運命に左右されし過去の人生を振り返る時に、思う事は?
「さて、お前のことを既に話してあるが、まだわからない部分がある」
治療を受けながら俺は質問を受けていた。
質問の理由はおおよそ見当が付いている
「戦闘をしていないはずのお前がなんで、一番大きなダメージを負っている?」
その理由は簡単だ、何故なら・・・
「この傷は全て、暴走したブラックフレームの影響で生じた過去の事象だよ」
コレが俺の転生前最後の姿でもある。数々の腫瘍と裂傷、無事な器官を探すほうが手間になる。
この状態で生きてこられる人間などいないだろう、俺を除けば
「こちらには完成形の医療用ナノマシンがあるが、俺の居た
それ以降はやめた。理由は、今の異常体質になる代わりにそれを克服したから。
医療用ナノマシンはなかったが、改造用のナノマシンはあったから
そして、同時に守るものが出来たのが大きい。
守りたい人のために、命をかけると誓ったから
だがその結果・・・
「守れないものが多くて、慣れないモノに手を出したことだってある。その過程で血反吐を吐くことも何度あったことか」
曰く、偶然の結果なのだ。俺という存在自体がイレギュラーなのだからしょうがない
「結果、地獄を見たよ」
守ることもできず、救うこともできず、ボロボロに成り果てた結果、俺は未来の自分に殺されかけた事もある。
それは未来と現在が交わる時空の狭間。歴史の、人類の混乱期に現れるそれは俺にとって皮肉でしかなかった
そして、激戦をくり広げる
「地獄を見るとわかっていて、そうなると理解した上で俺はそれでも歩むと決めた。今更止まるなどということはしない」
「それは今も変わらないのか?」
「譲らない、これは信念だから」
祈り、願い、信じる。俺にとっての戦いの真はまさにそれで、守るべき、救うべきものがなければ簡単に折れる諸刃の剣だと理解もしている
それでも歩みとなるならば。と心に誓いこれまで来た・・・だが
「今更思うが・・・俺、狂ってるな」
「・・・」
そんな思想は確かに狂っている。
自分よりも他者を優先するなどおかしい話だろう、普通の人間は皆と自分を天秤にかけたら自分が勝つ
それこそ当然で、普通なのだ。生存本能というモノに左右される環境ならば特に
「それでも、守りたいものがあったのだろう?」
「あぁ、あったよ。今は亡き、かつての盟友が」
そう、俺の戦いの中には常に恋人の存在があった。彼女の笑顔を守りたくて、悲しみの表情を見たくなくて。
その結果悲しませたりもしたけど、互いに支えあっていたのだから・・・
「つきない後悔は俺を孤独にした。彼をなくして俺は自暴自棄に近かった。それを正気に戻した本人とは別れる事になったが」
「主義と主張の違いか?」
一夏の質問に俺は首を横に振る
「彼は生粋の軍人だった。お上の指示には逆らえなかったんだよ。悲しいかな、当時の俺と彼の住んでいた国はそんな情勢だったからね」
軍事国家化した近未来の日本を皆は想像したことがあるだろうか?
そこで日夜様々な非人道的な実験が繰り広げられている事を想像してもらいたい。それは嫌になるほどの悪夢だろう?
その結果生み出された俺と、人生を狂わされた彼、一方はなんとか自分という人間が狂っているのだと分かって落ち着いた
残るもう一方は・・・
「そして彼は完全に壊れた、元々不安定な精神を仲間との絆と精神の拠り所としていた唯一の肉親との関係でなんとか支えていたんだ。その後の彼は見るも無残な変わり様だったよ」
絶望に沈んでいるのならばまだ助けようはある。しかしそれが果て無き後悔からくるものだったら?それを源泉として生じた世界への復讐心を癒す方法なんてそうそう簡単に見つかるものじゃない
仲間を守れなかった、家族を救えなかった。支えとしていたものを一気に奪われた彼に俺は殺すことしかできなかった
救う術だってあったはずなのに。
「今でも、時たま思い出すんだ。俺に殺された時の彼の表情を。どこか安心して、救われたような表情で、俺の手の中で死んだ彼の、鼓動を」
穏やかに死んだわけでは決してない、壮絶な痛みの中で死んだはずだ
今でもそう思っている、後悔している。救う方法をなぜ探さなかったのか。この手に掴めるのは本当にそんな結末なのか?と
「それでも、俺には今、守りたい人がいる。もう二度と、亡くさぬように、守れるように」
そのために俺は彼女に専用機を開発した、あくまでも自衛のために。
それは今、彼女の首にかかっている二つのリングを掛けたネックレスとして待機している
「カズマ、お前・・・本当は馬鹿だろ?」
「・・・否定はしないよ。俺は頭こそいいがやっている事はまさしく馬鹿だ」
バカバカしいまでに純粋すぎるのだから笑える、問題は・・・
「でも、それがお前なんだと思うよ。お前はお前で頑張ってきたんだ、それを否定するなんて人を見下している人以下の奴がする事だし。俺たちはお前に鍛えられてんだから」
むしろ、賛同してやるべきことだろ?と一夏はみんなに告げた、全員がそれに頷く
「でも、一つだけ反対する事がある」
「あぁ・・・」
何となく分かっていた。どのことだか見当はつく
「俺達はそこまで弱くねぇよ、確かにお前に比べれば経験もないし肉体的にも圧倒的に弱いけど。お前と同じだけ何度でも立ち上がれるし、何度でも奮い立てる精神力はあるから」
だから、お前だけが負うものなんて今はないんだ。と、一夏はそう言いたいのだろうう
俺も、もしかしたら心の奥底ではその言葉を言われたかったのかもしれない・・・
「そう・・・だな」
そうだ、きっとそうなのだろう。
何故なら、気づいたら、涙が溢れていた。止められないのは安堵と、解放された喜びから・・・
「じゃあ、しばらく安静していろよ?」
「あぁ・・・そうさせてもらうよ」
現状、完全回復は相当な時間が掛かる。最も早くて2週間、最長で1年という所だが
「あんまりゆっくりしてられないな、あぁは言われたが俺の性根はそう簡単に治らん」
俺の性根はそうそう簡単に治りはしないだろう。頑固者だと理解もしている。
だから、仲間と親友、好きな人の話はよく聞くことを心がけているが、これだけは直せないというものがある
それこそが、生き急ぐ事である
「さて、動けるなら限界まで動くか」
限界までなんとか動ける部分を動かす。ハードワーク気味に動かす方が自分としてはいいし、それにはちゃんとした理由がある
それは、筋力の低下をなるべく抑えるためだ。動かさずにじっとしている方が筋力量が低下する速度が速いし、関節の硬化も防ぐ効果もある。
もちろん、俺のようにハードワークする必要は決してないが
「さぁ、できる限り短期間で復活しよう」
決めればあとは早い、なんとしても回復してのけてやる
<???、???>
「・・・」
少女は目を覚ました、何処とも知らぬ場所で
「ここ・・・は?つっ・・・!?」
頭を押さえ、しばらく呻いた。その間に誰かが来る
「ねぇ、大丈夫っ!?」
「う・・・あ・・・」
朦朧としているのか、覚束無い足取りで歩こうとする、しかし途中で倒れた
その寸前で声をかけた少女が支え最悪の事態を避ける
「藍澤・・・カズマ」
「え・・・」
その人物は支えた側の少女にとってとても恩義のある人物だった
「ってすごい熱!?急いで連絡してきてもらわないと!!」
疑問に思う前に即行動、彼女の行動はある意味的確だった・・・
最後の展開は次話へのフラグ(笑)
次話はすごいバトルになりそうだなー(棒)
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