリジナル・・・邪魔を、しないでくれ・・・!!」

 

対する俺の返答は一言、同時に墜とす

 

 

 

 

「死人は、喋らんものだ」




連続二回の戦闘ご苦労様です主人公君。次話はたっぷり休憩してね
休憩って・・・あるの、かなぁ・・・


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