そして・・・
「リーナ少尉が施設玄関に到着されました」
「ん、ありがとう。ここまで通してくれるかい?クロエちゃん」
「分かりました、お連れ致します」
リーナ少尉を倒した翌々日の昼過ぎ、俺は篠ノ之束の依頼で助け出し、以降基地施設の様々な雑事(宅配物の受け取り等が主)を任せているクロエちゃんに起こされた。
予想より早いな・・・?
「セリア、ちゃんとおもてなしをしたのか?」
「したよ?」
二人して悪い顔をしながらリーナ少尉を待つ
「今気づいたが、どうやって来させたんだ?」
よくよく気が付いたらそこらへんを丸投げしていた気がした。
だから聞くと
「あぁいうのは無理に攫っても逆効果で支障をきたすからな。自主性を重んじて来てもらった。もちろん、ケアも万全」
「・・・あ、そう」
なんとなく、寒気がしたのは気のせいだろうか・・・?
「こ・・・ここが・・・エグゼ?」
いかにも基地の中とは思えない部屋の中に案内された事で目を丸くしている彼女にセリアはあくまでもPMCの副代表として接する
「楽にしたまえ、短日でのあの道程、胸中お察しする」
うーわー、しーらーじーらーしーいー
「はい、あの・・・ありがとうございます」
セリアは礼を言われるまでもないと言いたげに手を挙げて楽にするよう合図して俺の横に立つ
仕掛け人のくせしてよくまぁ・・・
「藍澤・・・さん?」
「なんとか、生きて来てくれたな」
「・・・本当に、何とかですよ」
あれ、泣き出しそうだぞ・・・?
「うん、セリア?」
「無事にたどり着いて何よりだ」
自分で後はどうにかしろ、かよ!!
「牧瀬少佐、少し失礼をよろしいですか?」
「構わない、好きにどうぞ」
コイツ、俺が代表だって言ってないだろ!?しかも嬉しそうな目をしやがって!!
「藍澤さん、あれだけ死ぬ死ぬ言っておいた身で非常に申し訳ないのですがっ!!」
「お、おう・・・」
なんとなくセリアがしたことが目に浮かぶ気が・・・
「一体どんな保護ですか!?いえ、保護以前の問題です!!あんな辱めを受けたのはこれまでの人生でも!!教官生活でも!!初めてですよ!!」
「そ・・・そうか」
「うぅ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
セリアてめぇ一体何をやらかしやがったあぁぁぁ!?
大体わかるが幾らなんでも・・・まぁいいか
「では、もう死ぬ気はないという事でいいんだな?」
「あんな事をされたら、その気も失せますよ・・・」
うん、セリアには後で忠告しておくよ
「分かっていますか?」
「な、なんとなくは・・・はい」
彼女は恨みがましい目で俺を見つめた後、咳払いをしてセリアに向き直った
「ところで牧瀬少佐、代表の方は?」
「君の目の前にいる」
あはははっ!!誰だろうねぇ!!
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・俺だよ!!
「え・・・え?」
「俺だよ、残念だが」
「も、申し訳っ!!」
「ん、気にしなくていい。あくまでも個人として受けた任務の場合、身分を明かさないのがウチのやり方なんでね」
万が一の場合を除いて基本は全員それぞれに日常生活で仕事を抱えている連中なのでそのスタイルが固定になっただけなのでこの場合は例外である。
俺とセリア、それに幾人かが専属なだけだ
「では俺の自己紹介を改めてしよう、PMCエグゼ代表、藍澤・カズマ、階級は准将だ」
俺の軍人としての肩書きは准将である。ここから上がる気はないし下がる気もない
「元ファントムタスク所属、リーナ・ヴァスティ。旧階級は少尉」
「ほう・・・現在は?」
「む、無職・・・です・・・!!」
「くっくっく・・・」
セリア、楽しそうだな
「この度は格別の配慮を賜り、感謝の言葉もありません」
「あぁ、いらんよ」
「は・・・?」
あぁ、うん、なんだ、簡単に言うとだな
「そのような謝辞は要らんよ。ただ普通にしただけだし。基本ウチは君と同じような感じで仲間を集めている。それにこちらは君を利用するつもりだ。媚売ってもそれは変わらない」
「いえ、でしたら・・・」
「それとも、こちらが掴んでいる君の家族を全員並べれば少しは頭が回るかな?」
