IS Striker   作:アーヴァレスト

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転生し、本来の未来(ルート)を変えた反動は着実に進みゆく病魔のように深く根強いモノ
それは、ある物が盗まれた事をきっかけに加速し始めた


歪みゆく世界

「なに?黒騎士が盗まれた!?」

「ごめんなさい···研究室をピンポイントで襲われて、それで···」

 

篠ノ之束からの緊急連絡でその話がされたのはノンビリと欠伸をかいていた昼下がりだった

しかも内容が非常にマズいモノ。最新鋭機が盗まれる(・・・・・・・・・)などPMC設立以来初であると同時に最悪だ

 

しかも黒騎士はあくまでも白式及び紅椿の相互抑止力であり直援機として開発した以上、かなりの高スペックを誇る

扱えるのは織斑千冬か、それに近い身体能力(ハード)精神能力(ソフト)を持つものに限っている

それだけの事が出来るのはファントムタスク実働部隊···モノクロームアバター、スコール隊の1人、エム···織斑マドカしかいない

スコール·ミューゼルに関しては既に米軍に内偵済みで死亡しているはずの人間だと確認している

 

「やっぱり、私が···」

「どのみちそうなる可能性だってあった、全ては俺の判断ミスだ」

 

そう、分かっていて甘い判断をしていた俺の判断ミスが今回の件を招いた最大直接要因だ、コレを克服するためにセリアに即座に渡すべき案件であったはずなのだ

 

「電話を切るぞ、対策などはこちらに任せろ、俺の副官を行かせるから彼に従ってくれ」

「ん、分かった」

 

電話を切り、すぐにセリアにメールする

内容は指令文、端的に箇条書きにして必要な部分だけを伝えた

普通の人間では分からないような複雑暗号にしてあるが、彼なら1分かからず解読出来る

 

「メール見たぞ?」

「あぁ、頼むぞ」

「任せろ」

 

端的に電話も終わり、俺は1人になれる場所に行く

極秘裏に作った、地下にあるシュミレーションルームに

 

「ただ生きる···それだけのことが、何故こうも遠いっ!!」

 

果てしない怒りをブチまける為に大声を出せる場所として最適だ、ここは映像記録も残らない専用施設なのだから

 

「そこにいるんだろう?織斑千冬」

「気がついていたか、あまりに大きな声なので気づいていないかと思っていたが」

 

そんな事は無い、気がついたのはこの部屋に入る寸前だが

それでも、この状況にはある意味でしたかった

 

「なぁ、織斑千冬···この俺が、間違っていると教えてくれっ!!」

 

心の底から溢れた言葉はそれだった

俺はどこで選択を間違えたのか?間違えたとしたらそこはどこか?

全てが分からないまま進めていくのは危険な事だ

 

「そうだな。ただ生きるのは、難しい」

 

彼女は俺に向かって歩を進めながら腰にある刀を抜く、そして···

 

「だがお前はそれでいい、私とて迷いはある。その迷い、葛藤をお前はかけがえのない仲間と共有していけるようになったのだから」

 

同時に、姿が消えたと間違える程の加速で俺の首を狙った攻撃に対応して躱し、腰を肘鉄する

 

「いつまでもふさぎ込んでて、最後まで何もしなかったなんて。私は嫌だな。そう言って世界を変えた人間を私はよく知っている」

「篠ノ之束か」

「あぁ、そうだ。アイツとて実際、今のように世界が変わった事を喜ばしく思う反面、悲しんでいる」

 

ISは本来、女性の社会進出を宇宙にも広げるために開発したモノだ

それにも関わらず、今や軍事方面に使われている始末

こんな結果は望んでいない、むしろ忌避していたんだよ。と以前、俺は彼女に言われていた

 

「ほら、その肩にしがみ付いているぞ?お前に殺された分の、魑魅魍魎がな」

「つっ···!?」

 

指摘されて気がついた、俺は驚いた。

確かに俺はたくさんの人間を殺してきた、それを初めての全力戦闘で気づく(・・・)なんてな

 

「俺は、人を簡単に殺せる。でもきっと、誰かを見捨てるのは駄目だろう。理解はしても、慣れないだろうからな」

 

それが俺の彼女に向ける本心、人を殺すのは簡単に出来る。

しかし目の前にいる誰かを見捨てる事だけは出来ない。

見捨てなくてはならない理由を理解出来たとしても、慣れる事だけは出来ないだろう。

軍人であった頃からそこだけは変えられないのだから

 

「だからこそ、俺はお前に言わなくてはならない、そこにいるのだろう?一夏と、その取り巻き全員」

 

おずおずと入ってきたのは一夏を先頭にしたハーレム要員達

 

「なんだよ、カズマ?」

「ここから先は激戦が予想されている、先程盗聴していたから事の重大性は理解しているな?」

「直接開発機の強奪だからね、みんな分かっているよ?」

 

シャルロットがそう言い、俺は頷きながら話を進める為に確認を取る

 

「織斑千冬、アレの事は話していいか?」

「どのみち避けられないだろう、覚悟はしていた。構わない」

「分かった」

 

一夏の方を向いて、俺はマドカと一夏の関係を暴露する

 

「一夏、マドカとお前は兄()関係だ」

「本当かよ、千冬姉?」

「あぁ、私も最近まで知らなかった。調べたのは藍澤で、私も戸惑っている」

 

マドカと一夏、更には千冬のミトコンドリアDNA及び遺伝子構造は家族関係にある事を示していた。

それを調査するために大変な苦労をしたのは言うまでもない

 

「しかし彼女は敵だ、敵であるということは遠からず()たねばならない」

「つっ···!!」

 

一夏の表情が強ばる、やりたくはないし正直逃げたいことでもある、しかしこれは家族の問題

他人がする事ではないし、してもらうことでもない

 

「俺から教えることは一つだけだ。そういう場面になった時にこそ状況で引くな、責務で引くな、感情で引くな。例え理由や原因があったとしても、最後は自らの意思で引け」

 

それこそが、こいつらに俺が教える基本、人として当たり前の事を最後まで責任を持つ事で果たせ。

決して危険な状況だという事で躊躇うこと無く。責務を理由に逃げ出さず。感情に左右されず。理由や原因がわからないから逃げるなどという事はするな、最後は己の、意思の決定を貫け。

 

「さて、帰るぞ」

「対策は?」

「セリアが既に向かっている。やつに任せれば上手くいくだろう。こちらに篠ノ之束を連れてくるがよろしいな?」

「あぁ、構わん」

 

よし、コレでしばらくは彼女を危険から遠ざけることが出来るだろう




最新話にして急展開。まぁ、この作品はよく話が急展開していますが。

感想ください、作者のポテンシャルがアップします。

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