IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは悪夢のごとき事態。
最悪の末路、それの引き金を引いたのは···


nightmare

「ふむ、こんなところか」

 

やれやれ・・・と言いながら俺は座る

ブラックフレームのディスプレイには非常事態警報発令という文字が浮かんでいるが気にしない。

なぜならこの事態は俺が引き起こしたものだから(・・・・・・・・・・・・・)

 

「さて、どう出るかね、専用機持ち?」

 

この場をどう切り抜ける?さぁ見せろ、君たちの戦いを

これはこれから迫り来るであろう苦難の前哨戦に過ぎないぞ?

 

「貴様が全ての元凶か」

 

後ろから剣先を首元に突き付けながらそう言ってきたのは織斑千冬だった

俺はそれに答える

 

「全てと言うとどれを指しているのかは分からんが、今この場で、この茶番をしてのけたのは後にも先にも俺だけだ」

「貴様、一体何をするつもりでいる?戦争が好きだったのか?争いを求めているのか?敵味方で血を流させそれを神聖視しようとでも言うのか?」

 

苦々しそうな表情に変わったのだろう、声音が少しだけ鋭いものになっている織斑千冬を見ることなく話を続けろと合図する

 

「お前のこの行動で、何人が傷つくと思っている!?」

「勘違いをするな。俺はその全てが嫌いだというのは変わらん」

 

それは変わらない、現にこうするのはあんまりやりたくない事だ。

入学当初から感じていた違和感を最近ようやく納得しただけ。納得した上で、是正させる方法を過激なものにして見ただけという簡単な理由(もの)

ここは平穏すぎるのだ、各国が最大限警戒していながら、肝心の護りはガラ空き・・・シャレにならないジョークかと思わず笑うほど

しかしこの時・・・

 

「おい」

 

どこから響いた、途轍もない質量の波動が干渉し始めた

 

「つっ・・・!?」

 

さらに、ブラックフレームのエミュレート機能を使って結界を生成し、そこに織斑千冬を案内した存在に俺は声を出す

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その声は届かず、織斑千冬が視界から消えた(・・・)

 

 

 

<織斑千冬、???>

 

声がしたあと、目を開けたまま気がついたら何処かの空間にいた

ここはどこだ?何を私はされたのだ?

疑問に思うが、そこで思考を中断される

 

「特等席にご案内しよう、織斑千冬」

「これは、貴様がやった事なのか!?」

「然り」

 

当然だろう、このような事、出来るのは俺しかいないだろうが。と藍澤によく似た容姿の男は話す

そして近くに有る椅子を指して

 

「掛けたまえよ、せっかくだ、しばし話をしようじゃないか」

「私にはやる事がある、早々に退席するぞ」

「それは困るな」

「ぐぅ!?」

 

荷重を加え、簡単には動けないようにされた。

聞きたいことを聞けるまで帰しはせんよ。と言わんばかりのプレッシャーだ

 

「実は恐縮なのだが何も考えていなかった。一体俺は貴女と何を話せばいいと思う?」

「なに・・・?」

 

考えていなかった?、話をするタイミングを?それこそ考えなしの行動だ。

 

「そう怒るな、性分でな、面白そうなものには生来目がないのだ。ふと気がついた、だから捕えた。他に大した意味はない。吟味はしている最中だ」

「つっ・・・!!」

 

この男、藍澤とは異なり非常に馬鹿なのか?その場のノリと勢いでご破産にしてしまうことが多々あるんじゃなかろうな?

 

「まぁ、なに、時間は山ほどある、ゆっくりしていけ」

 

ふざけるな、そんなもの・・・!!

 

「私にはないっ」

 

対する相手の返事は・・・

 

「その点は問題ない」

「なに・・・!?」

 

その一言だった、どういう意味だ・・・

 

「こちらの次元とあちらの次元は異なる階層だ、こちらではあちらの未来を見ることが出来るが、あちらではこちらを観測できんよ」

「つまり・・・時間を停止させたと言いたいのか!?」

「そんな事、出来ないさ」

 

傲岸不遜に笑いながら相手は私に問いかける

 

「なぁ、平行世界というものを信じるかね?」

「つっ・・・!?」

 

いきなり何の話だ?ここに関係があるのか?

 

「その様子では信じていないようだが、どれ、あるのだという事を見せてやろう」

「がっ!?」

 

突然、視界が変わるかのごとく眼前に映し出されたのは様々な映像だった。それ一つ一つが様々な結果になっている

 

「理解したかね?」

「ぐっ・・・くっ!!」

 

あまりの負荷に頭痛が酷い、なんだこの人間は

そもそも、なぜそんなにも藍澤と似ている!?

 

「簡単だよ、俺はヤツの親だからさ」

「なっ・・・」

 

親・・・だと!?藍澤から聞いてはいたが・・・これ程のことをやる存在が、人間だというのか!?

 

「俺という存在は人間として突出しすぎてしまった、ゆえに俺は息子に全てを託している。だが今回ばかりは少々行き過ぎたのでね、君を経由して戒めようと思う」

「他力本願・・・か」

「十八番だからね」

 

破顔した自称藍澤の親は私に問いかけてくる

 

「さて、戒める理由は大体分かっているよね?」

「あぁ、それで、いつ私を返すのだ?」

 

うーん、と考えながら思いついたように紙を書いて私に渡してきた

 

「これだけ見たら帰すよ。これは彼の記憶であり自分の夢だった事だ。そして最後はこの世界が彼の入った事で変わっていく未来が映される。一種のシュミレーションだけどね」

 

渡された紙には触れてはいけない事が書かれていた。

藍澤・カズマの来歴、本来の年齢。藍澤・カズマを作り出した理由の気がして背筋が思わず凍りつく

それだけでない、藍澤が転生した結果変わった未来をシュミレーションではあるが見せるというおまけ付き。

なんの悪夢だこれは?思わず逃げたくもなる・・・だが

 

「いいだろう」

 

それでも、帰る方法はそれしかないと悟るには十分だった。

それだけの意味があるのだから・・・

 

 

 

 

<IS世界、カズマ>

 

「どうする・・・」

 

肝心要の織斑千冬が消えた事で緊急事態に対応する部隊は機能を消失した。

流石にこれは計画外だ。それも・・・

 

「うぅ・・・うぅあぁぁぁぁぁ!!」

 

全部、俺のDNA上での父親のせいだろうと判断できた。

あの野郎、愉快犯レベルでまた現れやがった。いけしゃあしゃあと!!

