IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは再会、離れていた者同士がまた交わる事
そして、運命の歯車は回り始める


終焉(おわり)へのカウントダウン

「千冬姉ぇ!!」

「一夏!!」

 

戦場に出てきた一夏を見て俺は思わずため息をついた

何だかんだとコイツは不可能を可能にしやがる···

 

「白式は戻ったようだな?」

「あぁ···俺の覚悟を試していたみたいだ」

「それならば良し、敵に囲まれている···切り抜けられるか···」

「別方向から来ている···コイツは」

 

敵か?と思って銃口を向けると

 

「撃つな!!撃つなよ!?敵じゃないから···んなぁ!?」

 

思わず発砲してしまった、ノリで

 

「あ、すまねぇ」

「てめぇ!!今わざと撃ちやがったな!?」

 

いやだって、敵じゃないとかいうからつい

 

「つぅか、何でWALRUSの代表さんがここにいるんすかねぇ!!」

「昼間は学生なのだよ」

「···マジ?」

「ガチ」

 

壮年期に近いのにこの人は本当に青年のような言葉遣いだな、ある意味すごい気がするぞ?

 

「で、ここにいる敵は?」

「一夏、お前に関係がある連中だよ」

「つまりはマドカとも!?」

「ある」

 

マドカ本人がそう言うがその表情は暗いものだった

 

「なるほど、この世界でも俺と同じような存在がいたのか···」

 

そう、それから察するに、俺と同じ存在がいたのだ

織斑·一夏という、少年が

 

「そうか、俺はカズマと似た境遇なんだな···」

「一つだけ違うのは、お前は愛されているという事だ、それはお前自身がわかっているな?」

「あぁ···」

そう、彼の目の前にいる人物こそが···

 

「トラヴィス·カークランド!!」

「そう叫ぶなよ、千冬。俺はまだ老人にはなってねぇぞ?」

「ちっ···!!」

 

ここまで露骨な舌打ちを千冬がするとは思わなかった、苛立ちがはんぱないようだ

 

「今更···!!」

 

そこに、砲撃がはしった

 

「つっ···!!」

「コイツは···!!」

 

そこにいたのは、黒塗りの禍々しい機体を纏った女性だった

 

「織斑·一夏、織斑·千冬、織斑·マドカ、それに···篠ノ之·束」

「まさか···」

「私の命にかえても···貴様らをここでッ!!」

 

黒き獣が、空で叫ぶ

 

「トラヴィス、コイツは···!!」

「あぁ、千冬よりも前に生まれた人間だ···同時に俺が10年かけて探していた子でもある」

「じゃあ···俺達にも関係あるのかよ!!」

「そりゃあな···!!」

 

多角攻撃に加え反応速度もケタ違いのレベル、この性能を引き出しているのはまさか!?

 

「プロトコアだな、ISの!!」

「クソッ!!」

 

ISのプロトコア···束が開発する以前に作られた、非人道もここに極まるレベルの人類が生み出した最悪の技術

それをベースに開発されたのが···

 

「この、ガデラーザで、全てを終わらせる!!」

「させるかッ!!」

 

一夏が即応していた、その瞳には彼女を止めるという強い意思がある

 

「リーゼの嬢ちゃん、俺を覚えているか?」

「覚えている、レイス···トラヴィスさん」

 

戦闘をしながら、彼女はトラヴィスの話を聞いていた

 

「俺がお前達と別れてから知った事を今から話す」

「うるさい!!いいから戦え!!」

 

トラヴィスは放たれた攻撃を最小限度の動きで躱してのけた、その技量は最強の傭兵に相応しいものだとわかる

俺でも絶対にしないレベルの回避だ

 

「この場にいるみんな、みんな消してやる!!」

「お前が殺そうとしている一夏、それにマドカは、君と同じように遺伝子を弄られた被害者だ!!その非人道極まる犯罪の首謀者は失脚し、命を絶った!!」

 

その言葉に、敵である女性の顔が変わる

驚き、迷う表情に

 

「実験をしていた連中も、施設も、データも、すべて俺が始末した!!」

「つっ···!!」

「あとは君の使うその機体を破壊すれば全て終わる!!だから、束を許してやれ、彼女のこれからの人生を、まっとうに生きるべきだろ!?」

「だったら···」

 

リーゼと呼ばれた女性は、泣きながら叫んだ

 

「私を殺してよッ!!」

「・・・」

「私と同じ時期に生み出されて、殺されたみんなの憎しみを背負って戦ってきた···私のこの10年は何だったのよッ!!」

 

今まで無言を貫いてきた俺も、この言葉には我慢も限界だった

 

()()()()()()()()なんて思うなッ!!非人道的だけど、生み出されてしまったのが最後、生きていく上でみんな、何かを背負ってしまうんだッ!!」

「つっ!!」

「背負って押し潰されるくらいなら、そんなもの放り出してしまえ!!放り出したっていいんだッ!!」

 

無言の彼女にさらに言葉をかける

 

「みんな、みんな許してくれる!!みんな、生き残る奴らの幸せを願っているッ!!そうだろうッ!?」

「あぁ、その通りだッ!!」

 

一夏はそれを知っている、学友として俺と関わった彼は、俺自身の裏切り行為でそれをさんざん思い知った

だからこそ···

 

「でも、でも···!!私たちを犠牲に作られた、たったひとりの人間を、どうやって許せっていうの!?」

「君たちの戦争は、もう10年前に終わっているんだ!!死者の魂を、君が縛り続けてどうする!?」

「まだ、まだ終われないッ!!」

「やめろッ!!」

 

一夏と敵がぶつかり、爆煙があたりを包む

 

「一夏ッ!!」

「・・・」

 

爆煙から、一夏はボロボロの状態で出てきた、それでも飛行ができる程度のダメージ量だ

対する敵は···

 

「最後の···一撃でさえ!!」

「その一撃が俺に当たらなかったのは、貴女を、貴女の仲間が止めたからだ···貴女が背負ったのは、憎しみだけじゃない···」

 

一夏はリーゼに近づいて、話しかける

 

「貴女だって、それは分かっていたんでしょう?」

 

一夏の言葉は、敵にかけるような言葉ではなかった

優しく、問いただすそれは、慈愛に満ちている

 

「本当は、とっくに分かってた···こんな事じゃ、みんなの死を無駄にするだけなんだって···でもッ!!···でもッ!!」

 

そして彼女は泣く、空を向いて

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

しばらく後、WALRUSで保護することになったリーゼが去った後トラヴィスは一夏と千冬に振り向いた

 

「これで全部終わりだ···いいか?」

「なにが?」

「千冬、一夏、俺のとこに来い、お前達にはマトモに生きる権利···いや、義務がある」

「今までもマトモに生きてきたけどな」

 

あー、うん、そうだね

 

「俺に1度くらい親···いや、とにかく来い!」

「どこまでも身勝手な···親だ···」

「ん!?···あぁ、冬夏(トウカ)にもよく言われたよ」

 

翌日、一夏に話を聞いたところ···

 

「千冬姉ぇがマジで今までの中で凄まじく怖かった」

「おぉふ···」

 

何があったかは、察するにあまりある事だった




さて、次はようやく金の···(これ以上はネタバレになるのでNG)

ようやく最終章だよ!!

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