「つっ・・・!!」
よし、これで緩んだ場の空気も引き締まっただろう
「私から現段階でお渡しできる情報はたった一つしかありません。それ以上は、どんな関係であろうと拒否します。それでもするというのであれば自害します」
「ふ・・・」
そのいきだ、それでいい
「ふはははっ!!それでいい!!仮にも一度死ぬと決めた人間があちこちふらふらするようでは黄泉路に迷うぞ!!」
「は、はい!!」
思わず敬礼した彼女は慌てて手を下ろした、そしてこちらを見てくる
「その情報一つで十分だよ。セリア!!」
「了解、リーナ元少尉、情報を」
「・・・これは」
セリアが何かに気づいた、同時にセリアのかけているメガネのカメラから映像が俺のメガネを介して流れる
「元々は私が死んでから時間を置き送信するはずだったものです」
つまりは遺言の意味もある情報だった、と
「感謝する」
「お役の立てるのではなく・・・」
あぁ、うん、もちろん
「うん、撃滅しよう」
俺がそう言うと彼女は驚きながら反応した
「・・・はい」
よし、では
「今後の処遇を言い渡す。幸い、君は顔がよく気立ても良い女だ。教官とは言っても世話程度、慣れているだろう・・・セリア」
「はっ」
セリアに後は任せ、俺はその様子を眺める
「准将が仰ったように貴女は顔が良く気立ても良く世話を焼ける人間でもある。リーナ元少尉、希望するのであれば我々には貴女を受け入れる用意がある。降格とはなるが階級は准尉として部隊内の雑事全般及び広報業務に携わってもらいたい」
そこでセリアは一度ため息をついて、続けた
「私も最近忙しいため、特に経費管理を手伝って頂けると嬉しい」
おいマジかよ、俺の肩身が今より更に狭くなるのか?
「以上だがどうする?全ては君の自由意思である」
「拒否権は・・・?」
そう言って彼女は俺を見てきた、なので俺は答える
「ないよ?」
「では、謹んで拝命させて頂きます!!」
目尻に涙が浮かんでいる彼女に全くというほど共感はしないが、そろそろのぞき見をしている人に出てきてもらおうか
「総員退室、これにて終わり」
「了解!!」
「はっ!!」
それぞれの返答と出て行く足音を聞きながら俺はテーブルの下にある酒から手頃なやつをセレクトする
さて、出てくるかな・・・?
「そろそろいいぞ、こうして飲むのは久しぶりだろう?織斑千冬に篠ノ之束」
「あぁ、全くだ」
「そうだね」
グラスも一緒に出し、中身を注ぐ
「なかなかに美人じゃないか、それに性格もいいときている」
「トータルバランスであれば今までで一番だよ」
「本当に良かったの?」
そう聞いてきた束に俺は答える
「何を今更、大体、彼女が所属していた組織自体が俺には気に入らんよ」
「理由は?」
今度は千冬が聞いてきたので同じように返答する
「恨みもつらみもあるのは十二分に分かる、ならばこそこそせず運動すればいいだろうが」
「すぐに潰されるのがオチだ」
「そうだな、それは馬鹿のやり方だ。だが他人を利用してその挙句に自主的な死を強いるやり方は気に入らん」
ファントムタスクの実働部隊の構成と今後の動き。それがリーナの持ち込んできた情報だった。
内部情報でこそあるが詳細にたどれているのは数名のみとかなり少ない
それでもかなりの有用性を誇る情報だし、上手くいけば壊滅に追い込める
その中で、大抵の任務は誰かのクローンか他人をその存在すら悟られないまま操るやり方だと判明した
「他にも絡んでいるのかなぁ・・・」
「それはまだ闇の中だ、しかしこれだけは言える」
束の疑問に俺は手に持つグラスが割れない程度に加減しながらも机に打ち付け答える
「こいつを支えている奴らは善人だ、いいや、自分たちを善人だと思っている。良い事をしていると、そう思っている」
「経験則か?」
「そうだ、機密性が高い、構成員の大半が死を選ぶ組織はおしなべて善意で構成されている」
だからこそ素振りからボロが出にくい訳だ、探る部分を間違えていたなコレは・・・
だが・・・リーナが持ち込んできた情報で
「全部、
ついに主人公側から一手攻め込むのか!?
相手はファントムタスク!!次話、どうなる!?
感想ください、作者のメンタルが変わります