IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは窮地に陥った主人公が己の限界を超えた時に起きた現象
それを人は奇跡と呼ぶ


集合無意識

「あぁ・・・」

 

そして俺はつかの間の夢から目を覚ました

 

「全ては都合のいい夢か、俺にあのような幸せが訪れるはずがない・・・しかし、全くどうして」

 

先程まで見ていた夢の暖かさと、現実の自分にあるあまりにも深すぎる隔たりを感じて思わず苦笑してしまう

今も絶えず、悔いている事

死にたくなるほど、生まれ直せるのであれば、この命すら要らぬと思える程にだからこそ思うのだ・・・

 

「強くなりたい」

 

仲間を守るために、大切な人を救うために・・・

 

「強くなりたい」

 

そうでなければ守れず、救えないから

 

「強くなりたい。強くなりたい。強くなりたいっ!!」

 

強くなろう、強くなるんだ、強くなければ男じゃない

そう願って、願い続けて、だから自分はあらゆるものを犠牲にしてきた

 

「もういい、たくさんだ」

 

()は全てをそれだけで理解して流れ込み始めていた由宇の記憶を自分から除去した

それだけでなく、突き抜けていく情報の爆風を全て一括で圧縮処理する

最後にどうして、この場にいるのかも理解して・・・

 

「やぁ。ようこそ、藍澤・カズマ。この世界で初めてにして最高の転生者。私は君を待っていた」

 

知の渦を意識が突き抜けた瞬間、俺は到達点であり始まりの地にたどり着いたのだと自覚(・・)した

 

「・・・」

 

目の前に広がっている空間は一言で、異形。自分の知りうる場でなく、どの世界とも異なる無形の趣に満ちている

聞いたことも、見たこともないし、話しかけてきた存在にこれまで会った覚えも当然ない

しかし、勘で分かった。この存在は何処にでもいるしどこにもいない。無限に広がっている大海であり、この空間そのものの化身だと

 

「お前は、この世界、そのものだな?」

「然り」

 

俺の問いに、やはりそう答えてきた、さらに相手は続ける

 

「私は根源、私は太極、私は森羅、私は万象。そして無であり、零であるもの。」

 

その存在には、固有する概念などなく

 

「天上にあり、奈落に坐すもの。全であると同時に一。」

 

全ての知を集積したもので

 

「つまりは君で、永劫出会わぬどこかの誰かだ。あえて言語に当て嵌めるのであれば、阿頼耶識(アラヤ)とでも呼んでくれればいい」

 

人間の総体と言える存在でもあった

 

「おめでとう、会えて嬉しいよ。いま認識しているであろうこの私は(・・・・)、君の功績を心から歓迎している」

 

それは本心でありながらどこか他人事の口調、それで確信を得る

 

「なるほど、アラヤ・・・普遍無意識とはよく言ったものだな」

 

曖昧な言い回しではなく、元からコレなのだ。一つの体に一つの命で構成される人間(ヒト)とは違い、唯一無二の個我で生じているのではないのだから

 

「そうだよ、だからコレがどういう事か、分かっているね?(ここ)に至るまでに死を経験したこと、しっかりと思い出せたかな?」

「あぁ、全て取り戻したとも。俺がここにいる意味・・・いや、ずっと誤解していた部分が解けた」

 

なんて愚かしい、大切なことを忘れているなんて。忘れてはいけないことだったのに

 

「俺の真実は、転生を定められた人造人間(・・・・・・・・・・・・)で。これまでの全て、本物だと思っていた記憶さえも、俺が作った偽の記憶なんだな?」

「そう、それは君が望み、そうなりたいと願った日常。この世界と君の情報を反映して随時演算した、一種の想定(シュミレーション)というやつさ」

 

なんということか、現実でありながらそれを出来るのがこの存在だ、凄まじいし恐ろしい

 

「よって、君が忘却してしまっていた本当の目的は・・・」

「いずれこの世界に来る、大量の転生者と、その中から生まれ出るバランスブレイカーの抹消」

 

この世界のバランスを保つために俺はこの世界の神とも呼べる存在の要請で転生したつまりは・・・

 

「最も重要なのは転生者の絞り込みでありその先にある抹消作業で揺るがない。つまりこれまでは、言うなれば修行期間のようなものだ」

「ならば、どうする?」

 

それは、決まっている

 

「俺は、俺の目的のためだけに動いてみせる。これで別れだ、アラヤ」

「そうかい・・・では、さらばだ、藍澤・カズマ君」

 

これで俺の記憶は閉じる、同時に解放された俺は最後に、戦う事に迷っている大切な人に自分の言葉で伝えたい事を伝える決心をした

だから・・・見ていてくれ、任せてくれ□□□□。君の夢は俺が継ぐ。伝えたい事があったんだろう?その為に強くなりたかったということ、その感情は間違っていないさ。

同じ男に生まれて身として、君の願いを今から形にしてやる。必ずこの手で彼女を連れ立って歩くと、誓うよ

その為に・・・夏休み冒頭の、プライベートな場所で・・・彼女は待っている

 

「待たせたね、由宇」




次話に続きます、戦闘シーン短いけどいいかな・・・疲れたよ連続投稿は

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