一体どうしてくれる!?これでは俺の計画が滅茶苦茶だ!!ふざけるなよ許さない。許さない。許さない!!

 

「がぁぁぁぁぁっ!!」

 

途端、生じたのは言語を絶する苦痛だった。

自分以外の人間が受けたらおそらく刹那も待つことなく絶命するであろう。それほどに末期なのだ

それでも普通の人間とは異なる精神力でこれを無視した。消すわけでもなく、治すわけでもない、単なる無視で凌駕する

 

「う、がっ、あぁぁぁ!!」

 

それでも戦うしかない、だから動くことにした。

しかし今の俺の体を見て、誰が戦闘できるだろうと思うであろう。全身に生じた裂傷は完全に出血死レベルの傷であるし、内蔵も大半がイカレている

 

「ぁ・・・」

 

逸る気持ちとは裏腹に、体は追いついてこない。無理はない、神経も一部が切れているのだから

結果、地に伏すことになる

 

「ぎっ・・・がっ!!」

 

こんな事が痛みになるものか、ヤツのせいで俺はまた絶望する羽目になるっ!!

視界は涙で歪み、像はバラバラになって見えにくくなっている

それほどまでに悔しい、憎い、妬ましい!!

なんなのだこれは、一体何なんだこの自分は!!

どうしてこれほど無様で醜い!!どうしてこんな仕打ちを受ける!?一体自分が何をしたという!?

 

「おい、カズマ!!・・・つっ!?」

 

もう一度痛覚を無視しようと決めたとき、一夏が来た

クソがっ!!こんな時に来るな!!

しかし今の俺は動けない、逃げられない状態で・・・

 

「見る・・・なっ!!」

 

なんとか立ち上がり、急いで由宇のいる場所に向かおうとする。あの子を奪われてなるものか!!

 

「待てよ、お前、今の状態じゃいつ!!」

 

死んでもおかしくないと?そうだろう死にかけだよ!!

 

「いけない・・・」

 

このままでは血が足りない。枯渇してしまう

そうなったら俺は・・・っ!!

 

「織斑・千冬・・・!!」

 

帰ってきてくれ、頼むから・・・!!

 

 

 

<織斑千冬、???>

 

「なるほど、つまり君はある程度見抜いてわざと踊らされているわけだ」

 

成り行きを最初から話せ。そう言ってきた相手に私は事の次第を語って聞かせた

結果返って来た感想はそんな身も蓋もない事だったが

 

「そうだ。貴様はどうやら自分の真実を分かっていないようだな。早く私を解放しろ」

 

そう言った私の言葉に相手は数瞬だけ虚を衝かれたような顔をした。しかしそれもすぐに笑いへと変わる。

それを見て、率直に恐ろしいと感じるほどの笑みに

 

「真実?俺の真実だと?おかしな事を、そんなものは未来永劫ただ一つしかない」

 

その言葉と同時に増していく破格の圧力、姿形はそのままに相手がまるで天まで届く氷山にでもなったかのような錯覚に囚われた

怒っているのか?楽しんでいるのか?いいやそもそもなんだこれは?

 

「自分の真実を知らないといったな?それはそうだ。それは自分の過去にあるものだから。過去にしか真実は転がっていないのだよ。では君はどうする?君の真を晒してくれよ」

「私の・・・真?」

「そうだ、祈り、願い、信じ、実践している事だ。その本心を聞かせてくれ」

 

それを言われて戸惑う、私は何をしたいのか?

 

そんなもの、決まっている

 

「私の真は、己の生徒を守る事。かつて護れなかったものの分も守るのだと自分に誓った。だから貫いてみせる、私にとっての戦いの真なる意味はそういう事で、死なないし、死なせはしない!!」

「よくわかった」

 

その瞬間、藍澤の親と私を隔てている空間が歪んだ

まるで水面に落ちた雫が、波動を生むように

その先には生徒たちが見える

 

「貴女の勇気を受け止めよう。その行く末を、俺もこの場から見させてもらう」

「・・・」

 

敵意が無いことに今更ながら気がついた、どういう事だ?

 

「おいおい、何を呆けているのだ?言っておくが俺は何もしていないぞ?真を晒し、誓った自らの成果に戸惑うなよ。なぁ・・・」

 

決定的に、私の中にある躊躇いという弱さを、相手は崩してきた

たったの一言で

 

「願うのなら、犠牲を躊躇うなよ」

「つっ・・・!!」

 

犠牲を躊躇えば、その大きな反動がいずれくる

そうなる前に、迷いは断ち切れ。と言いながら彼は笑う

 

「さぁ、早く行きたまえ」

「あぁ・・・世話になった」

 

別れたあと、すぐにもといた場所に帰って来れた

 

「行かなければ!!」

 

急いでこの事態に対処せねば、生徒が傷つく前に!!




試験的に視点変更してみました。失敗だったらごめんなさい

視点変更は〈人物、場所〉となっています

感想ください、作者の栄養源になります

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